男子vs女子の勢力合戦で第三少数勢力にされた件 作:とってもみかん
「で。」
フジモトが口を開く。
「これは一体どういうことなのだろうね。」
「それはこっちのセリフよ!・・・てか、こっち見るな!」
おっとすまない、とフジモトは目を背ける。
反応したのは三人の内一人のへたり込んでいる女子だった。
彼女は風呂上がりだったところを転移させられたようで、黒く長い髪はまだ湿っており肌に張り付いていた。
ここに来た時にも俺は彼女を見かけていたが、直ぐに女子に囲まれて見えなくなっていたのを思い出した。
何名かの女子に服などをかけられていたような気がしたが、今は白いバスタオル一枚しか体に巻いていない。恐らく服も“持ち主”の一部と判断され、彼女にかけられた服も持ち主と共に転移し、再び彼女はバスタオル一枚の格好になってしまったのだろう。
俺は改めて体育館に残された6名の男女を見回した。
俺の隣にいる二人・・タナカとフジモトは、俺の小さいころからの幼馴染だ。お互いに家が近く、ご近所付き合いも豊富だったため、俺たちはよく三人で遊んでいた。
タナカは俺と同じ水泳部に所属するスポーツマンだ。
少し長めのスポーツ刈りにした頭と、やや幼い顔立ちが特徴だ。
俺たち三人の中で最も運動神経がよく、水泳以外にも大体の運動はでき、走りでは俺もフジモトも一度も勝ったことはない。
半面身長は俺たちの中で最も低く、165センチ程しかない。また勉強もお世辞にできるとは言えない。
フジモトは美術部に入ってこそいるが、殆ど顔は出してなく幽霊部員となっている。
縁なしの眼鏡とさらっと癖のない髪をストレートに下している。
運動は人並みより少し下といった感じで、その分勉強は俺たちの中で最もできる。
俺たちの前だけでは「デュフフwコポォww」という感じの二次元オタで、最近ではミリタリー関連にもはまり、サバゲ―などにも大人に混じってこっそり参加したらしい。
学校や他の人がいる場では、成績優秀な落ち着きのある青年として振る舞っている。顔立ちも結構良く、女子にも人気があるそうだ。
だが、“素”は俺たちといる時だそうで、学校では自分を抑えすぎて常にストレスを抱えているという。
つまり、かなりの変人だ。
身長は俺たちの中で最も高く、180センチに迫ろうかというほど背が高い。
問題は目の前の女性陣だ
「え、えーと。とりあえず!自己紹介とか、してみませんか・・・?」
語尾のほうが段々としぼんでいったのは、さっきのバスタオル女が睨み付けてきたからだ。
なんでこう好戦的なのかな、この子は。
だが、それを制して彼女の前でゆっくりと立ち上がった女の子がいた
「そうですね。どうして私たちだけが残されてしまったかは分かりませんが、互いに素
性も知らないようでは何時までも何も進展しませんしね。」
凛とした澄んだ声で言ったのは、先ほどまで少しでも肌を隠してあげようとバスタオル女に寄り添っていた女子生徒だ。
ああ、彼女の顔は見たことある気がする。確か剣道部の・・・
「私は女子剣道部の主将、三年の 暁(あかつき) 美玲です。先ほどまで武道場のほうで稽古をしていたのでこのような格好ですが、お見知りおきを。」
そういう彼女の服装は、深い藍色をした道着に黒の袴(はかま)。防具や竹刀こそ持ってはいないが、一目で剣道部だとわかる格好をしている。
深淵を思わせる黒い瞳に、肩口で切りそろえた髪は青みがかるほどの黒。
切れ長の眉毛に俺の顔を見据えた眼は意外と鋭い。
身長は170前後だろうか。すらりととした立ち姿は、絵に飾っておきたいほど美しい
凛々しいという言葉が彼女ほど似合う者もそういないだろう。まさに大和撫子といった雰囲気だった。
暁先輩はある一方を指さすと。
「あそこで寝ている子は、私と同じクラスの 冬月 アリス、イギリス人と日本人のハーフの子ですが、本人曰く英語は喋れないそうです。日本語は普通にしゃべれます。」
そう。
あえて今までツッコまなかったが、この状況下で最初から最後まで寝ているのがそのアリスって子だ。
毛布も一緒に転移したらしく、それにくるまってずっと寝ている。綺麗な金色の髪が毛布からはみ出ていて、それが異国の者の雰囲気を醸し出している。
バスタオルの子はしきりにその毛布を引っぱって、自分の身を隠すために使いたいようだ。しかし、右手を胸の前でタオルを抑えるために使っているため、左手だけでぐいぐい毛布の端の引っ張ってはいるが上手くいかないらしい。
やがて諦めたかのようにこちらのほうを振り返った彼女は、自分(本当はアリスに)集まる視線を受けて再び顔を紅潮させていたが、やがてどこか浮ついた顔で早口に言った。
「わ、私は2年の水樹 澪(みお)よ!貴方たちみたいなヘンタイと関わる気なんてないけど、以後ヨロシク!!」
おおう・・。これが・・―――本物か・・。
いかにもフジモトが好きそうだ。
隣を見るとフジモトは「あっそ」みたいな顔で済ましているが、心の中では鼻血をふきながらジャックハンマーをしていることだろう。
身長は170ないぐらいか、釣り眼気味の瞳はやや青色がかっており、腰まである長い黒髪は右手首に巻いた2つの黒いゴムバンドで普段は留めているのだろう。さっきの自己紹介の口調からして、ツインテールであると俺は踏んでいる。
「ん~。騒がしいね全く。」
呑気そうな声でふらふらと身を起こしたのはアリス。
体にかけていた毛布が落ち、赤と黒を基調としたパジャマ姿が露わとなった。
肩より少しあるウェーブ掛かった金髪に、開かれた大きな瞳の色は深い赤。
そして瞳の色に合う赤い下縁の眼鏡をかけている
身長はタナカよりも小さく、中学生にしか見えない。
「みれぇー、自己紹介は終わった~?」
みれぇ? ああ、暁のことか。
同じクラスだから名前で呼び合ったりするのも当然なのかもしれない。
「こちらは既に終わりましたが・・・。それにしても、寝すぎですよアリス?・・・と言っても、何が起きて、何を話していたかは全部知っていると思いますが。」
「まぁね、こんな面白そうなときに寝てなんかいられないよ。まぁ寝たふりをしたほう面白いものが見れると思ったからねぇ?」
と澪の方をいじわるそうに微笑みながら見る
「あ、あんたねぇ・・」
危うく飛び掛かってほっぺたでもむにむにしてやろうかと思った澪だったが、自分の格好を見て思い留まる。
「まぁまぁ、落ち着いて下さい澪さん。――では、次は僕たちの自己紹介といきましょう。」
どこか嬉しそうな表情で、巧妙に左手で鼻元を拭いながらフジモトは言った。
◇
「なるほどねぇー。つまりあんたたち三人は幼馴染ってコト?」
アリスから毛布を受け取り、体をそれで覆うことで余裕を取り戻した澪が言う。
「そうだねぇー。俺とコイツが3歳ごろ出会って。その3年後くらいに、俺らのウチの近くにフジモトが引っ越してきたんだよね。」
タナカが俺の方を親指で示しながら言う。
「うぅーん。この六人の共通点は、同じ学校に通っていることぐらいか・・。それかある程度親密な男子3人と女子3人を選抜?・・いや違うなぁ・・。」
アリスがぶつぶつ呟いている
「だめだねぇ・・さーっぱり分かんないよ。なんであたしら6人が取り残されたのかも、どうして“あたしら”なのかもね~。」
「私とアリスや男子三人ならともかく、澪さんとは初対面ですからね・・。共通点らしい共通点もないと思いますね。」
「一方的にだったら暁先輩のことは知っていますよ。剣道の表彰とかで、しょっちゅう名前聞いてますので。」
うーん
このまま話していても埒が明かないな。
6人だけが残されて既に10分ほど経過している。
もしかしてこのまま密室で餓死ルートの可能性も微レ存!?
恐ろしい想像をした俺だが、救いの手はあっさりと現れた。
『ピンポンパンポーン』
いつか聞いたチャィムが鳴り、俺たち全員がはっとした表情をして耳を傍立てる。
『大変お待たせしました。
これよりあなた方6人による第三勢力、《レジスタンス》の説明に入りたいと思います。』
アリスが、まじかよ・・と声を漏らす
「第三勢力ということは男子でも女子チームでもない三つ目のチームができたってこと・・。恐らく、それがあたしら6人だね。・・全く、200vs200vs6ですか・・。無理でしょ~こんなの~。」
それを聞き、みんなも意味を理解したようで絶望の表情を顔に張り付かせている。
『ですが第三勢力といっても、他のチームとの数の差は200以上。そのため救済措置として、あなた方六人はこの世界において強力な存在となっております。』
なぁんだ、とほっと息を吐く。
200以上の数の差を埋めるほどのアドバンテージ・・つまり俺TUEEEEできる存在と化してしまったのだ!(多分)
『あなた方の目標は特にはありません。難しいですが、男女2つのチームのフラッグを持ち帰れば勝者となり1000万を6人占めすることもできます。ですが、あなた方はいつか《レジスタンス》の名前の通り“なにか”に反抗することになるでしょう。自分たちが正しいと思うことを為すこと、それが貴方達の存在意義です。
・・以上で《レジスタンス》について説明するべきことは終わりました。
では1分後にあなた方の転移を開始します。』
それを聞いて6人は円になるようにお互いを見回した。
タナカもフジモトも暁先輩もアリス(先輩)も澪も・・そして俺も同じ顔をしているのだろうか。
それは不安の表情だ
これからこの6人でやっていく不安、《レジスタンス》として大業を任せられる不安。
様々な不安要素がある中で、かつこんな《ゲーム》に強制参加させられて、平然といられる方がおかしい。
だけど、俺は笑った。
あの時もそうだ。
幼い頃フジモトとタナカの三人で山で遊んでいたら、危うく遭難しかけたことがある。夕刻になり辺りが暗くなる中、俺は精一杯笑って二人を励ました。それまで涙目になって震えてたくせに、俺につられて二人も笑って、そのまま夜になるのが楽しいかのように笑いながら下山したのだ。(そのあと親からはこっぴどく怒られた)
そう今は不安になっててはいけない。
《ゲーム》は楽しむためにあるんだ。
だからゲームスタートぐらい笑って迎えようぜ。
みんなの顔を見ると、可笑しそうに笑っていた、みんな
「ぶっほwwww」
「懐かしいなぁ、昔を思い出すね。」
「あ、あんたww、突然笑いだすのは卑怯でしょw」
「ふふ、有難うございます。少し不安が解れました。」
「んふふ、君ぃ、なかなか笑いのタイミング掴んどるねぇ。」
もちろん最初に吹き出したのはフジモトだ。
俺ら以外の人がいるのに、すっかり取り乱している。
だが、笑いすぎだ。後で殴ろう。
こうして俺たちは不安も何もなく、まるで昔から友達だったかのように笑いあっていた。
『では転移を開始します。ご武運を』
長い前置きでしたが、これでようやくバトルが始まるかも!?