補足 第三世代IS『飛龍』:中国が世界各国の技術を盗んで作り上げた最新機。従来のISの三割増の高機動性能、航空継続能力をもつ。武装は従来品の使いまわし。
第十話『再臨、ゼオライマー』
同時刻、IS学園近海の洋上をを飛行物体が二つIS学園に向けて接近していた。
一見するとそれらはHDランスターの様であるが、知るものが見ればその飛行速度は従来のそれよりも高速に過ぎるとわかるだろう。実際これらは偽装装甲の施されたIS飛龍、甲龍と同じく第三世代として開発されたものであり、搭乗者はもちろん女性だ。
『タウ、そろそろ作戦領域よ。準備はいい?』
『分かってます、姉さん。私をなめないで』
『そういう意味じゃ…いいわ、行くわよ』
ISの極秘回線を利用して会話をする二機の搭乗者であるが会話の内容からして両者の関係はよろしくないと第三者が聞けば思ったであろう。シ・アエンとシ・タウ、それが二機の飛龍を操る者たちの名でありその名から分かるように血縁者、さらに言えば双子の姉妹である。二人は中国政府上層部、具体的にはそこに勢力を張る女尊男卑主義者の女性指導者からの命令で今IS学園を目指していた。任務はIS学園に襲撃をかけ、先だって国を逃亡したIS訓練所の者たちの首謀者らの殺害である。中国マフィアや専門の暗殺者などによるそれはIS学園の厳重な監視網により未然に防がれ、あるいは頓挫したことに業を煮やした女性指導者が遂に自分の私兵としていた両者に最新ISを与えてそれをなそうとしたのだ。
『あの女も困ったものね。自分の足元が危ういのに面子優先とはね』
『駄目よ、タウそんなこといっては。私たちには拾ってもらった恩があるのだから』
『そんなもの、今までのあの女の尻拭いで充分じゃない姉さん。このままあの女の飼い犬なんて私はごめんだわ』
『それは私もだけど、今あの女に倒れられたら私たちの生活も命も立ち行かなくなるのよ』
『判っているわよ、でもこのままじゃまずいことは姉さんもわかっているでしょ』
二人のIS乗りの腕前は実際かなりの上位ではあるが今回の作戦は成功したところでメリットはほぼない。そして失敗し偽装した自分たちの正体までばれれば、世界を敵に回すことに繋がりかねないであろうことは二人にはわかっていたが、女性指導者の肥大化したエゴは自身の顔に泥を塗ったものをどうしても許せず、それをいさめた者たちも排除されていた。二人とて断れば同じ目にあっていたであろうと思うとこの先に不安しか感じられないのも無理はなかった。
そんな憂鬱な二人の乗る飛龍のセンサーに反応あり。反応パターンからしてHDと思われるがかなり大型だ。
こんな場所でと不審がる彼女たちにその反応は明らかにこちらへと接近してきていた。
IS学園からの哨戒機の可能性もあると考えた彼女たちは互いに言葉を交わすことなく臨戦体勢へと移る。
タウが前衛、アエンが後衛の体勢は彼女たちの必勝の型であり、未だこれを打ち破った戦闘者はいないのだ。
距離が縮まりまもなく射程範囲かと思われた時に反応が消失、といぶかしむまもなく自身らの後方に反応が再出現したのを確認すると同時に反応したものから極太の光線が二機に向けて発射された。
とっさに回避するもいかなISとはいえ完全にはよけきれずに偽装装甲の一部に命中し、その部分は融解していた。
中身のISは損害はなかったがバリアが発動したためエネルギー残量は減少しており、光線の威力に二人は顔をしかめる。
そして向き直った二人は攻撃を加えてきたそこに白い大型IS、ゼオライマーを確認した。
『ここから先に行く必要はない。ここがお前らの終着点だ』
『ぬかせ!』
『タウ、冷静に行動して!』
回線から聞こえる男の声に激昂するタウをアエンがなだめるも、姉妹どちらもゼオライマーからは視線をはずさない。再び光線がゼオライマーの両手の甲には待った玉から発射されるも今回は回避に成功した。強力な攻撃だが当たらなければ問題ないと判断した姉妹はゼオライマーの周囲を高速で移動しつつ手にしたISアサルトライフルで射撃を加える戦法を採った。命中するたびに、シールドバリアが発動するゼオライマーに姉妹はほくそえんだ。
『成る程、ISの機動性を生かして命中を避けつつエネルギー残量を削るか。悪くはないな』
『その余裕ぶった口をいつまで叩けるか見てやる!』
叫ぶタウと無言のアエンは暫くゼオライマーに攻撃を与えていたが、ゼオライマーの攻撃もバリアもどちらも切れる気配もそれに焦る気配も感じられなかった。逆に一撃当たれば大ダメージを受けるだろう飛龍に乗る姉妹のほうに焦りが出始めていた。飛龍は機動力、航空移動距離共に従来のISを上回る機体だがこのまま戦闘を続ければ本来の目的であるIS学園への襲撃を行い帰還するためのエネルギーに不足が生じてしまうであろうからだ。
『姉さん、私がやつを討ち取る!援護を』
『駄目よ、タウ!まだ相手の能力もわかってないのよ』
アエンが停める声も聞かずにタウの乗る飛龍はISアサルトライフルを格納、青龍刀二刀を展開しゼオライマーに緩急をつけた高機動移動でゼオライマーの光線をかいくぐり接近していく。やむを得ずアエンもタウの動きを支援するために支援射撃でゼオライマーの行動を阻害する。そのおかげで一定の距離に近づけたタウが瞬時加速を使用した青龍刀の打ち込みでゼオライマーに一撃を加えて切り抜けるとバリアには阻まれたがその巨体が制動を崩した。それを見たタウは機内でにやりと笑うと再び瞬時加速からの切り込みをおこなう。さらにバランスを崩すゼオライマーに三度の瞬時加速で今度は正面から操縦者がいるであろう位置に青龍刀を突き刺そうとするタウの飛龍。
だがゼオライマーのバリアを貫通することができずにわずかの間、タウの飛龍はその場に停止してしまう。しまったと思うまもなくゼオライマーの巨大な両腕が飛龍をとらえ抱きしめるように締め上げた。
とたんに偽装装甲が軋みとび、飛龍本来の装甲があらわになりゼオライマーと互いのバリアエネルギーを削りあう体勢となる。
『貴様、離せ!』
『ククク、近づけば何とかなると思っていたか?このまま締め続けるとどうなるかな』
『くそ、タウを離せ、デカブツめ!』
『おっと、もう一機のほう。うかつに撃つなよ。僚機に当たるぞ?』
抜け出そうともがくタウの飛龍が自機の射線に入る位置に調整され、妹のタウが巻き込まれるのを恐れて発砲できないアエンが攻めあぐねているうちにタウの機体のエネルギーは削られていき危険領域に近づき遂に機体が強制解除されてしまった。
『ぐううう!』
『おっと』
下の海に落ちていくタウの体を器用に掴み取ったゼオライマーがアエンの飛龍に向き直る。
『どうする?これ以上続けるならこいつも危ないぞ?』
手の中でタウをもてあそぶように告げるゼオライマーにアエンはこれ以上の交戦をあきらめた。この世の何よりも妹を大事に思う彼女には降伏するしか選択肢がなかった。
『あなたに降ります。私はどうなってもいいからからタウ、妹の命だけは助けて!』
『よかろう、では二人とも俺の駒になってもらう』
そう告げて、タウの体を持ってないほうの手をアエンの飛龍に差し出すゼオライマー。
『この手をとれ、俺のアジトでこれからのことをきっちりと「教育」してやろう』
『わかりました、私はシ・アエン。妹はシ・タウです』
『木原マサキだ』
会話の後にアエンの飛龍がゼオライマーの手をとるとその場から二つの機体は消え、後にはただ海が広がるだけであった。
次回『成果、クラス対抗戦と秘書』
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後、木原マサキは主人公です。