IS世界の冥王計画   作:なみ高志

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次話投稿します。


侵攻、ラウラ・ボーデヴィッヒ

 第十三話『侵攻、ラウラ・ボーデヴィッヒ』

 

 ラウラ・ボーデヴィッヒにとって織斑千冬は神に等しい存在である。ISに最適な兵士を作る計画によって生み出された人造人間でありながら、期待値に至らず欠陥品として廃棄寸前であったラウラを千冬は厳しくも熱意を持って鍛え導いてくれただけでなく人としての存在として扱ってくれた人だからだ。であるからこそ、第二回モンド・グロッソで起きた彼女の弟の誘拐事件の全てを彼女の輝かしい栄光の汚点であると考え憎悪した。事件を起こした犯罪組織『亡国機業(ファントムタスク)』はもとより、事件を防げなかった自国ドイツの警察や誘拐された当事者である織斑一夏にもその憎悪は向けられた。ドイツ軍人としての矜持により自国民への危害こそは与えなかったが亡国機業に対してはまったくの無慈悲さを示した。逮捕されたもの達に対する拷問、関連施設の破壊、支援組織の壊滅と己の手が届く範囲は全て執拗に潰し、一部にやりすぎの声が上がるほどに徹底して行った。

 有能であるが苛烈に過ぎるラウラに対して軍上層部は討論の上で彼女を代表候補生としてIS学園へ多額の寄付金と共に送り出すことに決定したのだ。ある種の左遷ではあるが崇拝する織斑千冬のいるIS学園へいけることはラウラにとっては喜びであり、またそこにいる織斑一夏への憎悪も向けられるとあれば否応もなく命令に従った。

 

 「貴様のせいで教官が!」

 

 そして転入初日の簡潔に過ぎる自己紹介の後に件の一夏を見つけ拳による制裁を図ったラウラであったがその意図は果たせなかった。

 

 「何ぃ!私の拳を受け止めただと!?」

 「何だか知らないけど、そんな殺気みえみえで攻撃してきたらそうなるだろ!」

 「殺気に反応したというのか、貴様ただの民間人ではないな!」

 「あー、まあうん。いろいろとあってな」

 

 一夏がラウラの拳を防御できたのは一撃必殺の威力を誇る近接武器、零落白夜を所持する白式の近づけなければ話にならない仕様を補うために箒やセシリア、鈴に葎らによる木原マサキ考案の訓練メニューによる実戦形式での訓練により近接戦闘の勘が鍛えられていたためだ。ここに至るまでの血と汗と反吐の日々を思うと苦笑する一夏であるが、ラウラはそれを誤解する。

 

 「しかも笑う余裕まであるとはな、私の見積もりが甘かったようだ」

 「いや、そうじゃなくてな」

 「だが、私も誇り高きドイツ軍人!必ずや貴様を全力でたおへぶん!」

 「ラウラ、席に着け」

 「あ、はい。織斑教諭了解です」

 

 千冬の振り下ろした出席簿の一撃を受け注意を受けたラウラは大人しく自身の割り当てられた席へ着席するも、その片方を眼帯で隠した目は一夏を睨み付けており、また何かトラブルを起こしそうであることはクラスの皆が予想し不安を募らせる。一方でクラスの一部ではほおを膨らまして睨みつける小柄なラウラの小動物めいたかわいさに密かにラウラシンパを形成しつつあった。

 初手を一夏に防がれたことにより本来の冷静さを若干取り戻したラウラは、まずは敵対勢力の一夏らの戦力調査を行う方針へと切り替えた。高いとはいえない対人スキルのラウラであったが上記のラウラシンパのクラスメイト達からの情報で放課後に一夏がほぼ毎日友人らと訓練をしていることを知ることに成功。その日の放課後に一夏達を尾行しその訓練の様子を確認したラウラは単独での制裁を困難であると判断せざるを得なかった。国からの事前情報で注意すべき学園関係者の顔は頭に叩き込んでいたラウラだが、一夏の訓練に関わる人間全てがその注意すべき人物たちであったためである。

 

 (IS開発者の妹にHD開発者の弟、特にこの二名との敵対は避けねばならんな。私闘で一夏に制裁を加えればこの両名は必ずやその報復にでる。その報復が直接私に来るならばともかく姉や兄に頼みごとでもされれば我がドイツに被害が及ぶことになる)

 

 軍人としての冷徹な思考から箒と葎が束やマサキに訴えかけ、ISとHDに関してドイツへの使用禁止を含む何らかの報復措置を取る可能性を危惧したのだ。

 

 (となれば何らかの公式の場での試合等を利用し一夏に決定的な敗北感を植えつけた上で心を折り腑抜けにしてやろうではないか。そうなれば友人や肉親もいずれは奴から離れていくであろうし、そうなれば自分の好きに料理できるというものだ。どこかの組織で私のように実験素材にされるのもいいかも知れん)

 

 そう考え暗く笑うラウラであったが、学食で最近味のあがったと評判の酢豚セットをほおばりリスめいてほおを膨らませて食べていたときのため本人は意図してないが周囲をほっこりさせており、知らずに学園内でシンパをまた増やしていた。

 

 「学年別タッグトーナメント?」

 「うん、今月の終わりに希望者を集めてやるらしいよ。あ、でもクラス代表は強制参加だってさ」

 

 ある日の晩、ラウラはルームメイト兼クラスメイトのシャルロットからその話を聞いたラウラはこれだと思った。この大会を利用して一夏を圧倒してしまえばいい。よしんば当たらずともラウラがその大会で優勝してしまえば己の優秀さを証明できるであろうし、その立場を利用して一夏に干渉して色々と奪い取り最後に抜け殻のようにしてやれる。

 そこまで考えてラウラは自身と組むに値するものがいるだろうか?と考える。

 織斑一夏はなかなかに強いし、恐らくはあの放課後の訓練メンバーの中で組むと考えると連携も侮れないであろうと踏まえれば経験豊富なものと組めればいいが素人に毛の生えた程度のものと組まされてはなかなかに厳しいだろう。

 そう、生むむと悩むラウラにシャルロットが声をかける。

 

 「でね、もしラウラが興味あるならボクと組んででてみない」

 「ん、お前は一夏の奴らと訓練してるなら、そこで組むんじゃないのか?」

 「葎くんが出ないって言ったら、残りの三人が誰が一夏と組むか揉めだしちゃってね。ほらボク新参だからさ、強く言い出せなくてね。で自分の実力を示しておくと今後がやりやすいかなってね」

 「成る程、お前の腕なら問題ないだろう。ではシャルロットよろしく頼む」

 

 そういってどこか企みのある暗い笑顔を互いに浮かべ握手をする二人であった。

 果たして無事学年別トーナメントは終わるのであろうか?

 

 次回『混迷、学年別トーナメント』

 

 

 

 

 

 




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