第十五話『崩壊、中国新都心』
大気土壌等の汚染を引き起こし、政府機能を移転した中国の新都心は今戦火に包まれていた。年の初めから各地で頻発した暴動や反乱の鎮圧に失敗した結果逆に各地の軍閥やIS乗りたちの連合軍に侵攻包囲されているのだ。
政府関係者とその親族の関連企業を優先的に遷都させたため包囲している側から見れば都市全てが倒すべき政府側の存在であるという認識のためか次の主導権に備えてか一気に中枢を狙わずにじわじわと包囲の輪をを締めていく戦法を取っておりいずれは落ちるであろうが、まだ時間はかかるだろうと包囲側は考えていた。
突如空中に現われた白い大型HDによりその前提は崩された。
ISの瞬時加速のように高速での移動ではなくその場所に今現われたような出現に包囲側は驚きつつも誰何の声と銃口を向けることは忘れなかった。
『俺の目的は中国政府指導部にある。邪魔はするな』
共通回線にて発せられた言葉に一部のものは春ごろから出現の報告を聞く、突如現われては犯罪組織を壊滅させている白い大型HDの情報を思い出し、静観するように周囲に伝えるが情報を聞いてない若しくは信じていない一部のものが発砲してしまった。
『愚かな』
一言告げた白い大型HDの両手の甲にはまる玉から極太の光線が一条ずつ照射され発砲者を周辺ごとなぎ払う。
兵士は蒸発、HDは大破し戦闘不能に回避できたISもかなりのエネルギーを消費させられる結果に包囲者たちは戦闘の継続を見送る結論に至ったのかその場から後退していった。その様を無機質なモノアイで少しの間見ていた白い大型HDは中国首脳部の立てこもる施設へと向き直り宙に浮遊したままゆっくりと進んでいった。
途中で散発的な政府側の反撃が行われたがいずれも白い大型HDの発する極太の光線に沈黙させられていき、遂には目的の施設へと到着してしまった。緊急事態に備えて他の施設とも隔離された施設は周辺に中国製のIS数機にHDのランスターやバーストンが数十機、武装した兵士、私兵が数千程を擁する要塞になっていた。
『中国政府首脳部に告げる。度重なる中国政府の一部のものによるIS学園に対する破壊活動を目的とする侵入行為に対する制裁を行いに来た。大人しく関係者を差し出せばよし、さもなくば同罪とみなす』
隠れることなく堂々と宣言する白い大型HDに対して、施設は暫くの沈黙のあとに複数のHDやIS、旧火器による白い大型HDへの一斉攻撃で応答した。
『よかろう。ならば冥王の裁きを受けるがいい』
攻撃を全てバリアで相殺しつつ白い大型HD、ゼオライマーが動く。胸部が展開し中から手の甲にはまる玉と同じ色をしたやや大きめの玉が露出する。ゼオライマーはその玉の前に両手の甲にある玉を近づける。
「ゼオライマーよ次元連結システム、最大稼動。メイオウ攻撃を前方施設に放て」
コクピット内でのマサキの指示を受けたゼオライマーは両手と胸部の玉を輝かせ
メイ、オウ
とうめき声をあげた。
瞬間、前方施設が光に飲み込まれる。光の内部にいたものは有象無象の区別なく次々と消滅していく。HDやISはわずかに対抗していたが光から逃れる前に消滅していき、わずかに搭乗者が断末魔を残す時間だけを稼いだ。
光が収束し消滅した跡は光の発生位置から半径500mには何も存在せず、大地もクレーター状にえぐれ取れていた。ゼオライマー自体はバリアの影響で無傷。とはいえ数分ほどはゼオライマーのセンサー類はメイオウ攻撃の影響で正常には稼動できない。
『束、周囲の動体をそちらでモニターしてくれ』
『おっけー。んー、あっISの反応が一つ遠ざかっていくね。ナビゲートするよまーくん!』
『了解。ゼオライマーよ束の指定する位置へ飛べ』
束との通信で生き残りの位置を特定したマサキはゼオライマーを飛翔させる。強力な複数のスラスターによるその加速は瞬時加速に近く、生き残りの位置まで肉薄する。
生き残りはシ姉妹の乗るISと同じ飛龍であり後方から迫るゼオライマーを振り切ろうとジグザグ飛行を続けるがその操縦技術はシ姉妹やIS学園に侵入してきたものに比べ数段稚拙なもので追いつき捕獲するのは容易なことであった。
後方からゼオライマーの抱擁を受け、機能を停止させ飛龍の操縦者を落下前にゼオライマーでつまみ上げその顔を確かめる。
件の女尊男卑主義の指導者の特徴情報と一致するのを確認したマサキはゼオライマーで掴んだそれが何かわめき散らしているのを無視して告げる。
『貴様への判決はすでに決定している。好きなだけ泣き叫べ。そして死ね』
徐々に力を加えるゼオライマーの手の中で女性指導者は最期までもがきながら圧死した。
『束、こちらの始末は完了した。これより帰還する』
『まーくん、おつかれさまだよ!くーちゃんも大分がんばってくれたよ!』
『くーちゃん?ああこの前の潜入した奴か大分教育してやったが使えそうか?』
『いやあ、ずいぶんと素直でいい子だよ!ありがとね』
『気にするな。束も少しは人と付き合うことも覚えんとな』
空中を移動するゼオライマーの中で会話する二名をコールサインが遮る。IS学園にいる秘書からのようだ。
『マサキ様、国際IS委員会の沖様から至急とのことで一報させてもらいました』
『ああ、あいつか。構わんこちらに回線をまわせ。束、また連絡する』
『おっけー、まーくんは人気者だね、じゃあね~!』
マサキが束との会話と終え、美久からの回線に繋ぐと男性の声が響いてくる。
『マサキ!この前から各地に現われる白い大型の機体はお前の仕業か?こちらに何の報告もないぞ?』
『それがどうだというのだ?お前らはISのお守りでもしていればいいだろう。HDにお前らが何の権限がある』
『発表当時のスペックでは再現不能なのは調べがついている。貴様、わざと低い完成度のものを見せたな』
『馬鹿が。技術は日進月歩だぞ?二年あればそういうこともあるだろうさ。何か問題があるなら上の国連にでも掛け合ってみればいいだろう?そのうち何か結論を出すかも知れんぞ』
食って掛かる男の声にマサキは嘲笑するような口調で応じる。
『用件はそれだけか?俺は忙しい。切るぞ』
『待て!マサキ貴様は何を考えている!?』
『今お前に説明して俺に何の得がある?俺の邪魔をするな』
そう言い残しマサキは回線を閉じ会話を終わらせる。
『美久。今後は直接の面談以外は適当に断っておけ。時間の無駄だ』
『はい、申し訳ありません。マサキ様』
『いい、伝えてないことだったからな。それよりまもなくそちらに戻るから準備しておけ』
『分かりました。お帰りをお待ちしています』
会話を終了したマサキはゼオライマーを操作し、帰還の準備を整える。
「そうとも冥王計画の邪魔は誰にもさせん」
誰にともつぶやくとゼオライマーは姿を消し、首脳部の壊滅した中国はその日から内戦状態へと突入した。
次回『伝授、次元連結システム』
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そろそろ原作ルートから外れていくかもしれません。