IS世界の冥王計画   作:なみ高志

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新年初投稿します。


伝授、次元連結システム

 第十六話『伝授、次元連結システム』

 

 木原葎は嘆息をついて一夏、ラウラ、シャルロットの三人をIS学園の自室で出迎えた。

 

 「で、頼みごとってなんだい一夏?」

 「いや、どういっていいかわかんないから、順を追って話すぞ」

 

 ルームメイトに暫く部屋をはずしてもらい語り始めた一夏の話は先週に行われた学年別タッグトーナメントに遡るらしい。準決勝であたった一夏・箒コンビとラウラ・シャルロットコンビの戦いは終盤に暴走したラウラの機体、正確にはその機体に密かに搭載されていたヴァルキリートレースシステム(以下VT)が追い込まれたラウラの精神状態に反応して発動したことで試合続行不可能として没収試合となった。そして暫定でもう一方の準決勝を勝ち抜いていた四組の日本代表候補生と一組生徒とのコンビが暫定優勝として幕を閉じていた。

 その没収試合の際にVTに取り込まれて意識のないラウラを一夏を軸に、箒、シャルロットらが協力して救出した事がきっかけで四名の間に友情めいた絆が生まれたらしい。そして今日の夕方に自室でシャルロットがルームメイトであるところのラウラに泣きながらとあることを訴えてきたが、自身では解決策が見つからず教員である千冬にも相談ができない事であったために一夏に二人で相談をもちかけた。一夏もよい解決策が見つからなかったので、親友の葎を頼ってきて現在に至るということらしい。

 

 「つまり、シャルロットはマサキ兄さんの研究を何かスパイしにきたと」

 「そう睨むなよ葎、シャルだってそれが悪いことだと思ったからこうして打ち明けてくれたんだしさ」

 

 不快な表情の葎に一夏がそうとりなす横でシャルロットはうつむきながらぽつぽつと語る。

 

 「ボクは社長、サイガ兄さんの役に立ちたかったんだ。でもみんなと、一夏たちと一緒にいるうちに自分のしてることがみんなを裏切ってることじゃないかなって、思いだして。これ以上黙っているのが、耐えられなくて、でもサイガ兄さんのことも大切で、もうボクはどうしたらいいのか、頭の中がぐしゃぐしゃで」

 

 そこまで伝えるとシャルロットは顔を両手でふさいで静かに泣き始めた。そんなシャルロットの肩をさすりながらラウラが葎に言葉をつなげる。

 

 「軍人としての私はシャルのしようとしたことは許されないことだと考える。だがシャルは私の友と呼べる最初の人なんだ。何とか助けてやりたい。嫁の親友、木原葎よ。どうか私からも頼む。シャルを助けてやって欲しい」

 「いや俺は嫁じゃないぞ、ラウラ」

 「何だ嫁は照れ屋だな」

 

 学年別タッグトーナメントの数日後にラウラが一夏のことを『一夏は私の嫁』宣言した後その唇を奪った事件が記憶に新しい葎であったが、そのことは一旦頭の隅に追いやり思考を続ける。

 暫くの沈黙の後に葎は顔を上げる。

 

 「少しの間部屋の外で待っていてくれないかな」

 

 そう葎から告げられた三人は素直に従い暫く廊下で待機すると、部屋から葎が出てくる。

 

 「今から兄さんの迎えが来るから一緒に行こう」

 「葎、それって大丈夫なのか」

 「僕が君たちを悪いようにすると思うならここで帰ってもいいよ?」

 「馬鹿なこというなよ、お前がマサキさんに何か言われないかってことだ。…二人も葎と俺を信じてくれるか?」

 

 ラウラとシャルロットは一夏の言葉に無言でうなづく。まあ惚れた相手の言葉とそうなるよねと葎は心の中で苦笑。

 少しの間、葎の部屋で待機していた四人にドアからのノックが聞こえた。

 

 「氷室です。葎様はいらっしゃいますか?」

 「どうぞ、氷室さん」

 

 ドアを開けてマサキの秘書、氷室美久が入ってくる。

 

 「早速ですが、表に車を停めてますので乗車前にこれをつけていただき、私がいいと言うまで外さないでください」

 

 手にした鞄から美久がアイマスクとヘッドホンを人数分とりだす。

 

 「マサキ様の居所はあまり公にはできませんので、了承いただけなければお連れできません」

 

 四人はその言葉にうなづき、アイマスクとヘッドホンを受け取った。

 

 

 「ようこそ、大体の用件は葎から聞いたぞ」

 

 暫くの後、指示に従った一夏らは某所にてマサキと対面していた。

 

 「サイガ・デュノアの名は俺も知っている。なかなかの傑物と考えている」

 「あ、ありがとうございます」

 

 緊張しつつもシャルロットはマサキと正面から対話を試みる。

 

 「葎の頼みであることだ。暴力的解決も図らない点も良いだろう。で、お前は俺に何を出せる?」

 「代償、ということですか」

 「そうだ、研究成果は俺にとっては体の一部のようなものだ。葎をよその家にやれといわれて素直にうなずけないのと同じことだ」

 「…デュノア社からの資金と技術の提供。後はボク自身です」

 「ほう」

 

 少しの逡巡の後にそう告げたシャルロットにマサキは感心の言葉を返す。

 

 「つまり、おまえ自身が俺のモルモットになっても構わないと?」

 「そうです。それで吊り合うかは分かりません。でもボクにできることは何でもします」

 「いい覚悟だ。だが後ろのお前の友人たちは不満そうだな」

 

 マサキの言葉にシャルロットが後ろを向くと、何かいいたそうな三人の顔があった。

 

 「みんな心配しないで。ボクは大丈夫だよ、これくらいの代償は覚悟してるよ」

 「でも!」

 「まあ、待て。ここは一つ提案しよう」

 

 シャルロットにいいつのりそうになる一夏をマサキが手で制して告げる。

 

 「俺の研究成果の一つ、まだ未完成であるが恐らく世界を変えるだけのあるものをシャルロットに渡す。その代償としてデュノア社との協力関係の構築とここの四人が俺の実験に必要なときに協力する、というのはどうだ?」

 「そんな!ボクだけにしてください!」

 「いや、その条件でいいです、マサキさん」

 「嫁の言うとおりだ、それでいい」

 「一夏!ラウラまでそんなことする必要はないよ!」

 

 マサキの言葉にうなづく一夏とラウラにシャルロットは反論するも両者は笑って答える。

 

 「私は友を助けたい。ならば答えは一つだ」

 「俺たち仲間だろ、シャル。それに分担すれば負担も軽くなるぜ」

 「まあ、一夏ならそういうだろうと思ったよ。僕も構わないよ兄さん」

 「みんな…ありがとう、ほんとにありがとう」

 

 あふれる涙を抑えるシャルロットの肩を優しく叩くラウラと一夏、それを暖かく見守る葎。

 その光景を見てマサキも笑う。

 

 

 実に好都合だ、と。

 

 

 「では納得もしたようだなシャルロット。このメモリを受け取るがいい」

 

 控えていた美久がシャルロットにデータ記憶媒体を手渡す。

 

 「このなかに何が?」

 「俺の考案した次元連結システム、その現段階での詳細だ」

 

 笑顔のままにマサキはそう告げた。

 

 

 次回『解析、織斑一夏の秘密』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




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