IS世界の冥王計画   作:なみ高志

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次話投稿します。

補足追加しました。

補足 国際電脳:この世界の電子部品の約半数を製造している世界的企業。
 中国の古くから続く政商一族の現在の生業。
 現国際IS委員会の委員も何かしらこの企業とのつながりを持つものがほとんどである。


暗躍、国際IS委員会の闇

第十八話『暗躍、国際IS委員会の闇』

 

 スイスの某所、国際 IS委員会本部にてとある合議が行われていた。

 最上座に座る一名の女性とその後ろに控える美形の男性以外は全て投影モニター上に映る姿であるが『白騎士事件』直後にISの利用目的と拡散防止のために締結されたアラスカ条約に名を連ねる21カ国の代表たちだ。

 

 『…国連ではやはりIS学園弾劾の決議は取れませんでした』

 

 恐縮した様子で一つのモニター越しに初老の男性がその場に報告する。

 

 「やはり常任理事国の思惑が揃わぬと役に立たんな」

 『ハッ、まことに申し訳なく!特にフランスの反対が厳しく様様な手を使いましたがどうにも首を縦に振りませんでして、ハイ!』

 「加えて、中国での騒乱についての決議を優先ということか。まったくわが姉ながら使えぬ奴だったな」

 

 冷酷にそう告げる最上座に座る未だ若く怜悧な美貌の女性に参加者たちは一様に緊張の色を隠せなかった。

 委員会発足後、急速に広まった女尊男卑主義の波を利用し前任者を放逐して以来、国際IS委員会は彼女、幽羅(ゆうら)永世委員長の絶対支配下にあった。彼女が眉をひそめれば、この中の誰かの首が飛ぶことになることは彼ら参加者は身に染みていた。

 現中国政府創立期の混乱を生き延び、世界規模の企業となった『国際電脳』、その創立者の血族にして現総帥でもある幽羅は生まれついての支配者としての気風をモニター越しに会議参加者に見せ付けつつも、次の報告を聞く。

 

 「中東で妙な動きがあると?」

 『ハッ、○○国の国立化学研究所での資材納入量が急激に上がりまして、目下手のものに詳細を調べさせております。何らかのISに関わる薬物を研究ないしは製造していると思われます』

 「ふん男尊女卑の石油成金どもめ、大人しくしていればいいものを…。よい、その研究いかんによっては対応を決定する。その時我ら委員会の決議に従えばよし、さもなくば『亡国』に始末させよう。励め」

 『ありがたきお言葉。粉骨いたします』

 

 その後も各委員の報告を聞き、対応を決定して合議は終了し各委員のモニターは消えてその場には幽羅と彼女の座る席の後ろに控える男性のみになる。

 

 「お疲れ様です、幽羅様」

 「これも世界を動かすものの務め、仕方ないわね。第三回モンド・グロッソもまもなくだし気は抜けないわ」

 「幽羅様ならば、必ずや成し遂げましょう。幽羅様の君臨なさる新しき世界のために私も勤めます」

 「ありがとう耐爬(たいは)。分家のお前達の力もあてにしているわ」

 

 そういって幽羅が差し出した白い手を耐爬爬その場で片膝をついて己の両手でそっと受け取り幽羅の手に口付ける。

 

 「恐れながら、何か憂いごとがあるのではないでしょうか?」

 「わかるか?奴、木原マサキの件よ」

 「あの沖委員の報告にあった白い大型HDの件はやはり木原マサキが噛んでいるとお思いですか?」

 「あの男はただIS学園の理事だけに納まっているような男ではない。必ずや何かを企んでいるに違いないわ」

 

 幽羅は過去を回想する。

 彼女が木原マサキに会ったのは国際IS委員会のまだ永世ではない委員長として就任した時の懇談会の席であった。

 幽羅の権勢を示すべくスイスの某有名ホテル一つ貸し切りで行われたそれの招待客、第一回モンド・グロッソ総合優勝者の織斑千冬の同伴者としてマサキはその場に来ていた。

 参加者の中ではまだ年若くありながら千冬に擦寄ろうとする者たちを物怖じもなく対応して寄せ付けない姿に興味を惹かれた幽羅はマサキたちに声をかけた。

 

 「ようこそ織斑様に木原様、幽羅です。お楽しみいただけてますか?」

 「開催者と開催地は問題ないが、客層はひどいものだな。地位と品性は別物だというのが良く分かる」

 

 そう真顔で返し、隣の千冬に肘鉄を受けるマサキに幽羅はより面白みを覚え、懇談会の後に手のものを使い正樹のことを調べさせた。そしてその性格はともかくも才能はかの篠ノ之束にも劣らぬものであると判断した幽羅はマサキを部下として迎えることを決定し、彼をこの委員会本部の一室へと呼び出した。

 

 「評価は嬉しいが断る」

 

 久しく聞かない拒絶の言葉に幽羅は己の頭に血が上るのを意識しつつも、マサキに問い詰める。

 

 「理由を教えていただけますか?私の部下となればそれこそ一地域を支配することすらも成果次第で可能よ」

 「その上に貴女を頂けというのかな。俺の主は俺だけでいい、俺を操ろうなどと思うな。それが理由だ」

 

 短い言葉にあるマサキの己への絶大な自尊心に幽羅は、笑みを強くする。

 この男、やはり欲しい。と

 

 「飴で来なければ、鞭を使うことも出来まるわよ」

 「ふん、『白騎士事件』で集めた連中を使うか?成らば、その事を公にしたらどうなるかな?」

 

 笑みを浮かべつつも幽羅は驚嘆していた。

 『白騎士事件』、何者かによりハッキングを受け日本に向けて各国のミサイルが発射されそれを後に『白騎士』と呼ばれる一機のISで全て迎撃した事件のことであり、この事件はさまざまな事態を引き起こした。

 その中でもマサキが幽羅に告げたのは世間一般には広まってない事実、『白騎士事件』による責任を理由に解雇左遷された軍人や政府関係者等を幽羅が好条件で引き抜いて手駒とした事を言っているのである。

 その大半は国際電脳の社員や国際IS委員会の職員となっているが、一部のものは裏で幽羅の覇業を進める為の兵士達となっている。

 その存在を知るものは彼らをこう呼ぶ。『亡国機業(ファントムタスク)』と。

 

 「成る程、それでは今はうかつに動けないわね。『今』はね」

 「そうだな、いずれ『決定』する。それでよかろう?」

 「覚えておいて、私は決定を覆したことは一度もないの」

 「奇遇だな、俺もだ」

 

 

 回想から現状に戻った幽羅は思う。あの男を、木原マサキを己の下に跪かせた光景を浮かべ笑みを深くする。

 

 「予感があるの。あの男を屈服させたときこそが、私の支配が完成すると言う予感がね」

 「ではその日のために、我らを存分にお使いください」

 「そうね、ではまず始めに」

 

 幽羅は傅く耐爬の顎にほっそりとした手を当て表を上げさせる。

 

 「今晩の相手をなさい。幾分滾りましたわ」

 「お心のままに、わが主」

 

 耐爬は己の心に生じたわずかな嫉妬心、木原マサキへのそれを表情に出すこともなく、己の主に微笑で応じる。

 果たしてこの方があの男に向けるのはただの対抗心や敵愾心だけなのだろうか。

 そう自問するもその答えを幽羅へ尋ねることへのためらいに己が彼女をここまで愛していたことへの驚きがあった。

 私はあくまで主のために尽くす、それでいい。

 そう自分に告げる耐爬であった。

 

 次回『炎上、夏のある日に』

 

 

 

 

 




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