補足 音響グレネード:ISの武装の一つ。ISのセンサーに最も影響する周波数を放射する装置で対IS用に開発された。
至近距離で発動させなければ影響がほぼ無いという欠点があり、高速で移動するIS同士で無ければ有効性が薄い。
第二十五話『進化、シャルロット・デュノア』
どうしてこうなった?
亡国機業の一実働部隊を率いる女性は自問する。
なぜ自分はこの場所でデュノア社の新型ISと対峙しているのかと。
二年前までは彼女はデュノア社のISテストパイロットとして順風の人生を送っていた。が、彼女を引き立てていた社長夫人が不慮の事故で死亡して以来風は逆風に変わった。
新社長として後を継いだ社長夫人の息子であるサイガ・デュノアに社長室に呼び出され、解雇を言い渡されたのが決定的であったといえる。
実際、それまでの彼女は私事による無断欠勤、社長夫人のバックがあることをにおわせたパワハラ、会社経費による豪遊散財を行ってきた上に社長夫人個人の依頼で様々な裏工作にも携わっていた。
加えて我が強く女尊男卑主義とくれば社内での弁護の声も無く、むしろ率先して社内での悪行を新社長の秘書であるロクフェルに告発されるほどであった。
「一応、亡き母の責任も多少は考慮し自主退職ということにしておく。即刻去りたまえ」
そう告げられ、頭に血が上った彼女はサイガに襲いかかろうとしたが背後に控えるロクフェルの存在に思いとどまる。
サイガの秘書兼ボディガードとしての彼女は自分よりも強者であり、何度かの手合わせをしたこともあるがISを使おうと使うまいとロクフェルに勝利したことは一度もなかったからだ。
そうして、贅沢に染まった彼女からすればわずかな、一般的には充分な退職金と引き換えにデュノア社との一切の絶縁を言い渡され、彼女は荒れた。
同じようにデュノア社を追放された社長夫人派閥のものたち、大半は女尊男卑主義者の女性、を集め女性権利団体を結成し企業や政府にデモと抗議、風評などを利用した恐喝行為を行いその金で豪遊する生活を送っていたが、そんな生活は長くは続くはずも無かった。
ISの性能を背景にした女尊男卑主義は、後追いでやってきたHDの存在により徐々に崩壊しつつあったからだ。
特にHDの独自開発に成功したデュノア社の影響もありただISに乗れる性別であるから優遇せよ、という彼女らの団体の主張はわずかな金銭か、HDの警棒を持って追い払われるようになった。
そんなときに多額の資金提供と年に数度、こちらの言うことを聞いてくれるだけでよいという申し出に彼女らが亡国機業というテロリストに鞍替えするのに然程の抵抗も無かった。
そうして今回彼女達は亡国機業の上層部の使者を名乗る金髪の美女から一機のISと数台のHDを与えられ、デュノア社の研究所から機密を強奪する任務を言い渡された。
「先に襲撃した別グループがいましたのでご注意ください」
そう告げる金髪の女性を鼻で笑い、成功は約束されたものだと広言する彼女。
「そんなISも操れない奴らとは違う。成果をまっていろ」
二年前まで最新の機体、今はラファール・リヴァイブと呼ばれる機体のテストパイロットであった自信と研究所内部もかつて知ったるものであることが合わさり彼女は成功報酬を自分達が受け取る未来を疑わなかった。
が、その結果は彼女の想定とはまったく異なるものであった。
敷地こそ彼女が知るものと同じ場所にあったが、対ISを意識した強力な自動防衛装置群に分厚い複合装甲の障壁、自社製HDのガロウィンとブライストによる警備部隊等の連携により彼女の乗るラファール・リヴァイブ改は仲間達と分断され、IS運用実験に使われる巨大地下ドームへと追いやられていた。
そこに待ち構えていたのがデュノア社の新型ISラファール・ファントームに乗るシャルロット・デュノアであった。
『ようこそ、賊の人。早速だけど投降するか、死んでくれない?ボクも暇じゃないんだ』
『なめるな、小娘が!』
リヴァイブ改が素早くライフルを構え、射撃を加えるもファントームは瞬時加速で間合いを取ると同時に回避する。
『丁度いい、その機体を手土産にしてやるよ!』
『無理だよ、おばさん。ボクに勝てるわけ無いでしょ』
『このクソ餓鬼が!躾けてやるよ!』
ヒートアップするも彼女にも勝算はある。このリヴァイヴ改には充分以上の兵器弾薬が拡張領域に内蔵されており一対一ならばたとえ新型ISであろうと制圧できると踏んでいるからだ。
事実連射に継ぐ連射でファントームも全弾回避とはいかずいくらかの命中でシールドエネルギーを削られている。
『成る程、それなりの腕はあるということか。じゃあこちらも遠慮なくいけるね』
『ほざけ、お前も手土産にしてやるよ!』
射撃を続けるリヴァイブ改に瞬時加速でファントームは間合いを更に開ける。とファントームの肩装甲の形状と色が変わる。知るものが見れば、その蒼い肩はブルーティアーズのものに酷似していると気がついたであろう。
その肩から二機の何かが射出され、リヴァイブ改の左右に展開しレーザー攻撃を開始した。
予想しない攻撃に直撃を受けるリヴァイブ改は大きくシールドエネルギーを減らされる。
『ビーム攻撃だと!?そんなものを開発していたとは!』
『まあ厳密には違うんだけどね。どうせおばさんはここで終わりだし、説明はしないよ』
『なめんじゃあないよ!小娘!』
怒りの咆哮と共にリヴァイブ改はライフルをしまい、即座に多弾頭ロケットランチャーを構えロケットを射出する。
腐ってはいるが元テストパイロットは伊達ではないその攻撃にファントームは両腕をかざす。
再び色と形状が変わる。
今度はシュヴァルツエア・レーゲンに酷似した黒い両腕からワイヤーブレードが射出されロケットの大半をなぎ払い誘爆させてダメージを軽微にとどめさせた。
『やっぱりラウラみたくはいかないか、難しいなこれ』
『クソッ、一体何だよ!その機体は!』
『サイガ兄様の作ったラファール・ファントームだよ。すごいでしょ?』
ラファール・ファントームは今現在においては性能は元には劣るものの取り入れたデータがあれば複数同時展開を瞬時におこなうことを可能としており、シャルロットの才能もあわさり元のコンセプトである万能型戦闘ISを実現させつつあった。
『これできるようになったの最近何だよね。そこに丁度いい実験体が来てくれるってことだから、実はちょっと楽しみだったんだ』
屈託の無い笑顔でそう告げるシャルロットに彼女は愕然とする。
つまり今日彼女達がこの研究所を襲撃することは事前に漏れていたということであるからだ。
『一体誰からの情報だよ!』
『え?それを知ってどうするの?おばさんはここで終わりなのに?』
心底不思議そうな表情のシャルロットに彼女を殺すかもしれないことへの罪悪感が読み取れなかった彼女は恐怖した。
こいつは私を殺しても何も感じない、その恐怖が彼女に逃走を選択させた。
地下巨大ドームは出入り口は二箇所、ファントームの背後と自分の背後にあるのはテストパイロット時から変化なしなのは確認済み。シールドエネルギー残量も四割程度、ならば自身の背後への逃走が可能であると判断した彼女はそのように動く。
拡張領域内から音響グレネードを両手に取り出しファントームに投擲、ふり向いて逃走を図るリヴァイブ改の視界にいつの間にか床からせり出した装置が出入り口前にあった。
二つのの音叉を対にした形状の何らかの射出装置めいたものがこちらを向いているがリヴァイブ改に乗る彼女からすれば背後のシャルロットが復活してしまうことのほうが恐ろしいと見え、そのまま瞬時加速を使用して駆け抜ける耐性に入る。
そのまま装置をすり抜け出入り口に到達出来ると彼女が思った刹那に装置の対になった音叉上のものの間に光が集まり周囲にあふれる。
途端、装置を含める周囲の全てが崩壊を始めるのがシャルロットには視認できた。
そして光が収まると装置周辺のものおよそ半径20mが消失していた。無論リヴァイブの反応も消え去ってた。
『すごいな、サイガ兄様の原子核破砕砲『プロトン・サンダー』は』
シャルロットはただ嬉しそうにそうつぶやいた。
次回『不動、更識簪という女』
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アニメ幼女戦記面白いですね。