補足 HDプロテクター:HD搭乗者が身体保護のために纏う防護服。衝撃吸収力に優れるが生命維持装置等はついていない。HD緊急脱出時の衝撃緩和と戦闘時の搭乗者保護が主な目的。
第四話『決定、クラス代表と冥王の鼓動』
観客たちは唖然としていた。
生徒同士の模擬戦とはいえ、ISがHDに敗北を喫したという事実に言葉を失いただ試合場を見つめていた。
その静まり返ったISアリーナの試合場ではセシリアが自機を待機状態に格納してたちあがり、葎の乗るローズセラヴィーと対峙する。
「はあ、まったく見事にやられましたわね。あんな高出力レーザーを両手に搭載できるとは思いませんでしたわ」
『第三世代ISに勝負するには、あれくらいはしないと勝ち目はないよ。それより体のほうは大丈夫かい?』
「ええ、レーザーをライフルに貫通させてくれたおかげで危険域にはいたってませんでしたわ。とはいえしばらくは戦闘には使い物になりませんわね」
『なら、これからもよろしくオルコットさん』
「セシリアでよろしくてよ、律さん」
両者の交わす声色に険はなく、むしろ互いへの親しみを感じさせた。
「では、次の一夏さんとの試合がんばってくださいませ」
『うん、ありがとうセシリア』
そう告げてともに礼をしてと試合場を後にする両者に、我に帰った観客たちは遅ればせながらの拍手で見送ったのであった。
その後試合場の整備等に暫しの時間をおき、一夏対葎の試合が始まる時間となり両者は再び試合場で対面した。
『ねえ一夏この試合だけど提案があるんだ』
『ん?何だよ葎、棄権するとかいうなよ?』
『違うよ、僕のローズセラヴィーにはまだ一番の武器があるんだけど、正直ISにそれを当てるのが難しいしけど、かなりの火力で手加減がきかないんだ。でもそれはレーザー兵器だから、君の武装「零落白夜(れいらくびゃくや)」だっけ?それなら打ち消せるだろ』
『おう、白式のエネルギーをすげえつかうけどな、ああつまりそういうことか』
『そうだよ、まあ君が好きな言い方で言うと「次の一撃で決着をつける、俺の最大の攻撃凌いで見せれば貴様の勝ちだ」って感じかな』
『お、いいねそういうシンプルさ!その話乗ったぜ葎。俺も正直、そのローズセラヴィーの装甲削りきるのはきつそうだなって思ってたし』
『じゃ、用意ができたら声をかけてよ』
『おう、ちょっと待っててくれよ』
そういうと一夏の白式は試合場の空中に舞い上がり、観客席が自分の背後に来ないであろう位置を見定め、その場にて零落白夜を構える。葎の性格を知る一夏は次の攻撃がまぎれもなく高火力であり、自分が反射的に避けてしまい射線にあったものを巻き込まないようにと考えたからだ。
「一体、どんな攻撃なんでしょうか?織斑先生」
「さてな、それは設計者に聞いてみたほうが早かろう、なあ木原理事?」
「えっ、ひょわわ!」
ISアリーナの管制室で対話していた山田真耶が振り向いた織斑千冬の視線を追った先にはいつの間にか木原マサキがにやりと笑みを浮かべ腕を組んで扉によりかかっていた。
「えっえっ?いつのまに?」
「相変わらずの慮外な感知能力だな千冬、まあ見ていればわかるが会場のシールド出力は最大にしておくことを勧めるぞ」
「ふん、束ならいざしらず体の動きでおまえには劣らんよ。それより山田先生、シールド出力を最大に」
動揺収まらない真耶であったが千冬の指示に従いすぐさまシールド出力をコンソールで調整した。
そして試合場を覆うシールドがより輝きを増してしばらくの後、一夏が葎に声をかけた。
『よしこい葎!凌ぎきってやるぜ!』
『いくよ一夏、その剣を手放さないようにね』
ローズセラヴィーの背面にあったブースターが分離し前面に回り、ブースター上部を前にした状態で再度ローズセラヴィーに接続される。とブースター上部が展開し中からローズセラヴィーのモノアイに似た球体が現れエネルギーを帯び発光を始めた。その光は徐々に光量を増していき。
『Jカイザー!』
葎の掛け声とともに極大のレーザー光線となり一夏の白式を目掛けて発射された。
光線が白式を飲み込み、試合場のシールドを焼きその厚みをじりじりと減らしていくその光景に観客たちは悲鳴とともにその光に目をくらまし続けた。
これではいかな新世代ISでも、そう観客たちは思いつつも光線が収まるのを待った。
十秒ほどの時間で光線は収まり、次第に目が慣れてきた観客たちが目にしたのは、消失寸前になったシールドと表面装甲を多少融解させつつも宙に浮かび、零落白夜を構えている白式の姿であった。
『耐え切ったぜ、葎』
『そうみたいだね、僕の負けだよ一夏』
明るい笑みを向ける一夏に葎はそう応じた。
『試合終了!勝者、織斑一夏!』
かくして1-1クラス代表決定戦は各自一勝一敗の結果で幕を閉じた。
「千冬、お前の弟はなかなかのものだな」
「まだまだ、といいたいがその言葉は褒め言葉として受け取っておく。で誰を代表にする?」
「それはお前の決めることだろう?まあ…俺としては織斑一夏を推そう」
「少し前までは素人だった男だぞ。それでいいのか?」
「ふん、ISの代表候補生とHDの新型もちに結果を見せたのだ。伸びしろならば一番ということだ。そういうやつのほうが色々と結果をだすだろうさ」
そう千冬に告げるとマサキは管制室から出て行こうとする。
「何だ、弟に何か声でもかけてやらないのか?」
「悪いが今日中に片付けなくてはいけない用事があってな。明日にでもまた顔を出すから葎にはそう伝えてくれ」
「分かった。何か知らんが無茶はするなよ、マサキ」
「俺を誰だと思っている?俺は無茶だと思うことをしたことはない」
「お前の普通はあてにならんからいっているんだ」
やれやれという顔をした千冬とあわあわとした真耶を置いて管制室を出たマサキは人知れず酷薄な笑みを浮かべ通路に消えていく。
-- そう、ただの実験にすぎん --
マサキのその呟きを聞くものは誰もいなかった。
次回『降臨、ゼオライマー』
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