IS世界の冥王計画   作:なみ高志

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次話投稿します。


密談、生徒会長と理事

第七話『密談、生徒会長と理事』

 

 更識楯無(さらしき たてなし)は密かに緊張していた。

 IS学園にある生徒会室内に備え付けた応接セットである人物と対面しているせいである。

 その人物とは木原マサキ、HDの開発者であり、IS学園で今期から理事になった男であるからだ。性格は傲岸不遜、頭脳は明晰怜悧、かの篠ノ之束に開発と発明の分野で匹敵しうる人物と各方面で評されている。違う点で言えば束のような人嫌いの気はなく、人と会うことは厭わない様で各方面でのコネやシンパを有していた。加えていうなら対暗部用暗部である更識家の調べでは元々友人であった束とともにIS開発においても協力していたと見られる節があり、恐らくは今現在で束と連絡を取り合い新たに何かを計画している。

 それ以上の調査はしていない。もし天災二人に調べている事がばれ敵とみなされたらどういう目にあうかを考えるだけで恐ろしい。実際それをしていたとされる諜報員が組織ごと潰されたとか、それを指示した政治家や大臣が失脚、失踪したとかの噂は楯無の業界では深く浸透していたせいもある。ともかく敵とみなされないようにと楯無は心中に喫する。

 

 「本日は木原理事にここまでご足労いただいたこと誠にありがとうございます」

 「なに、問題はない。この部屋ならば盗聴の心配も要らないし手間も省ける。とりあえず報告を聞こうか」

 

 そううながされて、楯無の後ろで起立していた布仏虚(のほとけ うつほ)が報告を始めた。

 

 「本日0700時に、中国からの亡命者92名の全員の受け入れを完了しました。今は職員用マンションの一棟にまとめて滞在しております。事前にいただいた資料とあわせて人物の入れ替わりは見つかられておりません。これから72時間ほどかけて不審な動きがないかを見張り問題がないようであれば生徒と教職員としての生活に入ってもらう予定です」

 

 その後に逃走の経路や経過、その途中での出来事などを資料を交えて検分したのち、マサキはうなずいていった。

 

 「よろしい。付け加えて言うなら生徒の家族にも何らかの仕事を与えておくように。忙しくしていれば余計なことは考えないし、丁度『人事異動』の後だ、人手は足りてないだろう?」

 「あら、誰のせいだと?」

 「さてな」

 

 実際木原マサキが理事に就任する決定が告知される前後でIS学園内の教職員や事務員、警備員が様様な理由で大量に解雇や退職、失踪という形でこの学園から姿を消していた。理事会宛に送られたスパイや盗難、破戒工作の痕跡などの学園側に望ましくない所業の証拠情報が何者かによって送りつけられ、更識家でそれらを対処したからだ。

 楯無はその何者かが目の前の人物であろうと推測をつけ、そう問うたが本人に一切の揺るぎもなかった。

 確かに人手の不足は補えるし、72時間たって問題無ければ色々な心配なく働いてもらえるだろう。だがもしやするとこのことも彼らの計算のうちなのだろうかと考えると、楯無はぞくりと寒気を感じた。

 

 「…分かりました。ではそのように手配します。それと、彼らの受け入れの承認を取っていただきありがとうございました。同じIS乗りとして助けていただいて生徒会長としてお礼申し上げます」

 「フ、俺がそんな善人に見えるか?単に人材の無駄な消費が許せなかったし、弟の友人もいたからにすぎない。つまりは俺のエゴでやったことだ。礼は必要ない」

 「あら、身内にはお優しいのですね」

 「自分を慕ってくれる者を無碍にはできない。俺ならできることがあったからしたまでの事に過ぎんよ」

 

 そう答えたマサキに楯無は妹を思う自身と重ねて、彼に共感を覚えていた。最初の緊張が少しばかり緩んだのかマサキが生徒会室を退出する前にはぽつりと妹への心情をもらしていた。木原マサキがそのことを聞き逃すことも忘れることもなかった。

 

 

 同日の放課後、一夏、葎、箒、セシリアの4人は定例になりつつあるISアリーナ内での自主訓練をおこなっていた。主に一夏を自機IS白式に慣れさせるためであったが箒、セシリアに関しては一夏に惚れたので身近にいたいという思いもあってのことだ。無論、一夏本人にそのことは伝わっていなかったが。

 そして、当の訓練であるが箒の指導は自身の剣術がベースで『殺気の瞬間を見切り、体をかわす』等の常人からしたら理解の埒外であり、セシリアのそれはミリ単位での各挙動を指示するためにこちらも実現が困難なもの。結局HDに搭乗する葎が自身の覚えた動作マニュアルに従った挙動を一夏が模倣し、ISにしかできない挙動を箒とセシリアが対戦形式で一夏の相手をする形をとり、その対戦の感想戦をする形に落ち着きつつあった。

 

 「しっかし、葎の着てるHDプロテクターだっけ?かっこいいよなあ、なんかファンタジーものの騎士とかが着てそうなデザインでさ」

 「ああ、HDはISと違って絶対防御がないし、搭乗者の安全性を増すためには必要だろ。後元から軍事用だからね」

 「私たちのISインナーとはだいぶ異なるな、どうちがうのだ?」

 「説明いたしますわ!」

 「「知っているのか?セシリア」」

 

 ISインナーは搭乗者の動きをISコアに最適に伝達するための装備であり、HDプロテクターは搭乗者が機体破壊された場合も含めて戦闘能力を維持するための装備である。宇宙作業用として作られたISと元から地上軍事用と作られたHDのコンセプトの違いは搭乗者のこういった装備からも伝わってくる。

 

 「後付け加えますとISインナーで整列するのと、HDプロテクターでするのでは見栄えが違いますわね。後者のほうが格段によろしいですわね」

 「あ、そういうの割と大事なんだな」

 「当然だ、軍服というものは見た目でも自分を鼓舞し、かつ相手を威圧する必要もあるからな」

 

 和気藹々と話す4人の後ろからそう声をかけた男の声があり、振り向いた4人はそれが誰かを知る。

 HD開発者でありIS学園理事でもある男、木原マサキがそこにたっていた。

 

 

 次回『再会、渇望と約束の彼方に』

 

 




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