DDG-191ふぶきの物語   作:シン・アルビレオ

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01話 災難に

最近の世界状況は緊迫しているといってもいいだろう。まだ半年過ぎたばかりなのに歴史に残るような出来事が沢山おきている。ISのテロの拡大、イギリスのEU離脱、パナマ文書問題などなど激動の日々が起きている。 

そして日本周辺もまるで火薬庫のように一触即発の雰囲気が続いている。北朝鮮水爆実験及びミサイル発射、中国海軍の領海侵入などと自衛隊の仕事は年々多くなってきている。

9月某日、また奇妙なことがおこった。それは中国海軍10隻がアラスカ州のアリューシャン列島の沖合でアメリカの領海内を航海した出来事があったのだ。その10隻は日本海でロシア海軍と合同訓練を行った後宗谷海峡を東航しオホーツク海に入った後、アリューシャン列島周辺をうろついて北太平洋に入る前に米領海内に通航したとされている。これは去年にも起きたことだがこうも続けて事が起きたのは異常と言わざるをえなかった。

そのため海自は初めてアラスカで毎年実施される米軍主催のレッドフラッグ演習に参加することとなったのだ。なんと初の海空合同演習なのだ。

今回の演習は9月下旬から10月下旬まで一か月近く演習を行うことになっている。場所はアラスカ州のアイルソン空軍基地およびエレメンドルフ・リチャードソン統合基地や、初めてであるアリューシャン列島で行われることになった。

(勿論空自もこの演習に参加しておりF-15JやF-2、E-767早期空中警戒機等々合わせて15機が派遣されていた。)

 

 

9月下旬 大湊基地

他の基地とは違い普段は比較的静かだがこの日は違った。なにせ海自初となるレッドフラッグ演習に参加する艦艇が大湊に集まって最終確認しているのだ。今回演習に参加する艦艇は四隻ー少ないと思われるが最近は東シナ海や北朝鮮の動きがきな臭いから仕方ない。それでもあの演習に参加できることは大変貴重なことだろう。

ドックには最新鋭であるふぶき型護衛艦一番艦ふぶき、あきづき型護衛艦二番艦てるづき、むらさめ型護衛艦三番艦ゆうだち、たかなみ型護衛艦四番艦さざなみがドック内で出港の準備をしていた。

艦内で慌ただしく隊員が行き来してるのを艦橋から微笑ましく眺めている少女たちがいた。本来ならばそこに少女がいるようならば大騒ぎとなっているがそのような様子はなかった。なぜなら彼女は船魂とも、艦魂ともよばれていた存在であリ、乗組員には全く見えていない。

 

「ふわぁ…」ウイングでうーんと背伸びしながら欠伸をし、セーラー服とスカートが風になびかせているのはふぶき型護衛艦ふぶきの艦魂。この護衛艦は最新鋭のイージス艦であるが、あたご型を少し改良したものとなってる。主砲はMk45 5インチ砲ではなくオートメラーラ127mm 64口径砲(127/64ライト・ウェイト) を採用している。また新兵器も色々と搭載しており16式対艦ミサイルや07式垂直発射魚雷投射ロケット、12式短魚雷、前方にCIWSを、後方にRIM-116Cなどを搭載している。またSM-3にも対応しているが排水量やら全長やらあたご型と比べるとずいぶんと大きくなってしまったが。

 

「ふぶきちゃん眠いっぽい?」犬っぽく76mm主砲の上に座っているのはゆうだちの艦魂であった。彼女はこうみえても2000年以来3度のテロ対策特別措置法(3回目は新テロ特措法)によるインド洋派遣、そして13年1月30日に発生した中国海軍によるレーザー照射事件の自衛隊側の当事者となるなど、先々代ほどではないが波瀾万丈の艦生を送っている。下手すれば東シナ海の悪夢になっていたがなんとか避けられたのは救いだろう。

 

「まーふぶきは舞鶴から移動したんだからそりゃ疲れるでしょ。といっても私も呉からだから疲れたわ…」艦首付近でツインテールのピンク髪をくるくるといじりながらため息ついた彼女はさざなみの艦魂。彼女もリムパック(環太平洋合同演習)に参加したりソマリア沖、アデン湾に展開したりと海自の中では経験豊富な艦である。

 

「お互いさまですね」明るいセミロングの茶髪を2本の三つ編みおさげにして艦首で立っているのはてるつきの艦魂である。2011年に進水したばかりでまだ目立った活躍はないが国産の高性能レーダー、FCS-3Aを搭載しておりイージス艦に準じる対空能力を備えている。

 

「ほんとよ。まぁあの演習に参加させてもらえるなんて願ってもないことよね」タイ○○ックのように艦首で両手を広げながら潮風を肌で感じてた。船魂といえども感覚くらいはある。

「うーはやく演習にいきたいっぽいー!演習演習ー!!」ジタバタと駄々をこねるようにゆうだちは言い放った。

「さすがねゆうだちは…」

「そりゃあの件のこともありましたし不満を吐き出したいんでしょうね…あぁまたあらたな都市伝説がつくられるのかな…」てるづきとさざなみ、ふぶきは苦笑した。

海自の都市伝説は色々とあるが有名なのはリムパックで米海軍と海自の潜水艦で模擬戦し、潜水艦はエンジン切って海流だけで米駆逐艦の真下にきたり撃沈したり、悠々と離脱したりと君たちは沈黙の艦隊でも読んだのかだし、93年のリムパックでゆうぎりが米海軍A-6攻撃機を高性能20mm機関砲で撃墜したり等々とぶっとんでる話がいくつもでてくるのだそうだ。

「さて、そろそろ出港ですかね」ふぶきが辺りを見回すとすでにラッタルが外されたり、艦橋内には制服で着た自衛官で溢れていて色々な準備を行っていた。

「ふぅ…いよいよですねぇ」

「そうですなぁ」

「やっとっぽい」世界最強の軍隊と演習ができそれをいかに吸収できるのか。そして演習後某国と万が一のことが起こったらと思うと彼女らの顔には不安の表情もでた。

しかし国民、仲間を守るために訓練を積み重ねていくことは自衛隊の義務でもあり使命でもある。そう思うと気が引き締まった。

「お互い頑張りましょう!」

「はい!」「うん!」「ぽい!」それぞれの艦魂は艦橋内に入っていった。

 

そして汽笛、サイレン、警報の試しで艦内にけたたましい音が響きわたり、試運転を行ってから出港準備作業の艦内放送が流れたのち様々なチェックを終えると航海当番が配置についた。海士がラッパを用意していると先任である海曹から『吹け』と命令された。すると軽快な音色とともに『出港よーい!』と抑揚の効いた大声で言ったのち、甲板では整列した隊員が帽フレを行い別れを告げていた。四隻の艦艇は大湊基地を無事に出港した。

 

 

出港から数週間が経ったある日の午後、四隻の護衛艦は大湊基地から約2000キロほど離れた海域に差し掛かったところで異変は起こった

「てるつきちゃん、さざなみちゃん、ゆうだちちゃん」護衛艦らはそれぞれ通信しあってたがふぶきの艦魂たちも同様にそれぞれの艦魂と連絡しあってた。

「はい」「およ?どうしましたか?」「ぽい?」

「出港する前に日本海で発達するであろう低気圧があったでしょ?」

「あぁありましたね。」「おかげで鉢合わせしないように早く抜けたっけ」

「その低気圧がどうしたっぽい?」

「えーとなぜか威力は衰えるどころかむしろ増してきて、しかも私たちを追ってるみたいな動きをしてるらしいの」

「ほんとだ…せっかく抜けたと思ったらこれですか…」

「なんか不気味っぽい~…」

「ですよね…それともうひとつ。14:29にアリューシャン列島でMw8.5の地震、もう一つ16:42にカムチャツカ半島でMw.8.8の地震が発生した模様。そのため太平洋地帯に津波警報が発令されたみたい」

「うーん連動型地震っぽい?」

「さぁ?分からないけど…ここで言えることは台風による暴風雨及び高波と津波には厳重に注意せよ!」

「了解!」「ほいっさ!」「っぽい!」

 

 

号令からわずか数時間後、海は荒れ模様になってきて雨風や雷も次第に強まってきた。

まるで冬の低気圧かのような荒れ模様に物が落ちないように支える者や踏ん張る者もいた。また転覆しないように操舵員が細かい操艦を必死にしていた。もはや立ってるのがやっとであり何かに掴まってないとあちこち体がぶつかって痣ができてしまうような荒れ具合だった。ここで外にでようなら自殺行為でありあっという間に海の藻屑となるからかウイングにはだれもおらず、ヘリの格納庫扉も閉ざされている。

「こんな低気圧だなんて聞いてないよぉ!」

「まったくっぽい!!」さざなみとゆうだちは半ば半ベソをかいていた。そりゃそうだ。ここまで低気圧が発達するのは季節外れである。

「嘆く暇があるなら転覆しないように集中しちぇ…イタッ舌噛んだ」激しく上下に揺さぶられる波に舌を噛んでしまったふぶきだがさざなみのいうことは最もだと思った。荒れる冬の日本海でも耐えられるように設計してあるがそれ以上の天候のようで波がぶつかるごとにキールが悲鳴を上げているように聞こえた。

 

 

「ん…なんだこれ…?水上レーダーに感?」ふぶきが何かに気づいたがこの荒れ模様ではレーダー電波は減衰するため判別するのに多少時間がかかった。

「おいおいまじか…」やっと判別したがまさかの物だったので慌てて後ろについてきている護衛艦に通信をいれた。

「本艦より方位2-8-0距離10マイル及び方位0-5-5距離8マイルに津波を観測!恐らく先ほどの地震の影響のよう。そのため各自の判断で津波にものまれないように操艦して!また衝突を避けるため十分に距離を開けるように。」

「アハハ…ここで津波がきますか。泣きっ面に蜂とはこのことですか」自衛官、てるづきは毒づきながらも高波にも注意しつつふぶきと距離を開けていった。さざなみもゆうだちも同様に距離をとっていき進んでいく。

高波に翻弄されながらも徐々に津波との距離が縮まってきていた。水平線を見つめると黒く線が歪んでいた。こんなに荒れていてもはっきりと分かるのは津波が大きい証拠であり、レーダーにもはっきりと白い線が捉えられている。こんな沖合まで津波が観測できるのは異常である。艦橋にいる自衛官は信じられないという目で水平線を見ていた

『第一波まで2マイル!各自の安全を確保し何かに掴まれ。』それぞれのとこで艦内放送で呼びかけてるがずっとこの天候なので身の安全をとっている自衛官も多いが念のためだ。

「…そろそろか。これはやばいですね…」まるで巨大な壁が迫るかのようにこちらに近づいてくる。

実際の東日本大震災時、巡視船まつしまが福島県相馬市の沖合で津波に遭遇し見事それを乗り越えた動画があった。がその動画よりも大きく感じられた。

「ありえないです…こんな外洋でここまでの津波は…」

「ぽいぃ…」

「北海道や東北は危ないかも…」三人の艦魂は絶句していた。無理もないことだ。

「…くるぞ!衝撃に備えて!!」ついに先頭にいた護衛艦ふぶきに津波が到達した。

艦首に勢いよく津波が当たったかと思うと瞬く間に前部の1/4が浮いた。どんどんと津波が進んでいくと重力によって落ちていき一瞬マイナスGのようなフワリとした状態になり、その直後勢いよく艦首が海に叩きつけられた。

津波は次々と残りの護衛艦を襲っていき激しく上下に揺さぶっていった。津波に加え大しけも絶えなく襲い掛かってきているため艦内は大混乱していた。

「いてて…みんな大丈夫?!」ふぶきは安否を問うため通信を入れたが雑音しか聞こえず、どういうわけか繋がらなくなった。津波か台風による影響なのか分からないが、理由を探ってもしかたないので発光信号で意思をとることにした。これなら無線が使えない状態でも使えるが、訓練しているとはいえこういう天候で使うのは初めてだ。

(コチラゴエイカンフブキ。ムセンガツカエナイ。ソチラハダイジョウブカ)

すると数十秒後あきづきから発光信号がわずかだが見えた。強力な探照灯も暴風雨でギリギリ見える状態だ。

(コチラゴエイカンテルヅキ。オナジクムセンガツカエナイガブジデアル。)

その直後さざなみ、ゆうだちからも発光信号が届けられた。ふぶきは一安心したがまだ予断は許されない。津波はまだきているのだ。

 

(津波がまだくるから厳重に…)と探照灯で再度伝えようとしたところ突然下から突き上げられるような波に襲われた。船体が大きく軋んだ音が聞こえた。

“三角波”とよばれる恐ろしい現象が起きてしまったのだ。あまりにも不意打ちだったのでふぶきの艦内ではけが人が出てしまった。ウイングに出ていた自衛官はなんとか海に落とされずに済んだが這う這うの体で艦橋に逃げ込んだ。

「まずいなこr…ってなにあれ?!」次来る津波に備えようとしたがそこで信じられないものをふぶきの艦魂と艦橋にいた自衛官らは見てしまった。

まるでクラーケンが出没するかのような強大な渦潮。いつの間にか辺りには霧までもが出て視界も0に近い状況であった。

「なんてこと…渦潮を回避しつつ後続の護衛艦にも知らせないと…」

舵を切りつつ探照灯で再度通信を試みた。がどういうわけか一向に反応が返ってこない。

レーダーにも映っていない…ということは離れすぎた可能性がある。これはありえないことだ。なにせ最新鋭のイージス艦であり僚艦をレーダー上からロストすることは考えにくいからだ。唯一の可能性はこの悪天候で一時的にレーダーが使えてない、と信じることにした。いや信じたかった。

「くっ、舵が効かない!!」

渦潮の流れに飲まれないように必死の操艦をするが、無常にもどんどんと近づいていく。

「ダメだ…まさかこんなので…」

瞬く間に渦潮に飲まれキールは耐え切れずに折れバラバラになり、ある者は大きな鉄に押しつぶされたり、ある者は浸水のエネルギーで勢いよく叩きつけられた。いずれにしてもほとんどの乗員は即死しただろう。

 

「ごめんなさい、こんな形で沈むなんて」薄れゆく意識の中で言葉が漏れ、彼女の船体と共にアリューシャン列島沖で消えていった。

嵐が止み渦潮が消えた後、突然旗艦を見失った三隻は必死に無線で呼びかけたり、レーダーで捜索していった。がどういうわけか破片一つも見当たらない。この嵐なので破片類は海中に沈んでしまったのかもしれないが、諦めずに捜索していった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その後、三隻ともどういうわけか人知れず消えた。

この事件はすぐさま世界各国を巡る大ニュースになり、海自と米軍が中心になって血眼で捜索するも遺体や破片すら見つかることはなかった。

 




2019/07/22
ふぶきの兵装をCIWSとRAMに変更しました。
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