この4ヶ月にあった出来事
・梅雨イベお疲れ様!無事に完走もできドロ運も良きでした
・カレー機関旨し。次は鰻なので楽しみ
・藤池アリス王国の国王は神。初めての撮影会だった女優サイボーグ展も神だわ
・呉?!富士スピードウェイ?!リアイベ生きてたのか?!行く人はコロナ対策しっかりしましょう。
会場内ではいまだ興奮が冷めない様子で、ざわざわとしていた。
それも当然、たった1人の艦娘が幌筵鎮守府の実力者を損害無しで退けたのだから、騒ぎが収まらないのは当然なことだろう。
「いやぁ……なんというかすごい戦いでしたね」
夕張は大淀や鹿島が殴り書きで書いたレポートをペラペラとめくりながら振り返った。
カタログ上でも十分凄いものであったが、実戦に近い演習で見てみるとより凄さがハッキリと分かった。
「ほんとそうですよ。映像で撮っておいて正解でしたね」と撮影係の青葉はパソコン上で蓄積された映像データがしっかりと記録されているか確認している最中だ。
「ほんとそうですよ。このレポートだけで理解してください、と言われても無理ですね。あとで映像見返てしっかりとまとめないと……」
「これは大変な作業になりそう……」
大淀と鹿島は徹夜作業になるだろうと遠い目で空を見上げた。あまりにも展開が追い付かなくて文章が所々飛んでる部分もあるためだ。また、こういうのは記憶が残っているうちにまとめた方が後で楽になる。
「私も1時間分の演習を見やすいように編集しなきゃですよ」
切り取る部分はあるにしても見どころがとても多いため編集に悩みそうだが、同時に楽しみでもある。
(提督の許可がおりれば動画サイトにも載せたいですねぇ)
艦娘とはいえ彼女らは深海棲艦を屠ることができるれっきとした戦力でもあり、軍隊ともいえる。
深海棲艦が出現した頃の艦娘たちはシーレーン防衛のためいっぱいいっぱいであり、一般人と関わることはあまりなかった。
もちろん、国民はいきなり現れた謎の勢力を撃破したことに対して歓迎したが、同時に艦娘とはなんぞや?どんな子がいるの?等々と各地で議論が続いた。
中には艦娘は危険だ!女の子を戦場に行かせるなんて!のような意見も少数であるが見受けられたこともあり、政府や大本営はこのままでは国民に対しての理解が十分に得られないと判断し、状況が落ち着いた頃に行われた観艦式によって艦娘をアピールすることができた。
手ごたえを得たことで観艦式を定期的に行ったり、艦娘が各地方の港に寄って親睦を深めるイベントを開催した。
寄港日が発表されるとすぐにホテルの予約がすぐ埋まるのは勿論、飲食店などもどこも満杯になりかなりの経済活性化を生んだ。
しかしながら、問題点も出てきた。高まる人気を受けて港周辺の道路では渋滞や無断駐車、ゴミ箱から溢れ出るゴミ、スリ、徹夜組等と夏冬に行われる某同人誌即売会のような問題が増えていた。
勿論、警備を増やしたり規制したりしたが追いつかないところもあり、大本営には苦情が寄せられた。
なかなかいい案が出ず何回も会議を重ねるのかと誰もが思った矢先、
「見学ツアーでも限界はあるから、いっそのこと大手の動画サイトで普段の訓練や装備品等を公開したらどうだろうか?」という意見が上がった。
その名案が出て先ほどまで行き詰っていた会議が嘘のようにとんとん拍子に進み、2014年に公式チャンネルが開設された。
登録者数はみるみるうなぎ登りとなり、法整備も重なって悩みの種であった数々の問題も日々に減っていった。
もちろん動画サイトだけでなくSNSの展開にも力をいれている。鎮守府のアカウントだけでなく艦娘たちのアカウントも認められ、広報活動に一役買っており、それぞれの鎮守府にもその地域や気候ならでは特徴が出ている。
例えば呉鎮守府なら某ゆるキャラとコラボダンス動画や牡蠣料理講座、南方の泊地ならばビーチでのビーチバレー大会、潜水艦娘による熱帯魚やサンゴの解説、台風実況など千差万別で見ごたえがある。
ちなみに我が幌筵鎮守府では流氷のライブ動画やオジロワシやアザラシの定点観測、クリオネを飼ってみたなど冬に関するものが多い。
そもそも幌筵島は日本で最北端に位置し、観光しようにも距離や気候の問題で難しいため、気軽に投稿でき誰もが見れることはwin-winであろう。
(ですがここ最近再生回数や登録者数が伸び悩んでいましたし、いい起爆剤となるといいですねぇ。それで提督に褒められたらもう最高)
そんなことを青葉がニヨニヨしながらパソコンに向き合っていると、あちこちから興奮した声が同時に上がった。
(ご帰還しましたか!さっそくインタビューの準備しないとですね!)
「ガサ!時雨!カメラの準備もOK?」
「えぇ、いつでもテープ回せますよ!」
「僕も大丈夫だよ」
衣笠はビデオカメラを、時雨は二眼レフを準備して帰投するのを今かと待っていた。
徐々に島影がはっきりと見えてきた。
まれにみる激闘でお疲れの様子にも関わらず、艦娘たちは一切気を抜くことなく目視と電探を使い近づいてくる船がいないか監視していた。艦娘にも海上衝突予防法が適用されるためである。
吹雪を先頭に単縦陣で帰投しており、今のところ船影は全く見られず穏やかな海であった。
一つだけ異常があるとすれば、港にたくさんの人だかりができていることであろう。
その様子に吹雪らは困惑しながら港に到達すると、歓声が一段と上がった。
「It was a great military exercise!」
「Хорошо!」
英語、ロシア語、日本語が混ざり合った歓声と拍手の二重奏が7人の全身を包み込んだ。
「えっと……すみませんこれってよくあることなんですか?」
ふぶきは大歓声の中でも、聞き取りやすいように教導隊旗艦に耳打ちすると返答はNOであった。
曰く、いつもの演習は少人数の親しい艦娘が見学したり出迎えてくることはあるにしてもこれほどのは初めての経験らしい。ただし、今回の特例見学や特異性を考慮すると納得できる、とのこと。
改めて辺りを見回すと英語が聞こえているあたりに海外艦娘がいるのは分かるが、ロシア語は誰なのか全く見当がつかない。
キョロキョロするたびに初めて見る艦娘もいるので、誰が誰なのかわからないが軽く会釈していくと、マイクやカメラ、人数分の上着を持った三人の艦娘がこちらに向かってくるのが目に入った。
マイクを持っているのは司会を務めた青葉と分かったが、残る二人は初めて見る。
一人は青葉と同じセーラー服であるがスカートを履いており、二眼レフを持っている艦娘は紺に白のラインが入ったセーラー服と三つ編みが特徴的で二人よりも身長が低めの子だ。
知識を頭の中でフル回転し、青葉型の同型は衣笠しかいなかったはずと思っていると青葉が話しかけてきた。
「ども!恐縮です!まずは演習お疲れ様でした。早速なんですがインタビュー始めたいと思いますので、制服が破けてる方はこれを羽織って下さい。あ、ふぶきさん申し遅れましたがカメラを務めているのは同型のガs……じゃなくて衣笠と白露型二番艦、時雨ですっ」
「衣笠さんの登場よ。青葉ともども、よろしくねっ」
「僕は白露型駆逐艦、時雨。これからよろしくね。衣笠、この辺でいいかい?」
「そうねぇ、もうちょい下がった方がいいかな」
二人は軽い自己紹介をすると、カメラのベストポジションを探していく。
(時雨さんが持っているカメラってよく見ると一眼じゃなくて二眼レフなんだ。実物見るの初めてだなぁ。あとまさかの僕っこなんだねいいじゃない)
そんなことをふぶきは思っているとインタビューの準備を終えたようだ。
カメラが回るとあれほど騒がしかった歓声がピタリと止み、教導隊たちも渡された大きめの上着を羽織ってカメラに備える。
「こんにちは青葉です!演習を終えた戦士達が今しがた帰投したので早速インタビューしていこうと思います!」
しっかりとカメラに向かってリポートしていくあたり、場数を踏んでいるなとふぶきは感心していた。
「まずは教導隊の方から伺いましょう。霧島さんからお聞きしたいと思います」
「私の計算がこんなにも狂ったのは初めてのことです。小口径の主砲なら装甲は貫けないと分析し、盾になりましたが……まさかあそこを撃たれるとは」
「確か北上さんも同じところを撃たれて両者大破判定になってしまいましたね」
「うん、一発目は吹雪っちのおかげで弾けたけれど、主機までやられたらどうにもなんないよ。二発もピンポイントで当てるなんてさぁ、偶然にしては出来過ぎじゃない?」
「確かにそうですね。イージス艦のふぶきさん、あの主砲は?」
いきなり振られドキリとしたが落ち着いて答えていく。
「えっとですね、主砲はイタリア製のオートメラーラ127/64Light Weight、またはブルカノ砲とも呼ばれています。発射速度は毎分30発前後、最大射程は特殊な砲弾を使った場合で100kmにもなります」
衝撃的なスペックに誰もが驚愕したが、一番驚いたのは秋月型と武蔵であった。
「10cm連装高角砲でも毎分15発なのにその倍って…」
「しかもあの精度は凄すぎます!」
秋月と照月はキラキラした眼差しでオートメラーラの127mm砲を見つめる。防空駆逐艦としてはこれ以上ないほどお手本となるだろうと確信していた。
「全くだ。そして駆逐艦クラスの小口径なのに、46cm三連装砲より長射程とは……恐ろしいな」
世界最大・最強の艦載砲ですら最大射程は42kmである。その倍以上の最大射程となると口径を大きくするか口径長を伸ばす、火薬の量や質を向上するしかない。
武蔵は口径を大きくしたのではなく、残り2つを技術によって46cm三連装砲より進化させたのだろうと考察した。
「あと、先ほど霧島さんがおっしゃった通り通常弾では戦艦の装甲では弾かれるばかりでした。そこで煙突部分なら熱がたっぷりと放射されているはずなので、砲弾を赤外線誘導弾に変更しました」
赤外線誘導弾と聞いて一人の艦娘が反応した。
「なるほど、ケ号爆弾でありますか」
声がした方に顔を向けると陸軍制服のような黒い上着にプリーススカート、軍帽を被っておりなかなかの胸部をお持ちしている艦娘がいた。まるで大正浪漫を彷彿させる。
「吹雪さん、あちらの御方は?」
「陸軍の揚陸艦、あきつ丸ですよ」
カメラに余計な音声が入らぬよう声を抑えて誰なのかを確認した。
「ケ号爆弾って確か……」
「陸と共同研究しているあれですよね……」
夕張と明石は互いに顔を見合わせて例の爆弾を思い出す。
「ご名答。陸海軍が共同で研究しているけれど開発が難儀している赤外線誘導の対艦徹甲爆弾であります。思想は同じで、変化したのは技術ですがまさか主砲弾を赤外線誘導にするとはいやぁ
すごいですな……」
やはりあれはまぐれではなく、必然的にやってのけたのだと皆脱帽していた。
「主砲弾だけでなく墳進弾もすごかったですよね。摩耶さんと瑞鶴さんにお話を聞いてみましょう」
「対空番長と自負しているけれど、あの墳進弾は無理だ。速すぎてなおかつ超低空で飛ぶあれは落とせる気が全くしなかった……なんだんだあれは?」
「摩耶と同じ意見よ。ほんとなすすべがなかったよ……なによあれ」
二人は特にテンションがどんよりとしている。
摩耶は対空番長として艦隊を守護れなかった。
瑞鶴の艦載機はたった一隻に制空権喪失。こんなことは全空母に対して顔向けができない酷さだ。
教導隊と名乗るわりになんとも耐え難い屈辱でもあり、プライドがポッキリとへし折れかけていた。
「……ふぶきさん、あの墳進弾は一体どんなものなのでしょうか?」
瞬く間に艦隊を、艦載機を無力化した2つの墳進弾は誰もが気になっていたものだ。
「はい、まず最初に4発放ったものは17式艦対艦誘導弾と呼ばれている艦対艦ミサイルです。射程は150km以上、飛翔速度は1150km/h以上にもなります。次に艦載機に向けて放ったものは艦対空ミサイルのSM-2ブロックⅢBです。指向性爆風・破片弾頭MK125を採用していまして、任意の方向に破片と爆風を放すことが出来ます。簡単にいうとVT信管を更に応用・発展したものといえば分かりやすいかと」
VT信管と聞いてやっぱりそうかと反応したのは米艦娘と瑞鶴隊の妖精達であった。目の前で爆ぜるなんてどう考えてもそれか、もしくは三式弾しか思い浮かばない。
「聞けば聞くほどすごい兵装ですね……でも、次に生かせるか生かせないかはあなた方次第ですよ」
それでも青葉はなんとか絞り出し労う。
「……そうね。パイロットと話し合ったけど対処法は見つかりそうだし訓練あるのみね」
「その意気ですよ!さて、伊58さんはどうでしたか」
「なんでちかあのカ号よりもチートなオートジャイロ。見つかった瞬間これは死んだな、と悟ったでち」
「1機で潜水艦を追い詰め、対潜だけでなく対艦戦闘までこなすオートジャイロはチート級でしたね……あのオートジャイロは一体?」
「あれはSH60-Kと呼ばれる哨戒ヘリコプターです。青葉さんがおっしゃった対潜や対水上戦だけでなく、輸送や救難にも使われていますから汎用性に長けていますね」
「なるほど……そのオートジャイロの攻撃も受けた吹雪さんはどうでしたか?」
「あのオートジャイロから放たれた墳進弾すごかったね。それだけでなく主砲弾、魚雷……意識を刈り取られたのは久々だし、こんなにボロボロになっちゃったよ」
髪留めはどこかにちぎれただのセミショートになり、所々髪がチリチリになった跡や傷跡が生々しい。
「皆のおかげで接近できたけれどあと一歩、あと一息足りなかったな……。課題あり収穫ありのとてもいい演習ができたかなと」
吹雪が締めくくると、称える拍手があちこち湧きあがった。
「吹雪さんありがとうございました!さて、お次はイージス艦の方であるふぶきさんにお話を伺いたいと思います。初めての演習はどうでしたか?」
いよいよだと皆固唾を呑んで待つ。未来の最新鋭艦がどのような発言をするのか、一句も漏らさず聞き取りたいのだろう。
この静けさは逆に緊張してしまい、ふぶきの心臓がバクバク鳴り始める。
「そうですね……課題がたくさん見つかった演習でした。特に終盤辺りは最悪の出来でした。これが最新鋭艦のイージス艦なんて……ふっ、笑えますね」
出来が悪かった発言に一同は驚愕した。無傷で完全勝利Sなのにいったいどこが悪かったのか誰も見当がつかず、当然青葉も質問する。
「えっと、その……なぜ最悪の出来だと?」
「まず彼女たちの力量を見誤っていたことです。演習前に“6人相手でも絶対勝てるし、第二次世界大戦中の航空機なんて楽勝。経験は劣るけど70年の技術差で覆るでしょ”なんて思っていました。中盤に艦載機をほぼ墜として士気を挫かせ撤退させる希望的観測な試みをした結果、隙が出来てしまい終盤で2機と吹雪さんに接近を許してしまいました」
「なるほど、でも最終的には墳進弾と見たことのない対空砲で撃ち落したじゃないですか」
「あぁ、あれはCIWSと呼ばれる個別防御システムの一つです。日本語なら近接防御火器システムとなっています。前方にあるのは高性能20mm機関砲で、毎分4500発の発射速度を誇ります。もう一つ後ろにあるのはSeaRAMと呼ばれる近接防空ミサイルです」
一番驚いたのは摩耶と瑞鶴であった。
「ま、毎分4500発だと?!バケモンかよ」
オーソドックスな対空機銃である25mm三連装機銃でさえ発射速度は毎分130発、北欧最高傑作と名高いボフォース40mm四連装機関砲でも毎分120発とかにバケモンじみているかお分かりであろう。
「そりゃ艦載機が一瞬でズダボロになったのも納得できるわ……でも、それだけ発射レート高いってことは弾が沢山あったもすぐ尽きそうだね」
瑞鶴に痛いところを突かれ、ふぶきは苦い顔を浮かべる。
「そこが弱点でして……数十秒も全力射撃すれば弾倉は尽きてしまいます。そのため電子攻撃や艦対空ミサイル、主砲で墜とすことや機動性に重きを置いています。いわばCIWSは最後の砦なのであそこまで接近されたら負けにも等しく、砦も突破されたら装甲はほぼないので一巻の終わりです」
「えっ、電子攻撃って……序盤に突然起こった電探類の不調のことでしょうか?」
吹雪がハッとした様子で思い出し、教導隊の皆もそういうことだったのか、と腑に落ちる。
「これですね。NOLQ-2Bと呼ばれていて、従来のものより改良化・小型化したものです」
確かに電探という目を潰せば、人間の身長とさほど変わらない艦娘にとって索敵では大変不利になった。
これは深海棲艦相手にも同じことがいえるだろうし、戦術的、戦略的にも大きなアドバンテージになる。
また、電探に映りにくいステルス性にファーストルック・ファーストショット・ファーストキルをここまで洗練している艦娘はそうそういないので、戦力面でも大幅な向上が見込まれるのは願ってもないことだ。
「すみません。あと一つだけ言いたいことがあるのですが……」
「いいですよ。なんでしょうか?」
一呼吸おいてふぶきは皆に語りかける。
「今回の演習を見て皆さんは“圧倒的ではないかイージス艦は!”という感想を抱かれた方が殆どだと思います。確かにこのばかげた対空、対艦、対潜能力を見れば一隻でも無双できるでしょう。しかしながら、単艦で戦闘することは殆どありえません。艦隊を組んで初めてイージス艦の真価が発揮できるのです。そうですね……例えば摩耶さんらと組み合わせるならガン・ミサイルコンプレックスといえばいいでしょうか」
また聞いたことのない用語が出てきて、全員が頭の上にハテナマークが浮かんでいる。
もちろん補足説明はしていく。
「遠くを狙えるけど至近距離や即応性には弱いミサイル、中間距離を補える高角砲、遠くは狙えないけど至近距離に対する即応性は高い対空機銃を組み合わせることで互いの弱点を補うことです。まぁ、本来は自走式対空砲とかの考え方なんですけどね」
実際に韓国、中国、ロシアの自走式対空砲では機関砲と地対空ミサイルをセットにしたハイブリッド式を採用していたり、ドイツも後付けであるが地対空ミサイルを付けたものの、2010年に退役している。
「ということは、摩耶や秋月型と組み合わせればとんでもないものになりそうじゃん」
「あと五十鈴さんとかの対潜能力が高い子とも組み合わせたら余計に隙がなくなるでち」
北上とゴーヤが何気に呟いたのを聞いた空母と潜水艦達は心の底から味方で良かった、と安堵した。
演習でたっぷりと見せられたあの凶暴な対空ミサイルや百発百中の主砲を運よくぐり抜けたとしても、対空能力が高い摩耶と秋月型が待ち構えていたら死の片道切符であることは間違いない。
潜水艦に至っては変温層やシャドー・ゾーンに逃れられたとしても、静寂化等がされていないww2の潜水艦ではソナー員やオートジャイロだけでなく、対潜能力が長けている艦娘とも連携したら逃れることはほぼ不可能だろう。
味方からしたらとてつもなく頼もしい存在であると同時に、敵からしてみれば悪夢そのものである。
そのことに気づいた艦娘達は、とんでもないものを迎え入れたのでは?と色めきだしたとき、奥の方から鎮守府の最高責任者である提督がやってきた。
色めき立っていた空気は瞬時に消え、ピンと張り詰めてくる。
「諸君、演習ご苦労様であった。あそこまで手汗を握った演習は久々であり、未だ興奮状態は冷めていないほど素晴らしいものだった。日頃の訓練の成果が発揮できたのは勿論、課題も出てきた。それぞれの課題を克服してさらなる昇華を期待している」
まずは教導隊らに労いの言葉をかける。
「そして、イージス艦ふぶきはスポーツでいえば国内リーグにワールドカップや欧州クラブなどで活躍している超一流選手が移籍してきたレベルだ。
優勝争いに食い込むか、はたまたは降格争いに転げ落ちるかは監督やコーチ、選手次第だ。
つまりここでは、彼女の能力を最大限に生かせるかは私や艦娘、妖精さんの腕にかかっているといっても過言ではない……これからは忙しくなるぞ。皆の力で深海棲艦を倒し、平和を取り戻そう」
若くして大将まで登った提督の熱い決意に自発的に敬礼する艦娘が一人、また一人と増えていき最終的には全員が提督に向けて敬礼をしていた。
提督も教導隊と彼女、艦娘たちをゆっくりと瞥見しながら敬礼を返す。
「ふぅ、堅いのはここまでにして以後の予定を伝えよう。会場の片付けが終わったら2000、食堂にて歓迎会を行う」
敬礼が解かれると待ってました!とばかりに歓声が上がるのが聞こえてくる。
「それまでは各自自由に過ごしてよし。以上をもって演習を終了とするっ、解散」
熱狂が冷めらぬまま、あるものは会場の片付けを手伝いに行ったり、あるものは料理の仕込みに食堂に戻ったり買い出しに出かけたりとそれぞれが歓迎会に向けて動き出した。
演習組はというと、工廠にて艤装チェックとメディカルチェックをしてから解散となる。いくら演習妖精のご加護があるといえども、万が一ということもある。
チェックの結果、特に異常はなかったが流石にたっぷりとかいた汗や潮を含んだ風が髪や体にべたついたのは避けられないので、歓迎会の前に演習を行った皆と一緒に浴場で洗い流していくことにした。
新型コロナウイルスは少し下火になったとはいえ、まだ油断はできませんね。天然痘みたいに根絶できればいいのですが長い時間がかかりそう。
もはや人類は新型コロナウイルスと共存していくしかないのだろうか。
次回はお風呂会になります。え、歓迎会?やるといったな。あれはホントだ。
あと、アンケートを新たに入れましたのでどれが見たいか投票お願いします。内容は艦娘が現代日本の南西諸島等にタイムスリップし、自衛隊と協力して某国と戦うものにしようかなと。
新しい小説における艦娘の選考
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吹雪ちゃんのみ
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吹雪×大和
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吹雪や坊ノ岬組