DDG-191ふぶきの物語   作:シン・アルビレオ

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11/15が吹雪ちゃんの進水日記念ということで一年ぶり以上となってしまいましたが投稿しました



20話 裸の付き合い

 

 ふぶきは自室からお風呂道具を持って脱衣室に向かったが、ガランとしていた。

もし検査が長引いているのであれば何かしらの異常があったのだろうか、と心配になる。

それもそのはず、あれだけ未知の兵器でボコボコにしてしまったのだから。

でも、彼女らの執念は恐ろしいものだった。今もまだ歯や足の震えが止まらない。

70年間無戦争、平和国家、イラク派遣でのスーパーウグイス嬢作戦、災害派遣……人徳をいく王道で人を殺したよりも人を救ったほうが多くなった。

代償はたくさんあったが当然、それはとても誇れるものだ。

だが、王道を積んでいた軍隊がいきなり覇道の、それも数年以上未知の勢力と戦争している世界に巻き込まれるなんて想像ができようか。

(技術の差で勝ったとはいえ、経験値や精神の強さでは私がいた世界各国の軍隊だけでなく第二次世界大戦時をベースにした彼女たちにすら圧倒的に劣っている……仮に同じ技術を彼女たちが手に入れたら互角か、もしくは負けるでしょうね)

今後謎の勢力である深海棲艦と戦うことは間違いない。PTSDになったらどうしよう?自分がいた時代に帰れるのか?

様々な思惑がグルグルと脳内をめぐりはぁ、と重いため息つきながら衣服を脱ぎ下着姿になるとガラっと脱衣室の扉が開かれた。

反射的に振り返ると先ほど演習で手合わせた教導艦たちがいたのだが、六人の視線は自然に下に流れた。

「おぉ……」

「これはなかなかの……」

「計算以上の胸部、臀部ですね」

「19ちゃん並みかそれ以上でち」

服はすでに籠の中に入れており下着姿になっていた。まじまじと見つめられ体温が急上昇するのを感じ、とっさにバスタオルで隠すが一人の艦娘が風呂道具を床に落とし、唖然とした様子で見つめていた。

「ごふっ」

「げぇっ?!瑞鶴が精神的大破してしまった!」

「メディックー!」

摩耶と吹雪が支える中で瑞鶴は絞り出すように声を出す。

「大丈夫よ……けどまさか隠れ巨乳だったとは」

まるで芸人のネタを見ているような流れにふぶきはポカーンとなったが、北上がフォローした。

「まぁそうでもなきゃ、やってられないしね。私たちは最前線で命をかけて神経を削って殺りあってんだし、ユーモアも無いとね」とふぶきの隣の籠に道具を置いた。

本当にここは戦場なんだと同時に、そのフォローでふぶきはとある動画を思い出していた。その動画は各国の軍隊の失敗やクスリと笑えるもの等をまとめた動画だ。

例えば手作りのジェットコースター風を作ってそれっぽく人が動いている人を再現したり、ただの掃除をまるで小隊を組んで洗剤を投げてから突入したり、アスロックに入ったり戦闘機のパイロンに吊るされたり、井戸で踊ってマ〇オのごとくそのまま落下したり、羊と戯れてたり等々……極め付きは市街地戦で班が警戒中にどういうわけか音楽が鳴りそのまま踊り、警戒に戻ったこともある。さすがにこれは上司にこっぴどく怒られたそうだが。

そんなことを思い出していると、突如後ろから胸を揉まれ「ひゃん?!」と変な声を上げてしまった。

慌てて後ろを振り向くとニヤニヤしながら揉んでいる北上がいた。

「隙だらけだねぇ。ほぅ、バスタオル越しでもすごいねこりゃ」

「あっ、抜け駆けしてるでち!」

「北上ずりぃぞ!」伊58と摩耶が抗議の声を上げる。

「へっへーん、こういうのは早い者勝ちでしょ」

「も、揉まないでください~!」ふぶきの絶叫が脱衣室に響き渡った。

 

 

 北上に揉まれること数分、やっとお風呂に入ることができた。

後ろから揉まれることを想定していなかったため、ややげっそりとした様子でシャンプーした。

今度は後ろの警戒を怠らないでビクビクしながら泡を落として鏡をみると、いつの間にか後ろに吹雪がいて「ふおっ?!」と驚きの声を上げてしまった。

数秒前までは誰もいなかったし、けっこう警戒もしていたのに……まるで忍者ッ。

「あっ、ごめん驚かして。背中流そうかなと思って」

「あぁ、そういうことね。びっくりしたぁ……」と返事するも心臓はドキドキしてる。

これが一人だったら気絶していただろう。

「気配消すのうまいんだね」

「そう?まぁ、川内さんの教えなんですけどね」

川内といえば確か川内型一番艦であり、第3水雷戦隊の旗艦を務めていたはずだ。吹雪もその第3水雷戦隊に属していたから教えてもらったのは納得したが、なぜ気配を消す方向性にいったのだろうか。

その疑問をぶつけると驚きの内容が返ってきた。

「あぁ、川内さんは夜戦が大好きなので夜に活動してるんですよ。夜は隠密性が高くないと行動ができませんから忍者をベースにしているそうですよ」と吹雪は苦笑しながら背中を洗ってくれる。

(確か史実では殆どが夜戦に参加していたっけ)

戦中の行動が艦娘になっても色濃く反映されているのは面白いなと思った。

「なるほど。それにしても結構慣れた手つきで背中洗うんだね。姉妹のお世話とかで?」

ちょうどいい力加減で気持ちよく洗ってくれるのでうっとりしてしまう。

「それもありますけど、司令官との方が多いですね」

「へぇー司令官とかぁ……えっ、司令官と?」

思わず振り返り改めて彼女の体つきをみると、私より身長は低いはずなのに大人びつつも割れた腹筋が美しい体つきをしているではないか。

女性のボディビル大会なら板チョコだの腹筋グレネードだの、割れた腹筋で大根をすり下ろしたい等個性的な応援が観客から飛びあうだろう。

(それくらい腹筋やくびれは素晴らしいけど、胸もなかなかあるっ!C……いやDカップ?そういやあの時どちらも指輪していたということはあんなことやこんなことする関係になってもおかしくはないっ。けど艦娘は元とはいえ船だよね……とても特殊過ぎるっ!)

心の中でツッコめばツッコむほどなんだか頭がこんがらりそうなので、別のことに切り替えることにした。

 

 

 「そ、そういや結構傷跡があるけど大丈夫なの……?」

胸と腹筋、臀部に目が行きがちだが、大小様々な傷跡や火傷跡が体のあちこちにあることも見逃せなかった。

「あぁ、平気平気。ま、こういうでかい傷とかは高速修復材使っても傷が完治するまで時間かかるけど」

傍から見れば拷問か虐待されたのかと疑われてもおかしくはないが、それよりも気になる言葉が出てきた。

「高速修復材って何?」

「通称バケツ、と呼ばれるものだね。簡単に言えばどんなケガでもあっという間に治してくれる特殊なバケツに入った液状のなにか、としかいえない。詳しいことはまだ分かってないけど、どうやら細胞を超活性化させる作用が含まれているみたい。お湯で希釈し特別入渠に入れて使用したり頭から被ったりして使ってるそうよ」

「す、すごいね。でも希釈して使用するってことは原液のままだと危ないの?」

「ほぅ……君のような勘のいい艦娘は嫌いだよ」

吹雪の顔に少し心臓が縮みあがる。

「ふふっ、冗談だよ。えっとね、治るスピードは希釈したものよりも圧倒的に速くなる。代償としてに全身に地獄すら生ぬるいほどの激痛に襲われるんだ。戦艦でも失神するくらいヤバい」

(自身の大砲から撃たれても耐えきれるくらいの戦艦が失神するってどんな痛みなんですか……)と心の中で絶句した。

「この跡は軽巡ツ級の雷撃で片足が吹き飛ばされて骨がコンニチハしたやつね。いやーあの時は五本指に入るくらいヤバかった。何度か意識失いかけて三途の川も見えたなぁ」

アハハと笑いながら、左脚の太ももにぐるりと一周している傷跡を吹雪は見せた。

それと同時に手入れされたツルツルの丘がハッキリと見えたが、あえて何も見ていないふりをする。

「それってバケツを使って再生したの?」

細胞を超活性化させると言ってたから、ジ○ンプで連載されていた某グルメ漫画みたいにぶっかけて一瞬で再生させたのだろうと思った。

「うーん、再生というよりは手術した。袋の中に氷を沢山入れてから妖精さんの力で小さくし、冷蔵庫を装備してある艦娘に預けたの。某国民的ネコ型ロボに例えるならスモールライトみたいな感じでね。ここの手術室でバケツと共につなぎ合わせたみたい」とあっけらかんと答える。

答えは違っていたがあまりも衝撃的な話で若干引いた顔で見つめたが、ここで別の疑問が出てきた。

「こんな便利なバケツを希釈できるなら持ってい行かないのですか?私がいた世界ではモルヒネを打ってすこしでも痛みが和らぐようにできましたが……」

この疑問に吹雪は驚いた顔で彼女を見つめる。

「いやはや鋭いね……確かに長い航路をかけて戦場を駆け巡る艦娘にとって高速修復材は持ってもいいはずだね。いや、あったほうが大破しても打つなり浴びるなりすれば完治しまた闘える。無い理由としては一つ目、普通の注射器に入れると量が少なすぎて本来の性能が発揮できない。全く理由は分からないけどあのバケツサイズじゃないとだめらしい。仮に注射器にいれてもバカでかい注射器を持っていかなければならないね」と苦笑した。

「なるほど……でも待ってください。先ほど吹雪さんは足が吹き飛ばされたとき妖精さんの謎の力で小さくできた、と言ってましたよね。注射器じゃなくてもあのバケツを小さくして艦内に持ち込んでいけばいいのでは?」

「ふむ、そうくるか。では二つ目、先ほどもいったようになぜ治るのか未だに解明されていない高速修復材。仮にそうやって各艦娘に持ち、被弾したあと取り出して高速修復材をかけたとしよう。海にそのまま流してしまうとプランクトンから上位の生態系に影響を与えてしまう可能性がある……いわば生物濃縮ってやつ」

「確か化学物質が食物連鎖を経て体内に濃縮されていく、ですよね?」

生物濃縮で有名な事例といえば高度経済成長期のおける水俣病やイタイイタイ病だろう。

未処理排水を垂れ流しにしていたためメチル水銀やカドミウムに汚染された魚、米が食べられることによって更に濃縮されていき、多数の健康被害を及ぼした公害病のことを思い出す。

「その通り。人間と私たちでは似てるようで似ていない……高速修復材を取り込んだプランクトンが魚に食べられ、その魚が漁に捉えられて人間の身体に入ってしまったら?」

「生物濃縮でどのような影響を及ぼすか分からない、ということですね」

「そう。で、それらの代わりとして応急修理要員とよりグレードアップした応急修理女神というのがある。まぁ、簡単に言えばダメコンだね。特に女神の方は轟沈は無かったことになるけど、どちらも一度使ったら二度と使えなくなるね」

(あっさりと言ってるけど轟沈が無かったことになるって高速修復材よりもオーバーテクノロジーなんだよなぁ)

轟沈とは攻撃を受けてしまった艦船が短時間で沈没してしまうことだ。海の藻屑へと消えたはずなのに復活ッ!復活ッッ!!するなんて某海王さんもびっくり仰天である。

 

 

 「こういうのは新しく入った艦娘に向けて私たちが講義する内容なんだけどね。まぁいいか」と笑いながらシャワーで泡を洗い流す。

交代し吹雪の背中を洗うことにしていくと、背中も美しい筋肉の付き方をしていた。

「背中もすごいんだね」とゴシゴシと洗いながら思わす呟くと、戦艦のほうがもっとすごいよと教えてくれた。

「あそこに霧島さんがいるけど、彼女は素手喧嘩が得意でね。体重×スピード×握力=破壊力の方程式で数多の深海棲艦を屠ったパンチを持っているんだ。あのパンチ喰らったことあるけど、武が通用しないのかと思ったほどシンプルかつ強烈な攻撃だったなぁ」

確かによく見ると傷が多い拳に打撃で程よく発達したヒッテイングマッスルは凄みがある。

近接戦闘は一応できるが、紙装甲の私が喰らったら一発で大破してしまうだろう。

絶対に喰らわないようにしようと固く胸に誓った。

「いやいや、吹雪さんの方がもっと強いからね?」

霧島さんからツッコみが入る。

「だって打撃を受け流したりカウンターしたりするんですよ……大和型やアイオワさんにも勝ってますし」

「……駆逐艦ってなんだっけ」

ふぶきからすると70年経った今日でも大和とアイオワはどちらが最強なのかとミリオタで議論が続く戦艦に勝てる駆逐艦っておかしい。

「そのままそっくり貴方にお返しするわ」

霧島からみれば駆逐艦に属するのに火力は重巡以上で艦載機まで載せられることがおかしかった。

そんなこと言いながら小さくたたんだタオルを頭に乗せ湯船につかる。

「あぁ、いい湯だ……」熱すぎずぬるすぎぬちょうどいい温度で戦闘の疲れがとれていくようだ。

コミュニケーションもたくさんとれたしやはり温泉は全てを解決する!

 

 

 体が茹蛸寸前になったものだから身体がポカポカどころかホッカホカになった一同は暫くの間脱衣室でクールダウンしたのち、キンキンに冷えた瓶の牛乳で水分補給すると、歓迎会まであと30分をきっていた。

「ぷはぁ……お、ちょうどいいね。会場は食堂だけどもう場所は分かるよね?」

牛乳をアッという間に飲み干しえた吹雪が聞いてきた。

勿論、私は大丈夫だと答える。

「ならよかった。私達は準備もあるから先に行ってるね」と教導艦らは脱衣室を後にした。

 

 

 脱衣所に備え付けられてあるドライヤーで髪を乾かして制服に着替え、お風呂道具を自室に置いた後いよいよ皆が待つ食堂へと向かう。

話し声さえ聞こえず蛍光灯の明かりだけが照らしている廊下を歩くのは、丑三つ時でなくてもすこし不気味だったので早歩きで階段を進むと、目的の階へと着く。

すると提督とばったり鉢合わせしたため、少し息を吞んでしまった。

「あ、すまない。ちょうど準備が終わったので迎えに行くところだったがちょうどよい。心の準備はいいかい?」

「えぇ、いつでも」

私がいた世界でも命名・進水式で沢山の方からお祝いされた。たまたま私の名前と同じ日本酒が中を清めたり、くす玉とともに船体に叩きつけられたのはちょっとびっくりしたけど。

人間の姿でお祝いされるのは初めてなので、どんなふうになるのだろうと期待を膨らませる。

「自己紹介のあと恐らく艦娘たちから質問が沢山来るだろうから、質疑応答頑張ってほしい。特に駆逐艦や青葉からは根掘り葉掘り聞かれるかもしれないが……まぁなるべく情報は共有したほうがお互いのためになるだろう」

思わぬ一言で緊張と焦りの表情が出るが、提督はお構いなく廊下を進み食堂につくと勢いよく扉を開ける。

すると目に飛び込んできたのは『ようこそ幌筵鎮守府へ』と書かれた横断幕に色とりどりの立派な料理、そしてふぶきの全身に突き刺さるような万雷の拍手、クラッカーによる大量の紙吹雪とテープが舞う光景であった。

「すっご……」その光景に思わず見惚れてしまう。

嬉しさ半分、緊張半分の歓迎会が幕を開けた。

 

 

 

 




フブキチャンを称えよドンドコ₍₍ (ง ˙ω˙)ว ⁾⁾ドコドコ

新しい小説における艦娘の選考

  • 吹雪ちゃんのみ
  • 吹雪×大和
  • 吹雪や坊ノ岬組
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