DDG-191ふぶきの物語   作:シン・アルビレオ

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5ケ月ぶりの投稿になりました大変お待たせしました。

ちょくちょく書いていたもののまだ本格的に更新するのは難しい状況ですが今後ともよろしくお願いいたします。

近況ですが富士総合火力演習に見事当選しました!まぁ夏コミは断念なんだけどね仕方ない。冬コミは必ず行きたい。
吹雪ちゃんの本現場で手に入れたかった(´・ω・`)


06話 艤装と妖精さん

提督と吹雪が執務室で書類仕事に追われている中、明石とふぶきは艤装の確認のために工廠へと移動していた。

雑談しながら歩いていると、薄暗い夕焼けから存在感のある大きめの体育館のような建物を発見した。どうやら目的の場所に着いたようだ。

「ここが工廠よ。ここで私と夕張が働いているの。」

「夕張さんって…軽巡夕張ですか?」

「えぇそうよ。機械マニアで中々面白い子よ」

重厚そうな鉄の扉を明石さんが開けていくと、より一層の機械音と油の匂い、大小の機械が五感を通じて入ってきた。

「おぉ…」その様子に圧巻されていてふぶきは足元にいる小さい人に暫く気づかず、視界に入った途端驚いてしまった。

「うわっびっくりした!?えっ?なにこの…小人??」

「あぁ、それは妖精さん。ここにいるのは工廠妖精さんや艤装妖精さんだったり色々といるわ。彼らたちは様々なものをサポートしてくれる、いわば縁の下の力持ちな存在なの」

「なるほど…」(今度はファンタジー要素ですか…。)色々とツッコみたかったけどいちいちやっていたら物事が円滑に進まなくなるのでぐっとこらえた。

すると妖精さんは安全第一と描かれたーヘルメットを差しだした。

「ココ、アブナイカラ、ヘルメット、ツケテネ」

(しゃべったああああああぁぁ?!?!)思わず叫びそうになったけど心の中で抑え、ヘルメットを着用した。

明石さんもヘルメットを被っているけどここで働いているからかとても似合っている。

「あ、ありがとね」妖精さんにお礼言うと嬉しそうな顔しつつもビシッと敬礼し、作業へ戻っていった。

可愛いししっかりしてるから持ち帰りたいなと思ってしまったけど。

 

「よし、ヘルメット着けたし夕張さんの所に行って一緒に貴女の艤装を見に行きますよ」

機械音が鳴り響いているためかなり近くまで話を聞かないと分からないほどだが口の動きで分かったので頷き、明石さんの後についていった。

道中色々な妖精さんや機械をみていくと、奥に銀色がかかった緑色の髪でオレンジのツナギを着ている方を見つけた。もしかしてあれが夕張さんなのだろうか。

明石さんが呼ぶもなにやら作業に没頭しているようで私たちには全く気付いていないようだ。

なるほど確かに明石さんの言った通りかなりのオタクの様だ。

仕方なく近くまで行き明石が夕張の頬を叩くとやっと気づいて顔をあげたが、所々に顔や色んなに機械油の黒い跡がついていた。

「あの、顔に汚れがついてますが…」

「えっ?…あっごめんね!つい集中しちゃって…」アハハと苦笑しながらタオルで顔を拭き汚れをとっていった。

「お、お待たせ。兵装実験軽巡夕張よ、よろしくね」

「初めましてふぶき型護衛艦ふぶきです。以後よろしくお願いします」互いにお辞儀して挨拶するとやはりというかまじまじと夕張は彼女の顔を見つめていた。

「うわぁ、まるで吹雪さんと瓜二つね。ただ…なんというか大人びている?」そしてチラリと彼女の胸部装甲に目を移したがなかなかの持ち主だと判明し、少し敗北感を感じた。

「一瞬吹雪さんが、あっ第一艦隊旗艦及び秘書艦もやっているほうよ。そっちが来たのかと思って一瞬混乱しちゃった」

今さらっとすごい経歴が夕張の口から出て耳を疑ってしまった。

「えっすごい経歴をお持ちなんですね彼女…」

「まー提督が着任してからほぼ隣で支えてきたからねぇ。それに着任してから一年後にはお二人はケッコンしたというね。」

「け、ケッコンまで?!」そういやあの時、提督と彼女の指にキラリと光るものがあったのを思い出した。最初はファッションの類かと気にしなかったが、まさか指輪だったとは。妖精さんといいケッコン(もしかしてロリコnゲフンゲフン)といいとんでもない所にきてしまったようだ。

 

「貴女の艤装は地下室で厳重な警戒保管しているけど、その確認をしたいのよね?」地下室にいくエレベータに乗りながら夕張が書類をみて確認していく。

「あっ、はいそうです。結構機密なものがあったりするので」 ステルス技術やレーダー、CICなどは機密が満載であるためだ。そのようなのが勝手に分解されて使い物にならなかったら大変どころでは済まされない。存亡にも関わる問題だ。

「まぁ艤装は本人の許可なしには勝手にいじれませんし、そもそもあのようなのは私たちは見たことも聞いたこともないわ。提督の判断もあって今は地下室に保管してあるの。」

「ただ少し損傷があるみたいなの。それを直したいのだけど手がつけられないし、初めて見る妖精さんの反対にもあってね」二人とも困った様子が見てとれた。

「あの、初めて見る妖精さんって言ってましたよね?どんな妖精さんだったんですか?」艤装には何も手をつけておらずバラバラにもなっていないことには安心したが、そこだけがひっかかった。

夕張は記憶を頼りに思い出していた

「えーとそうね…色んな妖精さんがいたけど多くは青っぽい迷彩服だったりセーラー服、あとは灰色の救命胴衣を着ていた妖精さんなどなどですね…ふぶきさん?」

深刻な顔をしている様子だったのだ心配になったが、ふぶきの口から驚きの真実が語られた。

「それ…海上自衛隊の制服です…つまり乗員が妖精になったということ…?!」

「断定はできませんが、『妖精は元々艦娘になる前、艦船の乗員や艦載機乗員なのではないか』と推測されてます。それに該当した可能性もありますが…詳しいことはまだ分かっていないのが現状です」しかし、妖精の実態が明らかになりえる出来事なので明石は若干興奮した。

するとエレベータが地下に到着したので三人は降り、艤装が保管されている場所へと移動していく。

 

明石曰くこの地下室は結構頑丈にできており、重要な装備の保管だったり空襲時などでは防空壕にもなるそうだ。今までそのような事態はないが万が一のためだという。

なるほど言われてみれば地下室がアーチ状になっている。広さは上にある工廠と同じためか地下特有の圧迫感はそれほど感じられない。

奥へと進んでいくとなにやら重厚そうな扉が見えた。入り口にあった扉よりも頑丈そうでまるで金庫扉だ。

「この扉の奥に貴方の艤装を保管してあるわ。」そういわれなんだか緊張してきた。

明石はダイヤルを回して解除していき、その後二人は形の異なる鍵を鍵穴に差し込み同時にガチャっと回してく。

更に二人が協力して力いっぱいハンドルを回していくと、ギギギギ…と重そうな音が響き渡っていく。

 

完全に開けられると、見えた。私のー護衛艦ふぶきの艤装が。

オートメラーラの新主砲である127/64LW、VLSや大小の様々なレーダー機器。

灰色の船体に191と描かれた識別番号の白いペイント。

 

やはり聞いた通りバラシてはないものの、所々損傷があった。キスカ島で確認した時はそんなになかったと思ったが記憶があいまいだ。なにせ曳航中に気絶してしまうという恥ずかしい経緯があったからだ。

 

明石達はゼェゼェと大きく肩で息をしながら室内に入った。見た目通りあの扉は相当重かったのだろう。

「すみませんお見苦しい所を…えっとですねこれが貴方の艤装ですが間違いないですか?」夕張が確認を求めたのふぶきは力強く頷いた。

「ならオッケーです。それでですね…見た通り損傷があるんですよね。理由は先ほど言った通り未知の艤装、貴方の妖精さんからの反対があったーの2つです。」

(やっぱりそうか、妖精さんはこれを護ろうとしたんだね)

それもそのはず、私たちがいた現代とは全く異なる世界だ。そんな訳の分からない世界にいきなりここの妖精さんが修理したいとお願いしても警戒や護ろうとするのは当然だろう。私はこの妖精(というか乗組員)に感謝をしたかったが、その肝心の妖精は見当たらないのだ。

聞くところによると大半の妖精は工廠の近くのどこかで借りぐらししているそうだが、詳細は誰も分からないそうだ。

しかし、どういうわけか出撃時の準備などをするときに呼ぶとどこからもなく現れてくるそうだ。

 

ふぶきは借りぐらしと聞いて某ジブリアニメを思い出したのは内緒である。

 

「なるほど…その妖精さんを呼ぶってどうやったらできるんですか?」

「妖精さん専用の内線を使って呼ぶんですよ。その内線も妖精さんが作ったそうですがほんと不思議ですよねぇ」

「本来は私たちが呼ぶけれど、貴女の方から呼びかけたら来るでしょう。そのほうが効果あるでしょうし」

確かに、私が寝込んでいる間にひと悶着があったらしいからここは私から言わないとダメだろう。

壁にかけられたスピーカーマイク(刑事ドラマでよく見るやつ)を使って呼ぶそうだ。

早速ふぶきは使ってみることにした。んんっ、とのどを慣らし一呼吸置いたから放送していく。

「DDG-191、ふぶきの総員に次ぐ。只今より艤装の確認を行うため、至急工廠の地下室へと集まれ。なお明石さんと夕張さんも同席している。繰り返す。至急地下工廠へと集まれ。」

放送を終えマイクを壁に掛けると、何やら視線を感じた。振り返ると二人が感心した眼差しで見ていた。

「あのなにか…?」普通に呼びかけただけなのに不思議に思った。

「あっ、いやなんか放送したとたん人が変わったようになってて…」

「えぇ、まるで別人のようでちょっとびっくりしたわ」

自覚はなかったが二人からはそう見えたのだろう。ほぼ艦橋で艦長達の振る舞いをみていたからなのか知らず間に影響を受けたようだ。

 

すると放送からわずか数分も満たない間に入口からぞろそろと妖精さんが入ってきた。

妖精さんが着ている服から全員海自の乗員だと分かる。

およそ340名の海自妖精さんが地下室に集まりちょっと窮屈になったので一部はふぶきの艤装にきびきびと入っていく。済んだところで妖精さんを説得することにした。

数十分後ー。艤装を修理することに合意したため互いに敬礼して海自妖精さんは次々と艤装に中に入っていく。色々とチェックをしていくのだそうだ。

ふぶきが約束したのは、ここの妖精さんと仲良くし情報はできるだけ伝えることだった。

現代とは異なる世界でいざこざが起きてしまっては、特に艤装のトラブルが起きてしまっては生き残るのは難しくなるためだ。

ふぶきの兵器は超アウトレンジから攻撃しなんでもこなす、まさにイージス(神の盾)艦なのだからだ。

その優位性が失われたら、機動性を得るために犠牲になった紙装甲では戦艦や重巡の砲撃はもってのほか、駆逐艦の砲ですら危うい。

 

「さて、妖精さんを説得できましたのでこれで修理ができるかと」

「ふぶきさん助かりました!私たちが言っても首を縦には振らなかったのでほんとどうしようかと…」

「そうね。あとふぶきちゃんは妖精さんに説得するときも先ほどの放送のように顔つきとかが変わるわね。」ギャップの違いにちょっとドキッとした明石であった。

「けど、大丈夫なんですかね。なにせ技術が違いますからしっかり直るかどうか…」

「そうよね。まぁそこはしっかりと分析しないと分かりませんが、久々に腕がなる仕事が来てワクワクしてます♪」やはり機械マニアというべきか夕張の目はキラキラと輝いていた。

聞くところによると、ふぶきの艤装はこのまま地下室で行うそうだ。ここでも直せることに驚きだが、秘匿性が高い兵装ばかりだから仕方ない。

後は夕張と妖精さんたちに任せて、二人はエレベーターで地上へと戻っていった。

時刻はとうに6時半を過ぎていて外に出るとだいぶ暗くなっている。

「ここまでつき合わせてもらってごめんね。だいぶ疲れたでしょう」明石は心配していた。それもそのはず、失神から目を覚ましたのは数時間前だからだ。

「いえ大丈夫です。それよりも艤装が直りそうということに安心しました」

「そうね…でもまた倒れては大変だから今日はここまでにしましょう。あっまだ貴方のお部屋とお風呂案内してなかったわね。提督に報告してからにしましょう」

「分かりました」潮の香りやフクロウの鳴き声を堪能しながら戻っていき提督に報告した。

 

 

「修理ができそうなのか。それはよかったな」提督は書類仕事を一旦休めてホッと息をついた。

「いえ、彼女の説得なしではできなかったことですよ。それにあの艤装は分からないことだらけなので協力して直していく予定です。」

そうか、と提督は頷き1枚の書類をふぶきに渡した。

それを受け取ると食堂やお風呂場、居酒屋等の場所、空いている時間が書かれたものだった。

暫くの間お世話になるであろうからこういうのは非常にありがたいものだ。

「へぇ居酒屋なんてあるんですね。鳳翔ってことはあの軽空母鳳翔が経営していたり?」

「その通り。鳳翔さんが作る料理は絶品だよ。特に海産物系は最強だね」

それもそのはず、幌筵島はオホーツク海に面し東カムチャッカ海流の通り道だ。寒流で栄養に富みプランクトンも豊富なため、それを目当てに魚、エビ、カニ等も沢山来て様々な食物連鎖が形成されている。

また昆布類も大きく成長するため良好な出汁がとれるのだとか。

食事は士気にも影響するためすごい大事なものだ。海という閉鎖された空間で唯一の楽しみである食事がまずいものだったらたまったものではないので、艦艇には食事を作る専任の隊員がいる。

「なるほど…でもよく獲れますね」ふぶきが疑問に思ったのは、深海棲艦がうろうろしているはずなのにこれほど質が高いものが獲れるのか。

「ここは沿岸漁業がメインだけどたまに沖合、遠洋に出たりする。しかし深海棲艦が現れてから遠洋漁業等は困難になった経緯がある。理由は単純、奴ら(深海棲艦)の縄張りに入った、もしくは近づいただけで問答無用に攻撃されたからだ。特にベーリング海辺りは悲惨だったらしい。過酷な環境に加え深海棲艦の襲来であそこの漁業はできなくなった。しかし今は制海権がほぼ奪還できて漁業は再開できたが万が一のために護衛は出しているのが現状だね」

提督はイスから立ち上がり書斎本棚から一つの分厚い資料を手にとった。

「これは北方海域で艦娘達が現れる前に起きた船舶の行方不明事件などを簡潔にまとめたものだ。これより詳しい資料は図書館に置いてあるが、簡潔にまとめてもこんなになるもんだ」もはや辞書か百科事典かと思うくらい分厚かった。

ふぶきにその資料を手渡すと思わず重っ、と声が出るほどだった。適当なページを開いてみると様々なメディアから切り取ったスクラップ資料のようなものであった。当時なにがあったのかを知るため、これからどうしていくべきか決めるため暫くの間借りることにした。

執務室をあとにし、まずこの資料を持ったまま歩き回るのは結構きついため先に部屋を案内することになった。

途中で何人かの艦娘とすれ違ったが、ほとんどが驚いた様子だったり二度見したり、慌てて敬礼した子もいた。

勿論ふぶきは敬礼で返したが、やはり秘書艦の方と似ているのだろう。明石さんが言うには駆逐艦サイズがいきなり重巡サイズになっていつの間に成長したんだしかも身長を除けば瓜二つだとのこと。

事前に新しい艦娘が発見されたことは伝えているそうだが明日頃には大きな騒ぎとなっている可能性もある。

「質問が殺到しそうだなぁ…」艦娘に囲まれて質問攻めされる未来が容易に想像できて苦笑した。

「まぁ新しい艦娘が来る、特に海外艦が来たときは好奇心などからで質疑する方が多いですね」明石も同情するように苦笑したが

「ですが、こういったコミュニケーションを取ることはすごい大事なことですよ。初めての印象も大事ですが、ここは戦場なんですよ。連携や指示がとれなければ生き残る確率はグッと低くなる。(一部には一人でやっちゃう子もいるけど内緒にしておこう)そういった意味でもコミュニケーションは重要していますし、あともしかしたら、明日帰れなくなる子もいるかもしれない。よくあるじゃないですか喧嘩して家を出たらその後事故にあって脳死状態になってあの時こうすればよかったとか。先ほどあったように漁業にでて深海棲艦に襲われて帰らぬ人となったとか。その資料にも書いてあるけど取り残された被害者家族の無念が切実に訴えられている。それは4年が経った今でも続いている。そういったのをなるべく艦娘達には経験してほしくはないの」

明石の熱がこもった訴えに私はただただ耳を傾けた。そしてその眼は初めて見る、真剣な眼差しそのものだった。

「おっと話が暗くなってごめんね。着いたわここが貴方の部屋よ」いつの間にか目的の部屋に着いたようなのでドアを開けるとやはりというかよく見かける寮の部屋という感じだが、思ったよりも広く感じられる。またきっきりと片付けられているため規律も高いことがうかがえた。

「使っていない部屋があったから急いで片付けたのよ。ちょっと色落ちとかしてるけどごめんね。もうすこししたら妖精さんたちが綺麗に改装する予定…あっその妖精さんで家具などの模様替えもできるけどなにか変えてほしい所はある?」

私は一通り部屋を見まわしたが、やはり目につくのがあの三段ベッドだろう。複数の人ーいや艦娘と暮らすなら効率がいいが今は一人。ここはお布団のほうがいいかな。

「すみませんあの三段ベッドを布団に変えてほしいかな…後できれば布団引く部分に畳が引ければ」ちょっと無理かなと思ったがそれくらいなら造作もないそうだ。

早速明石は妖精さん用の内線で呼ぶとあの時と同じようにどこからか妖精さんが現れてきたが。工廠で見た子とは少し異なるようで、家具を専門に扱う通称ー家具職人とよばれているそうだ。

手際よく模様替えをしていき、あっという間に要望通りのものが出来上がった。

(流石妖精さんッ。私たちにやれないことを平然とやっていける痺れる憧れry)と思ったのは内緒です。

「早い…ありがとうございます」作業を終えた妖精さんにお礼いうとまんざらでもない様子でお帰りになった。

「さて、私はそろそろ工廠に戻るから分からないことがあったらその内線で聞くか執務室に行けばいいですよ。あと、扉には貴方が今どこにいるか分かるマグネットシートと磁石を使った所在表を作っておいたわ」

「明石さんここまで色々としてくれて本当に感謝しています」深いお辞儀でお礼を伝えるとお礼なら提督にもね、と言ったが嬉しそうな顔でふぶきの部屋をあとにし工廠に軽い足取りで向かった。

 

一人になった部屋は静かでとても広くなった気がしたがそれは置いといて今後のことを考えなくてはならない。

ひいてくれたお布団に飛び込むように寝ころぶと悶々と考えてしまう。

仲間のこともとても気になり今すぐでも捜索したいが、肝心の艤装が修理中だから動けないためとても歯がゆい。

考え込んでも仕方ないので、先ほど借りた分厚い資料を読むことにした。寝転がったままでは体に悪いので近くにあった椅子と机を使って読むことにした。

1ページから順番に見ていくと最初の頃は単なる海難事故なのではないかと報道されていた。

しかし漁船だけだはなく貨物船や客船等が何らかの原因で消え、しかも月々とペースが上がっていくグラフもある。

そして運よく生き残った人の証言をまとめると皆口揃えて“見たこともない漆黒のような怪物がいた” “人のようだが人じゃない”と。写真ではなくイラストで描かれていたがどれも未知の物しか見えない。宇宙人だの秘匿兵器だのと的外れなものばかりだが仕方ないだろう。

中には先ほど提督が言った通り、海に投げ出された人を容赦なく機銃などで攻撃されたり喰われたりもして、一部には精神がおかしくなったのもいたそうだ。ここには単なる精神崩壊と描かれていたということはまだ精神医学は発達していないのではないか?と判断した。

実際ASD(急性ストレス障害)やPTSD(心的外傷後ストレス障害)が軍事で広く研究されるようになったのは80年代のベトナム戦争からだ。アメリカ軍の帰投兵が社会復帰後に深刻な心理的障害を示し医学会で研究されるようになった経緯がある。

そんなことを思いつつじっくりと見ていくと事態を重く見た各国が軍を派遣し護衛もしくは殲滅する動きがある記事を見つけた。

しかし別の記事をよく読むと私は資料をそっと閉じた。

 

「この時代にもいるのか…」 はぁっと小さくため息ついて椅子から立ち上がった。。

 

 

なぜならその記事にはこう書かれていた。

 

 

“話し合いで敵意がないことを示して平和協定結ぶべき”

“軍の派遣反対。生物を殺すなまずは交渉のテーブルに”

“アジアの平和が乱れる。襲撃を名目とした日本の軍備再建が目的では”

“静観か捕獲をするべきではないか”

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「まさに“戦後は続くよどこまでも”」誰もいないのにぼそりと呟き、窓辺に行き遠くの海を見つめ、ため息が窓ガラスを白く曇らせた。

 




やっと投稿できてホッとしました。

最後のふぶきのセリフですがシン・ゴジラでの主人公矢口蘭堂が赤坂秀樹内閣官房長官代理に対し「戦後は続くよどこまでも」と発言したシーンです。
本来のシーンとはかけ離れてますが、それぞれの歴史が違えどやはりここにもいるようです。

今後も所々に色々なオマージュを入れる予定です。タグ増やそうかな
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