Fate/EXTERIOR   作:ニカワ信者

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 今日はなんの日?
 聖ウァテンティヌスがクラウディウス二世に絞首刑に処され殉教した悲しい日であって、恋人達の行事の日では
決してありません!!!!!!

 えー。感想や評価、並びに誤字報告などを下さった皆々様、本当にありがとうございます。
 全無視する形になっちゃってますが、普段が空気作家なので、ビビってどう返事していいか分からないだけです。ご勘弁を。一話更新しただけで三十以上とか初めてなんよ……。
 お詫びと言ってはなんですけども、ニカワ信者からの新話をプレゼントで御座います。
 どんな話かって? 日付と予約投稿した時間を見るが良いよ(血涙)。




第三話

 

 

 

 “彼”の行動は、この量子虚構世界──SE.RA.PHにおいて、全くの無駄でしかない行為だった。

 ザク、ザク、ザクと。石で地面を掘る、男性の後ろ姿。

 ごく普通のシャツとズボンを着るその人は、無心に地面を掘っている。

 すぐ側に立つ私の存在にも気付かぬほど、一心不乱に。

 

 

「あの……」

 

 

 何故だろう。私は“彼”に声を掛けていた。

 思考ルーチンに異常をきたしただけのNPC……かも知れない人物が、妙に気になって仕方なかったのだ。

 

 

「なんですか」

 

 

 振り返った男性の顔に、呼吸を忘れる。

 なんの変哲も、特徴もない。まさしく平凡な顔立ちを彩っていたのは、深い影だった。

 そう、影。

 トワイス・ピースマンの抱えた歪みでもなく、殺生院キアラの見出した昏い欲望でもなく、アルキメデスの目指した狂気でもなく。

 誰もが胸に宿しうる、負の感情。その影だと感じた。

 

 

「………………」

 

 

 押し黙っていると、“彼”はそのまま作業に戻ってしまう。

 地面に、小さな首輪が置かれていた。墓標を立てようとしている……のだろう。

 さっきも言ったけれど、全くもって無駄な行為だ。

 

 SE.RA.PHにおいて、死とは消滅そのもの。

 情報体でしかない私達は、それを定義付ける命を失った途端、意味消失して塵と消える運命。

 いや、きっと塵すら残らない。肉体を構成していた霊子は、最小単位まで分解された後、世界に満ちる情報資源(リソース)となる。

 ムーンセルが運営する月において、輪廻転生とは、冷酷なまでのリサイクルシステムに過ぎないのだから。

 

 “彼”がそれを理解しているかは分からない。

 そもそも、最近になって現れ始めた人間なのか、NPCなのかすら、分からない。それ程までに、生命の気配が薄かった。

 拒絶されているのだ。このまま立ち去ったって、誰も文句を言わないだろう。

 せっかく霊子ヒドゥンを駆使し、セイバーとキャスターの求愛行動から逃れて来たのだから、平和な世界を思う存分に散歩して、心をリフレッシュするべき。

 

 でも。

 

 

「……あの」

 

 

 私はもう一度、“彼”に声を掛ける。

 反応はない。

 それでも諦めず、隣に座り込んで、また。

 

 

「私にも、手伝わせて貰えませんか」

 

 

 覗き込むようにして言うと、ようやく目が合った。

 深い影に彩られた、黒い瞳。

 ただただ、悲しそうな瞳。

 隠すように伏せられた顔から、透明な雫が零れ落ちる。

 それに気付かないフリをして、私は手近な石を手に取り、動きを止めてしまった“彼”の代わりに、小さなお墓を掘る。

 

 “彼”の行為は、SE.RA.PHにおいて無駄でしかない。

 でも、人にとって無意味な行為ではないと。

 私には、そう思えた。

 

 

 

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

 

 

 

「では、私は仕入れに行ってこよう。後を頼む」

 

 

 はい。行ってらっしゃいませ、言峰社長。

 

 慇懃な態度で、こじんまりした事務所のドアをくぐる、黒服の男性。

 それを見送りつつ、自分はデスクから立ち上がり、頭を下げた。

 パタン。

 ドアの閉まる音を確認してから姿勢を正すと、もう事務所の出入り口に人の気配はない。相変わらず、忍者みたいな人だな……。

 

 ここは、自分の仕事場。言峰商会(ことみねしょうかい)の事務所。その受付である。

 先程の男性──言峰 綺礼(ことみね きれい)さんが立ち上げた、従業員十名ほどの小さな会社であり、SE.RA.PHを行き交う物流を監視し、時に管理し、正常な商取引きのサポートをするのが主な業務である。

 どこに何があり、誰に所有権があり、これからどこへ向かい、誰が何を求めているのか。

 情報を欲している団体の依頼を受け、それを提供する。

 時々、「これが欲しいんだけど」という直接の依頼もあり、社長が動くのはこういう案件だ。

 

 こう説明すると小難しく感じられるかも知れないが、実際にはそう難しくもなかったりする。

 何せ霊子虚構世界。あらゆる物が情報(データ)で構成されているから、然るべき情報網さえあれば、簡単に把握できるのだ。

 まぁ、その情報網を確立するのが普通は難しいんだけれども、この職場では最初から確立されていたし、それを扱うためのツールもあったので、大して苦労した覚えがなかった。

 それというのも……。

 

 

「もう出立なされたんですか、社長は」

 

 

 社長と入れ替わるように入室してきた、釣り目がちな年若い少女のおかげだ。

 長風 紀(おさかぜ のり)

 ポニーテールと眼鏡、腕に抱えたタブレット端末が特徴の彼女は、かつて聖杯戦争の舞台であった、月海原学園のNPCだったらしい。現に今も学生服を着ている。

 そうとは思えないほど人間味に溢れているため、自分は普通に接していた。

 というか、この会社で雇っている他のNPCの人達も、ちょっとばかり意志薄弱で無口で存在感が薄いだけで、普通の人と変わらないように感じるのだが、それはそれとして。

 彼女こそ、情報収集・集積管理・分析を行うプログラムの製作者であり、監督役だ。

 怒ると高飛車な言動をみせるものの、非常に頭の回転が早く、副社長の任に就いている。

 

 ちなみに、自分は長風さんの作ったプログラムを使い、雑務をこなしているだけ。

 それだってNPCの皆が頑張ってくれちゃうので、来客の応対や事務所の掃除などが、実質的な自分の仕事だった。

 この間みたく、一日泊まり掛けの仕事というのは、けっこう珍しいケースなのだ。

 さて。いい加減、長風さんに返事しないとな。

 

 はい、副社長。たった今、お出かけになられました。

 

 

「なら良いですけど。……時に、奈々篠さん」

 

 

 はい? なんですか、副社長。

 

 

「副社長という役職で呼ぶのは止めて欲しいと、前に言ったはずですが」

 

 

 ツイ、と眼鏡のつるを指で押し上げ、長風さんが眼を光らせる。

 怒ってはいないけれど、ほんのり不機嫌な時に見せる仕草だ。

 な、なんでいきなり御機嫌ナナメなんだろう。

 

 でも、役職的には副社長の方が上ですし、能力的に見ても……。

 

 

「そういうのはどうでも良いんです! というか、貴方は嫌じゃないんですかっ。年下の女に謙るなんて、情けな……あ、いえ。その」

 

 

 ビシバシと強い口調で語っていた長風さんだが、不意に口元を手で覆い、申し訳なさそうな上目遣いをこちらへ。

 勢いで罵ってしまったのが気不味いんだと思われる。実に分かりやすい。

 特に気にもしてなかったので、自分は彼女に安心してもらうべく、愛想笑いを浮かべる。

 

 別に、自分は気にしてませんよ。

 長風さんは副社長で、自分はその部下。それが一番の適材適所だし。

 仕事には厳しいけど、むやみやたらと威張り散らしたりしない人だって、知ってますから。

 

 

「だから、そういうのを止めて欲しいと……。それに、苗字じゃなくて……」

 

 

 ……? すみません、最後の方、聞き取れなかったんですが……?

 

 

「もういいですっ! そんな事より、社長の留守を任されてるんですから、仕事仕事!」

 

 

 はいはい。分かってますよ、副社長。

 

 

「“はい”は一回で!」

 

 

 何時もの調子を取り戻した長風さんに、首をすくめつつ、はい……と返事。

 やっぱり、彼女のハキハキとした声を聞かないと、仕事が始まった気がしない。

 ……Mじゃないですよ、自分。好きな人には押し倒されてばっかだけど。

 

 とまぁ、こんな感じで一日が始まり、長風さんの指示に従って庶務をこなすこと数時間。

 もうすぐお昼という頃合いになって、事務所のインターホンが「ピンポーン」と鳴った。来客のようだ。

 

 

「ごめんなさい、私、今は手が離せないので。奈々篠さん、応対して貰えますか」

 

 

 了解です。

 

 受付の更に奥に居る長風さんに了承の返事をし、自分は席を立つ。

 セキュリティーを考え、ドアはオートロックになっているので、従業員による出迎えは必須なのだ。

 加えて、ドアを開ける前に外部カメラで不審人物でないかを確認してから、という面倒な手順も必要になるが、扱っている商品が商品だし、警戒するに越した事はない。

 無駄に広い応接スペースを横切り、事務所入り口に辿り着いた自分は、ドアの脇にある端末の受話器を耳に当て、来訪者への応対を始める。

 

 大変お待たせ致しました。言峰商会に御用で……?

 

 

「恐れ入る。ここの社員に用が……む? その声……」

 

 

 ──のだが、同時に端末の画面が映し出した人物は、見覚えのある人物だった。

 赤い外套。短く刈り上げた白髪。浅黒い肌。鋭い眼光。

 これだけの特徴を併せ持つのは、あの人しか思い浮かばない。

 

 貴方は、“彼女”の……。

 

 

「うむ。幾度か会った事があるが、覚えていたなら話が早い」

 

 

 あ、ですよね。名前は確か……紅茶さん?

 

 

「アーチャーだ! それは、私と別のアーチャーを区別するのに使われた俗称だっ」

 

 

 えっ。ああっ、すみません!

 セイバーさんとかがそう呼んでたもので、変だなぁとは思いつつ、そういうお名前なのかと……。

 

 

「全く、あの赤セイバーめ……」

 

 

 深い溜め息と共に、カメラ越しの紅茶さん──じゃなかった、アーチャーさんが額に手を当てる。

 や、やってしまった……。人の名前を間違えるとか、こういう商売じゃ致命的だ。

 今回はアーチャーさんが相手だから大丈夫……だと思いたいけど、二度とないように気を引き締めないと。

 でも、ひとまず反省は後回し。早めに用件を確認せねば。

 

 それで、どのような御用件でしょうか。あいにく、社長は留守でして……。

 

 

「いや。先程も言ったが、ここの社員──君に用があって来たのだ。私“達”は」

 

 

 自分に? ……達?

 

 

「ああ」

 

 うなずき返すアーチャーさんに、こちらは首をかしげるばかり。

 彼に名指しされたのも疑問だが、達という事は、誰かと連れ立っているんだろうか。

 ……考えていても仕方ない。害意のある人じゃないのは確実なんだから、直接顔を合わせて確かめよう。

 少々お待ち下さい、と断りを入れて、自分は受話器を端末に戻し、すぐ側のドアを引き開ける。

 正面に立つ、自分よりも背の高いアーチャーさんと目が合った。

 お互い軽く会釈を交わし、けれど、彼はすぐに体を半身ほどズラす。

 背後に居たのは──

 

 

「こんにちは、ナナシさん。来ちゃいました」

 

 

 ──突撃訪問の常套句を笑顔で言う、白い幼子。アルテラちゃんだった。

 予想外な人物の登場に困惑しつつも、こんにちは、と返し、膝をついて視線の高さを同じに。

 

 どうしたんだい、こんな所まで。初めてだよね、こういうの。

 

 

「えっとですね。わすれものを、とどけに来たんです。……はい、どうぞ!」

 

 

 これは……。

 

 どこからともなくアルテラちゃんが取り出したのは、その手には大きく見える、緑色の布に包まれた物体。

 見覚えのあるサイズ。確かめずとも、何なのか分かった。

 ズバリ、“彼女”が作ってくれたお弁当だ。

 ちゃんと情報化して、アイテムボックスに格納したと思っていたのだが、こうして目の前にあるのだから、つい忘れてしまったのだろう。今日は凡ミスが多いな……?

 

 ありがとう、アルテラちゃん。うっかりしてた。

 君が持って来てくれなかったら、ひもじい思いをする所だったよ。

 

 

「わたし、お役に立てましたか? マスターにも、ほめてもらえますか?」

 

 

 うん。もちろん。

 

 

「えへへへへ。やりました!」

 

 

 太鼓判を押してあげると、パァっと明るい笑顔が咲いた。

 ああもう、アルテラちゃんは可愛いなぁ。

 許されるなら頭を撫でくり回したいくらいだ。不審者まっしぐらなのでやりませんが。

 しかし、この子が届け物に来たって事は、アーチャーさんは……?

 いくら剣兵のサーヴァントとはいえ、アルテラちゃんは純真無垢で、精神的にもまだ幼い。多分、付き添いなんだろう。

 自分は弁当片手に立ち上がり、彼に改めて頭を下げる。

 

 アルテラちゃんの付き添い、ありがとうございました。

 よかったら、上がって行って貰えませんか? 取って置きのお茶を淹れますから。

 

 

「いや。君の言う取って置きには興味があるし、気遣いも有り難いのだが、結構だ。実はまだ、渡すものがあってな」

 

 

 申し出に丁寧な断りを入れてから、アーチャーさんがふと、上の方へ目線を逸らす。

 向けられた先に、あえて自己主張させてある監視カメラ。

 なんだろうと思ったが、質問するより先に、彼の方から話が振られた。

 

 

「出来れば、人目につかず、落ち着いて話のできる場所が良い。もうすぐ昼時だろう? 悪いが、ご足労願えるだろうか」

 

 

 人目につかず、落ち着いて話のできる場所……。

 これで相手が美少女だったなら、もしや告白か!? と馬鹿な考えも浮かぶけれど、精悍な偉丈夫が相手では勘違いのしようもない。

 お腹も空いてるし、言われた通り時間も丁度良い。長風さんに許可を貰って来ますかね。

 

 分かりました。同僚に断りを入れてきますから、申しわけありませんが、少しだけお待ち頂けますか?

 

 

「すまない。それと、私相手に謙る必要はないぞ。なにせ君は、“彼女”のお気に入りだからな」

 

 

 はぁ……。そういうもの、でしょうか……?

 

 なんとも答えに困る返しを、曖昧な笑顔で誤魔化して、事務所へ一旦戻る。

 謙るなと言われても、良い意味でセイバーさん達とは違う雰囲気だから、勝手に背筋が伸びるというか、大人な対応の方が楽というか……。

 ま、今はそれより、外出許可だ。

 自分用のデスク近くまで進むと、長風さんの方から話しかけてくれた。

 

 

「少し遅かったですね。もしや、またロクでもないゴロツキでしたか?」

 

 

 もともと鋭角気味な彼女の眉の間に、更に不機嫌そうなシワが寄る。

 というのも、この事務所、その道の人々には有名な存在らしく、それを嗅ぎつけた不良NPC──この場合、品質ではなく素行の事を指す──が、ちょっかいを掛けにくる事が割りとあるのだ。

 そういう場合、大抵はカメラ越しの押し問答の末、社長が施した防衛機構で御退場願うことが多い。

 落とし穴形式のトラップで、なぜだか落ちる速度が妙に遅く、「デデッデデッデー」という効果音が鳴る。合言葉は没シュート! である。

 ともあれ、今回は違ったのだから、誤解を解かないと。

 

 すみません、違うんです。

 お世話になってる所の人が、わざわざ忘れ物を届けてくれて。

 それで……。

 

 

「ああ、なるほど。でしたら、そのまま帰ってもらうのもなんですし、丁度いい時間です。早めにお昼、行ってきて下さい」

 

 

 言わんとする事を察したのか、長風さんはデスクトップPCの画面を見つめたまま、外出許可を出してくれた。

 やっぱり彼女、気配り上手だ。

 これでお客さんへの愛想笑いが出来たら、自分も楽に……いや、そうなったら自分がクビになるか。それは勘弁。

 

 ありがとうございます。

 それじゃあ、お言葉に甘えて、失礼させてもらいますね。

 

 

「ええ。ごゆっくり」

 

 

 変わらず画面を見たまま、そっけなく送り出してくれる長風さん。

 口調はアレだけど、実は「行ってきます」とか「お帰りなさい」の挨拶が照れ臭いだけだったりする。“彼女”とは違った意味で難儀な子である。

 そんな副社長に向けて、行ってきます、と心の中で呟いてから、自分はアーチャーさん達の元へ。

 

 どうも、お待たせしました。

 

 

「うむ。では行こう。近くに良い店がある。アルテラ」

 

「はーい」

 

 

 たくましい背中が、自分達を先導して歩き出す。

 アルテラちゃんと二人、並んでその後を追うのだが……。

 一体、どこへ行くんだろう?

 

 

 

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

 

 

 

 アーチャーさんに案内されたのは、喫茶コペンハーゲン・ダッシュという名の喫茶店だった。

 こじんまりとした佇まいながら、シックな内装と、控えめに流れるクラシック音楽のおかげで、趣深い雰囲気を漂わせている。

 ……けれども、店名から迸るパチ物臭が、如何ともし難い残念感を引き立てていた。昼時だというのに、お客さんの姿も少ない。

 何故にダッシュを付けたのさ。

 

 にしても、良かったんですかね。弁当を持ち込んだりしても……。

 

 

「持ち込みOKと張り紙がしてあっただろう。問題ないさ。……アルテラ、もっとゆっくり食べるといい」

 

「むぐ、っぐ……。ごめんなふぁい、おとうふぁん」

 

「誰がお父さんかっ」

 

 

 入り口からの視線が届かない、奥まったテーブル席。

 自分はコーヒーを頼んで“彼女”の手作り弁当を。

 アーチャーさんは紅茶、アルテラちゃんはナポリタンをモッシャモッシャと食べている。

 う~む。白髪に褐色の肌。事情を知らなければ、親子にしか見えないよ。この二人。

 

 

「さて。唐突だが、これから私が言う前置きを、よく聞いてくれ」

 

 

 アルテラちゃんの口元を紙ナプキンで拭き終えて、今度はこちらを見据えるお父さん。もといアーチャーさん。

 その真剣さに釣られ、自分も思わず姿勢を正す。

 

 

「私はこれから“ある物”を君に渡すが、それは私が用意したものではなく、あくまで代理として渡すだけだ。決して他意はないし、誤解もしないで欲しい。良いだろうか?」

 

 

 ……事情はよく分かりませんけど、言わんとする事は理解しました。

 

 

「よし。では……受け取るといい」

 

 

 自分が頷いたのを確認すると、彼は右手を、掌を上に差し出した。

 ラッピングされた箱が乗せられている。

 形状はハート。色はピンク。真っ赤なリボンは蝶々結び。

 そして唐突に思い出す。今日の日付は、二月十四日。ヴァレンタイン・デー。

 きっと中身は──チョコレート。

 

 アーチャーさん……。これ……。

 

 

「言われる前に繰り返すが、決して私が用意したものではないからな。

 友チョコという風習があるのも知っているが、それとも違うからなっ」

 

 

 いや、そんな力説しなくても分かりますってば。

 

 あまりにも必死なアーチャーさんに、自分は苦笑いを浮かべてしまう。

 男が男にヴァレンタインのチョコを作って渡すなんて、あり得………………なくもないのが怖いけど。今の時代。

 ついさっき本格的に知り合った自分達の間には………………以前からの片思いという可能性があるか。

 いやいやいやいやいや、何を考えてるんだ自分は。常識的に考えてあり得ないってば。

 それに、自分にチョコを贈ってくれる女性なら、一人だけ心当たりもあるし!

 

 ……“彼女”から、と考えて、良いんですよね?

 

 

「……そうだ。こんな形で渡すのを、“彼女”も不本意に思っているようなのだが、これも作戦でな」

 

 

 作戦? と首を傾げると、アーチャーさんが大きく頷く。

 

 

「普通にチョコを渡そうとしても、セイバーとキャスターに邪魔される可能性が高いだろう?

 そこで、あえて彼女達用のチョコを一つだけ用意し、カルナに預けた上で、争奪戦をさせている。

 その隙に、わざと渡し忘れた弁当を届ける影で、本命のチョコを私とアルテラが渡す……という手筈だ」

 

 

 なるほど。そっか、わざとだったんですね……。

 

 言われてみれば、もっともな話だ。

 自分が“彼女”からのチョコを貰う場面に、セイバーさんとキャスターさんが居合わせたら。

 修羅場が発生するのは火を見るよりも明らかである。

 それを未然に防ぐため、擬似餌でサーヴァント達を誘い出している訳か。

 

 大丈夫なんでしょうか、そのカルナさん。

 時々、宮殿エリアで見かけてた線の細い……ビジュアル系の人ですよね?

 

 

「……まぁ、その認識で間違ってはいないが。

 問題ない。カルナはSE.RA.PHに顕現しているサーヴァントの中でも、最強の部類だ。

 セイバー達が本気を出したとして、勝てる確率は低いだろう」

 

 

 でも、“彼女”のチョコを奪うためなら、あの二人、なんの躊躇いもなく反則行為とかしそうな気がするんですけど。噂に聞く王権行使とか。本当に大丈夫……なんですよね?

 

 

「……そんな事より、早くチョコを食べてやるといい。食べたのを確認するまで帰れないのでな」

 

 

 誤魔化しました? アーチャーさん誤魔化しましたよね、今。

 

 彼は紅茶のカップを傾け、優雅に明後日の方向へと目を向けている。

 いくらカルナさんとやらが強くても、ムーンセル──世界そのものから支援を受けたサーヴァント二騎相手では、分が悪いのかも知れない。

 そこはかとなく不安と罪悪感が湧き上がるけれど、自分に出来ることなんて、それこそ無い。ここは素直にカルナさんに合掌して、“彼女”からのチョコを頂こう。

 

 ピンクの包み紙を破かないよう、丁寧に解いていくと、黒い無地の紙箱が現れる。

 大きなる期待と共に開ければ、ハート型のチョコレートの上に、装飾用ホワイトチョコで「Happy Valentine!」と書かれていた。

 ……うん。別に、落胆はしてませんよ。

 Lから始まる四文字を期待してた訳じゃ……嘘です。メチャ期待してましたです、はい。

 まぁ、アーチャーさんとかに見られるのを恥ずかしがった、のかも。そう思っておこう。

 

 では、頂きます。

 

 

「うむ」

 

「……いいなぁ。アルテラも食べたい、です」

 

「我慢しなさい。家に帰れば、“彼女”が用意してくれているから」

 

「はぁい、パパ」

 

「誰がパパかっ」

 

 

 かじるのも惜しいような、そんな気持ちでチョコを手に持つと、アルテラちゃんが物欲しそうな顔で指を咥える。

 アーチャーさんが窘めるも、パパ呼びに突っ込まざるを得ないようだ。

 じゃれ合っている姿は本当に親子っぽくて、なんだか、おかしくなってしまう。

 

 

「……どうした。食べないのか」

 

 

 あ、いえ。アーチャーさん、信頼されてるんだな、と思って。

 

 

「信頼?」

 

 

 ええ。アルテラちゃんもそうでしょうけど……。“彼女”からも。

 こういう、想いを込めた物を託されるって、相手から信じて貰えてないと、無理な事ですから。

 自分は、その。何がどう転んだのか、“彼女”に好いて貰ってるみたいですけど、サーヴァントみたいな“力”は無いし。

 だからちょっと、“彼女”の助けになれる皆さんが羨ましいな……とか思っちゃいまして。あはは。

 

 

「………………」

 

 

 沈黙。

 自分でも、妙なことを口走っている自覚はあって、笑って誤魔化そうとしたが、失敗してしまった。

 どうしてこんな話を……? “彼女”の側で、共に戦える男性への嫉妬?

 大好きな女の子からチョコを貰ったんだ。

 手放しで喜ぶべきなのに、胸の奥がモヤモヤしていた。

 

 

「何を言うかと思えば、全く。よもや、そんな事を考えているとはな」

 

 

 そんな様子を見て、アーチャーさんは腕組みをしつつ、深く溜め息をつく。

 呆れ果てた。

 彼の瞳が、そう告げている。

 

 

「その分だと、自分に戦う力が無い事を恥じているんだろう。

 何かあった時、“彼女”の助けにはなれないと。足手まといにしかならない、と。

 ……敢えて強い言葉で言おう。馬鹿か、君は」

 

 

 叱責するような、重く鋭い声。

 驚きで、自分は目を丸くする。

 叱られた事に驚いているのではない。たったあれだけの言葉のやり取りで、胸の内を正確に計られた事に、驚いていた。

 言われてみれば納得だ。

 自分は、自分の弱さを歯痒く思っている。

 サーヴァントという存在と、ただの人間である自分とを比べ、劣等感を覚えている。

 そもそも、比べる事自体がおこがましいのに。

 

 

「確かに、“彼女”の未来には、これからも戦いの影がつき纏うだろう。

 SE.RA.PHの平和を乱す者。王権を奪えると勘違いした者。そんな輩は必ず出てくる。

 その時、君が前線に立てない事は間違いない。たとえ立ったとしても、邪魔にしかならん。

 ……だがな」

 

 

 続くアーチャーさんの言い分は、厳しくも正しい、まさしく正論。

 けれど、その声音から、不意に険が取れる。

 

 

「“彼女”の未来に、戦いしか残されていない訳ではない。

 何もない穏やかな日々が。平穏無事な日常があって、おかしくはない。

 いや、なくてはならないんだ。

 しかし……。その時、隣に居るのが我々では、きっと駄目なんだよ」

 

 

 自嘲染みた笑みを浮かべ、アーチャーさんは遠くを見つめた。

 彼が見ているのは、戦いの日々ではないのだろう。

 彼が見たいと思っているのは、そんなものとは──サーヴァントとしての存在意義とは掛け離れた、安らかなる日々。

 そうでなければ、自分は彼の瞳を、優しいとは感じられなかっただろうから。

 

 

「“彼女”は月の絶対覇者。けれど、同時に年頃の少女だ。

 戦場で我々が隣に立つように、日常で隣に立つ者が必要なんだ。

 ……君は知らんだろうが、“彼女”はウロウロとそこらを歩き回り、戦々恐々としていたぞ?

 ちゃんと受け取って貰えるだろうか。美味しいと言って貰えるだろうか、とな。

 どんな敵を前にしても挫けぬ、鋼の精神を持つ“彼女”が。あんな姿は、初めてさ」

 

 

 小さく「ふっ」と、思い出し笑いをするアーチャーさん。

 それを消さないまま、彼はまた、こちらを見つめる。

 分不相応な嫉妬を抱える愚かな男を、信頼しているかのような眼で。

 

 

「もっと胸を張るといい。

 君は確かに、“彼女”の隣に立っている。

 月の王権代行者ではなく、ごく普通の、少女の隣で生きている。

 そこは、私達にはもう、辿り着けない場所だ」

 

 

 彼はハッキリと、断言して締めくくる。

 その言葉には、祈りにも似た“何か”が、込められているように思えた。

 今、この時代を生きる生命に対する、願いのような。

 自然と、自分は笑っていた。

 

 

「何を笑っている」

 

 

 “彼女”がアーチャーさんを信頼する理由、分かった気がして。

 ……ありがとうございます。

 

 

「……説教されて礼を言うとは、変わり者だな。やはり、君達は似合いのカップルだよ」

 

 

 皮肉を口にしつつ、紅茶のカップに隠される直前、口元には緩やかな弧が描かれていた。……と、思う。

 様子を伺っていたらしいアルテラちゃんも、安心したのか、ニコニコと微笑む。

 こうして、自分の記憶にある限り、生まれて初めて過ごす二月十四日は。

 生まれて初めてのヴァレンタイン・チョコレートと、新しい友人を得る、輝かしい記念日となったのだ。

 

 ……うん。チョコ、甘くて美味しい。

 

 

 

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

 

 

 

「無事、渡し終えたようだな。アーチャー」

 

 

 唐突に、並んで歩くアーチャーとアルテラへと、声が掛けられた。

 青年と別れ、帰路に着いて数分と経っていない頃である。

 待ち受けていたのだろうその人物は、言うなれば、絶世の美男子であった。

 絹のように艶やかな白髪と、鋭く切れ長な眼。

 血が通っていないかのように白い肌を、黒装束と華美な黄金の鎧で包む出で立ちは、ごく一般的な二十一世紀の街並みから浮かび上がり、尋常ならざる存在感を放つ。

 名を、カルナ。

 SE.RA.PHに現界する、特Aランクのサーヴァントだ。

 

 

「カルナ、か。セイバー達はどうした」

 

「おそらく、今も戦っている。

 囮のチョコを持って逃げるのが、オレに与えられた任務。

 しかし、その囮がセイバーとキャスターの攻撃の余波で消し炭になってな。やれ『お主のせいだ!』、やれ『貴方のせいです!』と罵り合い始めた。

 もうこちらの事など眼中にない様子だったので、これ以上は不要と判断し、こうして退避してきた訳だ。

 あの勢いならば、明日の今頃までは戦い続けるだろう」

 

「……あの二人らしい、といえば、そうなのだろうが……」

 

 

 互いに責任転嫁しながら、周囲の迷惑も考えず、全力でバトルする赤と青のサーヴァント。

 その姿が目に浮かぶようで、アーチャーは頭を抱えた。

 こんにちは、と挨拶を交わすアルテラ・カルナの隣で、周辺にNPCが居ないよう祈ってしまう。

 

 

「それより、アーチャー。お前の方こそどうしたのだ。気落ちしているように見えたが」

 

「ん……? 気のせいではないか。別段、気分が落ち込むような事は起きていない」

 

「いや、確かにそう感じた。例えるなら……。

 小さい頃から兄と慕ってくれていた隣の家の娘に恋人が出来て、初めて自分の気持ちに気付いたものの、その幸せを願って身を引こうとする男のような。

 そんな雰囲気だった」

 

「やけに具体的だなっ。いつもの寡黙さはどこへ行った!」

 

「む。言葉足らずで誤解させてはマズいと思い、可能な限り言葉を尽くしてみたのだが……。やはり難しいな」

 

 

 三人、歩きながらの雑談の中で、相変わらず人を食った物言いのカルナに、アーチャーは突っ込まざるを得ない。

 どうせかつてのマスター(ジナコ・カリギリ)に何か言われたのだろうが、いい迷惑である。

 ちなみに、さっきから黙っているアルテラだが、カルナに貰った棒付きキャンディーを一生懸命に食している。

 会話に加わった所で、場の属性が混沌に近づくだけであろうから、これだけは怪我の功名か。

 

 

「“彼女”と、“彼”の事だろう。気に掛けているのは」

 

「………………」

 

 

 現れた時と同じく、カルナは唐突に、ふざけ半分だった空気を切り捨てる。

 本当に、事の核心を突くのが上手い男だ。

 そう。カルナは確かに言い当てている。

 ボウっと、街中を歩きながら考えていたのは、あの、歳若い恋人未満な二人のことだったのだから。

 

 

「直接話した事はないが、“彼女”が選んだ男だ。心配は要らないと思うが……」

 

「心配? 心配などしていない。

 ああ見えて、“彼女”の人を見る目は確かだし、“彼”の実直さは得難いものだ。

 むしろ、ホッとしているよ。“彼女”にも乙女らしい部分があったのだとな」

 

 

 ニヒルに口元を歪め、アーチャーが肩をすくめた。

 アーチャーの知る“彼女”と、この世界に存在する“彼女”とは、厳密には同じ存在ではないと思われる。

 が、少なくとも、性根の部分では全く変化がないと、アーチャーは感じている。

 “彼女”はやはり“彼女”で、だからこそ、違う。

 

 見た事がなかった。

 誰かに想いを寄せ、その事に苦悩する姿など。

 喜ぶべき事だ。

 偽りの学生生活から始まり、戦いの中で自己を確立していった“彼女”の、新しい門出とも言える。

 

 “彼女”に想われる青年とも言葉を交わして、頼りない部分はあるものの、善人であると確信もできた。

 誰かが悪意を以て邪魔しない限り、彼等は遠くない未来で結ばれるだろう。

 セイバーやキャスターだって、心の奥底では“彼”を認めているに違いない。

 そうでなければ、仮宿とはいえ、一つ屋根の下で生活する事を認めはしないはず。

 まぁ、結ばれるまでの間に、無駄な障害物競走を幾重にも仕掛けそうではあるが、いざとなれば、多分……。きっと……。おそらく……。

 

 ともあれ。

 戦いの中で絆を育むしかなかった“彼女”が、戦い以外で──平穏な日常の中で、ようやく掴んだ絆だ。

 成就するまで影から見守りたいというのは、アーチャーの偽らざる本心である。

 ……しかし。

 

 

「ただ……。そうだな。認めるのは癪に触るが、柄にもなく……寂しいのだろう、私は」

 

 

 カルナに言われた表現とは違うけれど、一抹の寂しさを感じているのも、また事実なのだろう。

 雛鳥の巣立ちを間近に控えた、親鳥のような。

 本当に、柄にもない心境にさせられていた。

 青空が眼に沁みる。

 

 と、そんな時。アーチャーの手が引かれた。

 黙って話を聞いていたはずの、アルテラ。

 言いたい事でもあるのか、何度も手を引く。

 求めに応じ、視線の高さを合わせ、話を聞く体勢になるアーチャーだったが、アルテラは何も言わず。

 ただ優しく、アーチャーの頭を撫で始める。

 

 

「さびしいのは、ダメです。アルテラが、なぐさめてあげます。だから、元気だしてください。……ダディ?」

 

「誰がダディかっ。ワザとか? ワザとなんだな君はっ!」

 

「きゃー」

 

 

 いい雰囲気になるかと思いきや、脈絡のないダディ呼び。流石のアーチャーもクールでは居られない。

 けれど、アルテラは悪戯っ娘な笑みのまま、コロコロと笑い声を上げて走り出す。

 全く、どこであんなボケを覚えたのか。

 セイバーとキャスターの影響に違いないだろうが、あの有害指定サーヴァントめ。

 

 

「アーチャーよ」

 

「……なんだ」

 

「言って良いのか悪いのか、オレにはよく分からないが。今のお前は、楽しそうにも見えるぞ」

 

 

 心で毒づくアーチャーに、またしてもカルナが指摘する。

 言われて、ようやく気付いた。

 立ち上がるアーチャー自身が、自然な笑みを浮かべている事に。

 ……らしくもない。

 

 

「さて、ね。私はただの、弓兵の英霊だ。今更だろう、そんなこと」

 

「しかし“彼女”であれば、だからこそ望むのだろう。過去の残像でしかないオレ達にすら、“今を生きる”という事を」

 

「……かも知れないな」

 

 

 英霊とは、既に終わった存在だ。

 どれほど人に近しい存在だとしても、この時代に生きる正真正銘の人間とは、在り方が違う。

 だが、確かに。“彼女”であれば言いそうだった。

 どこまでもお人好しな、あのマスターであれば。

 

 

「お二人とも、どうしたんですかー? 早く帰って、マスターに“ほーこく”しなきゃ、ですよー!」

 

「呼んでいるぞ、アーチャー」

 

「……やれやれ。仕方ない、行くとしよう」

 

 

 振り返り、大きく手を振るアルテラに、アーチャーは苦笑いを浮かべ、肩をすくめて歩き出した。

 カルナもそれに続き、三人のサーヴァントは、並んで家路を急ぐ。

 その足取りは、意外なほどに軽かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《ザビ子性分が足りないという方々へ。先取りホワイト・デー》

 

 

 

 

 

 いつも通り仕事を終え、端末に設定されたドア型ポータルをくぐり。

 自分は、ローマ領域にある“彼女”の邸宅へと帰って来た。

 もう一ヶ月以上経つが、どうにもポータルをくぐる時の感覚に慣れない。

 エレベーターが動き出す時のような、あの不安定な感じに背筋がゾワッとするのだ。

 なんとかならないものか。

 

 ま、それはさて置き。

 今日は三月十四日。世に言う、ホワイト・デーである。

 きっと本命だろう(と思いたい)チョコを貰った身としては、お返ししないという選択肢は選べない。

 気合いを入れて事前に用意し、忙しない朝ではなく帰宅後に渡すつもりだった。

 つまり、今日これからが本番。

 

 長風さんへの……。

 一ヶ月前の帰宅直前に「あ、これどうぞ」と、素っ気なく渡された義理チョコへのお返しは、イメトレ通りに出来た。

 変に気負わなければ、“彼女”へのお返しも、きっと上手く行く。

 それでも若干の緊張は拭えず、深呼吸で気持ちを落ち着かせてから、ただいま、と玄関の奥へ呼び掛ける。

 

 少し間をおいて、パタパタとスリッパの足音が。

 出迎えてくれるのは、もちろん“彼女”。

 今日はいつものワンピースじゃなく、ブレザータイプの学生服の、黒いインナーの上にエプロンを着けているようだ。

 家事の途中だったのだろう。濡れた手をエプロンで拭いつつ、“彼女”は微かに微笑む。

 

 

「お帰りなさい。お風呂とご飯と私、ですよね? 分かってますよ」

 

 

 え? 全部乗せ?

 

 予想外な言葉で断言され、思わず目を丸くしてしまった。

 これまでも、新婚家庭の定番である「風呂・ご飯・私」の三択で遊ばれた事はあったが、このパターンは初めてだ。

 お風呂と、ご飯と、私……。

 いかんいかんいかんいかんいかんっ。不埒な想像をするんじゃない!

 風呂の床に敷かれたバスマットの上で刺身を女体盛りなんて、そんなのあり得ないからっ!!

 というか、人肌に温められた刺身とか、普通に不味いだろうし……。でも、一度くらいは食べてみたいような気も……。

 

 

「もしかして。エッチな想像、してます?」

 

 

 っは!? な、なんの事かなぁー。

 いやぁ、今日も疲れた疲れたー。

 

 ジト目に覗き込まれ、やっと正気に戻る。

 慌てて取り繕うのだが、“彼女”はニンマリ。小悪魔な笑みを浮かべたまま。

 ううむ。最近こういう、ちょっとエッチいネタでからかわれる事が多くなったな……。

 好きな女の子に弄ばれるとか、嬉し恥ずかしな経験ではあるのだけれども、反応に困る。

 ま、今のうちだけと思って楽しんで……もとい、我慢しよう。

 

 

「今日の献立は、鰆の幽庵焼きと春キャベツのお味噌汁、筍と春菊の酢味噌和えなどです」

 

 

 お、今日も豪華。楽しみだなぁ。

 

 いつものようにジャケットを受け取った“彼女”が、リビングへと歩きながら献立を教えてくれる。

 この家での食事当番は、“彼女”、セイバーさん、キャスターさんが三人で回していた。

 セイバーさんが用意する、絢爛豪華なローマ式ディナー。

 キャスターさんが生み出す、華やかかつ控えめな和食。

 “彼女”の作ってくれる、誰もが心に思い描く家庭料理。

 このローテーションが、良い具合に胃袋を刺激してくれるのだ。自分はオマケで食べさせてもらってるだけだが。

 

 最初こそ、「奏者の手を煩わせるなど!」「御主人様に上げ膳据え膳するのは良妻の務めで御座います!」とか言っていたセイバーさん達だったが、“彼女”の手料理という誘惑に勝てるはずもなく、今では“彼女”が当番の日を楽しみにしているようだ。

 本当は自分も参加すべきなのだろう。しかし、あいにく自炊スキルは低い。

 一回、見よう見まねで作ってみたけど、全員一致で「不味い」と言われてしまったので、当番からは外されてしまった。

 仕方なく食費と光熱費だけ入れている。

 

 そんなこんながありつつ、今日も“彼女”の手料理に舌鼓を打つ時間が来た訳なのだが、今の所、リビングに人影はない。

 後になったらセイバーさんとかに邪魔される可能性もある。お返し、もう渡しておくべきだろうか?

 うん。善は急げとも言う。ここは電撃戦で行こう!

 

 ……あ、あー。ところで、さ。

 

 

「はい。なんですか」

 

 

 ネクタイを外し、それを“彼女”に渡すついで……という風体を装い、自分は話を振る。

 

 き、今日は、ですね。

 三月十四日、なんですが。

 

 

「はい。そうですね」

 

 

 ……渡したい物が、あるんです、が。

 

 

「はい。待ってました」

 

 

 呆気なく。しかしド直球に、“彼女”は返事をしてくれた。

 抱えたジャケットを抱き締め、ほんのり笑顔を浮かべているようにも。

 なんともはや。こんな風に期待してくれていたのなら、用意した甲斐があるというものだ。

 自分は早速、携帯端末でシステムコマンドを呼び出し、データストレージから厳重にロックされた貴重品──お手製マシュマロを取り出した。

 

 これ。バレンタインのお返しの、マシュマロ。

 アーチャーさんに手伝ってもらったから、味は保証しますです、はい。

 

 

「……ふふ。言葉遣い、変ですよ」

 

 

 妙に畏まってしまう自分に対し、“彼女”はまたクスリと笑う。

 なんだか、今日はよく笑ってくれるな。機嫌が良い、みたいだ。

 でも、だすって言わないだけ成長したと思うんですよ、自分も。

 

 

「夕飯前ですけど、食べてもいいですか?」

 

 

 一旦、ジャケットを手近な椅子の背もたれに掛け、“彼女”はマシュマロの詰められた袋を受け取る。

 小首を傾げつつの問い掛けには、もちろん、と自信を持って答えた。

 休みの日に、厳しいオカンの──じゃない。アーチャーさんの指導の下、彼女に隠れて作り上げた一品。

 さきほど自炊スキルは低いと言ったが、監督してくれる人がいれば別なのだ。味はアーチャーさんのお墨付きである。

 

 

「………………」

 

 

 ……あれ。食べないの?

 

 

「いえ。食べたいです」

 

 

 …………お墨付きのはず、なのだが。

 なぜか、“彼女”は袋の口を開けただけで、一向に食べようとはしなかった。

 食べたいと言っているのに、しかし動かない。

 こちらをジーッと見つめるだけ。

 はて……? これはどういった類の意思表示なのだろうか……?

 

 

(ナナシさん。ふぉとんれい! しますか?)

 

 

 はっ!? 脳内に謎の幼女の声が!?

 慌てて周囲を見回してみるも、褐色ロリ家政婦さんの姿はない。

 が、きっとあの子はこっちを見てる。どこからともなく、自分達を生暖かく見守っているはず。

 早く正解を見つけないと、マジでふぉとんれい!(一万分の一くらい)で叱られてしまう! 頭がアフロになってしまう!?

 

 

「じぃ~……」

 

 

 わざわざ擬音を口に出す“彼女”からのプレッシャーも、時間を追うごとに強まってくる。

 ううう、考えろ考えろ考えろ。

 “彼女”は、何かを待っている? 状況から察するに、それは自分の起こすアクションで……ん?

 食べる。待つ。アクション。

 不意に、この三つが脳内で組み合わさった。

 これってもしかして、食べさせて欲しいって事なんじゃ……?

 ものは試しと、自分は袋の中からマシュマロを一つ摘み上げ、“彼女”の口元へ。

 

 あーん、してくれるかな。

 

 

「はい。あーん」

 

 

 すると、“彼女”は目をスッと閉じ、小さな口を雛鳥のように開けた。

 ぃよっし正解だった! やったよアルテラちゃん! 発破かけてくれてありがとう! 後で君にもマシュマロあげるからね? 義理だけど。

 と、脳内で喝采を上げながら、可愛らしい口へとマシュマロを入れる。

 

 ……どう?

 

 

「美味しいです。ふんわり、甘いです」

 

 

 もくもく。もくもく。ごっくん。ぱあぁ。

 あえて擬音で表現するなら、こんな感じの表情の変化だった。

 ゆっくりと噛み締めて味わい、広がる甘さに頬が緩んでいる。

 どうやら、“彼女”にも気に入ってもらえたようだ。

 アーチャー先生。「湯煎の温度が低過ぎる!」とか、「今度は熱すぎるぞ!」とか、「もっと丁寧に撹拌したまえ!」とか、細かく指導してくれて本当に助かりました!

 時々イラッとしたというのが本音だけど、自分が作った物を、誰かに美味しいって言って貰えるのって、こんなに嬉しいんだなぁ……。

 暇な時にでも、料理の勉強してみようっと。

 

 

「……あの。もう一個、お願いできますか」

 

 

 あ、うん。はい、どうぞ。

 

 おねだりの声に呼び戻され、自分はまたマシュマロを一つ、口に運んであげる。

 それにしても、アーン待ちしている時の、“彼女”のこの可愛らしさよ。

 ちょっとイケナイ気分になりそ──

 

 

「……はむっ」

 

 

 うっ!?

 

 にゅるっとした熱を、指先が感じ取る。

 艶めかしい湿り気。指を這う熱さ。くすぐったさと、背筋がゾクゾクする感覚。

 自分の指は、摘んだマシュマロごと食べられてしまったらしい。

 

 あ、あの。指、指が……。

 

 

「ん……」

 

 

 しどろもどろに、その事を指摘してみるのだが、“彼女”はこちらの手をガッシと掴んで離さない。

 それどころか、マシュマロはもう溶けてしまったはずなのに、別の物を求めて舌が蠢く。

 

 

「ぷぁ……。は、ん……っ」

 

 

 吸い上げるような水音。

 指で感じる熱と吸着感。

 しゃぶられている。

 ねぶられている。

 自分の指を、“彼女”が。

 

 他愛ないはずの児戯は、異様なほど胸を強く高鳴らせる。

 気が付くと、自分は“彼女”を壁に押し付け、覆い被さるようにしていた。

 指を強引に引き抜けば、細い唾液の糸が、自分達の間に繋がっていた。

 

 

「あ……。お味噌汁、沸いちゃいます、よ……?」

 

 

 嫌?

 

 

「……嫌な訳、ないです」

 

 

 少し、低い声で尋ねる。

 返ってきたのは、曖昧だけれど、決して拒絶してはいない、甘えを孕む吐息。

 我慢できなかった。

 今すぐに、“彼女”の唇を奪いたくて仕方ない。

 NOと言われなかったのだから、もう遠慮する事なんてないだろう。

 毎度毎度、押し倒されてばかりじゃないって所を見せてやる。

 

 そんな、誰へ向けたかも分からない意地と欲望に後押しされ、“彼女”の顎を撫でる。

 まぶたが伏せられ、艶めく唇が上向きに。

 待っている。待ってくれている。

 自分は迷わず、“彼女”と唇を重ねた。

 

 

「そうはイカのぉ……!」

 

「塩辛乗せジャガバターで御座いますー!」

 

 

 ──はずが、なぜか唇に感じたのは、場違いな塩っ気。

 それもそのはず。自分と彼女の間には、本当に塩辛乗せジャガバターがあったのだから。

 っていうか熱っ!? え、出来立て!?

 

 

「全く、油断も隙もあったものではないな! 虫も殺さぬ顔で、余の見ていない間に、余の奏者に襲い掛かるなど……。恥ふぉひへ恥ふぉ!」

 

「セイバーさん。ジャガバターを口いっぱい頬張りながら喋るのは、流石に止めた方がよろしいかと。

 そしてモブ男さん。調子乗ってっと、塩辛の空き瓶でコロコロしちゃうぞ?」

 

 

 いつの間にか現れたセイバーさんが、ジャガバターをフォークでガッつきながら仁王立ちしている。地味に間接キッスしてるのは良いのだろうか。

 加えて、平べったいガラス製の容器を両手に構えたキャスターさんは、今にも襲い掛かってきそうな荒ぶる鷹の構えを。こっちも地味に怖い。

 だがしかし。彼女達の怒りに、たじろぐ事はなかった。

 なぜならば、もっとお怒りな女の子が、自分の腕の中に居たからだ。

 “彼女”は底冷えする笑顔を湛え、二人のサーヴァントと相対する。

 

 

「セイバー。ジャガバターを食べてるって事は、夕飯は要らないよね。片付けておくから」

 

「ぬっ!? ち、違う、これは違うのだっ。溶けたバターと塩辛の絶妙なマッチングにフォークが止まらぬだけであって、奏者の作ってくれた食事は別腹に決まっているではないかぁ!?」

 

「あちゃー。やっちまいましたねぇセイバーさん。ま、ご主人様の手料理は、私がセイバーさんの分まで堪能して差し上げますから、ご安心下さい。ぷふふー」

 

「ああ、キャスター。お塩が切れちゃってるのを思い出したの。SE.RA.PHの端に出来た南米領域まで買いに行って貰える? 今すぐに徒歩で」

 

「にゃんとぉ!? ごごごご主人様、なんてご無体な事を令呪を輝かせながら仰る!? アタカマ塩原とか遠すぎですぅ!?」

 

 

 静かなる憤激に、二人はタジタジだった。

 セイバーさんが縋りつき、キャスターさんが涙を流そうとも、“彼女”の怒りは治まらないだろう。

 というか、このままじゃホントに令呪を使っちゃいそうな雰囲気だ。

 “彼女”が怒ってくれてるおかげか、自分は妙に冷静で、ちょっと暴走気味なその肩を叩く。

 

 ええっと。とりあえず、落ち着いて。

 令呪はマズいから、ね?

 

 

「でも……っ」

 

 

 よほど、邪魔されたのが悔しかったのだろう。

 綺麗な形をした眼に、今度は涙が込み上げている。

 自分としてもそれは同じなのだが、これからまたイチャつくのもアレだし、いいタイミングだ。

 “彼女”を一旦下がらせて、ションボリと正座する二人の前に。

 

 セイバーさん。キャスターさん。

 

 

「な、なんだ。余は謝らぬぞ……。余は、まだお主を認めた訳ではないのだからなっ」

 

「そうですそうです! いくら人畜無害なモブ男とはいえ、ご主人様を渡してなるもので──」

 

 

 はい。これどうぞ。

 

 

「ぬ?」

 

「あら」

 

 

 ブーイングを遮るように、自分はストレージから二つのアイテムを取り出し、押し付ける。

 反射的に彼女達は受け取り、困惑していた。

 ある意味、当然だろう。綺麗にラッピングされたそれは、言われずともプレゼントだと分かる代物なのだから。

 中身はもちろん、マシュマロである。市販品だけど。

 

 

「これはもしや、マシュマロとかいう物か? しかし、余がこれを受け取る理由は……」

 

「そ、そうですよねぇ……。モブ男さんにチョコなんて差し上げてませんし……」

 

 

 良いんですよ。

 これは、日頃の感謝の証ですから。

 

 

「感謝、とな?」

 

「え。え。どういう事でしょう? 説明プリーズ?」

 

 

 お二人は、“彼女”を護ってくれてますからね。

 自分には絶対に出来ないことですし、自分にとっても、“彼女”は……大切な、存在ですし。

 まぁ、市販品なのは申し訳ないですけど……。

 いつも、ありがとうございます。

 

 

「奈々篠さん……」

 

 

 ちょっと照れくさくて、視線を逸らしながら、自分は感謝の念を伝えてみる。

 何か感じ入るものがあったようで、“彼女”も矛を収めてくれた。

 まぁ、こんな機会でもないと言えない事だし、嘘偽りのない本音でもある。

 ちゃんと言葉にするのって、大切だ。

 

 

「……キャスターよ」

 

「……なんですか、セイバーさん」

 

「今、お主の胸の辺りから、“キュン”というトキメキ音が聞こえてきたのだが、気のせいか?」

 

「とっ!? と、ととっととときめいてなんかいませんですことよ!? こ、こんなマシュマロなんて……。

 串に刺して炎天でコンガリ焼いて、外はカリカリ中トロトロにして美味しく頂いちゃうんですからねっ!?」

 

「ふふふ。素直になるが良い、ツンデレキャスター。ちなみに、余もときめいてはおらぬぞ?

 平民が皇帝に貢ぐのは、至極当然の行為なのだからなっ。……ほ、本当だぞっ。よ、喜んでなんかいないからなっ!?」

 

「どっちがツンデレですかどっちが!」

 

「なにをー!」

 

 

 珍しいキャスターさんのツンデレに視線を戻すと、二人はいつもの調子で睨み合いを始めていた。

 なんだかんだで、この場は納めることができたかな。

 キスできなかった事は残念だけど、たまには、こんな日があっても良い……と、思います。

 

 さ。みんなで夕飯、食べましょう。

 アルテラちゃんもおいでー? マシュマロ、君のも用意してあるからー!

 

 

「わーい! ましゅまろ、初めてですっ」

 

 

 パン、と柏手を打ち、ついでに適当な場所へ向けて呼び掛けてみると、やっぱり覗いていたらしいアルテラちゃんが、どこからともなく小走りで現れる。

 マシュマロをあげる理由? 特にありません。可愛い幼女は無性に甘やかしたくなる今日この頃です。

 そんな自分達に呆れたのか、“彼女”もまた、仕方ないといった風に溜め息をついて。

 

 

「……ふぅ。アルテラ? 食べるのは夕飯の後で、ですよ」

 

「はい、マスター!」

 

「むぅ……。ここで抵抗しては、余の度量が疑われるではないか……。

 仕方ない、今日ばかりは余の負けだっ。

 “ほわいとでー”に免じて、我が奏者への非礼、見逃してしんぜよう!」

 

「どこまでも無駄に偉そうな赤王様ですこと……。

 それはさて置き、今日の食材はこのタマモが用意したんですよ?

 そこにご主人様の愛情と手間が加わったんですから、美味しくないはずがありませんっ。

 モブ男さん、ありがたーく召し上がってくださいましね?」

 

 

 はいはい。分かってます。

 

 険悪だったムードもどこへやら。

 すっかり元通りな皆の姿に、自分は苦笑いを浮かべつつ、いつもの定位置に腰を下ろす。

 あの日、アーチャーさんが言ってくれたものが。

 平穏無事な日常が、ここにあった。

 

 

 





 オマケのExterior material


○アーチャー(無銘)
 言わずと知れたfateの代名詞的サーヴァント。クラスは弓兵。
 英霊としての彼の顛末は、もはや説明不要であろう。なのでカッツアイ。
 Fate/EXTELLAに登場するアーチャーには何やら面倒臭い裏設定があるようだが、とりあえず、まだ迎えは来そうにない。あちら側のザビ子は方向音痴なんだよ、きっと。
 主人公の事は基本的に「君」と呼び、今回の一件以降、そのオカンぶりを遺憾なく発揮するようになる。
 さぁ、次は料理の「さしすせそ」だ。


○カルナ(ランサー)
 Fate/EXTRA CCC、Fate/EXTELLAに登場する、槍兵のサーヴァント。
 施しの英雄と呼ばれる大英霊だが、女運は悪い。いや、女運に限らず運が悪い。
 主人公との直接的な面識はなく、これからもないだろう。
 しかし、何かの拍子に対面すれば、カルナをただカルナとして見る主人公との間に、友情を育む……かも知れない。


○言峰 綺礼
 ある時は聖杯戦争の監督役。
 またある時は購買部の店員。
 しかしてその実態は、紙オムツから野良サーヴァントまでをも用意する、闇のブローカーである。

 Fate/EXTELLA materialにおいて、ザビ子/ザビ男が聖杯に入力した願いが詳細に解説されたが、その願いに基づき、言峰も新たな役割を模索する──はずだった。
 月の裏側から脱出し、表の聖杯戦争を見届けたまでは良かったのだが、なぜか彼の中からは「他者が求めるものを用意し、相応の対価と引き換えに提供すべし」というルーチンが消えなかったのである。
 不可解極まりない出来事であったけれども、言峰は「これも試練か」と受け入れた。
 そして、己の存在意義を全うするために言峰商会を立ち上げ、SE.RA.PHの物流を八割把握するに至っている。今や、彼に手に入れられない物の方が少ない。
 余談だが、一言しか喋らせなかったのは、筆者に言峰神父を再現する自信がなかったからである。
 故に次回があったとしても、チラ見えするだけでほとんど喋りません。ごめんちゃい。

 現在、商会の表向きの事業は長風と主人公に任せ、言峰自身は裏の商売に勤しんでいる。
 その過程で攻性プログラムなどと戦闘を行う場合もあるが、基となった人物と等しく、その実力はNPCの枠を超え、状況を整えれば低ランクの英霊を撃破する事も可能。
 密かに暗殺者のサーヴァントや、槍兵のサーヴァントを抱え込んでいるという噂もあるが、定かではない。
 一応、従業員である主人公達を彼なりに大事に思っているらしく、裏稼業の累が及ばないよう気を配っているようだ。
 主人公の事は「奈々篠君」と呼び、その名付け親でもあったりする。


○長風 紀
 おそらく、誰も登場を予想しなかったであろう、Fate/EXTRA CCCに登場するNPC。過去の役割は風紀委員長。
 自らの新たな道を模索している所を、運悪く言峰に拾われてしまった悲劇のツンデレ。
 普通にプレイしていると、CCCの序盤、中ボス(涙)に消されてしまう運命にあるが、materialに書かれている通り、放置で救う事が可能。
 ザビ子の場合、「話しかけるとまたツンケンされるから放っておこう」的な感じで、その気もないのに助けていた。
 ちなみに筆者は一周目で、「あれ。話しかけたら消されちった。……気分悪いしロードし直して放置しよ」という流れで助けてました。みんな大体こんなだよね?

 月の裏側での事は記憶に残っていないはずだが、心の奥底でザビ子への恩義を忘れておらず、ちょっとだけツンデレのツンが柔らかくなっている。おかげで周囲との関係も良好。
 主人公の事は「奈々篠さん」と呼ぶ。
 そして、本当は「副社長」とか「長風さん」でなく、「紀」と強気に呼び捨てて欲しいと思っている。ついでに押し倒されても良いかなーとか思っている。
 が、しかし。彼女の密かなる想いが報われる事はない。憐れな長風さんに愛の手を!

 名前はもちろん、風紀委員長のアナグラム。
 没名として風長院 委紀(ふうちょういん いのり)というのもあったのだが、彼女を縛っていた風紀委員という役柄は既に存在せず、そこから解放されたという意味合いも込めて、委員を取り除いた。
 なんで「長」は残したのか? 風と紀だけじゃ、流石に名前として成立しませんですよ。
 実はとっくに人間性を獲得しており、剣兵のサーヴァントと契約しているマスターでもあったりする。どんなサーヴァントかはヒミツ。





 以上! 今回はここまで。
 頂いた感想の中に「アチャ男見たい」という意見があったので取り入れてみましたが、喜んでもらえるクオリティーか自信がありません。カルナさんはついでです。
 今後もこんな感じで拾うかも? 
 ではまたいつか。


※よく考えたらアンケートっぽくなってたので、通報される前に後書き修正しました。
 
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