ここ・・・は、
中島敦は妙な場所で目が覚めた。
「路地裏?」
路地裏と言っても建物など中世風のかなり横浜とは程遠い感じだった。
敦は先程までの記憶を思い出す。
「また調査依頼ですか。最近多くないですか?」
「そう思うなら敦くん、私と自殺体験をしてみないかい?」
《自殺愛好家》を自称する太宰治が言った。
「・・・相変わらず自殺ですか、太宰さん」
「いいか、敦。太宰の戯言に耳を貸すな。お前まで太宰の様になられては手がつけれん」
そう言ったのは『理想』と表紙に大きく書かれた手帳を確認している国木田独歩だった。
ここは武装探偵社。
異能と呼ばれる超能力を駆使して軍警などに頼れない仕事を生業とする組織である。
「それでどうする。依頼を受けるか?敦」
「はあ、分かりました」
敦は渋々依頼書を受け取ると出社する準備をする。
「それでは、行ってきます」
「あ、敦くんこれ持っといて」
と言って太宰に石を渡された。
「これは?」
「まあ、いいから」
「は、はぁ」
ドアを潜り、エレベーターを降り、マンションから出た。
(ええと、依頼主は・・・あれ?)
依頼書には指定場所しか書かれていない。
依頼主の名前が何処にも無かった。
(手違いかな?まあ、さっと終わらせて帰ろう)
敦は指定された場所に着くと依頼書を確認した。
(よし、ここでいいか・・・誰もいないけどなあ)
すると、気配を感じる。
素早く後ろを振り返るが誰もいない。
「遅い。異能力『暗夜行路』」
(異能者!?まさか、ハメられ・・・)
ドサッと鈍い音が響く。
敦の意識は深い闇へと落ちた。
(それで気がついたらここにいたという事か)
敦は立ち上がり、身の確認をした。
依頼書も持っており、財布なども持っている。
(とりあえず、向こうに人がいるようだし行ってみるか)
「おい、何ウロウロしてんだ、兄ちゃん。痛い目に会いたくなかったら出すもん出しな」
如何にもチンピラと言える容姿だった。
ボロ切れを着て、胸の膨らみはナイフだろうか。
横に少し小さめの男と対照的に体の大きな男が並んでいる。
(ここは騒ぎを起こすわけには行かないな)
敦は財布の中から千円札を抜き取ると、
「僕のなけなしの金ですがどうぞ・・・」
そう言うと、チンピラは千円札を奪い取った。
「・・・僕はこれで失礼しま」
「おいコラ、お前ふざけてんのか?こんな紙切れが使えるとでも思ってんのか?」
「え?千円ですよ?」
「ただの紙切れに千円の価値があるわけないだろ!」
と、横の小さめの男が言った。
「もういい、気分晴らしに身ぐるみ剥いでやんよ」
そう言うと、チンピラは胸からナイフを抜き出し襲いかかってきた。
「やるしかないか!『月下獣』」
敦の異能力『月下獣』は体の一部を虎化させる能力。
最近はこの能力で敵組織『組合(ギルド)』と呼ばれる組織のボスのフィッツジェラルドを打ち破った。
「死ねやああああああ・・・え、お前その腕!まさか魔法使い!?」
虎化させた腕を見て、チンピラの動きが止まった。
「命だけは助けてくれ!!!」
そう言いながらチンピラ達は逃げていった。
(何だったんだろう?)
「探したよ。君が中島敦・・・だね?」
「・・・!?貴方は?」
不意に話しかけられ驚きながら敦は聞き返した。
「僕は志賀直哉。君と同じ異能使いだ」