マミお姉ちゃんに告白されてからというもの、マミお姉ちゃんからのスキンシップが激しくなった。1人で眠って次の朝起きると、いつのまにかマミお姉ちゃんが俺の布団に潜り込み、あまつさえ俺を抱き枕にして眠っていた。確かに抱き枕にされた経験がないと言えば嘘にはなるが、やはりいつも恥ずかしさが込み上げてくる。例えそれが好きな人であってもだ。
スキンシップはそれだけではない。2人きりの時は俺に抱きついてくるし、その際柔らかい感触に耐えるのに苦労する。その様子を見ていつもマミお姉ちゃんは笑いながら可愛いと言ってくる。恥ずかしい事この上ない。
ご飯を食べる時も俺に向かってあーんを要求してくるし、逆に俺がやられたりする。その時も恥ずかしいからそれが表に出て、それを見たマミお姉ちゃんにいつものように可愛いと言われる。
(でも、親を亡くした時よりも笑ったり笑顔になる事が増えたな。それなら俺は、どんな恥ずかしい事だって耐えよう)
それがマミお姉ちゃんの笑顔の繋がるなら……
そんな生活も半年が過ぎたある日……俺が買い物で街に繰り出している時だ。その日は別に変な気候ではなく穏やかな日で、実に買い物に持って来いの日だ。それで買い物の帰り道の時だ。信号待ちをしていると、向かい側に仲の良い2人組の男女がいた。
どちらとも中学生ぐらいの歳で、男の方は何かを背負っていた。あれは多分楽器を入れる箱で、中には楽器がちゃんと入っているんだろう。顔は……あれは女性に間違われても仕方ないと思うというくらい女性寄りの顔をしていた。それで女の子の方は……なんか遠くから見ても活発な印象だった。でも何でだろうな……日本人の筈なのに何で髪の色が水色なんだろう?
(まぁマミさんも髪の色黄色だしな……まどマギの世界は不思議だ)
こんな事を今更思う安騎尭がいた。そして歩道の信号が青になる。向かい側の2人組もそれと同時に渡り始める。そんな中……
(ん? あれは⁉︎)
安騎尭は異変を感じて歩道を走る。そして向かい側にいた2人組を走った勢いで突き飛ばした。
side ???
「毎回練習風景を見たって面白くないでしょ?」
「またそれぇ? そんな事ないよ。恭介の演奏している所見るのって凄く見ていて楽しいし、それに心安らぐんだよねぇ〜」
「ホントに? まぁ別に僕も、誰かが僕の練習を見てるからって邪魔だとは思わないし……」
「それに本番の練習にもなるでしょ? 本番になったら私だけじゃなくて、他の大勢の人達も聴きに来るんだから!」
「そ、そうだね……」
「という事で! このさやかちゃんに対する感謝を忘れないように‼︎」
「もぅ、さやかってばいつも調子いいよね」
そんな他愛のない話を恭介とするのが私は好き。小さい頃から幼馴染で家も近かったからとても仲が良かった。だから恭介が音楽を好きだったのも知ってるし、実際に恭介が演奏してるところも何回も見た事がある。そして私は……恭介の事がいつの間にか好きになった。特に演奏している姿の恭介がカッコよくて……だから恭介が練習しに行く日は毎回行ってる。
(まぁそれが理由で行くっていうのは本人の前では言えないけどね……)
正直音楽は……自分の好きな歌手やグループぐらいしか興味はなかった。でも恭介ともっと一緒にいたいが為に……クラシックのジャンルも聴くようになった。
(でもやっぱり私は……恭介が奏でる音が好きだな)
「ところでこの後どうするの?」
「う〜ん……もうやる事ないから暇なんだけど……後は帰るだけだし」
「ならさ! この前新しくできた店があるんだけど行ってみない⁈ そこのクレープが美味しいって評判なんだー!」
「へぇ〜、クレープか〜……うん。良いよ」
「よっし! じゃあ早速行こう‼︎」
「ちょ⁉︎ さやか⁉︎ 手を引っ張らなでよ⁉︎」
そんな調子で噂のクレープ店までこの横断歩道を渡ればすぐの所に着いた。やはくこの信号が青にならないかな〜ってうずうずして、そしてやっと青に変わった。そして私達が歩道を渡っている最中に、向かい側で買い物袋を持って待っていた私達と同じくらいの男の子が私達のところに猛スピードで走って来た。そして何故か私達は突き飛ばされた。
突き飛ばされた私達は待っていた歩道に戻された。一体何がって思ったと同時に大きな音が聞こえた。それは何かが勢い良く何かにぶつかった音の様に聞こえた。
「イテテ……何が起こったのかな?」
「恭介⁉︎ 大丈夫?」
「う、うん。僕は何とも……さやかは?」
「私もどこか打ったかもだけど、何ともないよ? それにしてもあの男の子何なの⁉︎ 急に私達を突き飛ばして‼︎」
「でもなんか切羽詰まってたような感じがしたし……そう言えばあの男の子は?」
恭介が立ち上がりながら言う。急に突き飛ばされて痛かったっちゃ痛かったけど、でもどこも怪我はしてなかった。恭介にも何ともない様で、背負ってたバイオリン入れにも傷1つ付いてなかった。
「そう言えばあの男の子どこに……っ⁉︎ きょ、恭介あれ‼︎」
「ん? ……っ⁉︎」
私と恭介が見たものは、電柱にトラックがぶつかってるところだった。私達は混乱しながらその近くに行った。そしたら……
「こ、これって……」
「さ、さっきの男の子……」
私達を突き飛ばした男の子が頭から血を流して倒れていた。手に持っていたはずな買い物袋の中身もぐちゃぐちゃになっていた。
「と、取り敢えず警察と救急車!」
「う、うん‼︎」
私達が取れる方法はそれくらいで、恭介が警察と救急車を手配した。そして私は……この前学校の保険の授業で習ったのを記憶から引っ張り出して倒れてる男の子が、簡単にでもどんな状態かを確かめることにした。
「みゃ、脈は……」
触れるのは怖かった。でも、目の前で困っている人は見過ごせない! だから倒れてる男の子の左手手首の脈を確認しようとした。そしたら……
「いってぇ……」
(っ⁉︎ い、生きてる⁉︎)
私が驚いたのも束の間、その男の子は意識を取り戻してあろうことか立ち上がった。頭から血を流した状態で……
「ちょ、ちょっと⁉︎ 大丈夫なの⁈」
「ん? あぁ、平気だが?」
……マジっすか。
side out
(全く酷い目にあった……)
死ぬまでとはいかないが……頭から血が流れてる感覚がある。それ以外は全く問題ない。えっ? 何でその程度かって? 鍛え方が違うからだろ? はっ? それでもトラックに轢かれたら普通死ぬって? 一応これでも戦艦の砲弾殴り飛ばせるんだぞ? 確かに元生まれた世界より力が大分落とされてしまったとはいえ、それでもトラックに轢かれて死ぬような鍛え方はしてない。言っておくが……こっちの世界でも鍛錬は怠ってないからな?
「あれ? 買い物袋がない……」
「えっ⁉︎ 心配する所そっち⁈」
それは当然だ。何せ1週間分の食料が入ってたんだから……因みにマミお姉ちゃんの家にお世話になってるわけだが、なんとマミお姉ちゃんの家の家電は殆ど最新式だった。だからお肉を買っても新鮮冷凍できると言うわけだ! だから1週間分買ってたんだが……そして俺の手から離れてしまった買い物袋を見つけた。見つけたんだが……
「あぁ……袋の中身がぐちゃぐちゃだ……」
せっかく買ったと言うのに……これでは使い物にならない。そこでようやくトラックから運転手が出てきた。あっちは打撲ぐらいで、他に怪我は無いようだが……
(だがこの落とし前……どうつけるつもりだ?)
この時俺は怒っていた。まぁ被害者側だから起こるのは当然だが、そこに怒ってるわけじゃ無い。それに……
(あっちは居眠り……どう見てもあっちに非がある)
俺は怒りの表情を出しながら運転手に近づく。
「おい……」
「っ⁉︎」
運転手はビクついていた。結構歳を取っててベテランぐらいに見えたが、疲れが祟って居眠りしてしまったって所だろうな……まぁ関係ないが?」
「テメェ……この落とし前どうつけるつもりだ?」
「そ、それは……」
「まぁ普通に見て人身事故が絡んでるよなぁ? 実際にさっき轢かれたわけだし?」
「うぅ……しゃ、謝罪しか……」
「その謝罪したい気持ちがあるんならよ……弁償しろ」
「えっ?」
「俺が買った物全て弁償しろ! それで手を打ってやる‼︎」
「そ、それでいいんですか?」
「なんだ? なら慰謝料も追加するか? こっちはそれで示談にしようって持ちかけたつもりだが?」
「は、はいっ! それでお願いします‼︎」
なんかこっちが脅迫した様な感じになっているが……まぁ被害者だからいいよな? それに1週間分の食料と慰謝料……どちらを選んだ方が賢明か誰だって分かる。
そんな時に丁度警察と救急車が到着した。俺は別に骨折とかしてないし、ただ頭から血が流れたくらいだから病院には行かなくてもと思ったが……救急隊員に見つかってあえなく病院へ……
(……面倒な事になったな)
心の中でそう思った。そしてそのまま病院に運ばれてしまった。
そして今は……
「……何か言う事は?」
「ご、ごめんなさい……」
「他には?」
「し、心配かけてごめんなさい……」
「……それだけ?」
「え、えぇっと……」
「……だから」
「えっ……」
「貴方が私の側からいなくなるんじゃないかって……心配したんだから……」
そう言いながらマミお姉ちゃんは俺に抱き付いてきた。顔からは涙の雫が流れ落ちて、掛け布団にシミを作る。俺はその時、ごめんと謝りながら抱きしめ返すことしかできなくて……
(いつも……大切な人を、俺の事を大切に思ってくれる人を泣かせてる気がする)
最初は榛名を……それから夕張に足柄……それからも心配を沢山かけた。全くもって俺は……いつまで経ってもこんな生き方しかできない様だ。
「うぅ……ぐすっ……」
「本当に……ごめん……」
「……本当にそう思ってる?」
「う、うん……」
「……なら、キスして」
「……えっ?」
「本当に反省してるなら……私にキスしなさい」
「き、キスって……」
「……ダメ?」
マミお姉ちゃんは瞳をウルウルさせながら、そして上目遣いで俺を見つめて来た。
(……やるしかないか)
「分かった。マミお姉ちゃん、キスしよう」
「……本当? 本当にしてくれるの? いつもの様に逃げない?」
「逃げない。いつもなら……恥ずかしくて逃げるけど、今回は逃げないさ」
「なら……目を閉じて」
「あぁ」
俺は瞳を言われた通り閉じた。それから数秒後に頬に両手を添えられて、そして……
「っ⁉︎」
「はむっ……んっ……あむっ……」
……予想外な事に、普通のキスではなくてディープキスだった。
「んんっ……はぁ……これで許してあげる」
「……あ、ありがとう?」
「ふふっ♪ 何をキョトンとした顔をしてるの? でも、可愛いわね♡」
「っ⁉︎///」
「顔も真っ赤にして……もぅ、えいっ!」
「うわっ⁉︎ い、いきなり……」
「だって可愛いんだもの♡ 抱き着きたくなるのも当然なのよ」
「そ、そうなんだ……」
それからと言うもの、マミお姉ちゃんは歯止めが効かなくなった様で、面会終了時間まで俺はマミお姉ちゃんの膝枕+頭ナデナデをされて過ごした。