高坂家長男の華麗ならざる日常   作:ポーラテック

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The Secret

菓子作りに限った話ではないが、モノ作りに大切なものは何よりも集中力だ。

ヘラや三角棒を使って幾通りの異なる種類の和菓子を大量に作る時に磨り減らす神経は想像に難くない。

「お兄ちゃん?」

特に饅頭や団子、羊羹と違ってねりきりは繊細に扱わなければヒビが入り売り物にならなくなってしまうので特に注意が必要な品だ。

「お兄ちゃん?聞いてる?」

今やっているのは団子につけるごま餡作りだ。

繊細な扱いは無いが配合を間違えると穂むらの味ではなくなってしまうので――

「お兄ちゃん!」

「あっ?」

耳を掴まれて調理台から顔を起こされる。

穂積の集中を無理やり断ち切ったのは白衣姿の雪穂だった。

「おお、雪穂か。何だよ」

「もう、さっきっから呼んでるのに…アンコどんだけ作るつもりなの?」

「えっ?あっ」

耳から手を離した雪穂が指差した先は調理台に並ぶタッパー群。

本来1つで充分の筈が、3つ目を作ろうとしてしまっている。

「あー、やっちまった…」

腰を落として調理台に突っ伏す。

「お兄ちゃん、減量中はいつもこんなカンジだよね…大丈夫?」

「…大丈夫じゃねぇって。飯制限してんのに食いもん作れって…拷問だよマジで」

思わず弱音を吐く。

試合前の減量も食事量の制限に入り、練習メニューも追い込む為より過酷になった。

摂取カロリーより消費カロリーを多くするで身体の余分な脂肪を燃焼させ体重を落とすのだが、この時ばかりは穂積は自分の和菓子屋という出生を呪わずには居られなかった。

砂糖醤油を始めとして、餡子の甘い香りとこの店には穂積の節制を揺らがせるモノが多すぎる。

「体重、順調に落ちてるの?」

「まぁ…このペースなら最後水分抜けばイケる」

「そっか。頑張って、お姉ちゃんも珍しくパンとオヤツ我慢してダイエット頑張ってるみたいだし」

ポンポン、と励ますように雪穂が兄の背を優しく叩く。

「…そーだな、妹が頑張ってるのに兄ちゃんがヘコたれてちゃ世話ねぇ」

顔を調理台から上げて立ち上がり、雪穂の励ましで穂積は気合を入れ直す。

「ちょっと店の外の空気でも吸ってきたら?片付けは私がやっとくから」

「いいのか?」

「うん。お兄ちゃんずっと缶詰だったし新鮮な空気が恋しいでしょ」

集中している時は気にしなかったが、早朝から現在(夕方)まで慌しかった為、足腰が悲鳴を上げている。

ロードワークも穂乃果たちだけ走らせ(監督は海未に任せた)て休み、早朝から仕事で酷使したツケが回ってきてしまった。

「じゃ、ちょっと息抜きさしてもらうよ」

「はーい」

穂積は妹のお言葉に甘え、凝り固まった頭をリフレッシュする事にした。

 

平日の夕方とあって既に客足はなくなりかけ、穂むらもまもなく営業終了である。

「あ~っ」

外の空気を肺一杯に吸い込み、伸びをすると腰を曲げて行う作業ですっかり固まってしまった背骨が音を立てて鳴る。

穂積は調理台が低く、腰を曲げて作業しなければならないのが不満である。

182センチと同年代の平均身長を大きく越す長身は時として不利益に成り得る。

「ん」

「あっ」

腰を捻り、骨を鳴らす快感を堪能していると不意に少女と目が合った。

穂むらの郵便受けの前を右往左往しているその赤毛の少女は目が合った瞬間声を上げ、踵を返してその場を去ろうとする。

「君、穂乃果の友達?」

「えっ?」

妹の名前に少女の足が止まる。

赤毛の少女が身に着けている制服が穂乃果と同じモノだと気付いた穂積は、彼女が穂乃果の学友だと思って声を掛けた。

「音ノ木坂のコだろ?穂乃果はまだ帰ってきて無いぜ」

「えと、ココの人ですか?」

「ん、そんな感じ…そろそろ穂乃果帰ってくると思うし、上がって待ちなよ」

「いえ、悪いですから」

「いいって、穂乃果の友達なら大歓迎だ。まだ営業中だし席も空いてるから、お茶ぐらい飲んでってくれ」

「…まぁ、お茶だけなら」

上がった上がった、と促す穂積に、赤毛の少女は半ば諦めるように入店を決めた。

 

「ハイ、お待ち」

「えっ?頼んで無いですけど」

店の隅に設置されたカウンターに通された少女の前に緑茶と、一口大の桃、緑、白のういろうが一切れずつ乗った皿が置かれる。

「これは俺の奢り…つっても、まだ試作段階のヤツだから店頭には並んでないけど。色んな人から意見を聞いてるんだ」

「はぁ」

「良かったら食べてくれ」

「…じゃあ、頂きます」

穂積の勧めをやや釈然としない態度で受け、少女は竹串に桃色ういろうを刺して口に運ぶ。

口に入れた瞬間、少女の怪訝な顔が変わった。

「美味しい…」

「そうかそうか」

思わず呟いた、といった具合の少女の感想に穂積は満足そうに頷く。

和菓子然としたういろうの甘味を想像していた少女は、想定外のフルーティーな甘みに驚いた。

「これ、桜味だと思ったら桃なんですか?」

「そうそう。餡子みたいな甘さじゃ面白くないと思って桃のペーストでういろう作ったんだ」

「へぇ…」

穂積の説明を聞きながら少女は次のういろうを口に運ぶ。

「ん、これも美味しい…」

「おお、美味いか。よかった。全然ない味だから不安だったんだよなそれ」

「これ、バニラですか?確かに食べたこと無いですけど」

「牛乳とバニラオイルで作ったういろうだ。洋風なカンジに仕上げてみた」

「ういろうで洋風、ですか」

「和洋折衷だろ?」

「まぁ、結構面白い味ですけど」

言いながら最後のういろう、少女は緑色のそれを食す。

「これ…あっ、メロン?」

「正解。フルーツういろうシリーズ二号だ」

「何ていうか、ういろうっていうかゼリーみたい…美味しいけど」

穂積が試作したういろうは三種類、桃味、バニラ味、メロン味と前衛的な味付けのそれらは家族や先日配ったヒフミトリオには好評であった。

この育ちの良さそうな少女にも好評ならば、商品化を検討化しても良いだろう。

「ご馳走様でした」

「お粗末さん…ところで君、一年生のコだろ?穂乃果とはどこで知り合ったんだ?」

「えっ?…あっ、そうだった!」

少女が湯呑みの緑茶も飲み干し、落ち着いた所で穂積は彼女の制服のリボンの色から一年生、つまり穂乃果の後輩である事に気付く。

その問いかけに少女ははっとし、慌てた様子で傍らの学生鞄を漁る。

「これ、穂乃果さんに渡して下さい…私から貰ったとは絶対に言わないで」

「ん…CD?あいつに借りた奴か?…なんて読むんだこりゃ」

少女が差し出したのは一枚のCD。

受け取った穂積は、パッケージの『μ's』という見覚えの無い文字に首を傾げる。

「それに君から貰ったって言うなってどういう事だ?」

「それは…何でもです!」

焦っている様子の少女は椅子から立ち上がった。

鞄を掴んで足早に店の出口へと向かう。

「ちょっと待った」

そんな少女の背中に穂積は声を掛けた。

「…なんですか?」

「これ、ご家族にも」

「…どうも」

足を止めて怪訝な視線を向ける少女に、穂積はヒフミトリオに渡したもの同じ包みを渡した。

包みを受け取り一礼すると、今度こそ店の外へ向かう。

「ああ!最後に!もう一つだけ!」

「…何ですか!?」

穂積の某特命係の様な二度に渡る引き止めに流石に苛立ったのか、先程より少女は語気を強めて振り返る。

「せめて名前、教えてくれよ」

「…西木野、真姫です」

「マキちゃんな、穂乃果をよろしく」

「失礼します」

店の引き戸を開けた真姫は、小走りで去って行った。

「あっ、連絡先聞いときゃよかった」

「お兄ちゃん、お客さん?」

感想を聞く術の確保を忘れた穂積に、片づけを終え、厨房から顔を出した雪穂が声を掛ける。

「ああ、穂乃果の後輩が来てこれ置いてった」

「CD?お姉ちゃんの後輩が?」

「マキちゃんって言ったかな。でも何だか慌ててる様子だった。"私から貰ったと言うな"なんて変な事も言ってたし」

「変なの…お姉ちゃんに借りたCD返し忘れてて後ろめたいとか?」

「借りたの忘れるのは穂乃果の方じゃねぇのか?」

「それもそっか…」

これまでの穂乃果の行動を省みて真姫が返し忘れたセンを穂積と雪穂は速攻で切り捨てた。

「にしてもこのCDのこれ…えと、ミューズって読むのかな、これ」

「ミューズ?アブソリューションの?」

「それイギリスのロックバンドでしょ…違うと思う…ユーズ?わかんないや」

「まぁ、穂乃果に聞けば分かるだろうよ」

「ただいまー!」

「ホラ、ウワサをすれば」

穂積と雪穂が思案している間に、渦中の人物である穂乃果が店の引き戸を何時も通り勢い良く開けて帰宅する。

「あれ、お兄ちゃんに雪穂。2人で店番?」

「おう穂乃果、お前にお客さん来てたぞ」

「穂乃果に?」

「もう帰っちゃったけど、コレ置いてったよ」

真姫の置き土産であるCDを雪穂が穂乃果に渡す。

「んー?CD…あぁ!μ's!」

パッケージに手書きで書かれたそれを見つけた穂乃果が驚きの声を上げる。

「これ!誰から貰ったの!?」

「本人には言うなって言われたんだが、マキちゃんって娘から」

「あ、言っちゃうんだ」

「真姫ちゃん!?その娘って、苗字が西木野って娘?」

「おお、そうそう。穂乃果の知り合いだろ?」

「うん。その娘、すっごいピアノが上手で、今度のライブで踊る曲の作曲をお願いしてたの…断られちゃったけど、海未ちゃんの作詞メモ渡しておいたんだ…そっか、西木野さん、やってくれたんだ」

「それが今日やってきてCD置いてった、と」

「じゃあその中身、お姉ちゃんのデビュー曲が入ってるって事?」

マッサラCDの想定外の中身に何故真姫が匿名希望でCDを置いていったのか、穂積と雪穂は合点がいった。

どうやら後ろめたいという推理は合っていた様だ。

 

『Hey,hey,hey,START:DASH!!Hey,hey,hey,START:DASH!!……』

「上手いなぁ」

ノートPCのスピーカーから穂乃果の部屋にしっとりと流れるピアノの音声と歌声。

素人耳に聴いてもそう言うしかない出来栄えの作品に穂積は自然と呟いた。

やはり真姫の置いていったCDの中身は穂乃果依頼の新曲であり、出来栄えは十二分過ぎる。

「これイチから作ったワケだろ?高1でこの演奏と歌声は大したモンだよ」

「すごいよねぇ…」

穂積に同調して雪穂もそう口にした。

学校の後ろ盾もマトモに得られていないスクールアイドルが新規曲でデビュー、というのは界隈に疎い穂積でも破格の待遇である事は分かっていた。

しかも作曲者が学校の生徒ともなるとトンでもない幸運だという事も理解出来る。

ますます真姫の連絡先を聞いておくべきだった、と穂積は後悔した。

礼の一つも言わなくては気が済まない。

「この曲、作詞もあの西木野さんがやったのかな?」

「作詞担当は海未だ」

「へぇ、海未ちゃんにこんな才があるなんてね…お兄ちゃんやってみたら?」

「無茶言うんじゃねぇ。お前俺の()()()()()のセンス知ってんだろ?」

「あー…」

『つぶあんこ まめをのけたら こしあんこ』

高坂穂積当時小学六年生、渾身の川柳である。

授業参観で披露したその川柳は両親伝に2人の妹にも周知済みだった。

そんな兄のセンスを思い出した言いだしっぺの雪穂は自分の発言が無責任なものだと反省する。

「そういう雪穂こそやってみたらどうなんだよ」

「わ、私?無理無理!それこそセンスないよ!」

『おしょうがつ おもちたべすぎ にくふえた』

高坂雪穂当時小学三年生、渾身の俳句である。

例によって授業参観で披露したその俳句は例によって両親伝に兄と姉に周知済みである。

「そ、それにしても良い曲だよね!演奏もそうだけど、海未ちゃんの歌詞もいい感じだし…」

「あいつ、中学生の時ポエムか何か書いてたろ。そういう才能っつーか、下地は元々あったんだろ」

「ポエム?海未ちゃんが?どんなの?」

「…言っといてなんだが思い出したくねぇ」

思春期真っ只中である中学二年生、海未は中学生特有の病気(厨二病)の一つ、ポエム執筆にハマってしまった。

こっそり覗き読みした穂積が後悔するレベルの恥文は今の海未に見せたら舌を噛み切って死にかねず、書き手でもない穂積が思い出すと全身がむず痒くなる。

「これで一先ず曲は出来上がったとして明日も早いし…穂乃果?」

「…」

「穂乃果!」

「あっ?」

穂積が肩をつついてようやく穂乃果はPCの画面から目を離した。

真姫作曲ピアノ曲を再生してからずっと微動にせず音色に聞き入っていたのだ。

「話聞いてたか?」

「…明日の朝ごはんの話?」

「カスリもしてないよお姉ちゃん…」

「えへ、ゴメンゴメン、聞き入っちゃって…なんだかんだ言って西木野さん優しいなぁ」

「確かに、渋っといて結局作曲するってのはどういう心境の変化だろうな」

「ツンデレってヤツ?”べ、別にあんたの為なんかじゃないんだからね!私が経験積む為なんだからね!”みたいな」

「んなクラシックなツンデレあるかよ」

雪穂の古典的ツンデレ像に穂積は突っ込みを入れる。

「それよか明日からダンスの練習やるんだろ?もう遅いしお開きにしようぜ」

夕方、店先での一幕の後、夕飯と入浴を済ませ長女の部屋へ集結してから暫く経ち、時刻は既に23時に差し掛かろうとしている。

「そうだね。私も明日日直だし早起きしないと」

「さっさと寝ないと明日に響く」

「はーい」

今日の高坂兄妹の集いはお開きとなり、皆自分の部屋へ引き上げて行った。

 

時計の秒針が時を刻む音が聞こえる。

真っ暗な部屋の中でベッドに入り、目を瞑れば自然と聞こえてくるその音は普段ならば穂積を眠りへと誘う心地よいものだが、今の穂積にとっては煩わしい雑音以外の何物でもなかった。

「フーッ…」

何度目かも分からない寝返りをうってその音源、枕元に置いた目覚まし時計を睨む。

蛍光塗料で彩られた文字盤と針が指し示す時間は、穂積に床に就いてから既に1時間は経過している事を教えた。

「眠れねぇ…」

苛立ちと焦燥に駆られてベッドから起き上がる。

穏やかでない心境を知ってか知らずか、同調するように腹の虫も起きてしまったようで音を立てて自己主張した。

眠れない原因は単純、腹が減ったのである。

日々の激しいトレーニングと集中力を要する仕事で身心を酷使した後は身体が栄養を求めるものだ。

そのため穂積が普段摂取する食事量は必然的に多くなる(そんな穂積を幼少から見てきているため妹たちもよく食べる)。

しかし今は試合に向け減量中の身、好き放題食べるという訳にもいかず、量の少ない減量食で節制を強いられていた。

母手製の減量食は美味とはいえ、19歳、まだまだ成長途上の穂積にはいささか物足りない。

その不満がこうして空腹として表れ、眠ろうとしても空腹が気になって眠れない事態に陥っている。

このまま眠ることを諦めた穂積は寝床を抜け出して台所へ向かう事にした。

せめて水でも飲んで腹を膨らませれば多少はマシになるだろう。

 

「ん」

家族を起こさぬよう、静かに部屋を出て階下の台所への階段へ向かおうとした穂積だったが、穂乃果の部屋の引き戸から光が漏れている事に気付いた。

「…穂乃果?」

「はーい」

控えめに引き戸をノックすると直に反応があり、引き戸をあけて穂乃果が出てきた。

「お兄ちゃん、まだ寝ないの?」

「俺はちょっと水分補給…お前こそ何やってんだ?もう日付変わるぞ」

「あー、うん。もう寝るから」

「まだマキちゃんのCD聴いてたのか」

「えへへ、嬉しくってつい」

テーブル上には穂乃果のノートPCが兄妹解散後のまま置かれており、穂乃果がまだ真姫作の新曲を繰り返し聴いていた事が直に分かった。

「早く寝ないと明日に響くから寝ろよ」

「それは分かるんだけどさ…なんかこう、気持ちが昂ぶっちゃって眠れないんだ」

「遠足前の小学生かお前は…また朝寝坊したら海未に怒られるだろ」

「うーん、それは困ったなぁ…あ、そうだ。お兄ちゃん、穂乃果の頭ポンポンってしてよ。久々にさ」

それなら落ち着いて眠れる、と穂乃果は自信の寝かしつけを穂積に要求してくる。

幼少期、母親にされた事をそのまま穂乃果にしてみたら良く眠ったのでよくしてやった事を10年以上前の記憶を引っ張り出して思い出した。

高校受験前日、不安で眠れなくなった穂乃果を励ましたのが最後にココ最近はやっていない。

「まぁいいぜ。俺も何か眠れないし」

「ホント?じゃあ早速…」

いそいそとPCをシャットダウン、部屋の電気を消してベッドへ穂乃果は潜り込んだ。

何故か自分はベッドの端にスペースを確保するかのように位置して掛け布団を持ち上げて。

「はい、お兄ちゃんも入って」

「添い寝もかよ!」

「え~!?いいじゃん久々なんだから!」

「しょうがねぇなぁ…」

「わーい」

結局穂積は妹の要求を全面的に受け入れる事にした。

「ベッド狭いね」

「そら互いにデッカくなったからな」

シングルのベッドに2人寝るとなっては寝返りをうつスペースもない。

「よいしょ」

お構いなしとばかりに穂乃果は穂積に密着する。

早速穂乃果の頭をポンポンと優しく叩き始めると、満足気に目を細める。

柴犬のようだ、と穂積は口に出さないが思った。

「あ~落ち着くなぁ…」

穂積の胸に顔をくっ付ける体勢で穂乃果は気の抜けた声を上げる。

「おっぱい当たってるけど」

必然的にその体勢になると、穂積の腹の辺りに穂乃果の胸が押し付けられることになるので一応社交辞令を言う。

「当ててるんだよ~…コーフンしちゃう?」

「妹にムラムラしたりしねぇ」

「む、何かそれはそれでムカっとする…ことりちゃんぐらいおっぱい欲しいなぁ」

「その内成長するって」

「そっかなぁ…お兄ちゃん、おっぱい大きくする筋トレとか知らない?」

おっぱい(大胸筋)大きくするのは知ってるしやってるけどゴツゴツになるぞ」

「…やっぱいいや」

100kgのバーベルを持ち上げる自分を想像して穂乃果は言葉を切った。

「…どうだ?寝れそうか?」

「…ん、ちょっと眠くなってきた」

人間の鼓動は聞く者を落ち着かせるリズムらしい。

母親に抱かれる赤ん坊がリラックスして眠ってしまうのはそのリズムが作用しての事だ。

それは赤ん坊でなくなっても変わらず、現にこうして穂乃果は神経の昂ぶりが収まり眠気すら感じている。

「明日から歌の練習もするんだろ?早く寝な」

「うん…頑張らないと、ね」

「…何か俺も眠くなってきた」

欠伸を一つする。

こうして穂乃果を抱いて抱かれていると穂積も不思議と落ち着いた。

「お兄ちゃん」

「ん?」

「穂乃果たち、頑張る、から。見ててね」

「…おう」

その言葉を最後に穂乃果は言葉を発しなくなり、規則正しい呼吸を始めた。

眠りに入っている穂乃果の頭を撫でながら穂積もやがて眠りに誘われるのだった。




The Secret(未来(HIDEKI))

久々に雪穂登場、真姫ちゃんエンカウント回でした。

真姫ちゃんへの営業と穂乃果とのイチャつき入れたらこんなに長くなってしまった(´・ω・`)
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