高坂家長男の華麗ならざる日常   作:ポーラテック

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※タイトル変更しました


Find The Way

少子化による入学希望者減少に伴い、国立音ノ木坂学院の廃校が決定した。

その事実を"逆位置の運命の車輪"の暗示を今朝受けた穂積が知ったのは夕方。

意気消沈して帰ってきた穂乃果が帰宅し、居間で休憩中の穂積と雪穂にいの一番にぶちまけたからだ。

「マ、マジで占いが当たりやがった」

穂積は今朝のスピリチュアル巫女の占いが的中した事に戦慄する。

何事も無くロードワークから帰り、シャワーを浴び、朝食を採り、仕込みを終わらせた頃には占いの結果などすっかり忘れていた。

「どうしよう…学校なくなっちゃう…」

そんな穂積のうろたえなど意に介さずに穂乃果は食卓に突っ伏してしまっている。

心なしかサイドテールも何時もよりハリを失い頭を垂れているように見えた。

「穂乃果、廃校ってすぐなのか?」

「ううん…今年の新入生が卒業してからだって」

食卓から顔を上げた穂乃果の顔は相変わらず暗い。

"入学希望者を増やせれば廃校を撤回出来るだろう"と考えた穂乃果は幼馴染たちと休み時間や放課後を使って学校のアピールポイントを色々と調べまわったらしい。

しかし結果は芳しくなく、音ノ木坂の特徴といったら"伝統がある""アルパカを飼育している"ぐらいのものだった。

結論を言えば、現状の音ノ木坂に人を集める魅力はない。

「ああああ私の高校生活がぁぁぁぁ」

廃校の通達文書を見た瞬間卒倒する程ショックを受けたらしい穂乃果の心的ダメージは相当なもので、先程から呪詛を吐き出すのみの生き物と化してしまっている。

「お姉ちゃんは卒業できるんだからそんなに落ち込まなくてもいいんじゃないのー?」

そんな穂乃果の横で寝転びながら雑誌を読みふけっている雪穂は姉のいささかオーバーなリアクションに現実的な突っ込みを入れる。

「雪穂は進学先の心配しなくてもいいのか?」

「うん。私来年UTX受けるから」

「エッ、兄ちゃん初耳だぜ」

「言ってなかったっけ?」

「聞いてないよ。そら、雪穂の頭なら充分狙えるとは思うけどよ」

「UTXぅ?」

兄と妹の会話の中にあるあまり聞きなれない単語に興味を持ったのか、ようやく穂乃果は食卓から身体を上げる。

「うん。今すっごい人気の高校で、設備も一流企業のオフィスビルみたいに整ってて、海外留学なんかにも力入れてるんだよ」

「へぇ」

横になったままの雪穂から差し出されたパンフレットを受け取り、穂乃果はそれを流し読みしていく。

何度がページを捲ると、冊子の中に絢爛な衣装に身を包んだ少女達をひときわ大きく取り上げたページが穂乃果の目に留まった。

「あっ、この娘達ってテレビ出てた…スクールアイドル、だっけ?」

穂乃果の横からパンフレットを覗いた穂積が三人組ユニット(A-RISE)を指差す。

「そうそう、その人たちに憧れてウチのクラスの女子殆どUTXに入学希望出してるんだよ」

「集客力すげぇなスクールアイドル」

確かに年頃の女の子にとって華やかなステージの上で煌く同年代の少女たちというのは憧れの的だ。

そんなステージに自分も立てたら…と夢見てUTXの門を叩こうとするのは決して不自然ではない。

「すごいなぁ…こんなことやってるんだ…って、ちょっ、ちょっと待って!雪穂!アンタ音ノ木坂受けないの!?」

先程までのダウナーな雰囲気から急に立ち直った穂乃果は雪穂に詰め寄った。

驚いて身体を起こした雪穂を壁に追い詰めるように穂乃果は妹を詰める。

「時間差ありすぎだろ」

「お兄ちゃん!雪穂音ノ木坂受けないって!」

「今言ってたろ」

「だ、だってもう無くなっちゃう高校受験しても仕方ないって!」

唐突に詰めてきた姉の剣幕に反撃とばかりに雪穂は言葉を浴びせた。

「だってウチは代々音ノ木坂でしょ!お母さんもお婆ちゃんも音ノ木坂!」

「伝統ってだけで決まりがあるわけじゃあねぇし」

「お兄ちゃんまで…お母さん!お母さーん!雪穂音ノ木坂受けないって!」

流石に詰められた雪穂を不憫に思ったのか穂積は助け舟を出した。

『妹の進学先は好きにさせろ派(妹本人・兄)』の発言を受けた穂乃果は、劣勢と感じたのか援軍を呼ぶように店先に立つ母に大声で呼びかける。

「聞いてる」

「ぐはっ、お母さんも懐柔済み…」

そんな母からの短い返答に、『雪穂を音ノ木坂に入れろ派』が自分ただ一人だと悟った穂乃果は崩れ落ちる。

「ううっ、みんな音ノ木坂がなくなっちゃってもいいって言うの…?」

「そうは言ってないだろ。現実問題音ノ木坂に客集められる武器がなけりゃどうしようもない、って話だよ」

「んー、武器、武器か…アルパカじゃダメ?」

「農業高校にでもする気か」

「あー!わかんないぃ!わかんないよぉ!」

穂乃果の慟哭が夕方の和菓子屋に虚しく響いた。

 

「…ということがあってな」

『元気な妹さんやなぁ』

受話器越しの笑い声は心底楽しそうだった。

「笑い事じゃあないぜ、希。しまいには街宣活動を始める勢いだったんだぞ」

居間での一悶着は穂乃果が街中で署名活動をする、などとのたまった所に落ちてきた母の一喝で収束。

ギャアギャア騒いでいたのが店先にも聞こえたらしく、一撃で討死した穂乃果はすごすごと部屋に引き上げ、雪穂と穂積もそれに倣って解散した。

『そこまで大騒ぎしてくれるってことはそれだけ学校好きってことやん?』

副会長明利に尽きるわぁ、なんておどけて見せる彼女の表情を穂積を窺い知る術はなかったが、少なくとも笑みを浮かべていることは分かった。

「で、副会長さんは今回の廃校について何の対策を?」

『いや、全く』

「あん?」

穂積が希に電話を掛けたのは生徒会が廃校阻止へ向けて何か動き出しているに違いない、と期待しての事だった。

女子高である音ノ木坂学院内で穂積が話を聞ける関係者は限られる。

妹の穂乃果とその親友兼幼馴染の2人、理事長、そして生徒副会長である希だ。

穂乃果の口ぶりだと幼馴染三人組は廃校阻止計画を模索中であり、発起人穂乃果は絶対廃校を阻止するつもりだろうが穂乃果たちは学校の重要なポストに居るわけではない。

昔からの顔なじみとは言えいきなり理事長に話を聞くのは憚られるし、と穂積が白羽の矢を立てたのが希である。

生徒副会長という教師陣に踏み込めるポジションであり、不思議と大抵の事は把握している希はまさに情報の仕入先としてはうってつけだ。

「何もしてないってことはないだろう。強豪のコーチなり呼んで運動部強化して大会出して学校のPRをする、とか」

穂積は自らのプランを希に話す。

もし優勝は出来ないまでも全国大会に出場すれば大きなアピールになり、入学希望者を大きく増やせるのではないか、と元運動部の観点から考えた。

『それも考えたんやけど、地方予選止まりのウチの運動部じゃああまりに芽がないし…何より理事長から止められとるんよ』

「なんだそりゃ」

『「在校生が円満に卒業できるよう生徒会の活動はそれのみに集中しろ」だって』

「随分とドライじゃあないか」

穂積の知る理事長、というのは誰にでも優しく有能な教育者の鑑だ。

そんな彼女がこうまでアッサリと母校でもある伝統ある音ノ木坂を捨てられるだろうか。

案外、仕事仕事で忙しく構えなかった愛娘や夫との時間を廃校を機に満喫しようと考えているのかもしれない。

「…いや」

穂積はそこまで考えて自らの考えを否定する。

彼女は責任感の強い女性だ。

教育者の誇りにかけて、生徒達を中途半端な形で放り出すことは絶対にない。

『ロッキー?』

「ん、まぁ、理事長にも何か考えがあんだろ」

『考えねぇ』

「それはそうと、マジに生徒会は何もしないつもりなのか?」

『そんなワケないやん。エリチ…ああ、生徒会長なんやけど、理事長の言うことなんて無視して廃校阻止の為に毎日遅くまで残ってリソースかき集めてるよ』

「中々骨のある会長さんみたいだな」

気骨あるヘッドに参謀を希が務める生徒会は中々にして磐石な体制なのだろう。

事実、穂乃果から聞いた話では生徒から生徒会に対する不満が上がることは滅多になく、しかも極上の美人である生徒会長は生徒からの人気も非常に高いそうだ。

『…それでも、上手くはいってはいないよ』

「…」

先程までの明るい似非関西弁が一転、トーンが落ちた受話器越しの声色は暗い。

『ロッキーの妹さんが言った通りだよ。音ノ木坂は伝統ある女子高。()()()()。妹さんの妹さんが入学したがってるUTXみたいに大規模でもないし先進的な設備もない。何年も何年も積み重ねてこの町に根付いて、たくさんの人たちが通って、当たり前のようにそこにある。()()()()の学校』

「時代遅れってことか?」

希の母校を語る口ぶりに、悔しさのようなものを滲ませているのを感じた穂積は問いかける。

ほんの僅かな沈黙の後、そういう言い方もあるね、と希は答えた。

『女の子は皆キラキラした物に憧れる。ベタだけど、宝石とか、服とか。皆自分を着飾りたい。学校だって地味で古いだけの学校より、キラキラしててカッコいい学校に通いたいものなのかもね』

「…希も?」

言葉端から感じる、希の悔しさ、憧れ、達観の気持ち。

UTXをキラキラ、音ノ木坂を古いだけと評した希に穂積はまた問いかけた。

『…ウチは、それでもこの学校が、友達が好きだから。放り出して何処かに行ったりはしないよ』

「…そっか。悪い。変な事聞いた」

『ウチこそゴメンね?ロッキーにこんな話なんかしてもしょうがないのに』

「いや、俺だって音ノ木坂がなくなるのは嫌だからな」

『ホント?』

「ああ。学園祭の出店、学校無くなったら回れなくなるだろ」

アレ結構楽しみにしてるんだぜ、と穂積はワザとおどけて言う。

穂積は穂乃果が入学する前、具体的には高校1年生の時分からちょくちょく毎年行われる学園祭に仲間達と足を運んでいた。

動機は祭りなどの出店が好きなのが2割、女子高の生徒とお話する機会でもあれば、などという邪な気持ちが8割であったが。

『ふふっ、アリガト。今年の学園祭も盛り上がるよう頑張るから今年も来てや?』

「おう。絶対行くよ」

希の口調が何時もの似非関西弁に戻ったのを確認した穂積は満足そうに笑う。

『あー、なんか話したらスッキリしたわ。そうやね。ウチもエリチに負けないぐらい頑張らないと』

「その意気だ。何か手伝えること…といってもあんまないかもだけど。あったら言ってくれよな」

『ありがと。頼りにしてるで?』

「ああ…希」

『ん?』

「…音ノ木坂はいい学校だよ。絶対何とかなるさ」

穂積が今出来るのは悩める少女にこうして受話器越しにエールを送ることだけだった。

『…わかってる。きっと大丈夫や』

それでも希は少し元気が出たようで、納得するようにエールに答えた。

「それじゃ、お休み」

『うん。お休み』

希との電話を終わらせると、穂積は寝床に就いた。

明日からどうなるかは分からないが、少しでも友人を元気付けられたならば。

今日はそれで良しとしよう、と穂積は目を閉じた。




ここから時系列的にアニメ一期1話になります。

Find The Wayは中島美嘉が歌うガンダムSEEDのED曲です
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