高坂家長男の華麗ならざる日常   作:ポーラテック

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久々の投稿となります

全て仕事を回してくる会社が悪い…


Tell Me Why?

「わかんねぇ」

早朝、ロードワークの終着点である神田明神。

そこを訪れた穂積は開口一番そんな言葉を息を切らしながら搾り出した。

「…何の話や?」

汗だくの穂積からいきなりそんな事を言われた希は境内を掃く手を止める。

「いくらゼエッ、考えてもスクーウッ、ルアイドルのフッー、サポートの方っゲホッ、法がわからない」

「落ち着いて」

穂積は顎先から汗を滴らせ、肩を上下させる程息を絶やしているというのに喋るので酸欠気味である。

希はそんな友人を一先ず落ち着かせようとするも構わずしゃべり続けた。

「だっ、だからオエッ、どうしたらいいかと…オエエ」

「ああ、そんなに喋るからや」

酸欠極まり嘔吐き始める穂積に呆れるも、希は彼を休ませるべく誘導することにした。

 

「落ち着いた?」

「悪い。焦り過ぎていつもより飛ばしちまった」

社務所の休憩所へ案内され緑茶を振舞って貰った穂積はすっかり落ち着いたようで呼吸も心拍も正常に戻ったようだ。

畳とちゃぶ台の簡素な部屋だったが茶菓子や給湯器、茶葉程度は置いてあり休憩程度には丁度良いだろう。

「そんなに急ぐようなことなん?」

「まぁな…っつっても、俺が焦ってるだけなんだけど」

「スクールアイドルのサポート、やったっけ?」

「そう。穂乃果…妹なんだけど、音ノ木坂の廃校阻止の為にスクールアイドルやるって言っててさ」

「知ってる。同じクラスのコと三人組でやるんやろ?」

「もう知ってんのか」

「生徒副会長の情報網舐めたらアカンよ」

「すげえな副会長…で、俺、穂乃果の為に何が出来んのかなって考えたんだけどさっぱり思いつかなくてさ。穂乃果とお袋に協力するって言っちまった手前このまま何もせずってワケにも行かないし」

緑茶を啜りながらここ数日の悩みのタネを穂積は吐露する。

穂積なりに仕事と練習の合間合間にスクールアイドルについて調べ、何が出来るか考察したのだが早速『何をすれば良いのか分からない』という壁にぶち当たっていた。

「…で、ウチに何すれば良いか相談しに来たと」

「そういうワケ。今後の方針を希先生のスピリチュアルパワーで占って頂こうかと」

「あんだけ普段"胡散臭い"だの言っておいて調子ええなぁ?」

「ウッ」

「まぁええけど」

「本当か!?」

ちゃんぽん巫女呼ばわりされている事を感づいていたのか、希は穂積に怪訝な目線を向けるも頼られる事自体はまんざらで無いようだ。

「ほな早速…ハイ、"節制"のカードやね」

「んー…正位置だから自制とかそういう意味か……どういうこっちゃ」

希のタロット占いの結果を受けるも、今後の指標を悟るには至らなかった。

「ロッキーはその穂乃果ちゃんの活動には一切関わってないん?」

「関わるも何も活動始まってすらいないんだよ」

「ふぅん…メンバーだけ揃ってる感じなん?」

「まぁ…そんな感じ」

自分のお茶も用意し啜り始める希。

巫女服に緑茶、畳と21世紀の日本では少々異質な光景だが、不思議と違和感は無かった。

「なら別にロッキーが気にする段階やないやん」

「あん?」

温くなった穂積の湯呑みに新しい緑茶を注ぎながら希は穂積の悩みを斬って捨てた。

「メンバーの子らがいるんなら自分らで何をやるか相談するだろうし、自分らでにっちもさっちも行かなくなったらロッキーや他の人にも頼るやろ…ロッキーが何かするにはまだ早いんちゃう?」

「む…言われてみればそうかも」

「もう高校生なんやから、自分の面倒は自分で見たいと思うやん。ウチはそう思うな」

希の言葉で穂積は自意識が芽生え、自分で何事も決定したがる年頃だった16歳の頃の自分を思い出す。

ああだこうだと年上から指図されるのが不愉快でたまらなかったな、とも思い出した。

「…そーだな、高校生ってそういうもんだったな」

「さっきも言ったけど、暫く待つことや。きっと向こうからロッキーを頼ってくると思うよ」

"不思議"と希のカンというのは当るもので、無くし物の捜索を頼めばあっという間に見つけ、希がくじ引きをする

と毎回良い結果のモノが出る。

本人曰く『スピリチュアルパワー』らしいが、強運な星の元に生まれたのは間違いない。

「わかった。言われたとおり待ってみる」

 

「どうしようお兄ちゃん」

「早速来たよオイ」

希と別れたその日の午後。

客足もまばらになってきた平日の夕方、穂積が店番をしていると悩める妹が学校から帰ってきた。

「早速?」

「何でもねぇ…で、今度は何だよ」

カウンターを挟んで向かい合う。

どうせ客も来ず暇していた穂積はこのまま相談に乗ることにした。

「あのね、海未ちゃんが参加してくれる事になって今日から練習始めようと思ったんだけど、よくよく考えたら振り付けも歌う曲も何も用意してなかったんだよね」

「よくよく考えなくても分かんだろ」

穂乃果の浅慮に兄は僅かに呆れる。

昔から思いつきと行動力は凄まじいがその後の事を考えずに突っ走るというきらいは改善の見込みはない。

「うう…で、今日はとり合えず解散になったんだけど、明日からどうしようかなって…」

「む、俺はダンスや歌にアドバイスは出来ないぜ」

「そーだよねぇ…うーん、言いだしっぺの穂乃果が何もやらないって言うのも」

「…とり合えず基礎のトレーニングから始めたらどうだ。体力つけてから曲やダンスは考えればいいだろ」

「ん。そうだね…そうだ!お兄ちゃんトレーニング教えてよ!」

「俺が?」

精一杯出来るアドバイスを贈ると、また思いついた様子の穂乃果が声を上げる。

「うん!だってお兄ちゃん格闘技やってるしそういう体力作りのやり方知ってるでしょ?」

「そりゃそうだけどよ…じゃ、ロードワークからやるか?」

「お兄ちゃんが毎朝やってる奴?」

「走りこみは基礎の基礎だからな。心肺機能強化されてスタミナも付くし、下半身も強くなって結果的に体幹も鍛えられる」

スタミナと下半身の強化はどのスポーツでも非常に重要であり、それは格闘技でもアイドルであっても何ら変わることは無い。

特に激しいダンスをするのならばスタミナ強化と体幹を鍛えてキレのある動きを体得しなければならないだろう。

そういう意味でも走りこみは重要である。

「わかった。それじゃあ明日からお願いね!」

「明日から!?」

近いうちに面倒を見れれば、ぐらいに考えていた穂積だったが明日からと急な要望を出す妹に面食らう。

「こういうのは勢いだよ勢い!海未ちゃんとことりちゃんにも連絡しとくからよろしくね~!」

「あっ、おい!」

一方的に約束を取り付けた穂乃果はさっさと居間に引っ込んでしまう。

返事も出来なかった穂積は一人店先に取り残されてしまった。

「何か随分騒いでるみたいだね」

「ああ、雪穂。おかえり」

「うん、ただいま」

穂乃果と入れ替わる形で学校から帰宅した雪穂が店先に現れた。

「お兄ちゃん、お姉ちゃんのトレーニングするの?」

「聞いてたのか」

「あれだけ騒いでたらね。お姉ちゃんの声よく通るから」

「明日の朝からだと。急に話持ってこられても困るぜ」

やれやれ、といった風に穂積は肩をすくめる。

「でも何かお兄ちゃん嬉しそうじゃない?」

「そうか?」

ニヤけでもしているのだろうか、と穂積は自分の口元を探る。

僅かに口角が上がってはいた。

早速穂乃果のアイドル活動に貢献する機会を得た嬉色が顔に出てしまっている。

「さて、明日からどうやってシゴいてやろうか」

「…お姉ちゃん、音上げないかなぁ」

そんなシスコンの気持ちを知ってか知らずか、妹は一人姉の心配をするのだった。




Tell Me Why?(AK-69)
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