そう思っていた時期が私にもありました。
「ギャァァァァァッッッッ!!!」
「アガァァァァァッッッッ!!!」
耳を劈くような悲鳴の中、オレは只々前へ進む。途中にオレの前に立ちはだかる雑魚を蹴散らす。千切り、裂き、殴り。ありとあらゆる方法を用いて塵屑へ残酷な終わりを降す。
「ア……ア……」
「ウ……ア……」
白銀が通った後は、この世のものとは思えない程、残虐に満ちていた。
血飛沫が照らす、文字通りに千切れた腕や足。散乱する夥しい臓器の数々。抉り出された眼。咲き乱れる肉の華。これを阿鼻叫喚と言わずに何と言えば良いのだろうか。これほど残虐を極めても、残酷な嵐は決して止まらない。自らを狭みた元凶を殺すまでは。
「お前が頭か、塵屑?」
悪夢が、始まる。
男は混乱していた。突如として現れた謎の男に。
男は混乱していた。突如として死んだ手下に。
「誰だ……テメェ?」
「貴様風情に名乗る名は無い。」
絶対零度の視線を向ける目前の男。殺気とともに向けられる眼差しは何故かひどく恐ろしかった。
「虫けらならば、無様に死に逝け。」
(なんだコイツ……。珍しい服を着ていやがる。もしや……)
男は腰の剣を抜く。
(コイツ、報告にあった商家の息子か?)
人間の先入観というのは恐ろしい。なぜならば、先入観というのはいわばある物に対して個人が抱く勝手な固定的概念だからだ。
例えば、ある学校の生徒が問題を起こしたとしよう。世間一般で、その問題は犯罪と呼ばれるカテゴリーに分類される物だった。その生徒が所属していた学校が推薦入学を受け付けた。
さて、推薦入学を申し込む人間は果たしているだろうか。答えは否だ。どうしてか。
これには先の先入観が深く関わってくる。先入観とは記したとおり、初めに知った事に基づいて作られる固定的概念のことだ。これが総意、すなわち世論に適用されたとしたら……。その学校の他の生徒がどれだけ真面目でも、その生徒が起こした犯罪が原因で抱かれた悪印象は払拭することは不可能に近いだろう。
つまり、そういうことなのだ。
男は決めつけてしまった。
目前の男は高が商家の息子。自分が敗北する存在ではないのだと。狩るべき獲物だ、と。
「なんだ、俺とやろうってか?」
男の命運は決まった。男に降されるものは白銀の裁き。残虐な終わりを迎える事を確約
された愚者は、愚かにも戦うことを選んだ。それが無謀であるとも知らずに。
「痴れ者が……身の程知らずめ。」
瞬間、周囲の風が吹き荒れる。目を見開く男は悟る。
目前の男の恐ろしさを。
(危険? そんなものじゃない。コイツは……)
「恥を知れ、戯け者。」
いつの間にか目前の男は手に槍を持っていた。男は理解した。いや、理解してしまった。
ここが自分の
「……禁手化」
《Vanishing Doragon Balance Breaker!!!》
世界に背く禁忌の力。怒りに満ちた禁忌は空を汚し、大地を枯らす。
身の毛もよだつ悪意が一身に自分へと向けられる。最早男に成す術などなかった。
自らに裁きを降すのは最狂の龍。故に死は避けようのない
「本来ならば貴様のような雑魚に使うものではないのだが……。愚劣には相応の裁きが必要だろう?」
「ああ……あ……」
遅すぎる後悔だった。処刑はすでに目前まで迫り、あとは罪人の首が撥ねられるだけ。
「覚悟はよいな、下郎。」
「ひっ……!」
終焉は告げる。天才によって与えられる処断を。
「いやだ!! 俺は死にたく……ゴッ!!」
殴る。殴る。殴る。殴る。殴り続ける。槍の柄を使い、ひたすら殴り続ける。
「ア……ガッ……」
男はもう虫の息だった。抗うことを諦め、成すがままに甚振られ続ける。一刀は男を蹴飛ばし転がす。
「よく見ておけ。
気絶することも死ぬことも許されず、痛みに呻く賊共に見せつけるかのように、処刑は始まった。
腕を捥ぎ取る。足を切り刻む。目を抉り出す。耳を削ぐ。ありとあらゆる方法で
《Divide》
一刀の持つ神器、『白龍皇の光翼』の能力の一つ、触れたものの力を半分にする能力が発動する。本来ならば純粋な【力】だけを半減・吸収するこの力だが、一刀は普通を許さない。一刀だけに許された半減は、文字通り対象者の全てを半減するのだ。力だけではなく、その命までも。
今にも死にそうだった賊の男が生命力を半減されて無事でいられるだろうか――いや、いられない。
「…………」
物言わぬ人形のように、男はピクリとも動かない。
「……死んだか」
一刀は男を投げ捨てる。
「……貫け」
風の槍を空中に放し、命じる。それだけで槍は男を貫く。意思を持ったかのように男を引き裂くそれは、容易に男を骸へと変貌させた。賊たちは恐怖した。ああ、次は自分なのだ、と。
「龍の逆鱗に触れた愚者は悲劇を迎える。……貴様らのようにな。」
龍の殺気は世界を震撼させる。その言葉は賊は勿論のこと、生き物をも恐怖に陥らせるには然るべきものだった。賊たちの意識は二度と目覚めない夢想の世界へとたった一人を除いて消えた。生き残った最後の賊へ死が軽く思えるような残虐を降した白銀は告げる。
「他の賊にも伝えろ。――これが処刑だ、と。」
恐怖が現実へ変わる時、世界は恐怖を肯定する。恐怖を与えるものはいつだって強き者。人を、国を治める王にのみ与えられる最強としての権能。そして国を超える幻想にのみ許された最狂の権能。一刀は唯の龍ではない。神を、魔王を殺す神滅。その存在そのものが国や世界に匹敵するのだ。そんな存在に慈悲など無い。
「死してもやはり醜さは変わらず、か……。」
惨く、醜悪な
王の裁断、いや龍の蹂躙が齎したもの。それは紛うことなく、破壊だった。
「ありがとうございます、北郷様。何とお礼を申し上げればよいか……」
「オレは賊に裁きを降しただけだ。それが結果的にお前たちを救ったに過ぎない。」
賊徒の壊滅により、捕虜として捕らわれていた村の女性たちは一刀の手によって解放され、賊から隠れて生き延びていた村人たちと落ち合った。一刀自身が言う通り、彼は村人たちを救うつもりなど無かった。己を侮った賊を裁いただけである。しかし、村人たちにとって一刀は救いだった。自分たちは賊徒によって殺されていたかもしれない。男たちの慰み者となっていたかもしれない。どのような経緯があれど、一刀が自分たちを救ったことに変わりは無い。村人たちは考えた。自分たちは弱者だ。故に力ある者がいるのならば守ってもらおう、と。村人たちは一刀の言を謙遜と捉えた。いや、捉えてしまった。それが悲劇の始まりとは知らずに。
「北郷様。お願いが御座います。どうか聞いて頂けないでしょうか……?」
若い女が前へ進み出る。
「……何だ。」
「我々は賊に対抗できぬ弱者です。再び先のような賊が襲来すれば我々は蹂躙されま
す……。」
女は続ける。
「故に、どうか北郷様には太守となり、皆を守っていただきたいのです。お願いいたします。」
その言葉を皮切りに村人たちは頭を下げ、一刀へ願い出る。
「お願い致します! 北郷様!」
「どうか我々をお守りください!」
「太守として我々をお導き下さい!」
一刀にある感情は――無関心。冷めきった眼で村人を見下ろす一刀は冷酷を告げる。
「断る。オレはお前たちを救う気など毛頭ない。」
「な、なぜですか!? あなたは我々をお救い下さったではありませんか!! なぜ我々を御守り下さらぬのです!!」
ありえないものを見るかのような目で一刀を見た女は悲痛な叫びを上げる。他の村人もまた同じように一刀を見る。視線を受けた龍は語る。冷酷は激情に変化することを。
「勘違いするなよ下郎。」
龍の怒り。それは弱者であろうが強者であろうが関係なく蹂躙する、最狂にのみ許された暴虐。知らず知らずのうちに逆鱗に触れてしまった村人たちに残された道は一つ。それは悲しい
「オレはただ賊を蹂躙しただけ。貴様らなど初めから見ていない。」
故に、と龍は裁断を告げる。狂おしい程に崇高で、残酷な命運を。
「無礼には罰を与えねばならない。……それが道理である故に。」
刹那、赤い華が咲く。村人たちは目を疑った。一刀の目の前にいた女の姿が消えていたからだ。そして同時に目撃する――狂気の残虐を。
「……ひっ!!」
ゴトリ、と音がした。それは女の首だった。
「あ……ああ……」
グシャリ、と音がした。それは女の腕だった。
「う……おえ……」
ズブリ、と音がした。それは女の胴だった。
「ガッ……アッ……」
最後の罪人を処刑する。かつて人がいたという事実を消去するかのように、大地は赤く染まり、自然は色を失う。
「…………」
言葉を奪われた肉塊が存在する中、唯一光を放つ存在――白銀は自らが作り出した残虐を眺める。
「……いまいちだな。やはり凡人風情では醜悪なだけか。」
白銀の創作は殺し。命を奪うことで初めて成立する歪んだ
ふと異変を感じた。
「これは……?」
辺りを見渡す。強大な覇気を察知する。
《……相当な力の波導だ。》
「これほどの力を持つ者など一人しかいないだろう。」
治世の能臣。乱世の奸雄。非常の人、超世の傑と天下に名高き天下無双の覇王、曹孟徳。その名は悪逆非道の賊をも震え上がらせる、漢王室の最終兵器にして人々の希望。厳しい現実を掲げながらも理想を理解する、まさに万民の王。現時点で最も己の障害となるであろう最強で最高の逸材。軽視できる相手ではなかった。
「飛ぶぞアルビオン。この場に留まるのは得策でない。」
《正しい判断だろう。既に準備は終えている。いつでも出立できるぞ。》
アルビオンの言葉の後、瞬時に光翼を展開する。風が姿を覆い、一刀の形を蜃気楼のように曖昧にする。軽く地面を蹴り、一刀は空へと姿を消した。――残虐の爪痕を残したまま。
「桂花。」
「はっ。」
「奴らは今どうなっている。」
「報告によりますと、現在南陽の辺りにて停止中とのことです。」
「ご苦労様。引き続き情報の収集を行いなさい。可能な限り精密な情報を。」
「御意。」
ここは豫州、汝南。民を脅かし、暴虐を極める賊徒を排除するために進軍した陳留刺史、曹操の軍内。朝廷より討伐命令を賜った曹操はここ最近現れる賊徒についてある共通点を見出していた。それは全員が頭に黄色い布を巻いている事。そして、その黄色い布を巻いている賊の出現情報後に討伐に向かうと、必ず一人しか生き残っていないこと。いや、あれは生きてはいない。捥がれた腕と足は執拗に切り刻まれ、賊本人の目の前に置いてあること。必ず応急措置がされ、辛うじて生きている事。そして、必ず口をそろえて言う言葉――白銀。その言葉を口に出すだけで賊徒は震えあがり、発狂してしまう。とても尋問できるような状態ではないのだ。賊徒の正確な情報は入手不可能であり、困難を極めている。なぜなら、拷問にかけようとも捕らえた賊徒たちは白銀という言葉しか呟かず、全くと言っていいほど他の事を話さないのだ。難航するのも当然だろう。
「…………」
生まれ持った頭脳は高次元の思考を可能とする優秀なもの。意識を思考へ集中、最大限に稼働させ感じてやまない“違和感“を探る。
(……黄巾。世間を騒がせるほどの賊。そんな奴らがああも簡単に殺されている。)
更に頭脳を回転させる。
(烏合の衆とはいえ量は馬鹿にならない。そんな奴らを一人だけ生かす。……妙ね。)
巷を騒がせる賊――通称「黄巾党」。頭に黄色い布を巻いた奴らの総称だ。その奴らは雑魚ではあるが質より量と言わんばかりにその兵数は馬鹿にならない数を誇っている。数だけが取り柄と言ってもいい程の賊がたった一人だけを残して全滅。しかも死体は賊のもののみ。それを見て違和感を感じ得ずにいられるだろうか。曹操の抱いた違和感はまさにそれだった。
(何度調べても戦闘痕は一人のもの。……まさか本当に一人で殲滅したというの?)
現場はこの目で何度も見ている。其処に広がっていたのは凄惨の一言だった。執拗に切り刻まれた腕や足が転がっているのは当たり前。臓器がぶちまけられ、赤黒い血が大地を染め上げる。眼球は踏み潰され、五体満足の遺体は一つとして無い。そのあまりの惨状に新兵たちは皆吐瀉物を吐き出していた。戦場を知る私たちでさえ気分を害したほどだ。その凄惨さは今も身に染みている。だからこそ分かる。その残虐とは必ず相対することになる、と。
(あれほどの残虐。いずれ降さねばならぬ。私の掲げる――覇道のためにも。)
思考から戻る。目の前には己の愛する臣下の姿。
「……桂花。」
それだけで王佐は意を汲む。
「既に残虐を調査しております。しかし目撃情報が少なく、時間がかかるかと。」
「他に有益な情報はあるか。」
「先ほど斥候からの報告がありました。……豫州の黄巾が全て全滅したようです。」
驚きに目を見開く。すぐに眼を細める。
「……
「おそらくは。」
眼を閉じる。瞼の裏に残酷な景色が浮かび上がる。
「ですが今回は問題がございます。」
王佐の才、荀彧。覇王を支える若き天才。神に愛された天賦の才は自らの王に異変を告げた。
「問題だと? どのようなものだ。」
王は問う。
「これまでと違い、周辺の民までもが惨殺されています。」
「……なんだと?」
驚愕が体を支配する。
「誠か荀彧。」
「はっ。我々の見てきたものと同一の手法でした。……
「何てこと……」
容易に曹操を苦悩させる事実。それは無辜の民が殺害されたというあってはならない悲劇。
「華琳様……」
心配そうな顔をして文若は王を諌める。
「華琳様。少しお休みになっては如何ですか? 疲労は悪影響しか与えません。」
愛する臣下の言を受け止める。
「ええ……あなたの言う通りね桂花。」
王としての顔が消え、年相応の
「私は天幕に戻るわ。夜、天幕に来なさい。……お礼に可愛がってあげるわ桂花」
幼いながらも妖艶さを感じさせる容貌。並ぶ者などいない程の美しさはいとも容易く荀彧の心を蕩けさせた。
「あぁ……華琳様……」
恍惚とした表情の荀彧を残し、曹操は己の天幕へと歩を進める。天幕に向かう途中覇王は決意する。
(白銀……。もしお前が私の前に立ちはだかるというのなら――容赦はせぬぞ。)
乱れきった世界だからこそ許される傲慢な覇気が曹操を覆う。
「全ては――我が覇道のために。」
そして王は天幕へと姿を消した。
近頃、賊たちが次々と狩られているらしい。
というのも私たちの州には他と違ってあまり賊が入ってこないからだ。それも賊とはいっても巷を騒がせているような黄巾賊ではなく山賊の類。まあ州内に危険分子が入ってこないという事実はそれだけこの江東が安全である、という事実の裏付けにもなるわけだから決して不満などは抱いていない。
不満と言えば厳しすぎる幼馴染のことくらいだろうか。仕事を少し早めに切り上げるだけで一から十までくどくどと説教をかましてくる。いや、愛されているという自覚はあるのだがやはり毎度の如く説教をされると少し辟易としてくる。……ほとんど自分が原因だから何とも言えないんだけど。
「雪蓮……聞いてるの?」
「もちろんよ。……
美周郎。天下にその美貌を謳われた若き麒麟児であり我が幼馴染でもある周公瑾――冥琳とともに語る内容はある存在の事。――白銀。またの名を残虐。
黄巾と共に巷を騒がせている存在で、民草の救世主……と言えば聞こえはいいが、その実、白銀は救世主などではなく賊を狩る奴ら専用の
その手法は残酷極まりなく、大陸中の賊を恐怖へと追い詰め、震え上がらせている。
主に白銀が出没するといわれる冀州は白銀を恐れた賊が他州に逃げ出しているらしい。
その影響を最も受けているのは豫州。天下の能臣、曹孟徳が治める場所だ。もっとも、精鋭として名高い屈強な曹操軍が賊徒の豫州への侵攻や賊徒の討伐程度を悪影響とは捉えないだろうが。むしろ、曹操軍に影響を与えるであろう事柄は賊徒の悲劇だ。
白銀は執拗に賊徒を痛めつける。どのような恨みがあるのかは分からないが、その光景は生理的嫌悪を催すような凄惨さだという。
私も人に伝え聞いた程度で実際に見ていないので詳しくは分からないが。だが、実際に見ていなくともその話を聞くだけで私の本能が警告を発し、嫌悪を抱かせたほどなのだ。その目で光景を見た者の精神がどうなるのかは想像に容易い。
戦場の空気は忘れようにも忘れられないものだ。ゆえに身に沁みついた残虐は死ぬまで常に付き纏い、見た者を永遠に苦しめる。それはあまりにも残酷な生き地獄。生きる意志を失いかねない災厄。だからこそ残虐が起きないように一刻も早く、賊徒を討伐する必要がある。
しかし今の我ら――孫家は棟梁にして先王孫堅を失い、袁術の客将という身分に身を窶している。袁家の監視があるそのような状態では自分勝手な行動はできない。到底無理な話だった。だが、残虐という大きな問題が現れた。これは
「……ねえ、冥琳。」
「……何?」
「飼い主がさ、猛獣の首輪を外して目を離したら……どうなるかな?」
「そんなの噛みつくに決まって……まさか」
言葉遊びだけで気付いてしまう幼馴染はやはり優秀だと思う。自分でも己は自堕落な王だと思っているので、よくもこんな私につき従っているな、と感心してしまう。
民を救うためにも、我らにつき従う家臣の為にも、強大な経済力と兵力を有する袁家を相手取るには大陸が“白銀”によって混乱している今こそが立ちあがる時なのだ。
「そう。噛みつく時が来たのよ。……母様の無念を晴らす時が来たの。」
「雪蓮……。」
悲しみと共に喜びの混じった顔で私を見つめる天才は歓喜を紡ぐ。
「今はまだ時期は早いわ。蓮華様も十分な兵もいない。ここで立つのは無謀よ。」
でも、と続ける幼馴染の顔は生まれて初めてギラギラと輝いていた。
「時が満ち、
「それはすなわち、――
互いに顔を合わせ、笑いあう。生まれた時から一緒に過ごしてきた断金の友なのだ。それ以上の言葉は二人の間には必要ない。互いの意志を読み取り、今後の構想を頭の中に描いているその時、突然玉座の間に伝令兵が駆け込んできた。
「申し上げます!! 賊徒が発見されました!!」
幼馴染としての顔を軍師としての顔へと切り替える冥琳。伝令兵へ状況の確認を図る。
「被害状況はどうなっている?」
「現在、准南に拠点を設け、近隣の村より略奪を繰り返しているとのこと。既に二つの村が甚大な被害を受けた模様!!」
「……雪蓮。」
「ええ。わかってるわ。……報告ご苦労であった。そなたは休息後すぐに任務へ戻れ。」
「御意!!」
その言葉とともに走り去る伝令。
「……出立の準備をしてくるわ。」
意識はすでに戦場に……。軍師は既に背を向け出撃準備の開始を始めようとしていた。
「うん、お願いね。」
「……雪蓮。」
「んー? 何?」
冥琳が私を呼び止める。後ろを振り返る冥琳の
「必ず、勝つぞ。」
見たこともない程の野生の魂がそこにあった。
「……フフ。――勿論よ」
孫呉の王の証、宝剣「南海覇王」を手に取り鎧を纏う。鞘から剣を抜刀する。
「さあ、始めましょう――悪意に満ちたこの戦乱を。」
「……本当に私で良いのか。適任は他にも居るだろうに。」
「いや、白銀を満足させ、屠れるほどの猛者はお主しか居らん。故にこれは必然とも言えよう。」
とある管理世界。そこにいたのは管理者、卑弥呼と影に覆われた何者かがいた。
「ではその願い、聞き届けよう。私が奴を殺す。その代わり――」
「分かっておる。……お主にふさわしい死に場所を用意しよう。」
「フ……。交渉成立だ。では私はそろそろ戻るとしよう。」
「……健闘を祈る。」
「期待して待つが宜しい。……それ以上の成果をお持ちしよう。」
「……頼もしい限りじゃ。」
影の背中から翼が生える。
《見せつけてやれ相棒。白を降せるのはお前ただ一人。……勝つぞ。》
威厳のある声が場を赫灼へと変化させる。声だけで場を支配した伝説――赤龍帝は告げる。
「無論だ、ドライグ殿。――負けるものか。」
膨大な殺気と共に影は半身に告げる。赫灼を黒く染め上げ、暗黒へと変質させるそれは醜く、されど気高き誇りを持ち合わせていた。
《Welsh Dragon Balance Breaker!!!》
白と対を成す紅蓮の龍の怒りが影の身を包んでいく。激情を表すかのような灼熱の鎧は観る者を圧倒し、恐怖へと陥らせる。一匹の龍と化した影は言霊を紡ぐ。瞬間、影の姿は消えた。まるで最初からそこには誰もいなかったかのように。
その影を見つめながら卑弥呼は告げた。
「残虐よ。貴殿の行動は道理に反するもの。故に……」
それは白銀が最も望み、最も忌み嫌う最大の禁忌。
「悪逆非道には聖人君子。白には赤。……戻らない世界ならばせめて滑稽に踊ってもらおうではないか。――のう白銀よ。」
管理者は紡ぐ。世界を壊しかねない
この小説では卑弥呼さんは一刀君に忠誠心なんて持っていません。こんな問題だらけの主人公に忠誠心を抱いてくれる人なんて誰もいませんよ(笑)
まあ残虐で無慈悲で悪逆非道。凶悪で残忍なクソヤローでもそこが本作品における一刀君の味なんです。一種の”特殊な癖”と思ってくださいね。愛着持ってもらえると嬉しいなあ(笑)
では後書きはこの辺りで。また次回お会いしましょう。