デート・ア・ライブ 破壊者が精霊を救う   作:TBの狙撃手

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第10話 裏切りの傷

 

(澪奈に近づいてどうする気、だったな。そりゃあまずは『トモダチ』になるのが目的だ、そのあとにはお前を助ける為に)

 

「嘘つき……」

 

影騎は自分を救うと、嘘はつかないと、そう言った嘘つき。

 

全部、嘘だった。

 

影騎はASTの一員すら守っていた

 

ASTのから不意打ちで理解できた。

 

影騎は初めから騙す気で、初めから殺すための作戦として、澪奈に近づいてきた。いまだって庇ったフリをして次の攻撃を確実に当てるつもりだったのだろう、斬らなければ殺られていたかもしれない。

 

――ああ、男って、みんなこうなのかしら。

 

問いに答えるはずの影騎は青い身体に大きな傷を遺しながら、地を伏せるようにに倒れている。時折、呼吸するような音が聞こえてくるのでまだ生きているのだろう。それも時間の問題。あの怪我からして下手をすれば命にも関わるほどの重傷なことは確かだ。

 

あの冷静な態度も、時折見せる真剣な様子も、もう見ることはない。

 

 「〈神威霊装・例外〉」

 

 そして身に纏うは精霊を守る絶対の鎧。何人にも侵すことのできない絶対領域。

 

黒を基調としたボンテージにも似た袖が片方にしかないドレスに橙色の籠手、具足、自分にしてみれば見慣れたものだったが夕騎なら何と言ってくれるだろうか。

 

綺麗だと言ってくれるだろうか。

 

いまの影騎には自分の表情はどのように映っているのだろうか。

 

 ――やめましょう、もう終わったのよ。

 

どうしても考え込んでしまう。自らが切り捨てたというのに。

 

だが、本当に初めてだったのだ。精霊を守る以外に何も目的がなかった自分にさらなる目的を見つけてくれようとした人間を、信じようと、愛そうと思ったのは。

 

そう思った感情はいとも容易く踏みにじられた。

 

だから、もう、すべてがどうでも良くなった。

 

 「〈聖剣白盾〉……ッ!」

 

霊装という絶対の鎧を纏いながら澪奈は新たに精霊が誇る最強の武器を次々に顕現する。

 

汚れをまったく知らないような純白ですべてにそれぞれ違った色の輝かしい宝玉が埋め込まれた絶対防御の盾。

 

黄金の刃、その刃の中心からは蒼のラインが十字架のように伸びている装飾過多な聖剣。

 

どれもが美しく、危険なほど鋭利な印象を与えてくる。澪奈は何十枚もの盾を自らを中心にしてドーム状に配置し、一部の隙もなくさらに守りを堅固にする。

 

 『終わりよ』

 

こうなった澪奈に傷をつけられるものはASTにはいない。ASTがこれから受けるのはただただ一方的な殲滅だった。いまの澪奈にとってASTは有象無象に等しい。

 

 

 

 

『影騎! 影騎! 起きてお願いよッ!』

 

斬られた際に落ちたインカムから琴里の悲痛にも思える叫びが聞こえてくる。

 

何度も何度も何度も、懸命に呼びかけてくる。

 

 半ば叫びにも近かったが、やがて影騎の指がピクリと動き本人が目が覚ましていく。

 

「ッ……!?」

 

身体を襲う痛み。また意識を失うかと思うぐらいに走る激痛に顔を歪めながら影騎は徐に上体だけを上げていく。見れば傷はかなり深く、一刻も早く治療しなければ本当に命を落とすかもしれないほど血が流れている。

これ、もし防御力低いだけのドラゴンだからこの程度で済んでるけど、もし防御低い感覚倍のペガサスだったら、間違いなく昇天してる……。

 

――何してたんだっけか……今日は澪奈とデートしてて……ああ、ASTがいきなり不意打ちしてきたんだっけ?確か、澪奈に……。

 

「そうだ澪奈は……がッ!?」

 

『無理しないで影騎、いまからすぐに〈フラクシナス〉で回収するわ。ASTなんて言ってられないわ。安心しなさい必ずあなたを――』

 

「待て……。まだ俺にはやることがある……」

 

激痛に苛まれながらも影騎は立ち上がろうとする。歯を食いしばり痛みに耐え、地に足をつけていく。

 

『馬鹿なことを言わないでちょうだい! あなたは私の協力者よ!命を守るのも私の務めなんだから言うことを聞きなさい!』

 

「……まあ待てよ、俺を誰だと思っている ぐふッ……ッ!」

 

『だから無茶――』

 

致命傷を受けた影騎だったが、無理して起き上がる

 

この事態はそんな悠長に考え事をしている暇はない。

生体鎧の傷はそのまま、失った血も帰らない。いままさに影騎は貧血状態、無理に動けばその分自分に反動が来る。

 

それでも影騎は一歩一歩前へと進んでいく。目の前ではAST相手に応戦している澪奈。街はいつも以上に破壊され、次々に被害が大きくなっている。

 

「……ああ、わかってる。俺のせいだ、俺が……始めに説明しておけば……」

 

結果的に澪奈に嘘をついてしまった。どんな言い訳をしようが嘘をついたことに一切変わりない。だから『嘘つき』と言われても仕方がなかったのだ。

 

思えば何故きちんと説明しなかったのか、後悔の念ばかりが募っていく。それでもと、お前の味方だと、澪奈に理解してもらえるまで伝えておけば良かったのだ。

 

拒絶されようが罵倒されようが、何よりも先に伝えるべきだったのだ。なのに拒絶されるのが心のどこかで怖くて言い出せなかった自分が恥ずかしく許せなくなる。

 

澪奈の不安を理解してやれなかった。真の痛みは肉体に走るものじゃない。精神を、心を、蝕み締めつけるもの。

 

 そう知っていたはずなのに。

 

「……待ってろ澪奈、すぐに行く」

 

盾の砲台によって縦横無尽に放たれる霊力の中、酷くゆっくりとした足取りで影騎は零弥に向かって歩いていく。遠のく意識、それでも進むのをやめない。

 

琴里も影騎の意思を汲み取ってくれているのか何も言わないでくれる。

 

 『来ないで』

 

近づく影騎に気づいたのか零弥はこちらに砲口を向けて威嚇し、近づいてくるのを激しく拒絶する。

 

「……」

 

一歩、また一歩。覚束ない足取りでも影騎は相手の言うことを聞かない。

 

『……撃つわよ。死にたいのかしら』

 

零弥との距離はおよそ影騎の歩数からして二○歩もあればたどり着く。

 

いまの影騎には長い道のりだったが、そんなものは関係ない。

 

砲口が火の代わりに光の粒子を吹く。幾度となく放たれる霊力砲、そのどれもが影騎の身を掠めていく。

 

「ようやく……だな……」

 

それからも進み、手を伸ばせば澪奈の盾に触れられるところまで接近することに成功する。

 

「澪奈――」

 

振り絞る言葉。

 

「済ま…な…い」

 

その一言を伝えると、伸ばした手は届かずに影騎は意識を失い、盾のひとつにコツンと額が擦れながら再び地に倒れ、変身が解かれる。

 

 

 

 

夕騎は次に目を覚ましたのはベッドの上だった。

 

そこは自分の部屋ではなく、見えるのは見慣れない白い天井、傍にいたのは琴里や士道などではなく、同じく仮面ライダーの紅音と焔だった

 

「いやぁ、大丈夫だったかい?防御力の低いドラゴンフォームでよく、生きていたね?」

 

「っ・・・・ここは、病院か」

 

「ええ、影騎!大丈夫なの!?」

 

「思いっきり、背中からバッサリやられたぜ……。ペガサスだったら、あの世行きだったな……」

 

「で、どうやら君が攻略しようとしてた精霊、この世界から消えたらしいね。」

 

「・・・・・さて、傷を治す。紅音、協力してくれ」

 

「え?何する気?」

 

「勿論、ライダーの力だ」

 

そう言うと、リュックの中からディケイドライバーを手にして、行動を起こす。

 

 

 

「すっかり入るタイミングを失ったわね、士道」

 

「でも、影騎が無事だったから良かったじゃないか」

 

見舞いに来た士道と琴里はノックするタイミングを完全に失っていた。

 

「あれから澪奈はすぐに消失して一旦は凌いだけど……」

 

「根本的な問題は何一つ解決してない……か」

 

琴里は舐めていたチュッパチャプスの棒を指で摘まんで転がすような仕草をしながら言う。

 

「ええ、あの時点から澪奈の精神状態は不安定そのもの。影騎が攻略しようにも不可能かもしれないわ。もしかすると士道に任せる可能性も否めないし、覚悟しておきなさい」

 

『お前達、居たのか。入ってもいいぞ』

 

存在に気づかれたのならば入室するしかないと思った士道たちがノックしてから入ると、先ほどまでベッドに伏していたが嘘のように影騎はいつも通りに戻っていた。

 

「生憎、傷ならもう治した」

 

「はぁ!?どうやって!?」

 

「コレだ……」

 

そうやって、2人の前にある仮面ライダーのカードを見せる

 

「このブレイドの力で、傷等を治した」

 

「いや、どうやってだよ?」

 

「ラウズカードで、回復の能力を持つアンデッドの能力で回復したんだ」

 

「なんだそれ!?チートじゃねぇか!」

 

「そう思うか?俺もそう思う」

 

「肯定すんのね……」

 

「さて、次の戦いに備えて、鍛えねぇとな」

 

他人に自分の弱いところを見せない。

そんな虚勢を見た士道は妙に痛々しげに感じ、

 

「……無理すんなよ」

 

「無理などしていない、アレは俺のミスだ。そして、次のデートは殺し合いのデートになる」

 

「殺し合いって……!?」

 

「あぁ、本気の精霊ともなると、俺も本気で当たらないといけない、学校が急行してる間に何処までやれるか……」

 

「本気かよ!?」

 

「当たり前だ、何せ俺のやらかしで今の澪奈の好感度が最低位置、そうなればもう接触すら危険なら、アイツの土俵に俺も上がるしかないっ」

 

そう、影騎は次のデート(戦い)へと意識していた

 

「だが、仮面ライダーの力は1歩間違えれば殺生しかねない。とはいえ、手加減出来る相手でもないのだがな」

 

そう、影騎にはまだ幾つか切り札を隠し持っていた。

精霊を圧倒し 場を制圧しかねない力を

そして、それを使いこなす為にも

 

「まずは、鍛えないとな……。琴里!幾つかのスポーツジムと修行に使える山みたいのを探してくれるか?」

 

「え!?え、えー、良いけど」

 

「紅音、焔、お前達も協力してくれ」

 

「仕方ないなー、分かったよ」

 

「ええ、いいわよ。」

 

「あぁ、そして修行は殺す勢いで頼む」

 

 

そう言い、影騎は上着を着て病室へと去っていく

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