「どうしたんだいイチカ、顔に紅葉ができてるじゃないか」
帰ってきたイチカの頬には明らかに誰かに叩かれたであろう手形の跡がついていた。これはもしかして、いやまさかね。
「もしかして風呂場でラッキースケベでも発動したの?」
「な、なんで知って……あ」
マジで図星だったかー。原作とは違うと思ったのにこういったところは変わらないのかい。
「いや私からは何もいわないけど、ほんと気を付けてね。身内で性犯罪者がでるのはいやだよ」
「……すまん、気を付ける。いやほんとに」
イチカは本気で反省してるようだし、これ以上言及するのはやめておこう。
「ところで束さんから聞いたけど、今日からISの訓練を始めるんだってね。ま、動かしちゃったんだから仕方ないことなんだろうけど」
今のイチカはIS用のスーツを身にまとっている。束さん特注の男性モデルらしく女性モデルより露出は少ない。まだスーツに慣れてなさそうだけど着ているうちに慣れてくると思うよ。むしろ慣れれば変な運動着より快適だったりする。
「ああ、束さんが言うには俺がIS学園に入学することは確定らしい。正直IS学園行くのは嫌だけどまわりに迷惑をかけてまで拒否はできねえよ。だから今のうちにISの動かし方を学ぶつもりだ」
「真面目だねー。今日は私がコーチとして教えるわけだけどISは何使う? あるのは第一世代のゲイレール、ゲイレールシャルフリヒター、第二世代のグレイズの三つだね」
「おすすめは?」
「個人的にはグレイズ。今主流の第二世代だし、ゲイレールより扱いやすいよ」
じゃあそれで、というので早速イチカにグレイズを展開してもらう。ちなみに私はゲイレールにした。
最初は展開に戸惑うと思ったけど、イチカはすんなりとグレイズを展開させる。イチカの学習能力に一瞬驚いたけどイチカだしと思い、そのまま歩行の仕方をレクチャーする。さすがにいきなり歩行できるということはなく、バランスを崩しながらゆっくりゆっくり一歩ずつ歩みを進める。
けれど一時間ほどすると歩行は完璧になっていた。改めてイチカの学習能力の高さを思い知る。私なんか一日でようやく不自由なく動けるようになったのに。
「素晴らしいね。これじゃ基礎訓練もあっという間に終わりそうだよ」
「そうなのか? まだ違和感とかあるからもっとやりたいんだが」
「初心者のうちはやりすぎはよくない。後で平衡感覚がぶっ壊れるよ」
代表候補生クラスになればトータル何百時間と馬鹿みたいな数字になるけど、それはその分鍛錬を積んだから。初心者は下手すれば一時間で根を上げる人もいる。
私は代表候補生ではないけどそれに劣らないくらいはISに乗っている。特にIS部門では模擬戦も実戦もしょっちゅうやってるから下手な代表候補生よりは強い自信があったりする。実際オータムやスコールは代表クラス並みの実力者だし、最近入ったメンバーも代表候補生よりレベルが低いのがいない。彼女らは元傭兵なだけに実戦の強さも相当だ。
イチカがこのメンバーに並べる実力を身につけるかどうかはわからないけど、このペースだと入学するときにはそれ相応の実力は手に入れられるかもしれない。
しばらくは私と基礎訓練に徹するつもりだけどある程度動けるようになったらうちらの訓練に投入するのもありかもしれない。競馬で例えると新馬戦通り越していきなり古馬王道路線にぶっこむような感じになっちゃうけどイチカなら大丈夫でしょう。
「なんか悪寒が……」
うん、気のせいじゃないかな?