第24話:真となる世界
乾いた大地に残照として残る文明の跡。それらは永い時を経て、腐食し大地による緑の侵食を受けて覆われている。
荒廃した文明の残照が自然の息吹の中に取り込まれている廃墟に元に戻ったレオスが横たわっていた。
『......サト...マサト.......マサト....マサト!.....マサト!マサト!』
ハロが必死に、コックピットで気を失っているマサトを起こすと、彼は目を覚ます。
「痛つつ........!?」
マサトは目の前にモニターに映っている光景を見て、驚く。
「何だここは.....!?」
マサトはライフルを持って、コックピットから外に出る。荒廃した世界、廃墟には緑の苔や木々が生えており、高層ビルは今にも崩れそうな感じであった。
「一体ここは........何処なんだ!?......そうだ!」
マサトはレオスに乗り込み、起動させる。
「良し、レオスは無事みたいだな........後はこの地形を見上げる所があれば.........」
マサトは辺りを見渡していると、高台に良さそうな建物があり、レオスを上昇させて、高台に着地した。そしてマサトは目の前の光景に目を疑う。
「何なんだここは!?」
広大な廃墟、どれもこれも文明が崩壊しており、山から煙が出てきていた。マサトは急いでタスク達に通信を入れる。
「こちら、マサト!応答を頼む!誰か聞いている!?兄さん!リナ!マティス!皆!アンジュ!タスク!」
しかし、返事は全く来なかった。
「どうなっているんだ!?」
マサトはそう言うと、レオスを下降させ、取り合えず何か使えるものを探し始める。
その頃、アンジュとタスクは、廃墟の中心に横たわっていた。ヴィルキスのコックピットが開いており、そこから長い舌が伸び、アンジュの頬を舐める。
それに目を覚ましたレオンはその方を見ると、ドラゴンが見ていた。
「っ!?」
アンジュは驚くと、そのドラゴンは自分に指を指しながらジェスチャーする。
『(アタシアタシ!)』
「え?....ヴィヴィアン?」
『そう!「キュ~♪」』
再びドラゴンへとなっているヴィヴィアンは吠える。
「またドラゴンになっちゃんたんだ」
アンジュはそう言うとヴィヴィアンの頭を撫でる。
「何処も怪我はない?」
フェニックス・ゼロからタスクが下りてきて、アンジュを心配する。
「タスク........そうだ!」
アンジュはさっきの機体やネロスの事を思い出すと、辺りの光景を見て驚く。
「何処よ、ここ......!?」
通信機でアルゼナルに通信を入れていた。
「こちらアンジュ、アルゼナル応答せよ」
しかし何度も通信を試みるも誰も出ない。
「どうなってるのよ!」
「俺のフェニックス・ゼロもダメだ.......全周波数のレーダーで探知しても、マサト達やアストラさんのビーコンが見当たらない。まるで何かにジャミングされているみたいだ」
「大昔の廃墟じゃないの? 人類がまだ戦争していた頃の」
「そんな場所が残っている話、聞いた事がないな.....」
「それじゃあ、私達はまだ誰も知らない未知の世界に飛ばされたって事?」
「....."ヴィルキス"と"レオス"なら可能かも知れない.....」
タスクはマサトのレオスの事を話す。レオスはかつて、トリスタン連邦が使っていた"双極の悪魔"の片割れ、アストラ......つまり、コマンダー・フェニックスはディーラと戦う解放組織『ハデス』の者であることを.......
「あの時.....奴が放った光...あの光から君達を守るためにヴィルキスが何かしたのかも...ヴィルキスは特別な機体だ...何を起こしても不思議じゃない.....」
「特別......そうよね、どうせ私は特別なのよ......」
っとアンジュが言った言葉にタスクは振り向く。
「え?」
「別に、直せる?」
「ああ何とか。飛べるぐらいには」
「分かった、それじゃお願い」
そう言ってアンジュは何処かに行こうとする。
タスクはその事をアンジュに問う。
「何処に行くの?」
「偵察よ、まだ敵がいるかもしれない」
そう言ってアンジュはライフルを持って行こうとする。
っとヴィヴィアンがアンジュに話しかける。
『アンジュ!アンジュ! アタシに乗って!』
っとヴィヴィアンが後ろを向いてアンジュにそう言う。
「乗れって言うこと?」
『そう!そう!』
ヴィヴィアンは吠えると、タスクも驚く。
「君がドラゴンだったなんてなぁ」
ヴィヴィアンは指を口に当て、しーっとする。
『内緒だよ』
ヴィヴィアンはアンジュを乗せ、空からの偵察へ移行した。
一方、ここより遠く離れた海の方に、辿り着いていた。アストラは気を失っていたが、目を覚ます。そしてあるものを目に、ハッキリとする。
「やっと着いたか.......この世界に........」
マサトの方では、テントを作る為の材料をかき集めていた。
「ボロボロだ.......ん?」
マサトは下に落ちているチラシを見る。
「これは.......22世紀末のチラシ......」
マサトはそのチラシの内容を読む
22世紀末 アフリカ大陸を占領した『統合経済連合』と日本、オーストラリア連邦、北部と南部大陸アメリカ合衆国三ヵ国の同盟国『汎大陸同盟機構』との第七次世界大戦が勃発。勢力を拡大しつつある統合経済連合はドラグニウム反応炉を狙っている 恐らく、終止符を打つために超兵器を使うだろう.......我等、汎大陸同盟機構も日本とオーストラリア連邦の技術やアメリカ軍の研究者の頭脳で超兵器に対抗できる.........."極限の悪魔"を開発に成功!
「極限の悪魔!?」
マサトはそのチラシに掛かれている事とレオスを見る。
「レオスが汎大陸同盟機構によって作られた兵器?..........嫌、そんな筈は.........」
マサトはそう考えていると、
「マサトー!」
上から、ドラゴンに乗ったアンジュが降りてくる。
「うわっ!!?」
マサトは驚くと、ヴィヴィアンは指でヂェスチャーする
『(アタシアタシ!)』
「え!?ヴィヴィアン!?」
マサトが言うと、ヴィヴィアンは吠える。
「ありゃりゃ、ドラゴンにまたなっちゃったんだ。」
マサトはヴィヴィアンの頭を撫でる。
「他の皆は?」
「私とタスク、ヴィヴィアンだけだった........それより!向こうで飛んでもないものを見つけたの!」
アンジュとマサトはタスクの所へ向かい、アンジュが衝撃な事を言う。
「「ミスルギ皇国!!?」」
「ええ、宮殿も街も綺麗さっぱり無くたっていたけど。あれはアケノミハシラだった、見間違えるはずがないわ」
アンジュは此処がミスルギだと言う証言にタスクとリュガはただ唖然とする。
「でもおかしいの、アケノミハシラも街もずっとずっと大昔の前に壊れたって感じだった」
するとマサトはチラシに入っていたこの都市のパンフレットを取り出す。
「何これ?」
「この都市の名前と、地形だ..........アケノミハシラがあったとしても、........ここはミスルギ皇国ではない」
「「え!?」」
アンジュとタスクは驚くと、マサトが壊れた車を見る。
「見ろ......この車にはタイヤがある........しかも、車の車内や隅々を見たところ、マナの光で動かすコンソールが一つも見当たらない.......ただ、あるのはハンドルやボタンとレバーだ..........」
「マサト.......」
「ん?」
「貴方......それに詳しいわねぇ?」
「何で?」
「何でって!?このパンフレットに掛かれている文字は何なの?」
「.......日本にある"東京都"だけど........何か?」
「何かって!?........ハァ~」
アンジュは溜め息をすると、そこにある物が聞こえて来る。皆はそれを聞いて隠れて武器を構える。
すると謎の小型ロボットがある放送を流しながら横を通り過ぎて行く。
『こちらは首都防衛機構です、生存者の方はいらっしゃいますか? 首都第3シェルターは今でも稼働中、避難民の方を収容───』
その言葉を聞いて、一行は第3シェルターに向かう。
同じ頃、アストラ達はインフィニティを廃墟となった港に停泊させる。
「ここ......何処なんだ!?」
マティス達が荒廃した街を見て驚く。
「あれ?」
パトリックが何かに戸惑っていた。
「どうしたんだ?」
「嫌、それが......マナの光が使えないんだ!」
《えぇっ!!?》
皆は驚き、パトリックと同じようにマナの光を出そうとするが、マナの光が使えなかった。
「どうなっているんだ!?」
「.......それがこの世界の定則だ」
《??》
「君達がいた世界と、この世界は違う........まぁ、分かりやすく言ったら.......ここは"真実の地球"だ」
《真実の地球?》
「着なさい......見せたいものがある」
アストラはマティス達を連れて、第3シェルターへと向かった。
マサトは第3シェルターの中に入ったが、中の人々達が白骨化した死体ばかりでだった。マサトは白骨化した死体を調べる。
「驚いたなぁ.......これ、約500年前以上の遺体だ.......」
「は!?」
マサトの言葉を聞いたアンジュはすぐさまモニター画面に向かう。
「そこのあなた!居るんでしょ!! 出て来なさい!!」
アンジュの問いに答えるかの様に、画面上に女性が映し出される。
『管理コンピューターひまわりです。ご質問をどうぞ』
「コンピューター、だったのか」
タスクは向かいくれたのがコンピューターだった事に気付き、アンジュは怒鳴りながら問う。
「一体どうなってるの!?生きている者はいないの!? 一体何があったの!!?」
『ご質問を受け付けました、回答シークレンスに入ります』
すると辺りが暗くなり、何かの映像が映し出される。
それはあたりが戦争している映像だった。
「何.....これ?、映画?」
『実際の記録映像です。統合経済連合と汎大陸同盟機構による大規模国家間戦争「第七次大戦」「ラグナレク」「D-War」などと呼ばれる戦争により地球の人口を11%まで減少』
その事にマサト達は思わず息を飲む、すると目の前にある機体が目に映る。
『その状態を打破すべく、連合側は絶対兵器"ラグナメイル"を投入』
ヴィルキスに似た黒い機体の他にヴィルキスタイプの六機が現れる。
「黒い.....ヴィルキス!?」
『そして同盟側も、絶対兵器に対抗すべく"双子のエクストリームガンダム"と"∀ガンダム"を投入』
その中にネロスが乗っていた蒼いエクストリームガンダムとマサトのレオス、そしてヒゲを生やした白い悪魔が黒いヴィルキスと抗戦する。しかし、数で圧倒され、レオスとイクスが撃破されていく。そして残った∀ガンダムを通り過ぎ、そして黒いヴィルキス達は光学兵器を発射し、アケノミハシラを壊す映像が映し出される。
『こうして戦争は終結、しかしラグナメイルの次元共鳴兵器により地球上の全ドラグニウム反応炉が共鳴爆発。地球は全域に渡って生存困難な汚染環境となり全ての文明は崩壊しました。以上です、他にご質問は?』
「世界が.....滅んだ?」
アンジュとタスクは目の前の光景に驚きを隠せず、それはマサトも同じだった。
そしてマサトはその当時崩壊した時期を問う。
「....それは何時だ? 何時の事だ?」
『538年前』
「!?」
『538年193日前です、世界各地2万976ヶ所のシェルターに、熱、動体、生命反応なし。現在地球上に生存する人間はあなた方3人だけです』
回想が終了し、辺りは夜になっていた。
「500年か.......まぁ、この荒廃した世界ならあり得るか.....」
「ふざけないでよ!! 私はこの目で見た物しか信じない!!」
「いい加減にしろ!お前はそんな性格だからそんな事が言えるんだよ!!」
お互いイライラが募っていたのか、口でゲンカになる。
タスクはアンジュとマサトを宥める。
「こんな時にケンカしてもなにもならん。落ち着いて二人とも。アンジュも」
「フッ!別に良いじゃない! 私を利用する事しか考えていないあんなクソ女のクソ作戦」
そしてアンジュはタスクの方を見て言う。
「貴方も戻らなきゃ大変なんでしょ? ヴィルキスの騎士さん?」
「ああ、俺は何がなんでも君を守る───」
「やっぱりね、貴方はあの女に使わされている犬なんだわ」
っとアンジュはそう言ってたき火の前に座る、タスクはその事に必死に否定する。
「違う!! 俺は本当に君を.....!」
「おい、アンジュ.....それは言い過ぎだぞ」
がそれを言うがアンジュは知らんぷりする。
「貴方に関係ないでしょう? それに目的の為なら何人犠牲しても良いんですもの、別に潰れても良いわよあんな最低最悪のゴミ作戦、笑えるわ」
っとアンジュがそれを言った途端にタスクが、
「じゃあ俺の両親もゴミに参加して無駄死にした....そう言う事か.....?」
「えっ?」
「タスク?」
マサトはタスクが突如言いだした事にアンジュも振り向く。
「俺達古の民は、ネロスから世界を解放する為にずっと戦って来た、父さんも母さんもマナが使えない俺達やトリスタン連邦の民とノーマが生きて行ける世界を作ろうとして戦い…死んだ! 死んでいった仲間も....両親の思いも.....全部ゴミだと言うんだな!君は!!」
「そ.....それは?!」
タスクは今まで見せた事のない静かな怒りの表情にアンジュは戸惑い、マサトはただ唖然としていた。
アンジュは何を言おうとしたが何を言うか迷っていて、タスクはそのままどこかに行ってしまった。
「タスク......」
してアンジュは自分が知らずにタスクの心を傷つけ仕舞った事に後悔をしていた。
その頃、アストラがシェルターで見せた真実に皆は驚きを隠せなかった。
「この世界が.....500年後の世界だなんて.....」
《..........》
「これが事実だ.......そして、真実は伝説とは全く違うものなんだ.......」
「どう言うことなのですか?」
モニカの問いに、アストラは寝ているブリッツを撫でる。
「あの映像で......何か思ったことはないか?」
《........》
皆は考えていると、ニコラスがあることに気付く。
「あ!各国にアケノミハシラがあったこと!!」
「そう.......そして?」
「この街の地形が全く違うものであった!」
「その通り.......ここは、俺達がいた世界ではない」
《え!?》
「前に言ったように、真実は伝説とは全く違うものって.......つまり、───」
アストラの言葉に皆は真実を知った。
翌朝、マサトとタスクは共にヴィルキスの修理をしていて、アンジュはただ一人でどこか謝るタイミングを計っていたが、どうにも見つけられずにいた。
「(どうしよう…、タスクにどう言えば)」
っとアンジュは地下の店にある物を見つけ、それを見て何かを思いついた。
そして夕日の時期にタスクは踏み台の所にあるネックレスを見つけ出す。
タスクはそれを拾うとアンジュがそっとその場からゆっくり離れて行くの見て問う。
「アンジュ?」
「うっ!? あ...あの....その、に.....似合うかな...て、それだけ」
アンジュの言葉にマサトは微笑む。
タスクはそれに微笑みを浮かばせて、そのネックレスを付ける。
「どうかな?」
「に.....似合うわ」
「有難う、ご飯にしようか? 今日は俺担当だから....「.あの!!」ん?」
タスクはアンジュの方を向く。
「あの.....ゴメン....なさい」
「「....えぇっ!!?」」
「え?何? どうしたの?」
マサトとタスクはアンジュが謝った事に驚く。
「君って…謝れたんだ!」
「これは驚いたぜ…!?」
「な!何よそれ!?」
するとタスクはアンジュの方に歩み寄り、手を差し出す。
「こっちこそキツく事を言ってゴメン......」
タスクとアンジュが仲直りすると、マサトはホッとする。
「ん?」
っとマサトは何かに気付く。荒廃した道路の真ん中に、赤く光るワンピースを着ており、純白のツインテールをした少女がマサトに手招きをする。
「.......(え!?.......何!?)」
マサトはタスクとアンジュの方を向くが、誰もその子に気付いていなかった。マサトは手招きをする少女の所に向かうと、少女が別の通路へと行き、手招きをする。
「付いてこい、ってことか?」
マサトはタスクとアンジュに偵察してくると、言い、少女の後を追う。夜になり、マサトが着いた場所は古い祠が祀られている神社で、紅葉で満ちた峡谷であった。そして祠の側に赤い少女が待っていた。
「?」
すると赤い少女は、祠の近くに建っている屋敷に入る。マサトも屋敷の中に入る。中は和風で庭にはたくさんの石像や紅葉の木が並んでいた。マサトは落ちてくる紅葉を見て言う
「綺麗な紅葉........."子供の頃、親父とお袋と一緒に庭の紅葉の木を見ながら歩いていたなぁ~♪"........え?」
突然の言葉にマサトは驚く。
「あれ?......俺、ここを通った覚えはないのに........何でここのことを?」
すると部屋の奥から何か光るものを見つける。濡れてダメな写真を漁ると、出てきたのは紅い蝶の飾りが付けられている簪であった。
「何だろう........この簪を見ていると........."懐かしい"」
『.............真人..............♪』
「ん?」
しかし、誰もいなかった。マサトは元の場所に振り向くと、一枚の写真が明らかに違うことに気付いた。それは四人家族で二人の男と女、二人の子供(兄妹)と一緒に写っていた。その写真に写っている男と女、子供の女の子の方の顔は濡れて見えないが、何故かマサトの方を向いており、指を指していた。マサトは不気味に思い、屋敷を出る。
そして神社の鳥居から赤い少女は階段を下りていくマサトを微笑みながら見つめる。
雪の降る中、タスクとマサトはヴィルキスの修理を続けていた。
「っくしゅん!寒くなってきたなぁ」
「っくしゅん!そうだな......冷える前に早く終わらせよう.....」
「タスクー!マサトー!」
上からヴィヴィアンに乗って偵察を終えたアンジュがあるものを見つけた。その建物は最初にヴィヴィアンが見つけ、マサトとタスクはフェニックス・ゼロとレオスのバッテリーを使い、建物に電線ケーブルを繋ぐ。そして電気が付き、建物内が明るくなり、屋根やベッド、さらに、風呂もあって、二人は喜ぶが、マサトはその建物の外形を見て、考える。
「何でだろう.......この屋敷を見ていると、良い子は絶対に行っては行けない場所でも言える.......」
その頃、アストラ達は荒廃した街を探索していた。
「あれは!!」
セリカが見つけたもの、それは一緒に飛ばされてきたガデラーザであった。
「ガデラーザがここにあると言うことは、きっと何処かに、マサト達がいる筈だ!」
セリカは急いで、インカムで皆に知らせる。ナオミやメリーからも、残り二機のガデラーザを見つけた。そしてセリカ達は港に集まると同時に、ビルの屋上にいるマティスが光っている建物を見つける。
「お~い!皆~!」
ヴィヴィアンはドラゴン状態のため、別の部屋で寝かせていると、アンジュがタスクに問う。
「ねぇ、あの....."ネロス"って、何者?」
「......文明の全てを陰から掌握し、世界を束ねる最高指導者で、その正体は『ディーラ』の首領。............俺たちが打倒すべき最大の凶敵......だった」
「だった?」
「500年も前の話さ」
頭の後ろで手を組むと、タスクはおどけたようにそう言った。
「そうね」
アンジュも静かに微笑む。
「随分遠くまで来ちゃったな…」
笑い終わった後、振り返るかのように横を向いておもむろにタスクが口を開いた。
「でも、生きてる」
タスクの呟きを受けてそう言ったアンジュに、タスクは又視線を戻した。
「生きてさえいれば、何とかなるでしょ?」
そして、柔らかく微笑んだ。
「強いね、アンジュは.....」
タスクが素直な気持ちを口に出した。
「バカにしてる?」
「褒めてるんだよ」
そう言われ、アンジュが嬉しそうに微笑んだ。
「さて、と...久しぶりのベッドだ。ゆっくりお休み」
タスクとマサトは立ち上がってそう言うと、アンジュは言う。
「タスクとマサトは?」
「俺は下の階で見張る.....タスクは寝てろ」
「え?けど......」
「ヴィルキスの修理に頑張っていたんだ.....」
「そうよ、」
アンジュとマサトがタスクに推しきる。
「じゃ、じゃあ、お言葉に甘えて…」
こうなるのも当然のことだった。タスクはそのまま反転すると、ソファーに腰を下ろす。が、その瞬間、ソファーは音を立てて壊れてしまった。やはり経年劣化は否めなかったのだろう。その姿にアンジュとマサトは楽しそうに笑い、タスクの悲鳴とソファーが壊れた音で近くの部屋で休んでいたヴィヴィアンが思わず目を覚ましてしまっていた。
「もう! 何してるのよ♪」
「ははは....♪」
アンジュの突っ込みにタスクも苦笑するしかなかった。そしてひとしきり笑った後、アンジュは頬を染める。そして、
「こっち、来たら....?」
と、自分が座っているダブルベッドにタスクを誘ったのだった。
「いっ!?流石に、そこまでは.....」
アンジュの大胆な誘いにタスクも当然のように頬を赤らめる。マサトは微笑みながらタスクとアンジュに言う。
「じゃ、二人とも楽しんで♪」
マサトはそう言うと、下の階へ下りる。するとマサトに異変が起きた。
「あれ.....?」
頭がクラクラし、そのまま階段から転がりながら気を失う。それと同時にドアが開き、ナオミが現れ、目の前に倒れているマサトへ駆け付ける。
「マサト!......マサト!」
夢の中.....何処か知らない荒廃した寺院、強い風、美しい紅葉を生やした一本の木........幼い子供にボールを投げる男性。
「お父さん.....お父さん......」
何処から途もなく聞こえてくる男の子の寂しい声......和間で手鞠を作っている女性。
「お母さん.....お母さん......」
何処か知らない寺院の扉の隙間から光が漏れており、少年は隙間を通して見る。
「お父さん.....お母さん......」
奥の間に、白衣を着た父親と母親、そして複数の白衣を着た人達が、何かを研究者していた。少年は母親に作ってもらった手鞠を持っており、哀しそうな表情をする。
その広間には色んな化石、遺物、古墳があり、研究者達はそれで何かを調べていた。すると少年はポケットからストローと石鹸液が入った容器を取り出し、シャボン玉を作る。するとその子の父親と母親がシャボン玉が浮いている事に気が付き、少年の方を向く。
「あ......」
その子の父親と母親は、我が子を見て、仕方なさそうな表情をし、少年を抱き上げる。
「真人.......世の中には、不思議な物がある......その中の"天使と悪魔"もそうなんだ♪」
「そう......かつて人類は、天使と悪魔を崇めていたのよ.......けど、その中には"偽神"って言う.........神様に振りをした悪い神様がいるの.........それを退治するのが、"黒い天使達"と......"白い悪魔達"なの........貴方はその白い悪魔と共に、世界を変える子よ♪」
父親と母親は分からない言葉を言うと、目の前に巨大な機械人形が座っていた。さらに、その後ろにはあらゆる場所から光が発光している船があった。するとその子の父親は光る船を見て、呟く。
「これ以上......."アイツ"の思い通りにはさせん......」
「えぇ、放って置けば、政府に悪用されてしまうわ.........."諒"君.......急いで真人の為に『Leos』と『Exs』を完成させましょう.......そして産まれてくるこの子のにも.....」
母親はそう言うと、下腹部を撫でる。
「そうだな......"華怜"........この世界に、黒歴史を刻まれないようにしなければ........」
父親の方を『諒』、母親の方を『華怜』と名乗る男女は我が子と一緒に、機械人形を見つめる。っが、その幸せがやがて、絶望へと変えた。血だらけの青年が医師に運ばれており、諒と華怜、そして青年の妹が泣き崩れながら、見守る。
「真人ーっ!......真人ーっ!」
「お兄ちゃん!お兄ちゃん!」
そして真人と名乗る青年が手術室に入り、治療が始まる。そして数時間が経過し、治療が終わり、医師から衝撃の言葉を吐いた。
「残念ですが........」
「...........そんな......」
華怜は息子の死に、その場で泣き崩れる。父親は壁を殴り、悔やみ、妹は母を慰めようとするが、兄の死で、母親と共に泣き崩れる。
そして、マサトは目を覚ます。そこにはアストラやリナ、マティス達、そしてアンジュやタスク、ドラゴン状態のヴィヴィアン、ナオミがマサトを心配していた。
「マサト....大丈夫か!?」
「え?.....うん」
マサトは起き上がり、辺りを見渡す。そこは大型のコンテナであった。
「ここは?」
「彼方からの迎えだ」
「迎え?」
マサトは混乱していると、タスクが言う。
「ドラゴンからなんだ」
「ドラゴン!?」
マサトは驚くと、アストラは冷静に言う。
「そうだ.......マティスやナオミに言ったな........ここは、ドラゴンの世界.......お前達がいた『偽りの世界』ではなく、『本当の世界』だ.....!」
アストラの衝撃の言葉に、マサトやアンジュ、タスク、ヴィヴィアンが驚く。
「本当の世界!?どういう事なんだ!?」
「説明は、都に着いてからだ.....」
するとコンテナ内に振動が走る。
《うわぁぁぁっ!!??》
「ちょっ!?ちょっと!、何処触ってんのよ!」
「ふ!、不可抗力だって!」
「何時まで発情してる気!?」
「そんな!してない、してないよ!」
「終了!、閉店!、お座り!!」
「グホッ!」
タスクが殴れると次の声がする。
「タスク!何処に顔を埋めているのだ!!?」
「ご!ごめん!セリグハッ!!」
今度はセリカの股に顔を埋めてしまい、さらに、ナオミのお尻や、メリーの胸に触れてしまうドタバタ劇が始まり、その光景を見ていた男子達はタスクのラッキースケベな光景に呆れていた。
「タスクって........何でこんなスーパーラッキースケベな体質持っているんだろう?」
マサトはコンテナ内でそう呟くのであった。
最後の方の、タスクのラッキースケベ........パワーアップして『スーパーラッキースケベ』の体質にしています!これからなドタバタ劇を楽しみにしてください♪