リビング・レジェンドの妹   作:匿名ちゃん

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レッドとの再会

 私の夢は、いつかお兄ちゃんの隣に立つ事が出来るようになる事である。

 私のお兄ちゃんの名前はレッド。生きる伝説とも言われるカントー最強のトレーナーだ。史上最年少でチャンピオンに就任しているが、あまりの人気に本人は逃亡。それ以来、四天王を打ち破ったトレーナーが居るという連絡がない限り山に篭ったまま降りて来ない。まあ、四天王四人を打ち破ったトレーナーはまだ現れていないので、まだ降りて来ていない事になるが。

 

「ピカッチュ?」

 

 パートナーのピカチュウがあれ? というように首を傾げる。

 

「どうかしたの、ミッキー?」

 

 ミッキー、これが私のピカチュウのニックネームである。別に、世界一有名なネズミの座をピカチュウと争っていた某ネズミの事ではない。家族と共に名前を考えた時にマイケルという意見が出て、マイケル→ミッキーという短略的思考から名付けられたのである。決して人権を持ち、千葉辺りを闊歩しているネズミではないので悪しからず。

 

 閑話休題。

 

「ピカッチュ! ピカピ、ピカ」

「え、お兄ちゃんが居るの!?」

「ピ!」

「何処っ!?」

 

 こっち! と言って、ミッキーはトキワシティの中で急に走り始めた。

 私は急いでミッキーを追い掛けながら、片手でポケギアを操作する。

 

「もしもしお母さん? 今何処!?」

『家だけど』

「急に悪いんだけど、夕方まで帰らないかも!」

『ケチャップはどうするのよ〜』

「夕飯までには持って帰るから! ね、良いでしょ!?」

『わかったわ。気を付けなさいよ〜』

 

 遅くまで帰らなくても良い許可は取った。ミッキー、あとどれくらい!?

 

「ピカピカチュ!」

 

 あともうちょっとらしい。

 さりげなく読心術を披露したパートナーに付いて、私はトキワの森に駆け込む。

 私と相棒は、トキワの森のほぼトップの座に君臨している。だから、

 

「ピカ?」

「キャタ!」

 

 ミッキーが野生のポケモンに質問すれば、誰が何処にいるのかは丸わかりだ。

 

「お兄ちゃん!」

「……見つかったか」

 

 苦笑いをしながらお兄ちゃんであるレッドは姿を現した。

 

「シロガネ山から降りて来るなら連絡してって言ったでしょ」

「悪かったな。どうせ連絡したら、イエローにもそれを伝えるんだろ?」

「……さあ」

 

 人見知りの激しいお兄ちゃんがまともに話せる相手は、私とお母さん、オーキド博士、そして幼馴染でありライバルであるグリーンくらいだ。お兄ちゃんに好意を寄せているイエローは、そのこともあって未だにまともに話しているのを見た事がない。

 

「良いんだ。俺は将来独身でいるつもりだから」

「シロガネ山生活?」

「そうだな」

「ポケモンリーグを攻略したら私も行きたいなー」

「いつでも案内してやるからな」

 

 それには、お兄ちゃんに勝たなきゃいけないけど。

 

「お兄ちゃん、お昼まだでしょ? トキワに美味しいファストフード店が出来たから、一緒に行こうよ」

「何の店?」

「ハンバーガーショップ」

「思いっきり何処にでもある店じゃないか」

「いいの! チェーン店の癖して変な拘りの下作られる、絶妙なチーズバーガーが食べられるって噂のお店なのよ!」

「お前、行ったこと無いのかよ」

「だって、ジムバッジを持ってないと並ばなきゃいけないんだもん」

「どんな店だ」

「ファストフード店なのに凄く並んじゃうから、トレーナー支援店って言うこともあって、ジムバッジを持っているトレーナーが優先なのよ」

「個数は関係無いよな?」

「3つ見せれば確実に座れるって!」

「任せとけって」

 

 私とお兄ちゃんの一年半振りの再会デートは、人気ハンバーガーショップから始まる事になった。

 

 *

 

「本当だ。この店美味いな」

「でしょ? 来て正解だったねー」

 

 私とミッキー、お兄ちゃんとお兄ちゃんのピカチュウのレオンは、それぞれ拘りチーズバーガーを食べながら会話に花を咲かせていた。

 

「店長さん、こだわりハチマキでも付けてるのかな?」

「それは無いだろ。……あれ? まさか……」

 

 お兄ちゃんは一旦席を外し、何処かへ行ってしまった。

 数分後、戻って来た時には信じられないという顔をしていた。

 

「してたよ、こだわりハチマキ……」

「嘘!? 私も見たい!」

 

 更に数分後。私はオレンジジュースを飲みながら呆然としていた。

 

「こだわりハチマキって人間にも効果があるんだね……。オーキド博士に教えておこう」

「ただの趣味なんじゃないか? けど、店員みんな付けてたからな……。拘ってますっていう意思表示なんじゃないのか?」

「そりゃ無いでしょ。店長さんは頭に巻いてたけど、店員さんは見えにくい位置に付けてたし」

「やっぱり『こだわってる』のか……」

 

 なんか凄い。

 そういえば、目の前に座ってアップルジュースを飲んでるお兄ちゃんも凄い人なんだよね。私もポケモンマスターになれるかな? けど、ミッキーももうレベルがかなり高いから、トキワの森でも修行にならない。だから……

 

「ねえお兄ちゃん。チャンピオンを破る以外にシロガネ山に入る方法ってないの?」

「急な話題転換だな。普通は無いな。特例としては、実力のある研究者とか調査団とか警備員じゃないか?」

「大人にならなきゃ入れないじゃない……」

「……あ、でも、もう一つあるぞ」

「何々!?」

 

 私はお兄ちゃんの言葉に飛び付いた。

 お兄ちゃんはニヤリと笑い、言った。

 

「そんなに入りたいなら……一ヶ月後、迎えに来てやるよ。一緒に不法侵入しようぜ」

 

 ありがとう、お兄ちゃん!!

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