何を言っているのだろう、彼女は? タバサは舌打ちをしたい衝動に駆られながら眼前にいるルイズを睨み付ける。
先日から何かと騒ぎを起こしているルイズがここにいる。その理由が自身の使い魔であるシルフィードが自分の正体を知られるという大失態を犯したからだ。――同時にルイズの正体もわかったが。
ルイズは異世界の“大いなる意思”を身に宿すという、風韻竜を召喚したという自分すらも霞んでしまいそうな偉業を成し遂げていたのだ。だから、先日のように精霊達に呼びかける事によって魔法に似せた現象を起こす事が出来ていたのだと納得した。
シルフィードが言うにはルイズが世界に与える影響は大きいという。言うなれば彼女自身が1つのパワースポットなのだ。
そんなとんでもない偉業を成し遂げていた事が判明した挙げ句か、秘匿していた秘密の1つであるシルフィードの正体がバレるという事態にタバサは目眩がした。どうしてこうなった、と思わず天を仰いだ彼女を責める事は出来ないだろう。
こうして、ルイズとの付き合い方を模索しようとした所にだ。まるでタバサの不幸を笑うような任務の報せ。さして信心深くない彼女は心の中でブリミルへの呪詛を口にした。そして沸き上がる憤りを押し殺しながらシルフィードに任務の内容を伝えればゴネられ、更にはルイズに協力を申し込めと騒ぐ始末。
タバサなりにあれやこれやと手を尽くしたがシルフィードは頑固なまでに動かず。更にはルイズを直接を呼び出すと言い出す始末。これにはタバサの胃がきりり、と締め上げられるように痛んだ。
自分の抱える事情は複雑だ。更にはトリステインの公爵家の息女であるルイズを巻き込んで良い問題ではない。下手をすれば外交問題となりかねない。問題となれば自分の身だけでなく、様々な事でタバサに不都合が起きる。
よって、タバサはしくしくと痛む胃を抱えながらルイズに話し、直接断って貰おうとしたのだが、何故か事態は裏目に出ている。どうしてルイズが吸血鬼退治に協力するなどと言い出すのか。
「……ルイズは私を困らせたいの?」
若干、憎しみを込めてタバサは呟いた。自分の気遣いを無碍にしてくれたルイズに向ける視線は心なしか冷たい。
だが。そんなタバサの冷たい視線も何のその。ルイズは平然とタバサの視線を受け止めている。
「困らせたい、って訳じゃないけど……要はギブアンドテイクよ。タバサ。私は貴方に協力して”吸血鬼”を退治する。貴方はその見返りに私に協力する」
「危険。トリステインの人間である貴方には関係ない話」
「そうね、一応“公爵家”の娘だしね。本来だったら何も言わず見送るべきね」
「だったら……」
「――死ぬかもしれないっていう人間がいて、私は、じゃあ気をつけてね、なんて見送れる程、割り切れる人間じゃないわ」
ルイズは強く言い切った。譲らぬ、と言うようにルイズは真っ向からタバサを見つめる。
「貴方に利なんか何もない」
「いいえ、利はあるわ。貴方達という協力者を得る事が出来る」
「……私達に何を望むの?」
「んー……怒らないかしら?」
「……もう怒ってる」
「そう。じゃあ、怒ってもいいから聞いて」
ルイズは苦笑を浮かべて言った。まるでこれから自分の言う事が馬鹿げている事なんだと自覚しているように。
「――友達になってよ」
「……はぁ?」
「だから友達。お互い困ってたら助けあって、秘密を作ったりとかして、ご飯を食べたり、勉強を教えて貰ったり……私はタバサとはそんな関係になりたい」
「……巫山戯てる?」
「結構、勇気のいる告白だったんだけどな」
はは、と。ルイズはタバサの返答がわかっていたように笑った。
「迷惑はかけるつもりはないわ。それにタバサを見てて心配だったの」
「……何故?」
「ちょっと、ね。1人で抱え込んで、潰れそうな人を見ちゃうとどうしてもね、放っておけなくなるんだ」
「私とルイズには何も接点がない」
「貴方とは無くても、私はシルフィードとはもう友達だから、ね。友達のお願いは断れないわ」
「ルイズ! 感激なのね! 持つべきなのは友達なのね!」
シルフィードが喜びのあまりルイズをべろり、と舐める。シルフィードに舐め上げられたルイズは、汚れる! と怒声を上げる。そんな光景をタバサは苦虫を噛み潰した表情を浮かべる。
「でも……」
「私も、シルフィードも梃子でも動かないわよ? 私は決めたもの。タバサ、貴方を助けよう、って」
「……何故?」
「うーん、色々と打算はあるわよ? でもね、何よりやっぱり自分と同い年位の奴が死地に向かうっていうのに、さ。力があって手助け出来るのに、何もしないのは私の気が収まらないから」
だから、と。ルイズはタバサの目を覗き込むように顔を寄せる。
「諦めなさい。私は自分で言うのも何だけど――結構、頑固よ?」
不敵に笑って見せるルイズに、タバサは一瞬息を止める。そして、ゆっくり大きな溜息を吐き出しながら言った。
「……条件がある」
* * *
――私に実力を示して欲しい。
タバサはルイズにそう条件を出した。ここより先は死地。ならば死地をかいくぐれるだけの実力を示して欲しい、とタバサはルイズに条件を出した。
ルイズは快諾した。なんでも、ちょうど試したい事があったらしい。タバサは嫌な予感に汗が浮き、背中を濡らす感触を覚えた。まるで獲物を見つけたように微笑むルイズに嫌な予感が止まらない。
二人はシルフィードの背に乗って人目の付かない開けた場所へとやってきた。開けた草原地帯。隠れる場のないここはタバサにとっては絶好のフィールドだ。遮蔽物がない草原は風魔法を得意とするタバサにとって格好の狩場。
だと言うのに勝利している自分がまったくイメージ出来ていない。タバサは自身の後ろにいるルイズを見やる。瞳を閉じて意識を集中させているようなのだが、まるで隙が見えない。
「着いたみたいね」
ルイズは目的地に着いた事に気付いたように目を開き、シルフィードの背から降りて大地へと経つ。タバサも続くようにシルフィードの背から降りてルイズと距離を取るように歩き出す。
一定の距離を取ったタバサは杖を構えながらルイズと相対する。ルイズはぶらぶらと手を振り、体を解すように首などを回している。
「で? 実力を示して欲しいって言うけど具体的に?」
「実戦形式。貴方は私から杖を奪えば、私は貴方を倒せば勝ち」
「ふぅん? 了解。じゃあ始めましょう。合図とかいる?」
「これが落ちたら」
タバサは手元にある銅貨を見せるようにルイズに向ける。ルイズが納得したように頷き、杖を手に取る。それを確認し、タバサはコインを放り投げる。タバサの手から離れたコインは宙を舞い、そのまま重力に引かれ大地に落ちて――。
「――ッ!!」
落ちた瞬間、タバサのルーンが紡がれ、ルイズに向けて突風が吹き荒れる。タバサは同時にそのまま距離を取るように後ろへと飛ぶ。
ルイズを視界から外さぬように注意深くタバサはルイズを凝視する。タバサの紡いだ魔法によってルイズは後ろへと飛び、態勢を崩したように膝をつく。すかさずタバサは追撃の手を緩めぬようにルーンを紡ぎ始める。
しかし、タバサのルーンは途中で遮られる事となる。ルイズが笑みを浮かべ、小さく呼びかけるように告げる。
「――来なさい、“サラマンダー”」
ルイズの地に着いた手から、タバサに向けて一直線へと走る炎の壁。燃え上がる炎は放射線を描くように広まり、地を焼き払う。それは当然、タバサを飲み込むように。タバサは炎の接近に気付き、勢いよく飛び後退る。
「くぅッ……!」
焼けた空気が喉に痛い。タバサは戦慄を覚えながらルイズを睨み付ける。膝立ちになり、片手を大地につけた状態でルイズはタバサに向けて笑みを見せる。そのルイズの背には炎のように光を揺らめかせる姿がある。
(あれが凝縮された“精霊”!?)
タバサは恐れを隠せずに唇を震わせた。タバサの前で、すぅ、と役目を終えたかのように姿を消す“サラマンダー”。ルイズはゆっくりと立ち上がり、タバサを見つめる。
タバサは警戒するように睨み付けたまま動かない。いいや、動けないのだ。避けたとはいえ、ルイズの生み出した炎は並の威力ではなかった。その炎を呼びかけるだけで生み出させるルイズに恐ろしさを覚える。
「どうしたの? 怖じ気づいたかしら? 降参しても良いのよ?」
「……くっ!!」
余裕を見せつけるように微笑むルイズにタバサは距離を取る。そしてルイズの周りを円を描くように走り出した。少しでも自分に狙いを定められないように走りながらタバサはルーンを紡ぎ、ルイズへと杖を向けた。
空中にある水分を凝結させ、氷の槍と為して飛ばす。タバサの得意とする“ウィンディアイシクル”だ。無数の氷の矢がルイズへと殺到していく。ルイズは迫り来る氷の矢の雨に浮かべていた笑みを消した。
――そしてタバサは、まるで幽霊でも見たかのようにルイズを見つめた。
タバサの放った氷の矢の雨は地面へと突き刺さっていた。それも“1つ残らず”だ。氷の矢が突き刺さる中心で無傷のルイズが佇んでいる。氷の矢が突き刺さる瞬間、タバサが見たのは無数に分裂したかのように姿を揺らめかせたルイズ。
気付けばウィンディ・アイシクルはルイズの体に触れる事は叶わずに地へと落ちていた。自身の得意とする魔法が当たっていないという事実に、タバサは一瞬、茫然自失してしまった。
「……いった。躱し損ねたわね」
不意にルイズは自分の手の甲を見る。そこには紅い一筋の線が引かれていた。そこから思い出されたように血が滲み始める。気付けば彼女の体の各所には掠ったような後が残っている。だが、あくまで掠っただけのようだ。
手の甲に滲んだ血を舐め取るように顔の前まで持っていき、ちろり、と舐め取る。血を舐め取った手をふるり、と1つ振るってルイズはタバサを見据えた。
「勘が鈍ってるわね。……ま、この体じゃ限界がある、か」
仕様がない、と言うように肩を竦めてみせる。
「だから、試してみるわね?」
ルイズが呟いた瞬間、空気が変わる。ルイズの周りに集うのは八つの精霊。その存在感は周囲の空気を塗り替え、一気にタバサを飲み込んでいく。
力の奔流が渦巻く。力は風を巻き起こし、草原を揺らす。ルイズが先程放った残り火すらも喰らって力は大きく育っていく。ただ渦に呑まれぬようにと踏みこたえるタバサは耳に届いた言葉に危険を察知した。
「――行くわよ」
瞬間、タバサが紡いだ魔法は”エア・ハンマー”。風の槌を生みだし、迫ってくるだろうルイズを薙ぎ払おうと横凪ぎに奮う。
横凪ぎに奮われた“エア・ハンマー”に確かな手応えを感じる。やはりこの目くらましのように沸き上がった渦に乗じて杖を奪うつもりだったのだろう。未だ渦は渦巻いている。中心点がルイズなのでわかりやすい。故にタバサは再び迎撃の姿勢を見せ――そこで動きを止めた。
渦の中心、自分に向かってくる“女性”は拳を振りかぶって迫ってくる。靡く桃色がかったブロンドの髪、明らかにサイズが合っていない服の裾などを千切り捨てて突撃してくる女性にタバサは意表を突かれる。
言いようのない恐怖を感じたタバサは思わず飛び退くように後ろへと跳ね、そのまま“フライ”の呪文を詠唱。タバサが飛び上がる一瞬、“女性”が飛び込んできて拳を振るう。
風を切り裂く拳の音が生々しくタバサの耳に響く。タバサの背筋に悪寒が走り抜けていった。しかしこれで助かった。後は距離を取って再び迎撃を――。
「――あら、ごめんね? これで、終わりにさせて貰うわ?」
――する前に、目の前に現れた女性に息が引きつった。すぐに何かを行動に移さなければならない。でなければ叩き落とされる。
タバサの予想は外れなかった。空中で、彼女は一回転し、雷光を迸らせる片足を回転の勢いのままタバサの腹へと叩き込んだ。叩き落とされる感覚と、腹部に足を叩きつけられた事で込み上げる嘔吐感。
そのままタバサを大地に叩きつけるように蹴り抜いた“女性”。その女性の姿が光と共に“ルイズ”になるのを見ながら、非常識、と恨み言のように一言を呟く。そのままタバサの意識は闇に呑まれていった。
* * *
――タバサは夢を見ていた。
それは懐かしい“記憶”。まだ自分が” ”だった頃の記憶。思い出せば涙が出てしまいそうなまでに幸せだった頃の記憶。
自分の名前を呼ぶ声がする。だからタバサは走り出した。そこには愛おしい” ”の姿があるから。自分を優しく呼ぶ声にタバサは飛び込むようにその胸に飛び込む。
(あれ……? 何か足りないような?)
飛び込んだ場所にはいつもは感じる感触がない。何が足りないのかと違和感を探るように手を伸ばし、タバサはようやく違和感の原因を悟る。
「――胸がない」
「――起きるなり何を言うかな? この子は」
タバサが意識を覚醒させると、自分を抱きしめている感触に気付いて顔を上げた。
そこにはルイズがいた。桃色のブロンドの髪に意志の強そうな鳶色の瞳。こめかみに青筋を浮かべている姿を見て、タバサは首を傾げる。
「……ルイズ?」
「そーよ。人の胸をさんざん触っておいて胸ないとか何? 死にたいの?」
「ここは?」
「シルフィードの背の上よ。ほら? さっさと任務を達成しないと面倒でしょ? 気を失ってる間、悪いとは思ったけど勝手に移動させてもらったわよ?」
気付けばここは空の上。ルイズとタバサはシルフィードの背に乗り、空を飛んでいた。タバサが落ちないようにルイズが抱きしめていたのだろう。ルイズに抱きしめられていたという事実にタバサは顔を赤くして離れようとする。
ルイズを夢の中とはいえ“ ”に間違えてしまったのは気恥ずかしかったし、彼女に対してとても失礼な事を言ってしまった。
「……ルイズ? その姿は?」
「あぁ、これ? ちょっとした魔法よ」
ルイズの姿は少女の姿である彼女の姿ではない。少し年を重ねた女性の姿になっているのだ。面影こそ残っているものの、伸びた背や成長した顔立ちは彼女の雰囲気に合って、美しいと称せる程であった。
これがちょっとした魔法で出来るのか、とタバサは改めてルイズの非常識さを実感し、身を起こそうとする。だが腹部に感じた痛みに力が籠もらず、そのままルイズに身を預けてしまう。
そう、痛いのだ。ルイズに蹴りを叩き込まれた腹は今でも痛みを訴えている。少しでも身を捩ろうとすると痛みを訴えている。そこでふと、タバサが目を覚ました事に気付いたのだろう、シルフィードが嬉しげに声を上げた。
「お姉様! 目を覚ましたのね!」
「シルフィード……」
「すっごく心配したけど……やっぱりルイズに着いてきて貰って正解だったのね! これで吸血鬼なんか余裕なのね! お姉様一人だけじゃ心配なのね!」
るーるー、と楽しげに歌うシルフィードにタバサは深々と溜息を吐いた。とりあえずルイズから離れようと身を捩ろうとするタバサ。しかしその度に腹部の痛みに眉が寄ってしまう。
そんなタバサの様子にルイズは仕方ない、と言うようにタバサを抱きかかえ直す。抵抗を続けていたタバサはルイズ、とルイズの名を呼んで抗議の声を上げる。
「いいから大人しくしてなさい。私の所為で気絶させちゃったんだから。少しでも体を休めなさいな」
「あれからどれだけ経った?」
「数時間ぐらいかしら。あの後の事なんだけどね、服の調達とかあったからシルフィードに頼んでトリスタニアに行ってたのよ」
ルイズはほら、と言うように自分の服を摘み上げて見せる。ルイズには似合わないと思ってしまう程、庶民的な服装にタバサは思わず目を何度か瞬きさせてしまう。
「これで私が公爵家の娘なんて思われないでしょう? 年齢も違うし。服装もこんなんだしね。あぁ、そうそう。一応この姿の時はルイズと呼ばない方が良いかもね。後で偽名でも考えておきましょうか」
「……本当に着いてくる気?」
「えぇ。条件は満たしたでしょう? 約束は守って貰うわよ?」
笑みを浮かべて言うルイズにタバサはもう何も言う事が出来ずに口を閉ざした。もうこれ以上何を言った所でルイズは止まる事はないだろう。お節介なルイズにタバサは溜息を吐き出して諦めたように体を預けた。
「……ここまでされたら、存分に働いて貰う」
「えぇ。任せなさい。掘り出し物もトリスタニアで見つかったしね」
「掘り出し物?」
「えぇ。ほら、もう喋って良いわよ。“デルフリンガー”」
ルイズは自身の背中を顎で示すように向けた。気付けばルイズの背には一本の長剣が背負われていた。すると鞘に入っていた長剣の鐔の部分がまるで口のようにかたかたと動いたかと思えばそこから男の声が聞こえた。
「お、もう喋って良いのか?」
「……インテリジェンスソード?」
タバサは驚いたように声をルイズに問い掛けた。ルイズはタバサに正解、とでも言うように頷いた。
インテリジェンスソードとは魂を吹き込まれ、意識を持っている剣だ。マジックアイテムとしてとても高価で目にする事など滅多にない。
ルイズが僅かに刀身を覗かせればそこには光に反射しそうなまでに磨かれた美しい刃が覗かせている。
「武器屋で半ば投げ捨てられるように売ってたんだけど、口が悪くてね。客にも喧嘩を売るって言うから安く譲って貰ったわ。ま、私が手にするまでボロ剣だったからあっちは厄介払いが出来たと思ってるでしょうけどね。私は儲けものよ」
「……? ボロ剣? どこが?」
僅かに覗かせた刀身はどこも錆び付いておらず、ボロと言うには似つかわしくない。タバサの疑問に答えるようにルイズは苦笑を浮かべて告げた。
「こいつ、長年に渡って自分の使い手が現れないからって、ふて腐れて自分をボロ剣に偽装してたのよ。しかも、その所為で記憶が飛ぶだなんて間抜け」
「おいおい相棒。そりゃひでぇ言いぐさだぜ。どれだけ放って置かれたと思ってるんだよ」
「はいはい。で、何か特殊な剣だと思って購入した後に調べればかなりの年代物。しかも魔法を吸い取る事が出来るっていう破格の性能を持った魔剣だったのよ」
「“魔法”を吸収!?」
「おうよ! まぁ、嬢ちゃんにはビックリしたがな。まさか“大いなる意思”を身に宿してるなんて俺も驚きだ! お陰ですっかり目が覚めちまった! しかもお嬢ちゃんは使い手と来たもんだ! こりゃ目出度い日だな!」
「本当、恵まれた買い物だったわ。ちょっとした武器があれば良かったんだけど……これも運命って奴かしらね? ねぇ、デルフ」
「はは、違いねぇ。俺っちを握るべき使い手に、こうして出会えたんだからな」
「……使い手?」
「ん? あぁ、まぁ、私がデルフに使われる資格の所有者らしいわよ?」
ルイズはよくわかんないけど、と手をひらひらさせながら言った。タバサはよくわからないが、インテリジェスソードの事だ。一定の実力や条件のようなものがあるのだろう、と納得し、頷いた。
何はともあれ、とルイズはタバサに笑みを向ける。誇らしいまでに浮かべた笑みのまま、ルイズは言った。
「悪いようにしないわよ。さっさと吸血鬼退治、終わらせちゃいましょ?」