私は夜空のいる《リバティー》に戻ることができた。
そのはずなのに、最近よく同じ夢を、悪夢を見る。
過酷な、拷問の夢。
夜空曰く、狂気と狂乱のマッドサイエンティストの二人に
拷問を受けた人間は、ほぼその例外なく精神を壊されている。
だが私は《平常》の運命力があったおかげで、壊れずにすんだ。
言い換えれば、壊れなかったために何度も何度も壊そうと
あの連中は繰り返し拷問してきた。いわば、おもちゃだったのだ。
壊れぬおもちゃを壊すために、あれやこれや手を打っていく...
そして、力業では壊れないことを認識した。
力業しか知らないあいつらはだから諦めた...そう夜空は言った。
本当にそうなのかどうかは確信が無いけど、
それでもそうならそれでいいと思った。
だって、少なくとも今、私は解放されているのだから。
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『《ゼヴィア》の本拠地...ついにここに突入するんですね、ボス。』
もう、側に誰もいない。
そんな作戦会議室内で、僕はボスと対《ゼヴィア》最終作戦を
入念に計画、立案している。
優奈が連れ去られて3日、多分もう優奈の《平常》の運命力でも
精神を保っていられるかはわからない。
さらに、優奈がいないということは、真夜...対の《氷結》と《炎熱》を
防ぐ手立てが無いという鬼畜仕様の状態になっているということ。
つまり、僕たち《リバティー》はこの絶望的戦力差の中で
対などを倒しながら優奈を奪還し、精神状態をもとに戻すという
一流のマゾヒストも二度と御免だと言わしめるような
超難易度でバランスブレイカーな任務に挑まなければならない。
『夜空君、優奈君がもし、君に銃口を突きつけてきたらどうする?』
会議中にボスがそんなことを言う。
精神を壊されたのならあり得ることだろう。
『どうもしませんし出来ません。この永遠に続きかねない不幸の連鎖が、
僕のせいで不幸にさせてしまった優奈によって絶ち切られるのならば、
それは僕の望んでいない形であるにしろ、《救済》です。僕にとっては。』
答えながら僕は僕の望みを言う。
優奈の《平常》の運命力に気づいた時からずっと望んでいたこと。
『《救済》、か...それも運命力と思うかい?』
全てを不幸にする運命を背負ってしまった、僕への《救済》。
『運命力...こんな運命を絶ち切ってくれるのなら、運命力だろうと
何だろうと利用したい。問いの答えは...思いません。
《救済》は現象です。運命が生み出す、現象です。』
そしてそれは、望みだったことを望みと認識出来なくなっていた。
否、認識してしまえば、優奈の目を見れなかったから。
『ならば根本を聞こう、夜空君。君は、優奈君にどんな《救済》を望んでいるのだね?』
僕は、ここにいない優奈を、そばにいると仮定して、その真意を言った。
『僕の望む《救済》、それは...』
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また同じ夢。もう、うんざりだ。
夜空も昨日以来見ていない。
会いたいと思えば会えないのだろうか。物欲センサーみたいに。
そんなとき、電話が鳴った。
宛先は10桁の番号。とりあえず出る。
「もしもし...」
嫌な予感がした。
そしてそれはよく当たる。
『やーやー、長宮さん、元気かい?早速だけど本題に入るよ。』
元気そうに電話相手、月波白夜がはなしている。
『君の愛する我が息子、夜空君は死んだ...写メしとくね。』
ブツッ...という音が鳴る。一方的な通話だ。そんなことあるか?
恐る恐る新着メールを確認する。そこには...
「嘘......夜空...」
無惨な死に方をしている
「あ、あぁ、あぁぁぁぁ!?」
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『耳に心地いい悲鳴だ。よく壊してくれた、月波博士。』
『礼はいりません。全ては《ゼヴィア》のために。』
朝凪暮人は笑った。
『対に命じろ。《リバティー》を落とせと。』