長宮優奈の能力事情   作:Feldelt

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今度は23時間45分の遅刻です。
金曜日ですよ、間に合ってます!


第17話 敗北の物語

《ゼヴィア》と《リバティー》が戦闘を始めたタイミングは

奇しくもほぼ同時であった。

 

前者は後者を滅ぼすため、後者は前者から仲間を救うために、

その持てる力をふるいあう。

 

『だが、全ては私の手のひらの上だ。対、夜空君をもてなしてやれ。

 だが、半殺しに留めろ。今の優奈君を見せてやりたいのでな。』

 

『わかったよくれと、半殺しだね。』

 

『あぁ。そのようにしたまえ。』

 

 

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《ゼヴィア》基地の少し遠く、ゲート前で僕と対が対峙している。

戦闘装備をしている僕と手ぶらの対でははたから見た戦力差は

僕の方に軍配が上がること間違いなしだろう。

だが、実際は真逆である。

 

『そんなに装備しても無駄なのにね、よぞら君。』

 

対は余裕の表情で、自らの周囲に冷気を漂わせている。

その眼差しは、全く僕を見てすらいない。

 

『無駄、か...確かにそうだよ、真夜。いや、双葉 対。』

 

銃口を妹に向ける。妹の姿をした、妹とはかけ離れている存在に。

当然、抵抗はある。銃口を向けた瞬間にスライドが凍ったのだから。

 

『やっとそう呼んだねよぞら君。』

 

歪みつつある満天の笑顔で、対はそう答えた。

 

『そんなに、そんなに歪んでいるんだな...

 もう、お前の心を元に戻す事は...奇跡でも起きない限りは、

 絶対に不可能なんだな...真夜...』

 

凍った銃を投げ捨て、ホルスターから新しい銃を取り出して撃つ。

 

『君だって、もう私に対する慈悲も容赦も、躊躇いもないでしょ、

 だったら同じことだよよぞら君。だから殺さないから、燃えてしまいなぁッ!』

 

対は空気中の水蒸気を氷にすることで銃弾を防ぎ、

代わりに僕の周りの酸素を糧に《炎熱》をもって僕を燃やそうとする。

 

けど、僕には《悲劇》の運命力がある。

僕も対もこれまで以上に不幸になってしまえば、

戦況は不幸慣れしている僕の方に傾く可能性がある。

 

だがそれは、僕にとって超ハイリスクハイリターンな賭けでしかない。

安全策を取りたいが、対に対する安全策である優奈は敵の手中にある。

 

『燃えても...燃えきらないよ...お前の《悲劇》は続く、

 僕も、僕に関わる誰も彼も、永遠に!』

 

対の炎はそんなに火力が出なかった。

対は《炎熱》で攻めるのを諦め、《氷結》で銃弾や銃そのものを

凍らせてこちらのリソース切れを狙っている。

 

『全くくれとも面倒な事を言うよ...どうして殺しちゃ駄目なのさ...

 まぁ、ながみやさんに会わせるという意味合いじゃあ、

 確かに殺さない方がいいんだけど...』

 

『「ながみやさん」...!?』

 

僕は意識的にせよ無意識にせよ、その単語に反応した。

反応してしまった。惚れた女への弱点といえるものかもしれない。

 

その隙を逃す対ではない。距離を一気に詰め、《氷結》でコーティングされた

逆回転の回し蹴りを、僕は銃口を突きつける間もなくもろに受けたのだ。

 

一応、防護スーツで少しは衝撃吸収してくれたものの、かなりの力が

右脇腹にクリティカルヒットしたのだ。吹き飛ばされた上、動けない。

仰向けでのびてる事しか出来ていない自分には、嫌気がさした。

 

『これで、くれとのところに連行っと...』

『流石は僕の運命力だ...《悲劇》は平等だよ、対。水色とはね...』

 

僕らしくもなくささやかな抵抗として対のスカートの中身を見させて貰ったけど、

そのせいかな、問答無用で気絶させられた。

 

『...これだから、男は......ぐ、おにい、ちゃん...』

 

一言の侮蔑の後に真夜の意識が微かに戻っていることは、

『双葉 対』を含めて、まだ誰も知らないことだった。

 

 

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『世界を手に入れる準備が揃っているな、月波博士。』

『えぇ、人格植え付けも苦労しましたが...とりあえず彼女には、

 人形になってもらいますよ...』

 

朝凪暮人と月波白夜の見下ろす先には、ただ銃を持つだけの少女がいた。

 

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