僕は今、後ろ手に縛られた上に椅子の脚に両足を固定されている。
なぜなら、《ゼヴィア》首領である朝凪暮人の目の前にいるからだ。
対に気絶させられた僕が何故ここに呼ばれたのは分からないが、
朝凪暮人はただただ不気味な笑みを浮かべていた。
『朝凪暮人...どうして僕を殺さない...僕を消したら、
《リバティー》の戦力はもう、ゼロに等しいというのに...!』
『ほう。兄上の組織はやはりその程度か...とはいえ...
君を殺すも殺さぬも私の運命力次第だということを、
君は覚えていた方がいい。』
驚きに目を見開いた。運命力保持者だったのか。
だとすれば朝凪暮人は一体何の運命力を持っているのだろうか。
『聞きたいかね夜空君。』
『なっ...読心術...!?』
心を読まれた。しかも寸分の狂いもなく。
一体どうやって...そういう種類の運命力か...!?
『違うぞ夜空君。私の運命力は《必然》だ。さっきまでの君は私の手中にあったのだよ。
いや、厳密に言うなれば、私の手中にいることが必然的になっていたのだよ。』
《必然》...こいつの言うことから察するに、他者の行動や思考を意のままにする
運命力...しかもこの力...どこかで見たような気がするんだよな...
『私のこの力をもってすれば、君ら《リバティー》の戦力を削ることなど
容易だったよ...本来なら君もあそこで姉と共に死んでいたはずなのだが。』
あぁ、思い出した...あの地獄の日は、こいつが造り上げたのか...
『それは優奈のおかげで回避できた...けど、姉さん達を殺したのは...許さねぇ...』
身体の底から怒りや憎しみ、二人の姉の無念と怨嗟の声、
その他僕の私情やストレスも存分に込めて、そう吐き捨てた。
『別に許される必要等ない。それが《必然》なのだから。』
『んだと......ッ...!』
今すぐ目の前の男をぶん殴って好きなだけ不幸にさせてやりたいが、
あいにく今は縛られている。畜生...!
『諦めたまえ、夜空君。今の君は何も出来ない。...あぁ、そうだ。
本題を忘れていたよ。君をここに呼んだ理由を。入りたまえ。』
朝凪暮人がそう言うと、僕を縛っている椅子の真後ろのドアが開いた。
『やーやー、私の息子。元気にしてたかい?』
『夜宵も夜天も真夜も、不甲斐ないことこの上ない...』
この二つの声は、前者が母、月波夜弦。後者が父、月波白夜。
狂気と狂乱のマッドサイエンティストが僕の後ろにいる。
当然、僕はその姿が見えない。
が、重く冷たい金属が僕の後頭部に当たった。
『この感触は...銃だね、しかも僕の。どっち、白夜、夜弦?』
死を覚悟するには早かっただろうか、でも、流石に覚悟を決めないわけにもいかない。
が、現実は常に非情であった。
僕の一番聞きたかった声が、このタイミングで聞けるはずのない声が聞こえたのだから。
「月波夜空...貴方を殺します。」
『嘘だろ...優n
--バァン!
『あーあ、見事なヘッドショットだこと。』
『よくやった、優奈君。いや、
「はい、マスター。」
----------
《リバティー》対《ゼヴィア》の抗争は、《ゼヴィア》の勝利で幕を下ろした。
そして月日が流れた。
:長宮優奈が長宮優奈でなくなり、月波夜空は殺された。
:ここに、彼の望んだ《救済》を記す。
:《リバティー》首領、朝凪天日
『君はこれでいいのかい夜空君...このような幕引きで。
愚問か。この物語はまだ続く。そうだろう、月波真夜君。』
『はい、天日さん。』
この日は、月波夜空の一周忌だった。
まだ、この物語に終幕は訪れない。