長宮優奈の能力事情   作:Feldelt

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第9話 不安と物語

夜空を慰めてから、私達はボスの部屋に着いた。

 

『やぁ、来たか君たち...先程暮人の奴から連絡があったよ。』

 

ボスの顔は深刻そうだった。

 

『《ゼヴィア》の首領が今更何を...』

『何々?あれ以上派手にドンパチ起こすの?やだなー。』

 

夜宵さんは吐き捨てるように、夜天さんは面倒そうに、感想を述べていた。

夜天さんの車椅子姿は、やはり衝撃的だった。有るべき脚が無いのだから。

 

『それで、ボス。朝凪暮人はなんと?』

 

夜空が核心に迫る。

 

『あぁ、月波白夜と月波夜弦...君たちの両親と双葉 対...

 月波真夜を筆頭に我々に宣戦布告をしてきた。

 意訳するなれば...全面戦争だな。《リバティー》と、《ゼヴィア》の。』

 

--戦争。

それは、人がもたらす災厄の中でも最大級の災厄。

命や生活までもが、威信や信仰、エゴイズムのために賭けられる。

その賭けはあまりにも愚かだ。しかし人こそ愚かである。

故に繰り返し、繰り返して富や名声等を手に入れようとする。

それが、屍や何千、何万、何億もの不幸の上に有ることも知らず。

だからだろうか、人一倍不幸に敏感な彼はこう言った。

 

『戦争...か。また誰かを不幸にしてしまう...』

 

彼、夜空はやはり、優しく、誰かが傷つき、傷つけられるのを嫌った。

だけど、次に夜空から出てきた言葉は全く真逆だった。

 

『けど、不幸になるべき愚者が敵なら話は別...だよね、姉さん。』

『えぇ、私達をこの世に送り届けてくれたことだけしか感謝出来ない愚かな親は...』

『私達が粛清して、消し炭にするっ!』

 

夜空、いや、月波三姉弟は戦いを肯定したのだ。

 

「ちょ、ちょっと待って夜空、相手は親でしょ...!?」

 

思わず私は声を出す。

 

『そうだよ優奈...だからさ。あんな親は消す。不幸にさせても物足りない。』

『それにこれは私達家族の問題。部外者とまでは言わないけど口出しはしないで。』

『だいじょーぶ。まややを取り戻してあのイカれ両親を消すだけだから。』

 

夜空の殺意、夜宵さんの冷たい目、夜天さんの狂気ともとれそうな笑顔が、

私を黙らせた。何も、言えなかった。

 

『優奈君、少し、散歩でもするか。』

 

そんな私に、ボスはそう語りかけた。

 

 

----------

 

 

『もっとも、君はここからは夜空君と一緒でないと外に出れないのだよ、すまないね。』

 

天日さんはそう言って、外ではなく建物の中にあるカフェテリアに

私を連れてきた。早速シャンパンとコーヒーを頼んでなんと言うか特別席っぽい

窓際の席に案内してくれた。

 

『ふむ...相変わらず外は静かに見えて動騒にまみれている...

 君はこのような世界に対していかな回答を持つ?優奈君。』

 

唐突な、そして難解な質問が飛んできた。

 

「質問の意味が分からないです...なんで世界規模なんですか?」

 

質問しかえしてみる。

天日さんの返答は...

 

『あぁ、無理もないか...《リバティー》というこの組織には前身となった

 組織があったのだよ。その組織の日本支部...それが《リバティー》さ。』

 

「日本支部...ということは本部は...国外にあるんですね。』

 

『そうだ。組織名はP.K.F.(Peace Keeping Forces)。世界規模の平和維持防衛組織。

 国連直属の組織でもある。』

 

驚いた。《リバティー》の権力は国連によるものだったのか。

妙に納得できたが、やはり先の質問の意図がわからない。

 

「とはいっても...どうしてあんな質問を?」

 

『いや、聞き流してくれ。夜空君の話した君の暴走...仮名として

 《虚無》の運命力としているが...虚無とはどういう意味かは、

 分かるよね、優奈君。』

 

虚無、虚ろにして無い。その文字通り何も無い事を指す。

...私の、平均で平常で平坦な人生のように。

 

「はい。何もなく空虚なこと...つまりただ、何も無い事を指します。」

 

『その力...自分の意思では働かないのが厄介だ。だからこそ...

 君は私たちが護らなくてはならない。夜空君の求める救済が、

 間違った形で執り行われるやもしれないしな...』

 

天日さんはそのまま考え込んだ。私もまた然りだ。

《虚無》の運命力...そんな物が私には眠っている。

けど、それは制御できない。それが私を悩ます。

 

--もしも...私が夜空の前でまたそんな暴走起こしたらその時は...

  私は、どうすればいいのかな...

 

その心配は、天日さんにはバレていた。

 

『まぁ、夜空君なら大丈夫だろう...君と彼は互いが相補的だろうから...』

 

天日さんが謎の言葉を残して、そして最後にこう言った。

 

『では、これより始まる戦いと、私の仲間達に...乾杯。』

 

シャンパングラスを傾け、天日さんは不敵に笑っていた。

私は...それとは対照的に、全く笑えない悩みに苛まれ続けた。




後書きコーナー。

...今回は特に無いですかねぇ...
締め切りに追われ続けた、とだけかいておきましょうか。
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