Devil may cry ~Fleet Collection~ 作:縁(みどり)
Prologue
時刻は20:00を回ったところであった。
静寂が街を支配する時間に、一人の男が車を走らせる。少し古いデザインのクラシックカーだが、それなりにスピードは出るようで、今は道路を早めの速度で走っている。道路脇の街灯が流れていくのを感じながら、男はその表情を笑顔に変えた。
「…久しぶりに、デカい仕事が入ったもんだ。」
そう言いながら、運転中であるにもかかわらず、右手でハットを直す。その車が向かっていたのは、ある事務所であった。
この街で有名な、ある『何でも屋』の事務所へと。
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「…ああ、いつもの生ハム&ガーリックポテトミックススペシャルだ。オリーブ抜きでな。」
とある事務所の中、赤いコートを着た男が机に両足を組みながら、黒電話の向こうに注文を付けている。この男の名はダンテ。かつて、人間界を救ったスパーダという魔剣士の息子であり、数々の伝説を残してきた半人半魔である。先日も城塞都市フォルトナにて、自分とよく似た銀髪の青年と共に世界を救ってきたのだ。
その彼は今、非常に不機嫌な顔をしている。それは、ダンテにとっては死活問題のことであった。
「…ツケはこの間しっかりと払っただろ。届けられないってのはどういうことだ?」
ダンテはそう言いながら、わざと音を大きく立てながら足を組み替えた。ピザ屋が、ピザを届けるのを拒んでいるのだ。ダンテは少しばかり本気で文句を言おうかと思っていた。
しかし、電話の向こうから告げられた言葉に、顔をしかめる。少し面倒くさそうな顔を浮かべながら、電話を持っていないほうの手で頭を掻き、軽くため息をついた。
「…そうかよ。んじゃあな。」
そう言って、ダンテは黒電話の受話器を本体に投げる。綺麗な軌道を描き、その受話器はしっかりと本体に吸い込まれるかのようにして着地した。ガシャンと、電話が切れる音と同時に、扉が開く。そこには、ハットをかぶった男が立っていた。
「…モリソン。」
ダンテの言葉に、そう呼ばれた男が少し笑う。ハットを外して顔を見せながら、懐かしむような表情を浮かべていた。
「久しぶりだな、ダンテ。フォルトナでの活躍は聞いてるぞ。」
「…hah、俺はピザが食べられなくて少し苛立ってんだぜ?早く仕事の話をしてくれよ。」
モリソンの言葉にダンテがそう答える。モリソンは少し帽子をかぶりなおしながら肩をすくめて、苦笑する。
「…悪かったよ。ピザ屋のアンディには先に言っておいたんだ。お前さんにこの仕事の話をしたら、間違いなくピザが無駄になっちまうからな。」
モリソンの言葉に軽くダンテは鼻をならす。それを見たモリソンが、机の方に歩み寄ってくる。
「本当にそう思うかは分からねえ。ピザぐらい食わせてくれたっていいだろう?」
「そういうと思って、ほれ。」
モリソンがそう言いながら、後ろにあったカバンの中から香ばしいにおいのする箱を取り出した。それを見たダンテが、少し上機嫌につぶやく。
「…気が利いてるじゃねえか。」
「一応、貸しにしようか迷ったが、まあ今回は俺からの奢りだ。」
モリソンがそう言いながら、机の上にピザの箱を置く。ダンテは椅子から足を下して前かがみになり、ピザの箱を開ける。中には先ほど注文予定であった、生ハム&ガーリックポテトミックススペシャルのオリーブ抜きが入っていた。ダンテは少し嬉しそうな表情でピザを一枚とる。
「…OK、どんな仕事か教えてくれ。」
その言葉に、モリソンはニヤリとした表情でダンテを見る。モリソンは、ダンテからその言葉が出てくるのをわかっていたようだ。
「…今回の仕事は、日本だ。」
ダンテはモリソンの言葉に怪訝な表情を浮かべる。モリソンはビリヤード台の方へ歩いていく。
「日本?悪魔に狙われるようなものでもあるのか?」
ダンテがそういうと、モリソンがビリヤードのキューと呼ばれる棒を持ち、構える。その隙に、ダンテはピザを口に運ぶ。
「最近、海からやってきた謎の生物ってやつを知ってるか?」
「…さあ、知らねえな。」
ダンテはそのモリソンの言葉によくわからないといった表情を浮かべる。それと同時に、モリソンはキューを使って白い球を打ち出す。球は1番のボールに当たり、他のボールと共にテーブル状を駆け回る。カンッカンッと、少し高い音を奏でながら、ボールは次々と穴に落ちていく。
「そいつは、日本の陸地に向けて侵攻を続けているらしい。それの対応に追われている日本政府が、その謎の生物に悪魔が関わっているんじゃないかと推察してるようだ。」
モリソンが話を終えると同時に、ボールはすべて穴の中に入ってしまった。白球も含めて。それを見たモリソンはむっ、とつぶやき、しばらくしてため息をつく。ダンテはその話を聞きながらピザを完食してしまっていた。
「どうにか、その海の悪魔をせん滅できないかと、そういうわけで…」
と言いながら、モリソンはダンテの方を見る。ダンテはその言葉を聞いて、心底うれしそうな表情であった。
「俺にご指名があったというわけだ。」
「ま、端的に言えばそうなるな。って、もう食い終わったのか。」
モリソンがそういうと同時に、ダンテは椅子から立ち上がり、後ろにかかっているリベリオンをギターケースの中にしまい、エボニー&アイボリーを腰のホルスターに入れる。
「2分で食い切ったのは人生初だ。モリソン、車を出してくれ。」
「…おいおい、俺はお前の足じゃないんだぞ?」
ダンテはそう言って、もう準備を終えたのか外へ出ていった。それを見たモリソンがやれやれ、といった感じで後に続く。
不気味なほどの月明かりが、その二人を包んでいた。それは、これから起こる出来事の予兆なのか、それとも…
久々にDMCを1~4まで一気にやって、書きたくなった。後悔はしていない。