Devil may cry ~Fleet Collection~ 作:縁(みどり)
時刻は16:00を超えたところである。入渠を終えた漣と朧が、提督と一緒に間宮の外にあるベンチに並んで腰かけながら、アイスクリームを食べていた。入渠施設でお湯につかって体を温めた後のアイスに、漣と朧は満足そうな笑みを浮かべる。それを見ながら提督は、微笑みながらお茶をすする。
「あの、提督。」
と、最後の一口を飲み込んだ朧が提督に呼びかける。提督は穏やかな表情を浮かべながら朧の方を見る。漣はその隣で、夢中でアイスを頬張る。
「どうしたんだい?」
「…どうしてダンテさんと艦娘の演習をやろうと思ったんですか?」
朧は少し不思議そうな表情でそう尋ねる。それを聞いた漣も、少し食い気味にはいはい!と右手をあげる。
「漣も気になります!ダンテさんの実力を知るなら、わざわざ艦娘と戦闘させなくてもよかったのでは?」
漣の疑問は至極当然のもので、演習用の弾薬も燃料もともに重要な資材であるため、ただ単にダンテの実力を見るだけならば、他の方法もあったはずである。それをしなかったということは、何か裏に理由があるということだろう。
提督は、まるで悪戯がばれたときの子供のような笑顔を浮かべていた。
「…やっぱり気になるかい?」
そう呟きながら、軽く頭を掻く。そんな提督の軽い言葉に、二人はうんうんと頷く。提督はふう、と軽く息を吐き、お茶をすすった。
「…ダンテさんがここに配属されるという電話が来たとき、元帥に言われたんだ。彼を試すなら、艦娘を使った方が良いってね。」
提督は、困ったような表情でそうつぶやく。それを聞いた朧と漣は、察したような表情をした。
提督のいうところの元帥は、かなり豪快な気質な初老の男性である。大本営の言うことなどほとんど聞かず、自由奔放な人物である。大規模作戦などには全く興味を持たず、常に自分が立てた作戦の通りにしか行動しない。作戦の指揮をするときも、突拍子もないことを指示することもあるが、どんな指示も今までで外れたことはない。
だからこそ、提督もそんな元帥の指示は断れないのだ。
「…まあ、結局元帥の言いたかったことはわかった。」
提督はそう言いながら、またお茶をすする。それを見た二人は、顔を見合わせて首をかしげる。提督は1人微笑みながら空を見上げる。
提督はあの演習の中で、ダンテをずっと凝視していた。そこで提督は、彼には艦娘にも人間にもない何か特別な力があるのを感じ取ったのだ。電が言っていたことも含めれば、何かしらその異形のものと関係がある力なのだろう。
「…これはいよいよ、本格的にこの戦いが終わるかもな。」
提督は誰にも聞こえないほどの小さな声でつぶやいて、そっと目を閉じた。それは、この終わらない戦いの中で見えた、一筋の光。最後の希望なのだ。
「あのぉ…提督。」
と、そんな風に思っていた提督に、給糧艦の間宮が店の中から顔を出した。提督はそれを見て、自分が一つ頼みごとをしていたのを思い出した。
「そうだった、すまない。試作品はどうだい?」
「ええ、ちょっと提督に味見していただきたいんです。」
そう言って、間宮はお盆に三つほどそれを持ってきた。細い容器に入ったアイスクリームの上に、ストロベリーのムースとシロップがかけられ、その上部にイチゴをトッピングしてあるその見た目は、主に子供や女性が好むものであるということがありありと伝わってくる。
「おいしそう…これが…ストロベリーサンデー…!」
「すごいですね、ご主人様!」
漣はその表情を笑顔に変え、朧はそのデザートをじっと見つめながら唾を飲み込んだ。それに対し、提督はただその甘そうな見た目に苦笑いをするだけであった。
「…まあ、味見してみるか。」
間宮から器とスプーンを受け取りながら、提督はそうつぶやく。朧と漣もそれを確認して、その器とスプーンを受け取る。
「ご主人様~、どうせならみんなで同時に食べてみましょうよ!」
漣はそう言いながら、スプーンをくるくると回しだした。それを見た朧がため息をつきながら行儀が悪いと思うよ。とその行動を窘める。提督はそれを軽い笑顔で見守る。
「じゃあ、そうしようか。」
提督はそう言って、スプーンを持つ。それを見た朧と漣は、すぐに目の前のストロベリーサンデーに向き直る。早く食べなければ、せっかくの冷たいアイスが溶け始めてしまう。
「じゃあ、いただきます。」
「いっただっきま~す!」
「味見っていうことは忘れないようにな。では、いただきます。」
そういうと、3人はスプーンでアイスクリームとイチゴをすくい、そのまま口に運ぶ。
そして、3人の口の中には甘さと冷たさのハーモニーが広がるのであった。
「な、なんですかこれは!?」
「お、おいしい…!!」
そう言った朧と漣の周りの空気に、きらきらとした輝きが広がっていた。提督自身もストロベリーサンデーを見ながらうなっていた。
「…これは…間宮のアイスクリームとイチゴの風味が絶妙にマッチしている…これは新
しいメニューとして置くのもいいかもしれない…」
提督はそう呟きながら、軽く考え込むような表情を浮かべた。間宮はそれを聞いて、少し嬉しそうに微笑んだ。
「それは何よりです。伊良湖ちゃんと一緒に頑張って作った甲斐がありました。食べ終わったら、器は置きっぱなしで大丈夫ですので。」
間宮はそう言って、中に入ってしまった。朧と漣は夢中で食べ進め、ん~…と満足そうな笑みを浮かべていた。それを見て、提督も満足げな表情を浮かべていた。
「これならダンテさんも喜んでくれそうだ。」
提督はそう言いながら、もう一口食べ進め、そのおいしさに舌鼓をうつ。
日が段々と沈み始め、夜に近づいていく…
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執務室の中、電は1人で書類を整理していた。外が少しずつ暗くなってきているのを感じ、電灯をつけながら、作業をしていた。今日の書類仕事は提督がすべて片付けてしまったので、明日の分の仕事を確認することにしたのだ。
「…はぁ…」
作業を始めてから30分ほど経っただろうか。電はさすがに疲れたので一休みしようと、軽くため息をつきながら背もたれに体重を預ける。そして、今日の出来事を振り返っていた。
ダンテが、艤装を使いこなして、武蔵たちを圧倒していたことを。
(…演習をしていた皆さんならわかっているはずなのです…あんな凄まじい早さで艤装を使いこなせるようになるのは、現実的には不可能なのです。もっと訓練や練習が必要なのです。)
ダンテはものの数分で完璧に使いこなせるようになってしまった。その事実は、ダンテの人間離れしたポテンシャルの高さを示していた。
と、そんな風に考えこむ電をよそに、執務室のドアが開く。完全に脱力していた電は少し焦りつつ椅子から立ち上がった。
「おっと、イナヅマだけか?」
「ダンテさん…」
少し安心したような表情を浮かべながら、電はまた椅子に座った。それを見たダンテは、軽く笑みを浮かべながらソファの方へと歩み寄る。
「…随分と疲れてるみたいだな。」
ダンテは軽く指をさしながらそう言って、ソファにドカッと座る。その言葉を聞いて、電は少しため息をついた。
「…ダンテさんは疲れていないのですか?」
その言葉に、ダンテは軽く笑い声をあげる。まるで意外とでもいうような表情であった。
「そんな心配されるのは、初めてだな。」
「…疲れてないのですね。」
ダンテの言葉に、もはやため息をつくことも忘れて電はただそう返す。あれだけのことをして、疲れの一つもないとは、まさに人間離れしているといったところだろう。
「…ダンテさん。」
電はそう言って、ダンテの方を見据える。対するダンテはどこから持ってきたのか、漫画雑誌のようなものを読み始めていた。
電は、覚悟を決めたような表情をする。気になることを、すべて洗いざらいぶつける。電はそれしか考えていなかった。
「…この間のあの化け物のこと、教えてほしいのです。」
「ああ、いいぜ。」
電の重苦しい雰囲気から打って変わって、ダンテは軽い口調でそう返す。あまりに軽いので、電は少し拍子抜けしていた。真面目な話をするとは思えないほどフランクな空気で、ダンテはその口を開く。
「悪魔って知ってるか?」
「?…天使と悪魔の、悪魔ですか?」
ダンテの問いに、電はキョトンとした表情でそう返す。ダンテはそんな電の方を見もせずに続ける。
「それがこの間の奴さ。」
「………はわっ!?」
ダンテのあまりに軽い口調に少しの間思考が停止していた電は、少し遅れてそう叫ぶ。
電の頭の中は完全に混乱していた。
この間のあの異形のものは、悪魔だとダンテは言った。そして、ダンテはその悪魔をほんの一瞬で倒した。つまり、ダンテは悪魔よりも強いという等式が成り立つのである。
「ダ、ダンテさん…あなたは何者なのですか…!?」
電は鳥肌が立ったのを感じつつ、そう恐る恐る尋ねる。ダンテの本当の強さの片鱗に触れてしまったという感覚に陥りながら、それでも電はその答えを知ろうと言葉を絞り出したのだ。
そんな電をちらと見て軽く笑みを浮かべたダンテは、雑誌をパタンと閉じて、ソファから勢いよく立ち上がり、電に向き直る。
「…俺はただのDevil hunterさ。」
ダンテはそう言いながら、ただ不敵な笑みを浮かべるのであった。
電は、今の状況に現実感が持てずにいた。
日は沈み、夜が再びやってくる。
次回予告(アニメ風)
静かな夜ほど、不気味なものはない。経験上、そう言う時は決まって良くないことが起こる。初対面の女に剣で貫かれたりするのがいい例だ。
危険なことばかり起きるが、それでも俺は平穏よりはこっちの方がいい。人生は刺激があるからこそ楽しい、そうだろ?
Mission3
Silent Night