Devil may cry ~Fleet Collection~ 作:縁(みどり)
ついに開戦です。
「…南方棲鬼様。敵ハマダ来マセンガ、如何致シマスカ?」
戦艦ル級の内の1人がそう言いながら、真っ直ぐ鎮守府の方を見つめる。南方棲鬼は少しため息をつきながら、不機嫌そうな顔をした。
「…チョット連レテ来過ギチャッタカシラ。戦意喪失デモサレタラ、コッチモツマラナイ。」
「…ソッチノ方ガ、被害ハ少ナクスミマスケド。」
と、別の戦艦ル級がそうツッコミを入れると、南方棲鬼はギロリとした目線をそちらに向けた。その戦艦ル級は少し咳払いをしてあらぬ方向へと顔を背ける。
南方棲鬼自身も、これだけの大艦隊を率いたことはあまり無い。つまり、いきなりこんな大艦隊が基地へ来たとしたら、艦娘達はどんな反応をするか分からないのだ。
「…マア、奴ラノコトダシ、迎エウチニクルデショウネ。ソレニ、本命ガ動イテクレナキャネ。」
そう言って、南方棲鬼は昂ったような笑みを浮かべる。その様子は、仲間である戦艦ル級達をも凍りつかせるほど、恐怖感を煽るものであった。
そして、その時は訪れる。
「来マシタ!艦娘デス!」
と、前方に位置する重巡リ級の1人が、そう叫ぶ。その瞬間、その場の全員に張り詰めた緊張感が走る。
それを聞いた南方棲鬼は、ニヤけた表情を浮かべる。
「…各員、攻撃開始。敵ヲ沈メナサイ。」
「了解。」
戦艦ル級達はその航行速度を上げて、前方の艦隊と合流する。南方棲鬼は後方でただじっと鎮守府を見つめていた。
「…早ク来ナイカナ…。」
南方棲鬼はそう呟き、じっと目を凝らすのであった。
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大和は、その敵艦隊を見て軽い眩暈を覚えた。肉眼で見えるほどの距離に、40を超える艦艇が接近しているのだ。
既に射程圏内に敵がいる。その事実が、大和を奮い立たせる。
「皆さん!絶対に鎮守府まで到達させないように、ここで食い止めます!」
大和がそう叫び、主砲を敵艦隊の中心部へと向ける。それを見た武蔵も主砲を構える。赤城と加賀は、艦載機射出用の弓矢を強く引き、電と雷は魚雷発射管を水平にする。
「…斉射!!」
その声と同時に、第1艦隊全員の攻撃が開始される。大和と武蔵の主砲が放物線を描くように飛び敵艦隊を襲い、赤城と加賀の艦爆が敵艦隊をつけ狙い、電と雷の魚雷が敵艦隊の逃げ場を無くす。何箇所かで、爆炎と轟音が上がる。
しかし、それでもなお深海棲艦達はその進軍を止めることはない。
「4隻は沈めたか。」
「でも、止まりませんね…」
武蔵の言葉に、大和は少し苦い顔をしてそう返す。このまま、防ぎきれずにただやられるかもしれない。一瞬、そんな考えが頭を寄ったが、すぐに考えるのをやめる。
「でも、やるしかないのです!」
「そうよ!私たちがいるじゃない!」
そう叫んだ電と雷を見て、大和は微笑む。そうだ、こんなところで諦めるわけにはいかない。この先には鎮守府があり、提督がいるのだ。
そこへ、第2艦隊の通信が入る。
『鈴谷にお任せ!敵艦隊を囲むよ!』
「!…頼みます!」
「行くよ大井っち!」
「はい!北上さん!」
ハイパーズと呼ばれた2人が、先陣を切って雷撃を行う。敵の駆逐艦2隻に攻撃が当たり、爆音とともに沈んで行く。
それを見た敵の重巡は、大井と北上へその視線を移し、そちらへの主砲を向ける。
しかし、その重巡を別の砲弾が襲う。
「!?…」
重巡は驚いた表情を浮かべたまま、その砲弾にさらされて沈んで行く。他の艦艇も、その重巡を沈めた砲弾が飛んできた方向を見る。
そこには、鈴谷と熊野の2人が主砲を構えたまま立っていた。
「全く、鈴谷達を無視されちゃあ困るっつーのー。」
「そうですわね。ダンテさんに迷惑かけたくないですものね。」
「ちょっ…それは関係ないし!!」
鈴谷と熊野はそう言いながら、魚雷を発射する。漣と朧もそれに続いて攻撃を開始する。敵の軽巡がその魚雷をくらい、斜めに傾きながら沈んでいく。
その傍、敵の軽空母が、その上部のカタパルトから大量の艦上機を次々と出撃させる。爆撃機、攻撃機としての装備もあり、その危険性は無視できない。
「ヤバッ…対空防御!」
『アウトレンジで決めるわよ!』
と、焦る鈴谷の通信機からそんな声が響く。それを聞いた鈴谷は、第3艦隊の方へとその顔を向ける。
そちらからは、『烈風』や『零式艦戦52型』などの艦上戦闘機が飛んできていた。
「敵の戦闘機は任せて!」
「頼んだぞ、翔鶴、瑞鶴!」
瑞鶴の言葉にそう返す長門は、敵艦に向けて主砲を放つ。敵の軽巡がその弾丸を喰らい、轟音とともに爆炎をあげる。
その隣の重巡が、長門へと主砲を向け、発砲しようとする。
が、その動作は真横からの砲弾によって阻止された。
重巡は砲弾を受けた瞬間に、大きな爆発とともに轟沈する。
「あら、あらあら。」
そう言いながら笑う陸奥の主砲の砲口からは、煙がユラユラと上がっていた。それを見た暁は、少し怯えたような表情を浮かべた。
「む、陸奥さんの砲塔が爆発するわ!?」
「し、しないわよ!!ただの煙よ!!」
暁の言葉に慌てて反論する陸奥を横目に、敵の駆逐艦が隙を見てその口内の砲塔を向ける。が、それが発射されることはなかった。
響が魚雷によって、その駆逐艦を仕留めたからである。駆逐艦は炎を上げ、そのまま沈み始めていく。
「ハラショー。」
響はそう呟き、ただ静かに敵艦隊を見据える。まだまだ壊滅には至らないが、少しずつ数を減らしている。このままいけば、鎮守府を守り抜ける。
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後方に陣取っている南方棲鬼のところへ、戦艦ル級が1人近づいていく。
「駆逐艦3隻、重巡2隻、軽巡2隻轟沈!コチラノ被害ハ拡大中デス!如何シマスカ!?」
戦艦ル級はそう言いつつ、南方棲鬼を庇うように敵の方へと主砲を向ける。
南方棲鬼は、未だ鎮守府を見据えるだけで、ただじっと動かない。
戦艦ル級はそれを見て、少し苛立ちを覚えた。あまりにも何も指示をしないので、このまま指示を待っていては全滅の危機もありうる、と考えたからである。
が、その考えはあっさりと覆される。
「…私ガ出ルシカナイカ。」
「!…」
戦艦ル級は、南方棲鬼の言葉を疑うかのような表情を浮かべる。このまま、静かにその『本命』が出てくるまで待ち続けるかと思っていたからである。
「何?不服?」
南方棲鬼はそう言って、戦艦ル級を見る。戦艦ル級は、少したじろいだ。そう言った南方棲鬼の顔が、明らかに味方に向けるような表情ではなかったからである。
「イ、イエ…ソンナコトハ…」
「ダッタラサッサト行ク。」
「ハ、ハイ!」
戦艦ル級は慌てた様子で前方へと向かう。
それを見ながら、南方棲鬼は少しため息交じりの笑みを浮かべる。
「…本当ナラ、ココデ待ッテルツモリダッタンダケド…仕方ナイワネ。」
南方棲鬼はそう言いながら、速度を一気に上げて鎮守府へと迫っていった。
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所変わって、戦闘区域の遥か後方。艦娘達が敵艦隊に攻撃を続ける中、ダンテは1人佇んでいた。
「…暇だな。」
ダンテはそう呟き、軽く欠伸をする。というのも、ダンテの仕事は艦娘達の様子を見ながら、時折敵艦に砲撃を当てる程度なのだ。ダンテにとっては、退屈きわまりないのは明白である。
「…おまけに、パーティーに誘ってきたあいつはこの場にはいないらしい。」
ダンテは少し苦笑いをしながら、その敵艦隊の全体を見る。今の所見えるのは、大きな魚見たいな奴、化け物みたいな奴、人型の奴ぐらいである。
「…にしても、イナヅマ達もやるじゃねえか。流石はプロだな。」
ダンテはそう言いながら、電達に視線を向ける。どんなに多い敵にも諦めず、全力で食い止めようとしているその姿を見て、感嘆の声を漏らす。
だが、なんとかして自分もその最前線に交わりたいのは否めない。
と、目を凝らした時に、何やら敵の動きに違和感を覚える。
「…俺の出番が来たか。」
ダンテは楽しそうにそう呟き、その地点へとスピードを上げて向かっていく。
日は少しずつ傾き始めた。
ダンテの活躍は次回に持ち越し…
お待ちください…