Devil may cry ~Fleet Collection~ 作:縁(みどり)
第4章は、鈴谷をメインにしたいです。
まあ、ダンテには暴れてもらうんですけどね。
微睡
深い深い海の中、鈴谷はただもがき続ける。両手を必死に動かし、なんとか海面へと手を伸ばす。
しかし、もがけばもがくほど、まるで何か見えない手が引っ張るかのように、海へと沈み続ける。
「誰か…!!」
それは、心の底からの叫びだった。しかし、海の中へと木霊するだけで、その言葉は誰にも届かない。
鈴谷の心を、もはや助けを求めることができないほどに絶望させる。
(…はは…もう…死んじゃうんだ…)
鈴谷の目から光が失われ、ゆっくりとその目が閉じて行く。視界は消え去り、ただ暗闇だけが支配する。
鈴谷には、もう生にすがる力さえなかった。
だが、そんな彼女を希望の光が照らす。
「Hey、こんなところで寝てると風邪引くぜ?」
そんな陽気な声とともに、目の前の視界が赤で支配される。
鈴谷は、心の高鳴りを感じた。
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「!!…」
鈴谷はハッと目を見開く。その目の前には、天井が広がっていた。
ゆっくりと身体を起こしながら辺りを見回す。そこは、いつもの見慣れた自室であった。
「…夢…かぁ…ふわぁ…」
大きな欠伸をしながらそう呟くと、布団から這い出る。まだ寝ぼけ眼なので、気をつけるようにハシゴを使って二段ベッドから降りる。その途中、熊野が眠りについているのを見て、今は朝の早い時刻だということを理解した。
時計をみると、4:00丁度を指している。
「…ん〜…ちょっち散歩でもしようかな〜…」
鈴谷はそう言いながら、制服に着替え始める。
その途中、先ほどまでの夢のことを思い出していた。あまり心地がいい夢ではないことは覚えていたものの、内容を思い出すことができないのだ。
「…どんな夢だったかな…」
鈴谷は上着の袖を通しながら呟く。しかし、思い出せないということは、大した夢ではなかったのだろうという考えに至った。
「さてと…行ってこよっと。」
自室のドアを開けて、廊下へ出る。軽く伸びをして、身体を完璧に起こす。外はまだ暗く、陽の光はまだほとんどない。
「…日の出が見れたら良いなあ。」
鈴谷はそう呟きながら、外へと向かった。
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「…huh、終わりか?」
ダンテはそう呟きながら、リベリオンをギターケースへとしまう。
その目の前には、低級の悪魔が2体ほど倒れ伏していた。
ゆっくりと、その死体が消えて行く。
「あれ?ダンテじゃん。」
と、後ろからダンテにそう声をかける人物が1人。
ダンテは軽く振り返り、その姿を確認する。
「スズヤか。随分と早起きだな。」
「それはこっちのセリフだし。ダンテも起きちゃったわけ?」
鈴谷はそう言いながら、軽く欠伸をする。
ダンテは両手を軽く上にあげて、huh、と笑う。
「俺は眠れなかったのさ。」
「…へっ?」
鈴谷はそれを聞いて、夕べのことを思い出していた。
確か、消灯時間のすぐ前まで、ダンテは執務室のソファに腰掛けていたはずだ。
「…もしかして、昨日の朝に起きてからずっと寝てないの?」
「?…そうだな。」
ダンテは軽く首を傾げながらそう告げる。それを聞いて鈴谷は驚愕していた。
ダンテは、そんなことはどうでも良いかのように笑みを浮かべる。
「…良くそれで動けるよね〜…」
「huh、気にしたこともなかったな。」
ダンテはそう言いながら、軽く鈴谷に笑いかける。
ダンテ自身、仕事で1日中駆け回るなんてこともある。これぐらいの徹夜など、あまり気にならないのだ。もちろん、彼が半人半魔であることも理由の一つだが。
「それで、お嬢様は何故こんな時間に?」
ダンテは少し茶化すような態度をとる。それに対して、鈴谷は少し考え込むような表情を浮かべる。
「ん〜…何か、変な夢を見て目が覚めちゃったんだけど、その夢の内容が思い出せなくてさ〜。」
鈴谷はそう言って唸る。
ダンテはその様子を見て、軽く笑みを浮かべる。
「それで散歩って訳か?」
「ああ〜、そうそう。まあ、思い出さなくても良いんだけどね。」
と、そこまで言ってから、鈴谷は今の状況を思い出した。
まだ時刻は4:15を回ったところであるため、他のメンバーはまだ起きてこない。
つまり、今は…
(…これって…ダンテと2人きりってやつじゃん!?)
そう考えると、途端に自分の心臓が高鳴っているのを感じた。
正直、ダンテに一目惚れなんてものはしていないと、そう思っているのに、それのせいで変にダンテのことを意識してしまうのだ。
「Hey、スズヤ。」
「!…ぁ、えーっと…な、何?」
突然のダンテの声がけに、鈴谷は変な声が出てしまった。
ダンテは鈴谷の声を少し不思議に思ったが、気にせず話を続けた。
「今日の昼間に、街へ行こうと思ってな。その案内を頼めるか?」
「えっ…電とかは…あぁ、そっか。秘書艦だから忙しいんだよね…」
鈴谷は、秘書艦の業務で忙しい電のイメージを思い浮かべる。
普段からかなり忙しそうにしているが、特に大規模作戦の時は常に書類と出撃の両方に追われていて、とてもじゃないが自分にはこなせないと思ったものだ。
「…それで、何で鈴谷な訳?」
「Ha-ha、他のはどうやら昨日のあれが気に入らないらしくてな。」
ダンテの言葉を聞いて、昨日のことを思い出す。
圧倒的な力の差であるにもかかわらず、トドメを刺さなかったダンテ。勿論、それだけでダンテが敵の人間だと思うわけではないが、皆が皆、納得がいっているわけではない。
まあ、鈴谷も気にはなっているが、それほどではないのだ。
「…じゃあ、私が案内しちゃうよ。鈴谷にお任せ〜ってことで!」
「huh、頼むぜ。」
ダンテはそう告げて、その場を後にする。鈴谷は少しその後ろ姿を見て笑顔を浮かべていた。ダンテにこんな風に声をかけてもらえるとは思っていなかったのだ。
街の案内を頼まれるなんて…街の案内…
「…これって、もしかして…デート?」
鈴谷は、そこまで考えて、身体中の体温が上がっていくのを感じる。
陽が昇り始め、残された鈴谷を照らしていた。
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朝食を取り終えた熊野は、今日が非番であるため、自室でゆっくりと過ごそうかと思っていた。
しかし、とある理由でそれができないのである。
「…いつも通りで良いのでは?」
熊野はベッドに寝転びながら、若干呆れたような表情でそう告げる。その目の前には、鏡の前であたふたする鈴谷の姿があった。
「で、でも!普通だとなんか嫌なの!!」
鈴谷は少し涙目になりつつ、色々な服を合わせている。だが、合わせてはすぐにこれも違う!!と叫びまた別の服を手に取る。
熊野は、クローゼットから出された鈴谷の服の山をチラと見る。
「…はぁ…これのどこが一目惚れではないと。」
熊野は少し呆れたものの、微笑ましいものを見るような目で鈴谷を見ていた。鈴谷のこういう姿を見るのは、熊野にとって初めてである。
艦娘に人間の感情は必要ないと、どこかの鎮守府の提督は言ったらしい。それは、艦娘をあくまで兵器と捉えての発言であった。
軍人としては正しい判断なのかもしれない。しかし、それは人間としての判断であれば…
幸い、この鎮守府の提督はそのようなことは考えていないらしい。艦娘は、兵器の前に人間であるという考え方をしている。
だからこそ、今の鈴谷を見れば、提督は喜ぶだろう。
「あぁもう!!どうしよう〜〜!!」
まだ服が決まらないらしく、鈴谷はそんな風に叫ぶ。それを熊野はただただ笑顔で見守るだけである。
いつか、自分にもそう思える人との出逢いがあるかもしれない。と思いながら。
「熊野!!見てないで手伝ってよ〜!!」
「はいはい、お待ちなさいな。」
鈴谷のそんな泣き言のようなセリフに、熊野は笑いながらそんな風に呟きながらベッドから這い出る。
時刻は、11:30を回ったところであった。
鈴谷の一目惚れ。
鈴谷の恋心はどうなるのか?
というか、ダンテの周りの女性陣に勝てるのか?