Devil may cry ~Fleet Collection~ 作:縁(みどり)
すみません、地名のミスがあったため、修正しました。
来訪
「はぁ…わかりました。この鎮守府に来るんですね。」
日付は変わり、日差しも高くなっている。外はアスファルト照り返しによって、ゆらゆらと陽炎が立ち上っているが、室内はクーラーが暑さを和らげている。
ここは、横須賀鎮守府。一人の白い軍服を着た男が、執務机の電話の応答をしている。それを見ながら、来客用のソファとテーブルに書類の整理を行っている少女が一人。名を電という。電は慣れた手つきで書類をまとめ上げ、それを執務机に持っていく。それを見た男が右手を軽く上げ、感謝の意を示す。それに微笑みで返すと、電はシンクの方に歩いていく。そして、丁寧な動作で茶葉を急須に入れ、ヤカンで沸騰していたお湯を注ぐ。
「…時刻は…わかりました。では、準備しておきます。」
そう言って、男は電話を切る。それを見た電は、すぐに二つの湯呑にお茶を淹れ、お盆でゆっくりと運ぶ。
「司令官さん、何かあったのですか?」
電は湯呑を一つ置きながら、司令官と呼ばれる男にそう尋ねてみる。男はありがとう、と一言告げて、少し息をつくためにお茶をすする。そして、ほっとついたところで、電の質問に答えることにする。
「今日から、ある男の人が来るらしい。深海棲艦に対抗できる可能性があると説明された。」
「お、男の方ですか!?それって、でも!艦娘適性が出るのは女性だけじゃ…」
電は驚いたような表情で男の言葉に反論する。しかし、男は少しも動じなかった。むしろ、少し笑っていた。
「その人は、艦娘ではないみたいなんだ。詳しい情報は全く入ってないけど、外国の人ら
しいよ。」
「なのです!?」
電は、男の言葉にさらに驚いていた。今や、深海棲艦に太刀打ちすることができるのは艦娘だけである。普通の人間が深海棲艦と戦うのは、至難の業であることは明白である。しかも、その人物は艦娘ではないという。そんな実力を持った人間など、外国にいるのだろうか。
「…いったい、何者なのですか?」
「さあ。でも、今まで俺たちが苦戦してきた相手を、ぽっと出の人間に何とかできるとも思えない気もするが…」
男はそう言いながら、苦笑いをする。この男は、この鎮守府を任されている提督である。大将と呼ばれる階級であり、名前は特に認知されていない。提督はこの鎮守府にこの一人しかいないのため、名前で識別する必要がないからである。
そんな彼らは、今まで深海棲艦を相手に多大なる戦果を挙げてきた。それも、艦娘たちの安全を第一にして、強硬策には決して出ないにも関わらずだ。そうやって来た経験もあり、これからやってくる男がどんな人間であろうと、簡単に認めるわけにはいかない。それは、この道のプロである故であり、ある種のプライドというものがあるからである。
「…今日の夕方、16:00頃の着任らしい。まあ、厳密にいえば仕事に就くというより、補佐という意味合いが強いみたいだけどね。」
提督はそう言いながら、肩をすくめた。電は、純粋にその男のことが気になっていた。鎮守府には、提督しか男がいない。もちろん、街に出れば男の人はたくさんいるのだが、街に出るのは大体非番の時の買い出しの時だけである。すなわち、初めて密接にかかわることになるかもしれない男の人である。
「…できれば、仲良くしたいのです。」
そう言いながら、少しワクワクしている自分がいたのを感じ取った。しかし、その感情を振り払いながら、提督に相対する。
「よし、それじゃあ、準備しようか。その人の部屋も用意しなくちゃいけないしね。」
提督がそう言いながら、パンっと両手を合わせた。その音に電は、少し驚きつつも笑顔で提督の提案に賛成した。
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「…へぇ、ここが日本ねえ。」
飛行機から降りて、まずダンテが思ったことは一つであった。
(…確かに、血の匂いが強いな。)
日本の空港に着いた途端、鼻につく強い悪魔の血の匂いが入ってきたのだ。数は多くはないものの、こんなに人が多い中で溶け込んでいるのだ。それは、日本という国が悪魔の侵入に気が付いていないという証明であった。
「さて、確か迎えの車が来ている手筈だったな。」
ダンテはそう言いながら、空港の外を目指しながら歩き出す。その度に、赤いコートがひらひらと風を受けて揺れる。多くの視線がダンテに集まり、不思議そうな顔を浮かべるもの、どうでもいいかのように振舞うもの、興味深そうに見つめるもの。反応は様々だが、どうしても悪魔の視線は感じなかった。
「…匂いはするんだがな。」
ダンテはそう言いながら、大きな自動ドアを抜けて、外へ出た。目の前は道路になっており、そこに一台の車が止まっていた。
「お待ちしていました。ダンテさん。」
「?…」
ダンテは声のする方に静かに振り向く。そこにはスーツを着た男が三人ほど立っていた。ダンテは、日本語で話しかけられたにも関わらず、その言葉を理解していた。ダンテは不思議に思ったが、おそらく悪魔の血によって、言語の感覚が研ぎ澄まされているのだろうと勝手に納得した。ダンテは少し考えた後に、ハッと鼻を鳴らしてその男たちに近づく。
「あんたらがお迎えの?」
「はい。今から、横須賀にお送りいたします。」
男の一人がその言葉と同時に、後部座席のドアを開けた。軽く流してみてみるが、特に車に異常はなかった。ダンテはそのまま乗り込もうとする。
「お荷物は?」
男の一人が、ダンテにそう声をかけ、ギターケースを受け取ろうとするが、ダンテは右手を上げることでそれを止める。男は不思議そうな表情を浮かべていた。
「ああ、いい。自分で持ってる。」
ダンテはその座席にドカッと座り込み、自分の足元にギターケースを置く。男は納得したかのような表情を浮かべ、ドアは閉める。そして、男たちは運転席と助手席、そしてダンテの隣にそれぞれが座った。
「少し時間はかかりますが、楽にしていてください。」
助手席の男がそう言って、ミラー越しのダンテに微笑みかけた。それを見たダンテは、軽くにやけ面で返す。ダンテはモリソンが去り際に言っていた言葉を思い出していた。
『今回の仕事、いつものようにはいかないかもな。』
ダンテは軽くにやけながら窓の外を眺めた。いつもより面倒で、刺激的な仕事になりそうだという確信に満ちた表情で…
そして、車は発進した。その横須賀という場所に向けて。
「ダンテさんは、デビルハンターとお聞きしました。今回のお話受けていただいて、本当にありがとうございます。」
隣の男が、無機質な声でそう話す。ダンテはその言葉に鼻を鳴らしながら、軽く右手をあげる。
「仕事だしな。気にしないでくれ。」
ダンテはそう言いながら、流れていく窓の外の景色を眺めていた。特に何か気になったものがあるわけでもなく、ただひたすらぼんやりと外を眺めていた。やはり、日本も先進国に名を連ねている国、かなりビルが多かった。結構な高さのビルが乱立しているのが見える。もちろん、アメリカのニューヨークほどの高さではなかったが。
助手席の男がチラと窓の外を見ると、車が多く行き来しているのが見えた。
「なあ、窓開けてもいいか?」
ダンテは突然そう言いだす。助手席の男が運転席の男の方を見る。運転席の男が、軽く右手をあげてそれに応える。助手席の男がダンテの方に首を向ける。
「いいですよ。今、冷房を一時的に切りますね。」
そう言って、助手席の男が冷房を切ろうと手を伸ばした。
そして、その瞬間、車内に銃声が響いた。
「…えっ?」
男はその音がしたほうを見る。ダンテが開けた窓のところに、何か異形のものがへばりついているのが見えた。
「…さっきからつけてきてると思えば、窓を開けた瞬間飛び込んで来るとはな。」
ダンテはそう言って、エボニーをくるくると回しながら腰のホルスターにしまう。その流れるような動作は、一つの武術のような華麗さを醸し出していた。そして、窓にへばりついていた異形は、力なく地面に落ちていった。
「…い、今のは!?」
「悪魔だ。かなり下級だがな。」
ダンテはそう言って、窓を閉める。男たちは言葉を失っていた。まさか、こんなに早くも悪魔が襲ってくるとは思ってもいなかったのである。しかも、ダンテを追いかけてきていたという。
となれば、当然…
「…安全運転を気にしている場合じゃねえってことだな。気をつけろよ。」
ダンテはそう言って、目を閉じて眠りにつこうとした。それを聞いた運転席の男が少しおびえた表情で車のスピードをわずかに上げていた。
「…は、はは…マジかよ…全く…」
助手席の男は冷や汗をぬぐいながら、そうつぶやいたのであった。
アニメのように、人間に化けた悪魔もいれば、ゲームのように種族ごとの悪魔もいる、というスタンスで書いていきます。
個人的には1のダンテが一番好きです。
ダンテが日本語を喋れる理由は、悪魔の血で説明づけました。感覚で言語を理解して、使役できるという感じです。