Devil may cry ~Fleet Collection~ 作:縁(みどり)
というわけで、続きでございます!
「…っ…ぅん…?」
激しい頭の痛みとひどい倦怠感が木曾を襲い、木曾は目を覚ます。
目の前に広がるのは、見知っているようで少し違う白い天井。そして、背中に感じるのは、随分と久方ぶりのベッドの感覚。
「あっ、目が覚めた?」
と、そんな明るい声が隣から聞こえたため、木曾は首を動かそうとし、そして後悔する。
まるで筋肉痛になったように、首に痛みが走ったのだ。
「あちゃ~…あんまり無理させちゃダメだったんだっけ…」
隣の声は、少し申し訳なさそうにそうつぶやく。そう言われていたなら、先に言っておいてほしかったと思ったが、口に出すほど重要なことでもないので心の中でかみ砕く。
「誰かいないかな…えっと、ナースコールナースコール…」
隣から何かを探す音が聞こえるが、自分は何も見ることができない。だが、どうやら人を呼ぼうとしているのはわかったので、止める気はなかった。
「これかな?」
そう言って、その声の主が何かのスイッチを押す。すると、自分のベッドが少しずつ起き上がっていくのを感じる。
木曾は、完全に当惑していた。少しずつ傾斜が大きくなっていき、自分のつま先が見えてきた。
「…待て…何か違うスイッチをおしてないか…?」
「あれ!?これじゃなかったっけ!?」
そう言っている間にも、自分のベッドが動き続けているのを感じた木曾は、完全にテンパっていた。
何とかその声の主の方へと手を伸ばしてみる。痛みが強いが、そんなことは言っていられない。
「そのスイッチをよこせ…!!」
それを聞いたと同時に、その人物はそのスイッチを手渡してくる。木曾はそれをぶっきらぼうに受け取り、それに目をやる。
そのつまみには、ウェークアップと書かれており、それを今とは逆の方向に倒す。
その瞬間、ベッドは自分の身体の角度が90度になったところで何とか動きを止め、木曾はひとまず安心した。
「…ふぅ…危なかったね~…このまま真っ二つに折れてたら…おえ…」
「そうなってたらお前のせいだからな…」
そう言いながら、痛みのことなど気にもせずにその声の主を見る。そこには、自分と同じようなタイプのベッドに寝転んでいた、鈴谷の姿があった。
「!…お前は…無事だったのか!?」
「わっ!?何!?」
木曾はその姿に驚いていた。それは、鎮守府ではぐれたはずの鈴谷がこの場にいたからである。
だが、当の鈴谷は困惑している。
「!…鈴谷…?」
木曾は少し、切ない表情で訴えかける。それが、鈴谷の心をキュウと締め付ける。
おそらく、この木曾が勘違いしていることを確信したからである。
「えっと…それって多分、私じゃないかも…」
「!…そう…なのか…?」
それを聞いた木曾は、血が上っていた頭を冷静にするように努める。
そもそも、自分はなぜこんなベッドに眠っていたのか。それに、あの血なまぐささは完全になくなっており、まるであの事態が起きる前の鎮守府だ。
そこまで考えて、木曾は言葉を詰まらせる。
そうだ。あの事態が起きたから、鎮守府は…
「…ここは、どこだ。」
木曾は、小さくつぶやいて鈴谷の方を見る。それに気が付いた鈴谷は、少し迷ったような表情を浮かべながら、その顔つきを真面目なものに変える。
「…ここは、横須賀だよ。横須賀鎮守府。」
それを聞いた木曾は、何も返すことができなくなっていた。
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「ダンテさん、何で急に入渠ドックなんて?」
提督は不安げな表情でダンテへと問いかける。ダンテはそんな問いなどないかのように、歩みを進める。提督はそんなダンテを見て、それ以上何かを言うのをやめた。
そうして2人は、ドックへとたどり着く。
「…」
ダンテはろくすっぽ中を確認しないまま、ドアを開ける。
もちろん、今入渠中の艦娘はいないからこそ提督は止めなかったが、もう少し考えて行動してもらいたいと頭の中でつぶやく。
ダンテはそのまま中へと入り、ドックの前まで歩み寄る。
「…なあ、この液体は何なのか知っているのか?」
ダンテは提督に対してそう告げる。提督は頭にクエスチョンマークを浮かべる。その質問の意図が全くわからなかったからである。
「…修復材です。彼女たちは、それに浸かることで傷を癒すんです。」
提督はそれを簡単にそう答える。それを聞いたダンテは、ため息を軽くつく。
それは、提督がこの正体を知らないということを理解し、安心したのだ。
「…そうかい。」
ダンテはそう言うと右手の人差し指を噛んで軽く出血させ、そのままそれを入渠ドックに突っ込む。
提督はその光景をただ不安げな表情で見守る。
そして、その光景に驚愕する。
「これは…傷が…!?」
ダンテの指の傷が少しずつふさがり、完全に治ってしまったのだ。
ダンテはため息をつきながら、軽く笑みを浮かべる。
「…こいつは、俺もよく知ってるんだ。普段は固まってるんだがな。」
ダンテはそう言いながら、指についた液体を軽くコートで拭う。
ダンテが思い浮かべているのは、Green Orbと呼ばれる、悪魔の血液が凝固した魔結晶である。
「…なぜ、ダンテさんまで治るんですか?」
「それは言えないが、あんたが同じことをやったら…危ないとだけ言っておくか。」
ダンテはそう言って、提督のそばまで歩み寄り、その肩をポンとたたく。
これは人間が触れると、悪魔の血液から流れ込む悪魔たちの遺志が流れ込み、心を壊される。
だからこそ、提督が触れれば、たちまち死に至るだろう。
「…では、なぜ艦娘である彼女らはその恩恵を無事に受けられるんですか!?」
提督は、少し声を荒げる。その言葉に、ダンテは表情を硬くする。
結局、ダンテの心に引っかかるのもその部分なのだ。なぜ、艦娘はこの液体に触れて何ともないのか。それは、ある事実を指し示しているのだが、確信をもってそれを提督に告げることはできない。
「…わかったら教えるさ。」
ダンテはそうつぶやいて、その場を離れていく。
提督は、しばらく立ち尽くすことしかできなかった。
自分より彼女らとの付き合いが短いダンテの方が、艦娘のことを、皆のことを自分よりも知り尽くしている。
そんな風に思えてきて、提督は無力感を感じる。艦娘のことも、深海棲艦のことも、ダンテのことも知らない自分に対して。
「…何にも俺は…知らないんだな…」
提督は一言、誰にも聞こえないほどの小さな声でつぶやくのであった。
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「…気分はどうなのです?」
「…よくはないな。」
電の問いかけに、木曾はただ小さくそう返す。
鈴谷はなんとか電話を発見し、それで電に通話する。
もともと、目が覚めたら電を呼ぶようにいわれていたので、電はその連絡からほんの数分後にやってきた。そして、そのまま木曾に今の状況を説明し始めたのだ。
事態を説明された木曾は、何とか今の状況を飲み込んだ。
一つ、自分たちのいた鎮守府は完全に機能を停止、そのまま破棄されることになったこと。
一つ、電達がその探索のためにやってきて、自分を救助したこと。
一つ、治療や入渠は完全に済ませたが、しばらくは安静にしていなければならないこと。
一つ、他の鎮守府に、何人かの仲間が流れついてはいるものの、全員が意識を取り戻さないということ。
そして、それ以外の生存者は確認されなかったということ。
「…本当に…どうしてこうなっちまったんだろうな…」
木曾は軽く天を仰ぎながら、そうつぶやく。
それを見た電が、気の毒そうな表情を浮かべながら、その質問をする覚悟を決める。
「…あの鎮守府で…何が起こったのですか…?」
電は少し不安げな表情でそう尋ねる。隣の鈴谷は、息をのむようにそれを見守る。それもそのはず、まだ完全に心が癒えているわけではない。まだ深く掘り下げない方がいい話題なのは確かである。それでも、電は聞かなければならない理由があるのだが。
木曾は、しばらく黙り込んで、ただため息をつくだけであった。
「…いいぜ。話してやる。」
木曾はそう言いながら、電の方へと向き直る。それを聞いた電達は、息をのむ。
その表情は、覚悟を決めたようなものであったからだ。
「…1か月前に、俺たちは深海棲艦の空母ヲ級を鹵獲した。」
木曾の言葉は重々しく響く。その雰囲気にのまれそうになりながら、電達は耳を傾ける。
日は少しずつ傾き始め、沈み始めるところであった。
この間一気にプロット書き直したから細々とした設定矛盾が出て来そう…(不安)
一回、状況説明の回とかどっかで入れたほうが良いのかな…(自分のためにも)