Devil may cry ~Fleet Collection~ 作:縁(みどり)
しばらくネロの物語になりますので、まだまだお付き合いください!
「…飛行機ってのは退屈だな。」
空港のメインゲートの外、大きなケースを持った、短い銀髪の青年が小さく呟く。
青みがかった黒のロングコートを揺らしながら歩くその様は、ダンテのそれとよく似ている。
名前をネロ。フォルトナの一件を解決に導いた、功労者の1人である。
その青年は今、かなりの面倒事に巻き込まれている。
「…その迎えってのはどこだ?」
ネロは辺りを見回しながら面倒臭そうに呟く。
車の往来がそこそこ激しく、人通りも多い。そんな中から、自分から迎えを探すのは困難である。だから、向こうがこちらを見つけてくれるのを待つしかないのだが…
「…面倒だな。」
ネロがこうして日本にやって来たのは、ある1本の電話のためである。
現在日本が、海からの侵略者から攻撃を受けているという。それらは悪魔の存在に近く、これから世界中の海から地上を攻撃しかねないという。
ネロはフォルトナもそのターゲットになる可能性を考えて、そのままフォルトナに残ろうとしたが、キリエの『困っている人は助けてあげたい』という言葉のおかげで、ネロはその依頼を受けることになったのだ。
「…ネロさんですか?」
と、そんなネロのもとへと黒いスーツを身にまとった男が現れる。
ネロは少し日本語で話しかけられたことへ違和感を覚えながら、それに対して日本語で返そうと声をあげる。
「あんたが迎えか?」
「はい、これから呉鎮守府へお連れします。」
ネロの言葉にそう答える男性は、何か不安げな面持ちをしていた。
「…何か変か?」
ネロが怪訝な面持ちでその男性を見ながら、そう告げる。
それを聞いた男性はハッとした表情を浮かべてすぐさま申し訳なさそうな笑みを浮かべる。
「いえ、その…かなり大きな荷物なので、ギリギリ車のトランクに入るかどうか…」
そう言って、ネロが持っている大きなケースをじっと見る。
ネロは納得したように軽く頭をかく。
「…さっさと案内してくれ。俺は早めに仕事を終わらせなくちゃならないんだ。」
ネロは少し面倒臭そうにそう呟く。男は少し気を引き締めるように表情を固くする。
「わかりました。では、こちらへ。」
男がそう呟いて、歩き出す。その後を静かにネロはついていく。
その間、ネロはフォルトナとキリエのことを考える。
もし、今自分がいない時に悪魔が湧いてしまったら。
魔剣教団が崩壊した今、人々を守る力を持つものは誰もいない。
だが、それを電話の声は気にする必要はないと一蹴した。
「…ところで、俺がいない間のフォルトナはどうなるんだ?」
ネロは歩きながらそう呟くと、男は少し笑みを浮かべてこう返す。
「あなたのお知り合いが、なんとかしてくれたようです。」
「…知り合いだって?」
ネロはその言葉に、疑問を覚える。
知り合いとは一体誰を指すのだろうか。自分のことを知っている人物はフォルトナにしかいない。
と、そこまで考えて、フォルトナ以外での知り合いに当てはまる人物が1人思い出される。
「…まさかな。」
ネロは馬鹿らしいとでも言う風にため息をつく。
そうしているうちに、黒服が車の前で立ち止まり、そのままドアを開く。
「では、こちらへ。」
「…」
ネロはそのまま無言で車へと乗り込む。
中には2人ほどの人物がいたが、特に気にすることもなく窓から外を眺めていた。
「…では、行きます。」
「なるべく早く頼むぜ。」
運転手の言葉にネロはそう呟いてそのままヘッドホンを取り出す。
そして、耳につけるとそのまま爆音で音楽を流し始めるのであった。
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「…うう〜、どうしよう…」
大佐は完全に焦っていた。
1時間後にはこの鎮守府に、元帥が言っていた人物がやってくるのだ。
しかし、後々話を聞いてその人物が海外の人だったり男性だったり軍属ではなかったりと、かなり自分の予想とは違う形でことが進んでいるため、頭の中が混乱しているのだ。
「…部屋の準備はできてるし、大丈夫だよ。」
「で、でもさ!相手はこの戦いを終わらせることができるぐらい凄い人なんだよ!?なんか粗相があったらまずいよ!!」
休憩中の秘書艦の時雨がそう告げても、大佐はそんな風にテンパりながら大声を張り上げる。
隣でそれを見た、時雨の姉妹艦である夕立がため息をつく。
「提督、落ち着くっぽい〜。」
「!…お、落ち着いてるわよ!」
夕立の言葉に反論するものの、むしろそれが落ち着いていないことの証明になっている。
時雨と夕立は、2人で苦笑いを浮かべるしかなかった。
「…それにしても、男の人ってなかなか会う機会がないから凄い楽しみだね。」
時雨がそう言って、一口お茶をすする。それに続いて、夕立は茶菓子を食べる。
そんな2人にジト目で視線を向ける大佐。
「…私は胃がキリキリと痛むけどね。」
「頑張ってよ、提督。」
大佐の言葉をそんな軽口で一蹴する時雨。
既に、彼女はまだ見ぬ来客に想いを馳せていた。もちろん、どんな人物なのか気になる、と言う意味で。
「…はぁ〜、誰か変わって〜…」
大佐はそう力なく呟き、机に伏す。
そんな大佐を少し、可哀想な目で見つつ、時雨達はそのまま休憩を取るのであった。
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「…ここがそうなのか?」
呉鎮守府の正門の前、ネロはただ小さくそう呟いて辺りを見渡す。
軍の施設だと聞いたのに、意外にも警備や門番のような人物は立っておらず、なかなか自由に出入り出来るらしい。
「…確か、ここの司令に会えば良いって話だったな。」
ネロはそのまま、敷地の中へと足を踏み入れようと歩き始める。
しかし、その時1つの気配を感じた。
「!…」
ネロはそちらへと視線を向けると、既にその気配は刀を振り上げながら距離を詰めてきていた。
急いで自分が持っていた大きなケースを盾替わりに構える。
金属音が辺りに木霊する。
「…へぇ、不意打ちだったのにやるじゃねえか。」
そう言って、ニヤリと笑みを浮かべるその人物。左目には眼帯を付けており、刀は近未来のデザインのものを所持していた。
「…日本のサムライは正々堂々って聞いたが、嘘だったのかよ。」
ネロは面倒くさそうに呟いて、ケースで思いっきり刀を押し返す。
そのまま相手は少し距離を取るように軽く跳ぶ。
「…俺の名は天龍。フフフ…怖いか?」
その相手、天龍はそう呟いてネロへとその満足そうな笑みを向ける。
対するネロは、少しばかり面倒くさそうな表情を浮かべる。
「…ここではいきなり斬りかかるのが挨拶なのか?」
「お前が提督の言ってたやつだろ?だから腕試ししたんだよ。」
天龍はネロの質問に対して、なんとも楽しそうな笑顔でそう答える。
その悪戯っ子のような表情を見て、なんだかネロは怒る気にもなれずにただため息をつく。
「…そうかよ。さっさとここの司令官に話を付けたいんだ。」
ネロはそう言って、天龍の横を通り過ぎて建物の方へと歩き続ける。
しかし、天龍はそんなネロの右手を掴んで引き止める。
「まあ、待てよ。話だけでも…って…?」
天龍はその時に気がつく。
今掴んだネロの右手が、普通の感触とは違うのだ。
天龍はその視線を少しずつ下ろす。
そして、それを見た。
明らかに異常な形をしており、おおよそ人間の手とは思えないほどの禍々しさを持つ右手。
ネロはしまったと言った表情を浮かべて頭を軽く抱える。
「お前…その右手…」
「こんな早々バレる予定じゃなかったんだけどな…」
天龍が言葉を失っているのを見て、ネロは鼻の頭をかく。
だが、それと同時に、多くの人間からは恐怖の象徴と見られてもおかしく無い。
だからこそ、極力人前でそれを出すつもりはなかったのだが。
天龍はその右腕を凝視したまま固まっている。
「…もう良いだろ?離してくれよ。」
ネロはそう言って、その手を振りほどこうとする。
だが、その直後、その動作はキャンセルすることになる。
「…ちょ、超カッケェ!!!」
「……何?」
ネロはあまりの唐突な展開に、そんな声を上げることしかできなかった。
天龍はその目をキラキラと輝かせており、テンションが一気に上がっているようだ。
「これあれか!?特殊能力とかあるのか!?」
「おい…待てよ、何だいきなり?」
あまりのテンションの落差にネロはもはやついていけず、何も返答できなくなっていた。
対する天龍は、ネロの右腕を隅々まで凝視しながらただ興奮気味に色々と質問を投げかける。
「スゲェ…本当にこんな人間が居たんだな…!この青く輝いてるのは何なんだ!?」
「…日本ってのはこんなやつばっかりなのか?」
ネロは呆れ返ったように呟き、軽く天を仰ぐ。
フォルトナから十数時間、既に彼は疲れ切っていた。
最近1週間更新が出来てなくて本当に申し訳ないです!
気長に待っていただければ幸いです!
本当に後は書くだけなのに…
なかなか時間が取れなくて…泣