Devil may cry ~Fleet Collection~ 作:縁(みどり)
夏風邪を引きました。
しばらく家で養生して、ふと気がつきました。
更新が空いているじゃないか…
というわけで申し訳ないです…
続きどうぞ!
「おお、やってるやってる!」
夕張は額に手をかざしながら、ネロと天龍の演習を見る。2人は拮抗した状態から動かない。
隣でぼんやりとした表情を浮かべた空母棲鬼は、ただ遠くに見えるネロを見つめていた。
「…あれがネロ。」
空母棲鬼は呟いて、遠くの方を見据える。
銀色の髪、黒いロングコート。背中の大剣に、歪な形の右腕。
「…どっちが勝つかしら。」
夕張は少し悩んでいるような表情を浮かべる。
その横で、真っ直ぐネロをみる空母棲鬼は、少し笑っていた。
「…ネロが勝つ。」
「ネロが…でも、海上の戦闘にはまだ慣れてないみたいだし、分からないわよ?」
夕張はそう呟いて、天龍のほうを見る。実際、天龍の方が場慣れはしているはずである。
しかし、空母棲鬼は確信を得ていた。
(むしろ、ここで勝てないなら私にも勝っていないわよ。)
頭の中でそう考えて、静かに見つめるのであった。
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「行くぜ!」
天龍はそう叫びながら、腰の鞘から刀を抜き、そのままネロに突進する。
ネロはそれを見て、軽くため息をつく。
「…来い!」
ネロはそう呟いて、軽くジャンプをする。
だが、いつもの地面とは違い、明らかにジャンプの高さが低くなっている。
水だから力が入れられないのか、それともこのブーツのせいか。
「フフ…どうやら、まだ慣れてねえみたいだな!」
「そりゃそうだろうよ…」
天龍はニヤリとしながらネロに突きを放つ。
その先端が、ネロに到達しそうになると同時に、ネロは右腕で身体を庇う。
右腕に刀がぶつかった瞬間、甲高い音が辺りに響き、天龍にはかなりの衝撃が伝わった。
「ぐっ…!?」
天龍はそのまま身体を支えきれず、後方へと吹き飛ばされる。
軽く数メートルは吹き飛ぶが、なんとか体勢を維持して、倒れることはなかった。
少し体が痛むのを感じながら、軽く深呼吸をして心を落ち着ける。
「…どういう仕掛けになってるんだそれ?」
天龍はそう呟いて、ネロの右腕を強く睨みつける。
ネロは、それを聞いて、右腕に目を移す。いつも見慣れたこの右腕だが、やはりこの右腕がどうしてこうなったのかはわからない。
「…悪いが、種明かしはしてやれないな。」
ネロはただそう言って、左手でレッドクイーンを持つ。
先ほど蒸したエンジンによって、レッドクイーンは刃に炎を纏っている。
「…なんつうか、随分と反則野郎だな。」
天龍はそう呟いて、主砲を1発ネロの方へと放つ。
しかし、それをネロはただ軽く避けるだけで特に撃ち落とすことはしなかった。
「…砲弾も避けちまうし、右腕はほとんどの攻撃を防いじまう。」
天龍はそう呟いて、ニヤリと笑う。
その燃えたぎるレッドクイーンを、ただぼんやりと眺めながら。
「…んじゃあ…さっき言ってた、対策ってやつをやるか…!」
天龍はそう呟いて、海面に向けて主砲を向け、そのまま砲弾を打つ。
「?…」
ネロはその動作に疑問を覚え、天龍へと鋭い視線を向ける。
その瞬間、海中から大きな爆発音が聞こえ、あたりには煙が立ち込める。
「!…なるほどな。そういうことかよ。」
煙のせいで、あたりが全く見えなくなってしまった。
それはつまり、煙幕を張って視界の見通しを悪くし、行動を制限しようということ。
ネロは全く焦ってはいなかったものの、なかなかいい戦法にニヤリと笑みを浮かべていた。
「…悪いけど、俺の電探はこういう時には役に立つんだぜ。」
天龍はただ、静かにただあたりに意識を集中させる。
ネロがいる位置は、ここからたったの20メートル。
「…フフフ…!行くぜ!!オラオラァ!!」
天龍はそう叫んで、主砲を全門斉射する。
大きな音が響き渡り、煙の中心へと砲弾が突っ込んで行く。
それを見届けたと同時に、天龍はすぐにその場から離れ、煙の中を動き回る。
(せっかくの煙幕なのに、こっちが同じ場所に留まっちまったら意味ねえよな。)
天龍はそう頭の中で考えながら、また主砲を放つために神経を集中させる。
どこにネロがいるかを、しっかりと感覚として認識しようとする。
しかし、先ほどの地点にはネロの気配がなかった。
ネロはどこへ?
「…まさか…!」
その瞬間、背後から明確な敵意を感じる。
天龍はすぐに刀を抜いて、後ろへと振り抜く。
その瞬間、ネロのレッドクイーンとぶつかり、つばぜり合いになる。
「…煙幕すら効かねえのかよ…」
「…生憎、戦いには慣れてるんでな。」
その状態のまま2人は睨み合う。
どちらも退かない、拮抗した状態。
「…チッ!」
天龍はこのままでは埒があかないと考え、そのまま強く刀でネロを押し返す。
ネロはそれを受けてもなお余裕があり、倒れることなくそのまま少し天龍から距離を取るだけにとどまっていた。
「…なら、正々堂々勝負といくか。」
天龍は、煙幕などの小細工に頼らず、真っ向勝負を仕掛けようと、刀を正面に構える。
ネロはそれをみて、一度背中にレッドクイーンをしまい、そのままエンジンを蒸す。
先ほどよりも強い火力で、レッドクイーンが燃えたぎっている。
「…なるほどな。」
ネロは、かつてダンテと戦った時のことを思い出していた。
あの時、自分は全力で戦ったにも関わらず、ダンテは手心を加えたままで自身を圧倒した。
その時のダンテの心境を、たった今理解したのだ。
(…こりゃ、退屈だな。あの時、ダンテから閻魔刀を奪わずに行かせた理由もなんとなく分かった気がするぜ。)
フォルトナの一件を、あれだけ引っ掻き回したのも、自分が楽しむためと考えればなかなか納得できる。
あくまで、彼は遊んでいたのだ。
「ぼうっとしてると、やっちまうぜ!」
天龍はそのまま、切っ先をネロへと向けて、勢いよく突進する。
天龍の後ろには、スピードを上げたことで生じた水飛沫がまるで壁のようになっていた。
ネロはそれを見て、軽く笑みを浮かべる。
「そんな単調じゃ負けてやれないぜ?」
そう呟いて、ネロは思いっきりレッドクイーンを海面に叩きつけるように振り下ろす。
その水飛沫で天龍は視界を遮られる。
(!?…まずった…!?)
その瞬間、天龍は足元に衝撃を感じる。そのまま勢いよく前へと体勢を崩し、顔面から海にダイブする。
ズザァ!と水面の音が辺りに響く。
「…結局、ロクな演習にならねえじゃねえか。」
ネロはそう呟いて、ただ大きくため息をつく。
そのまま、天龍のもとへ歩み寄る。
「…畜生…」
天龍は悔しそうに呟いて、歯をくいしばる。
そんな天龍に、ネロは呆れたような目線を向ける。ある意味、天龍1人で楽しむだけ楽しんだようなものである。
ネロはそんな天龍に向かって手を差し伸べる。
「…お前…」
天龍はそれをチラと見て、そう呟く。
ネロは黙って、その左手を天龍に向けたままである。
天龍は戸惑ったような表情を浮かべていたが、しばらくするとネロの左手を掴む。
そして、その口元をニィ、と吊り上げた。
「…隙あり!」
天龍はその左手を勢いよく引き、ネロを引き倒す。
ネロは不測の事態に、体勢をそのまま崩してしまう。
ネロは海面に思いっきり叩きつけられるように倒れこむ。ネロは急いで体を翻して仰向けになるが、天龍はそのネロに覆い被さる。
「へへっ!これでおあいこだぜ!」
天龍は嬉々とした表情でネロにそう告げる。
ネロはしばらく呆気にとられていたが、しばらくすると大きなため息をつく。
「あいこって…お前が2回倒れたんだからお前の負けだろ…」
「最初の1回はノーカンだよ!だから、おあいこだぜ!」
天龍は満面の笑みでそう言うのに対して、ネロは明らかに面倒臭そうな表情を浮かべていた。
びしょびしょになったロングコートを、どうするか頭の中で考えるのみであった。
皆さま、夏は暑いですので、エアコンなどの使用はお気をつけください。
僕は長引いた夏風邪をさっさと治さないと…