Devil may cry ~Fleet Collection~ 作:縁(みどり)
続き行きます。
「ここが、工廠なのです。主に、艦娘の建造や、装備の生産をしているところなのです。」
電はダンテに事細かに説明をしていく。途中で、色々な艦娘に出会ったのだが、確実に話題はダンテのことになった。やれ、その後ろのイケメンは誰だ、だの。やれ、なぜ男がこんなところをうろついているだの。その度に電はため息をつき、ダンテは軽くそれをいなしていた。
「へぇ…ここで装備やらなにやら作るのか。それに、艦娘の建造…か。」
ダンテはそう言いながら、興味深そうに艦娘の建造装置を見ている。右の方に数値を入力するボタン、その下に開始と書かれたボタンがあった。その姿は、好奇心旺盛な典型的な男子、といった感じであった。電は少し微笑んでいた。
「勝手に触っちゃダメなのですよ?」
電が釘を刺すようにつぶやくと、ダンテはやれやれと両手を軽く上げた。それを見た電は、クスクスと笑いながらダンテに歩み寄っていた。
「…ほう、なるほど。」
ダンテは一通り見終えたのか、その装置を軽くノックしていた。そして、電の方に振り返ると、こんなことを尋ねた。
「なあ、この中には何がいるんだ?」
「えっ…?」
ダンテの質問に、思わず戸惑う電。そんな電を尻目に、ダンテはそのまま続けた。
「中から、何かの気配がするもんでな。」
ダンテはそう言いながら、電に微笑みかける。電は、初めてこの装置を見た人間にそこまでわかるとは到底思っておらず、純粋に呆気に取られていた。しかし、こんな風に質問をされている以上、答えないわけにはいかない。
「…中には妖精さんがいるのです。装備も、艦娘も、妖精さんが作ってくれるのです。」
「…妖精、ね。」
ダンテはそう言って、装置の中をどうにかして覗けないか、試し始めていた。それは、電の言葉を信じられないといった様子であった。電は苦笑いを浮かべながら、ダンテを見守る。
ふと、電はそのダンテから装置に目を移す。そして、今までのことを思い出す。
気が付いたら、研究所の中で白衣を着た人に囲まれていた。その人たちは、口々に成功と呟いていたのを今でも覚えている。しばらくは艦娘として戦うことを教え込まれ、訓練に明け暮れていた。
ある日、私は司令官のもとに連れてこられた。今でも優しい言葉をかけてもらったことを覚えている。司令官のために、秘書艦という大変な仕事と並行して、近辺の海域への出撃をこなした。そして、戦果を挙げれば建造をして、新しい艦娘が増え、司令官の階級は上がっていく。そして、またその新しい戦力で、新たなる海域に向けて進軍する。今までも、これからも、ただ戦いに駆り出されるために生きていく。激化する、深海棲艦との熾烈な戦い。その戦いに終止符が打たれるまで、私たちはこれからも戦い続けるのだ。
そこまで考えて、急に不安になった。こうやって、司令官のために戦闘を繰り返す艦娘は、深海棲艦と何が違うのだろうか。普通の人間から見て、私たちはいったいどんなものに見えるのだろうか。
電は唇をかみしめていた。
「…おい、どうした?」
「!…は、はいっ!」
突然、ダンテは電を呼ぶ。それに対して、電はビクッと体を震わせながら、返事をする。
ダンテは少し微笑みながら、電の方を見る。
「なぁ、腹減らねえか?」
電はその言葉に、小さくあっ、とつぶやいてパタパタと歩いていく。
「すみません、食堂の方に行きましょうか!」
電はそう言いながら、笑顔でまた先を歩き始める。ダンテは小さく、hmm…と呟く。
(…今はまだ、俺が何を言っても意味はなさそうだな。)
ダンテは少し困ったような笑みを浮かべながら、電の後をついていくのであった。
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「…ダ、ダンテさん…?」
「あぁ?」
電の言葉に、少し気だるそうにそう返すダンテは、不機嫌そうな表情であった。それもそのはず、ダンテは食堂に着いた途端、今日の食事担当のうちの一人である曙に、いつもの生ハム&ガーリックポテトミックススペシャルLサイズのオリーブ抜きをリクエストしたのだが、「はぁ?」と言われ、完全に断られてしまったのである。
「今日は金曜日なので、メニューはカレーライスだけなのです。」
「…あぁ、さっきも聞いた。毎週カレーなんだってな。」
ダンテはそう呟きながら、少し面倒臭そうな顔をしていた。
(これから毎週金曜は、憂鬱になりそうだな。)
と、頭の中で呟いた。ダンテにとっては、ピザがないというのはかなり厳しい状況であった。誰だって、自分の好物を取り上げられたら不満を持つだろう。それはダンテも同じである。とにかく、ピザは調達する方法を考えなければならない。
と、そういえばもう一つ大事な存在を忘れていた。
「…待てよ。俺はさっき、甘味処もあるって聞いたぞ。」
「はい、間宮さんと伊良湖さんがいつも作ってくれてるのです。」
電はダンテの質問にキョトンとした顔で答える。ダンテが相当真剣な眼差しでこちらに質問してきたからである。その表情に、電は何か自分の心の中に不安な気持ちが募っていくのが分かった。息を飲み、次のダンテの言葉を待つ。
そして、ダンテの重い口が開く。
「…ここにはストロベリーサンデーはあるのか?」
「…ス、ストロベリーサンデー?」
電はダンテの質問に思わず素っ頓狂な声を上げてしまっていた。あまりにも重苦しい空気の後に、あまりにも軽い内容で、電はどっと疲れが押し寄せてくるのを感じていた。
「…その様子だと、無いみたいだな。」
ダンテはさらに残念そうな表情でつぶやく。先ほど、大淀や電をいじっていた時の笑顔は完全に消え、今や哀愁さえ漂わせている。電は、苦笑いをするしかなかった。
「電~!」
と、そんな風に突然声が聞こえる。ダンテはその声が目の前の電に似ていたので、思わずそちらの方をみる。そこには、電と顔も名前もそっくりな、雷がいた。
「雷ちゃん!さっきはありがとうなのです!」
「ふふん!もっと頼って良いのよ~!…それで、こっちの人がさっき言ってた?」
「はい、ダンテさんなのです。」
雷はそう言いながら、ダンテの方を見る。ダンテは少し笑顔になり、テーブルに両足を組みながら乗っけた。
「へぇ、日本人はなかなかお嬢ちゃんが多いな。」
ダンテのその顔はすでに先ほどまでの不機嫌な様子はなく、ニヤニヤとした余裕のある表情であった。雷はダンテの言葉にため息をつく。
「…それはどうも。なんか軽い感じの人ね。」
「わ、悪い人では無いのですよ?」
雷の言葉に、電が少し慌てたようにフォローを入れる。ダンテはそんなことを気にもせず、ただ辺りをぐるりと見回す。
ここには多くの艦娘がいる。先ほどダンテが出会った艦娘もいるのだが、それでもまだ全員では無いと、電は言った。この場にいるのはすべての艦娘の中のほんの一部らしい。
ダンテは建造というシステムを思い出して、少し考え込む。
目の前のこの少女たちは、先ほどの装置から作られた人間だという。モリソンから事前に聞いていた情報では、艦娘とはかつての日本海軍の艦の魂をもつ人間とのことだ。おそらく、顔や制服が似ている者同士は、その軍艦の同型艦の魂を持つ可能性が高いということなのだろう。日本は、バイオテクノロジーどころか、精神さえも自由にいじれるサイコセラピーまでも自由に扱えるようになったということか。
そして、一番気になったことが一つ。それは、先ほど武蔵と大和と出会った時のことであった。
なぜ、艤装と呼ばれるものをつけた少女たちから、悪魔の匂いがするのだろうか。
そこまで考えて、今はそんなことを考えても仕方がないとダンテは頭を掻く。結局、今は目先の問題を解決するほかないのだ。まずは、ピザとストロベリーサンデーの調達をやらなければならない。
「?…ダンテさん?」
ダンテは無言で席を立っていた。それを見た電は不思議そうな表情を浮かべた。
「…とりあえず、近くにピザ屋がないか探してくる。俺にとっちゃ少なくとも死活問題だ。」
それを聞いた電が少し驚いたような表情を浮かべ、すぐにクスクスと笑いだした。そして、そのまま座っていた席を立つ。
「では、電もお付き合いするのです。」
「ん?…頼む。」
ダンテは断ろうとしたが、よく考えてみれば土地勘も全くない上に、ここは異国の地である。ついてきてもらった方が良いだろうと思ったのであった。
「気をつけていきなさいよ~。」
雷はそう言って、電を送り出す言葉を投げかけた。それに、電は笑顔で答え、食堂から出ていく。ダンテは少し肩をすくめて、そのまま食堂のドアを開く。
「ねぇ、ダンテ。」
と、後ろから雷がダンテを引き止める。ダンテは顔だけをそちらに向けて、雷の次の言葉を待っていた。
「…電、何か言ってた?」
そう、心配そうな表情でダンテに問いかける。ダンテは、少しニヤリと笑ってこう答えた。
「何も?だが、焦らなくてもいつかわかるさ。」
バタンと閉じたドアが、雷を取り残した。雷はその言葉を聞いて、怪訝な表情を浮かべていた。
そのいつかは、いったいいつ来るのだろうか、と。
いくつか伏線を出して、今回は終わりです。
今後も、艤装や艦娘については独自設定を盛り込んでいく形になると思います。