Devil may cry ~Fleet Collection~ 作:縁(みどり)
お待たせしました〜!!
新章突入でございます!
視察
大佐の鎮守府のそばの道路を、一台のリムジンが走る。
主に、要人の鎮守府間の移動に使われる車であるため、多くの軍人が見れば、そこに乗っているのは大本営の人間であるとすぐにわかる。
その中に乗っているのは、技術局長と呼ばれる、この軍の兵器を開発している人間である。
「…技術局長。もうすぐ、大佐殿の鎮守府です。」
運転手のそんな言葉を聞きながら、技術局長は窓の外を見る。目的地である、大佐の鎮守府がそこには見え始めていた。
今回の視察の建前は、この鎮守府にて保護された艦娘たちの被害状況の確認である。
本当のところは、こうして自分が大本営から離れれば、ダンテが動き出すかもしれないと踏んだからである。
どんなデータを取るにも、まずは反応を促さなければ意味がない。ダンテが動かなければ、どうやってもダンテを解析するのは不可能なのだ。
そんな思惑を表に出さないように、技術局長は荘厳な雰囲気を醸し出していた。
「…ここら辺でいい。降ろしてくれたまえ。」
「わかりました。」
運転手にそう告げる技術局長の顔は、凶悪な笑みを浮かべていた。
ダンテのデータを確実に解析してやるという意思で、技術局長は動いていた。
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「…ね、ねぇ…時雨…」
鎮守府の正門前にて、大佐は力なく呟く。側からみれば誰もが大佐に対して苦笑いを浮かべるであろうほどにガチガチになっていた。
それに対して、隣に立つ時雨は呆れたような目線を向ける。
「…言いたいことは分かってるよ。でも、そんなに緊張することでもないはずだよ?」
「…どうしよう…何か技術局長に粗相でもしちゃったら…私クビになるのかな…?」
大佐は涙目になりながらそう呟く。
今回の視察は、鎮守府で保護した艦娘の被害状況の確認であるため、大佐の素行などをチェックされることはないのだ。
大佐があまりにも怖気付いた表情だったので、時雨の隣の夕立も呆れたように苦笑いを浮かべる。
「そんな感じだと、本当に技術局長に怒られてクビになっちゃうっぽい。」
「そ、そうだよね…」
大佐は少し、不安になりながら空を見上げる。
(はぁ…空はこんなに青いのに、心の中は雨模様…)
大佐は心の中で小さく呟いた。
本来、この鎮守府は視察などが来る場所ではないのだ。
前線からは離れていて、まるで上官の興味を引くものなどないはずの場所。
全ての原因は、あの娘たちに対して、あれだけ酷い扱いをする提督の下に、3人を帰したくないという自分の意思である。
だからこそ無意識にハンコを押したというのに、今になって胃が痛む。
大佐は天を仰ぎながら、軽く目に涙を浮かべていた。
「…視察なんて嫌よ…」
大佐は小さく、それでいて嫌々な気持ちを前面に押し出して呟いた。
結局、技術局長がやって来るまで、その不安げな面持ちが崩れることはなかった。
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ここは、艦娘寮の天龍と龍田の部屋である。
2人は青いコートの男と戦った時に負った傷を癒すために、しばらくドックへ入っていた。
龍田はまだ入渠が終わらないものの、天龍は早々と高速修復材を使って入渠を済ませ、今は自室にて療養中である。
天龍は、自分のベッドに寝転びながら、あの時の青いコートの男の言葉を思い出していた。
「…俺の魂が何を言ってるかだと…?」
そう呟く天龍の表情は、少し不満げな面持ちであった。
軽く天井を見上げるが、そこには何もない白が広がるのみ。手を高く伸ばしてみるが、決して届かない。
しばらく沈黙して、頭の中で考える。
自分の魂が何を叫んでいるか。
自分の魂が何を求めているか。
天龍は、伸ばした拳を力強く握りしめる。
「…そんなの…決まってんだろ。」
天龍はそう言って、勢いよく身体を起こす。
そして、ベッドから這い出て、立ち上がる。
パジャマは上下ともに可愛らしいピンクの花柄である。
いつもの服装へと着替えるために、タンスの前に立って両手に力を込める。
「…もっと力を。」
天龍はそう呟いて、両目を力強く閉じるのであった。
陽は少しずつ、頂点を目指し始め、天龍を照らしていた。
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大佐は、目の前のその男に戸惑うばかりであった。
鎮守府に着くなり、軽く挨拶を済ませて、執務室への案内を申し出てきた。さらに、執務室に入るなり、すぐに書類を漁って、この鎮守府で保護した艦娘のデータを参照しているのだ。
こうも仕事熱心な人だと、今までやきもきしていたのがバカらしくなってしまい、大佐は少し気を緩めていた。
と、技術局長は不意にその視線を書類から大佐へと移す。
「その保護している艦娘達はどこにいる?」
「はひ!えっと、3人とも入渠ドックの集中治療室にいます!」
そんな大佐へ技術局長は突然声をかけるので、大佐は驚きのあまり変な声を出してしまった。
そして、自分がなんと恥ずかしいことをしているのか冷静に考え、大佐は少し俯いてしまった。
しかし、そんな大佐のことなど気にもせず、技術局長は話を続ける。
「…早速案内してくれたまえ。」
「…あの…すみません…わかりました…」
大佐は耳たぶまで顔を真っ赤にしながら、技術局長の言葉に応える。
大佐の受難は、まだ始まったばかりである。
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大佐が技術局長とそんな会話をしている間、自室に篭っていたネロは、ソファに腰掛けていたにも関わらず、少し疲れたような表情を浮かべていた。
原因は、至ってシンプルである。
「…俺の肩に乗るなよ。」
「良いじゃないか。技術局長を見張るのにはうってつけのメンバーだ。それに、僕たちはそんなに重くないだろう?」
それは、数匹の妖精がネロの肩に乗っていたからである。
ここ最近、技術局長を見張るためにネロの肩は常に満員状態であり、入れ替わり立ち替わりで様々な妖精がネロに乗っかっていた。妖精同士のコミュニケーションは念話によってできるため、誰かが対象物を発見すれば、それをネロの元にいる妖精に伝えるのだ。
ネロは純粋に肩に乗られるのは迷惑だし、非常に疲れるとは思ったが、これも仕事のうちだと考えて、今は享受している。
流石に、肩でカップ麺を食べ始めた妖精と、いきなり眠りこけ始めた妖精は振り落としたのだが。
「その数でいられると邪魔なんだよ。」
「まあ、そのうち気にならなくなるさ。」
ネロの言葉に、妖精はただ笑いながらそう返す。
妖精達の重さは、はっきりいえば全く無いと言っても過言では無い。今のネロには4人の妖精が乗っているが、重さほとんどは感じない。肉体的には、そこまでの疲れはないのだ。
だが、そこに妖精達がいる、という存在感がネロを精神的に疲れさせている。
不意に、妖精の1人がパッと顔を上げて、ネロへと視線を向ける。
「…ネロ、奴が動いたよ。ドックに向かうらしい。」
「…そうかよ。なら、そろそろ俺たちも動かなきゃな。」
ネロはそう言いながら、ソファから立ち上がり、部屋のドアへと歩み寄って行く。その表情は複雑なものであった。
ネロは、事前に鎮守府の人間から技術局長の話を聞いていた。自分や妖精達とは別の視点の意見を取り入れたかったからである。
結果としては、誰もが口を揃えて、技術局長は大本営ではかなりの実力者であり、黒い噂など聞いたことがない、と答えた。
だが、それに対して妖精達は誰ひとりとして、その話を信じようとするものはいなかった。
それが意味することが一体何なのか、今のネロにはまだわからない。
「…何か裏がありそうだな。」
ネロはそう一言呟いて、部屋を出る。
そして、入渠ドックの方へと歩みを進めるのであった。
というわけで、約3週間ぶりの投稿でした…!
ヤバイヤバイ、あともう少しで1年経ってしまう…!
そして、100000UA!!
少しずつじわじわと上がってきて、メチャメチャ励みになります!!
ありがとうございます!!
もうしばらくお付き合いください…!!