Devil may cry ~Fleet Collection~ 作:縁(みどり)
さて、続きでございます!
覚醒といっても、別に能力に目覚めるわけではないです!
___暗い。
何も感じない。
冷たい海の中、身体が震える。
海の中…?
どうして海の中にいるの?
私は…
私は、深海棲艦。
艦娘達を、沈めて…鎮めて…しずメて…シズめテ…
ソウダ。
私ハ空母棲鬼。
今ノ私ガ異常ナンダ。
コウヤッテ、人間トシテ生キテイル今ノ私ガ。
なのに、何故だろう。
今まで戦いに身を置いて、多くの艦娘と戦ってきたはずなのに、今はそれを心の底から拒んでいる。
それは、ネロと出会ったこと。
それは、大佐に名前を貰ったこと。
ジャア、今ノ私ハ偽物?
__________
「!…ハァ…ハァ…」
空は身体を勢いよく起こして、そのまま肩で息をする。
治療用ベッドの軋む音が響く。
空はその音を聞きながら、少しずつ脳が覚醒していくのを感じていた。
時計を見ると、未だ時刻は深夜の2時。
空はどっと体が疲れるのを感じた。
「…うう…頭痛い…」
空は、頭を抑えながら色々と思い出す。
なんだか、嫌な夢を見ていた気がする。それも、あまり思い出したくないようなタイプの。
そもそも、何があって自分はここに寝ているのだろうか。
確か、鎮守府に視察が来るということで、部屋から出てはいけないと言われて、それを無視して外へ出て、大佐を見つけて…
そこまで考えて、空は自分がどうなったのかを思い出した。
「…そうだ、あの化け物。」
空は1人でそう呟いて、自分の身体を見る。
確か、腹部を貫かれていたはずだ。そのあと、確か投げ飛ばされたりしたはず。
身体中に包帯が巻かれている。
「…痛くない…」
まず、頭で考えられたのは、そのことだけであった。巻かれている包帯にはかなりの出血の跡があるのに、痛みどころか違和感すら感じない。
右手で軽くさすって見ても何も変わらない。
それは、傷口が既にふさがっているということになる。
「…どうなってるんだろう、私の体…」
空はそう呟いて、ただぼんやりと目を閉じた。
もうあんな怖い夢は見たくないと考えながら。
__________
「…お前らの言う通りだったな。」
ネロはそう肩に乗る妖精に向かって呟く。
妖精は、その言葉に苦虫を噛み潰したような表情を浮かべて返答する。
「…ネロがいなかったら、この鎮守府は無くなってしまっていたかもしれない。被害は最小限に抑えられた。」
「…そうは思えねえよ。」
ネロはそう言って、悲しそうな表情を浮かべた。
空があれだけ傷ついたのだ。鎮守府の被害で換算すれば全く問題はないのだろう。
いや、大佐の心に深い傷をつけたのだから、かなりの被害と考えられる。
それに、ネロ自身にも罪悪感が残る。
「…そうだ。約束はしたからね、ダンテの居場所を教えようか?」
妖精はそう言ってネロにその目を向ける。
ネロは、何も言わずにただぼんやりと前を見る。
今このまま、この鎮守府を離れて、ダンテを探しにいくことが、この仕事を終わらせることになるだろうか。
恐らくだが、ダンテは『もうギブアップか?』なんて言うのかもしれない。
「…いや、まだいい。」
今は、とにかくこの鎮守府のために動く。ダンテに会うのはそれからでも遅くはないだろう。
それに、ダンテの兄であるバージルの動向も気になる。
「…面倒なことになるかもな。」
ネロはそう呟いて、軽く空を見上げた。
月明かりは、なぜか異様なほど明るかった。
__________
「…ぁ…」
集中治療室で眠っていた大潮は、静かに目を開けた。
目の前に広がるのは、白い天井。
それが、何を意味するのか。
「…負け…ちゃったのかな…」
大潮の記憶は、あの戦艦レ級に殺されかけたところで途切れている。
つまり、ここは鎮守府の入渠施設や集中治療室なのだろう。
そして、敗北したら…
「ヤダ…司令官…怒らないで…」
大潮は涙ぐみながら布団に顔を埋める。
また、司令官に怒られる。
また、思い切り身体を痛めつけられる。
また、自分だけでなくみんなが傷つく。
そう思うと、もうこの布団から出るのは嫌だった。
「あっ、もしかして起きた?」
と、隣からそんな声がしたのを聞いて、大潮は布団から少しだけ顔を出す。
声の方を見ると、黒髪の長い髪の女の人が1人。
なんだか、どこかで見たような気もするが、知り合いではないと思う。
「2人ともずっと起きないからみんな心配してたよ~。でも、まさか私がここに来てから目を覚ますなんて。」
目の前の女の人はそんな風に言って、笑顔を浮かべる。
2人とも…ということは、もう1人ここに?
大潮は反対側の隣を見る。そこには、同じ艦隊の満潮が眠っていた。
「満潮…!」
大潮は心配そうにそう呟く。
だが、満潮はまだ目を覚まさない。
「…どうやら、貴方だけみたいだね。」
隣の人はそう言って、少し寂しそうな表情を浮かべていた。
大潮は、気になっていたことを聞こうと覚悟を決める。
「…あ、あの…お姉さんは誰ですか?」
大潮の言葉に、その女の人はただ困ったように笑う。
それが何を意味するのか、大潮には分からなかったのだが。
「私は、この鎮守府のみんなからは空って呼ばれてる。」
「空…さんですか。」
大潮は、その人物が艦娘ではないということだけ理解した。
そうなれば、残る疑問は1つ。
「あの…ここってどこの鎮守府なんですか?」
その質問に丁寧に答えた空は、そのまま自分のベッドについていたナースコールのボタンを押すのであった。
__________
「大潮!!」
早朝、朝潮はその報せを聞いて真っ先に駆けつけた。
ずっと目を覚まさなかった大潮が意識を取り戻したことは、もしかするともう二度と起きないのではないか、という不安を拭い去ってくれた。
「朝潮姉さん!」
大潮も久々に会った気がする朝潮と抱き合いながら再会を喜ぶ。
そんな2人を見て、空はなんだか嬉しい気持ちがこみ上げて来た。
「それにしても、空ちゃん凄いね。もう復活したの?」
と、夕張が言って身体の調子を見てくれている。
どうやら、腹部の傷は完全にふさがっているだけでなく、もはや傷跡すら残っていないらしい。
空はそれを聞いて、首をかしげる。
「…分からないけど、なんかおかしいのかもね。」
「それで済めばいいけどね…」
夕張は少し困惑しながら空の言葉に返答する。
何かおかしいのは理解しているのだが、問題はどこがどうおかしいのかが全く不明という点である。
その違和感が、何が重大な事件を引き起こす可能性だってある。
だが、怪我がない以上、集中治療室にいる理由もない。
夕張は、とにかく、と前置きして両手を後ろへと回しながら呟く。
「大潮ちゃんと空ちゃんは完全に退院ってことになるわね。」
夕張がそう言ったと同時に、朝潮は目を輝かせて大潮の両手を握りしめる。
「大潮!ここの提督に挨拶しにいこう!凄くいい人たちばっかりなのよ!」
朝潮は大潮の手を引いてそのまま執務室へと走って行ってしまった。
それを、空はぼんやり眺めていた。
自分に姉や妹がいたら、あんな感じなのか、と。
もちろん、そんな存在がいないということは理解しているのだが。
「…さ、空ちゃんはどうする?」
夕張はそう言って、軽く笑みを浮かべる。
それは、せっかくの退院なので自由に動いたらどうか、という提案。
空は少し悩んだ様子を見せて、こう告げる。
「んー、じゃあ、提督のところへ行ったあと、ネロのところにいこうかな。」
そう呟いて、空は大きく伸びをする。
それを見て、夕張は安心したように微笑む。
「…提督、すっごく心配してたから喜ぶよ。それに、ネロもね。」
「そうなんだ…ちょっと嬉しいかも。」
空はそう言って、軽く笑う。
夕張もそれを見て、笑いかえすのであった。
満潮はもう少しかかるのです…!
空ちゃんの身体に一体何が…!?
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