Devil may cry ~Fleet Collection~ 作:縁(みどり)
1ヶ月以上あいてしまった…
本当にすみません…
というか、忘れられてないかな…?
いや、そんなことは関係ない!
続き行きます〜!
いよいよ、空に…
「大潮ちゃん…!」
大潮は、初対面である大佐に対して、困惑しきっていた。
部屋に入るや否や、大佐はすぐに大潮へと駆け寄り、そのまま抱きしめたのである。
「あ、あの…どうしたんですか…?」
大潮は、その相手が鎮守府の提督であることを認識していたため、恐る恐るそう尋ねてみる。
大佐はそれを聞いて、自分の行動を反省する。
「ご、ごめんごめん!ついうっかり…!」
大佐はそう言って笑みを浮かべながら、大潮を解放した。
大潮は、その表情を見て心がざわつくのを感じた。
もしかしたら、自分の言動が相手の気に障ったかもしれない。
上官の命令は、絶対だというのに。
「い、いえ…ごめんなさい…」
そう考えた大潮は、すぐにそう零して下を向く。
平手が飛んでくるかもしれない。いや、もしかすると親潮にも飛び火して、2人で捨て艦に使われるのかもしれない。
そう考えると、身体が震えた。
しかし、それは間違っていたことがすぐにわかる。
「大潮ちゃん、もう大丈夫だからね。」
自身の手を握り締めながら大佐の言葉に、大潮は静かに問い返す。
その言葉の意図を知るために。
「そ、それって…?」
「私の鎮守府に、みんな連れてくる。だから、もう前の提督のところには戻らなくて良いの。」
大潮はその言葉に、知らずのうちに涙を流していた。
あの、辛いだけの場所に戻らなくてすむ。
もう、誰も傷つかなくてすむ。
もう、痛い思いをしなくてすむ。
もう、怖い提督に怯えなくてすむ。
「あ…有難う…ございます…!!」
大潮は、涙交じりの声でそう呟いた。
初めて受けた、優しい言葉。それが、こんなにも暖かいものだとは思わなかった。
大潮は、ただ泣きながら大佐の言葉をかみしめる。
その光景を、親潮がただ嬉しそうに見つめていた。
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空は、その様子を扉の隙間から見ていた。
大佐に、自分は大丈夫であることを伝えようと思ってやってきたところ、先に来ていた大潮たちがまだ話していたため、こうして待機していたのだ。
しかし、だいたい10分ほど待っていても、なかなか出てくる気配はない。
このまま待っていても、もしかすると出てこないかもしれない。
「…ん~、あとでまた来ようかな…」
空はそう呟いて、静かに扉を閉める。
そして、大佐に会う前にネロのところへと向かうことにした。
少し楽しそうに口笛を吹きつつ、歩いていく。
自分の靴音と一緒に、口笛が廊下にこだまする。その音を体で感じながら、少しずつ外にいるであろうネロの方へと歩み寄っていく。
「…」
だが、ふとした拍子に、自分の身体のことが気になった。
自分でも感じていた。
あれは、そんなにすぐ完治する傷ではなかった。
それが治ってしまったこと。それ即ち、明らかな異常。
「…ネロに、聞いてみよう。」
空は1人でそう呟いて、悲しそうな表情を浮かべる。
それは、自分の身体に何かが起きているということを、認識していたからである。
厚い雲が太陽を隠す。昼間のはずなのに、辺りは少しずつ暗くなっていった。
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「…」
湾頭を歩いていたネロは、突然立ち止まってから、しばらく水平線を睨みつけていた。
その向こうから、明らかな視線を感じたからである。
その視線は動くことなく、ただこちらを見ているだけのようだ。
その相手が何者なのか。ネロは、右腕の感覚で大体気がついていた。
「あいつは、俺の何なんだ?」
今は相手の姿が遠く見えないのに、かつてダンテと出会った時より強く反応する右腕。
それは、ダンテよりもあの青いコートの男が自分に関係しているということなのだろう。
だが、その疼きの答えはまだネロには分からない。
「あっ、いたいた。ネロー。」
と、自身を呼ぶそんな声で、ネロはその疼きから気をそらす。
そこには、すっかり怪我が治った空が立っていた。
ネロはそれを、不安げな面持ちで見つめる。
「…もう怪我はいいのか?」
「…うん、大丈夫みたい。ピンピンしてるよ。」
空はネロの言葉に、おちゃらけたような笑顔を浮かべていた。
ネロはそれを聞いて、警戒心を高めていた。
閻魔刀に斬られて、人間に戻った空が最初に言っていたこと。
艤装がそこにあるのに、取り出せない感覚。
その言葉が、何故か今になって妙に気にかかる。
「…ねえ、ネロ。」
空は突然、真面目な表情に変えてネロに問いかける。
ネロは空の変化に、少し顔を引き締めていた。
「私の身体、どうなってるんだと思う?」
空はそんなネロの心境を見透かしたかのようにそう問いかける。
ネロは、ただ静かに空のことを見つめる。
悪魔によって負わされた怪我は、1日で消えた。まるで、半人半魔のように。
それは、人間には決してありえない現象。
しかし、元深海棲艦であった空はどうだろうか。
「…私はね。私が、深海棲艦としての私に戻ってるんだと思う。」
空は静かに、そう呟く。
その瞬間、辺りの空気が一変する。
冷たい海の風が、強く吹き抜ける。
「…人間とは違う存在。艦娘とも違う存在。」
空は、そう呟きながら、軽く俯く。
その顔は、悲しそうな表情であった。
「私は…深海棲艦。」
そう言った空の目からは、赤い光が漏れ出していた。
突然、空が呻き出す。
「!…おい!」
ネロが呼びかける言葉に、空は答えない。
空の背中から、赤い光が吹き出し始めた。
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「…提督、ソンナニアイツガ気ニナルノ?」
ネロと空。その2人の様子を遠く離れた海域からじっと見つめるバージルに、戦艦レ級が問いかける。
ただ腕を組みながら、微動だにしないその姿に、戦艦レ級は戸惑っていた。
その横で、南方棲鬼がニヤつきながら戦艦レ級に耳打ちする。
「…提督ガアレダケ楽シソウニシテタノッテ初メテジャナイ?」
その呟きが苛立ったのか、バージルはhumph…と小さく返す。
聞こえると思っていなかった南方棲鬼は、慌てては咳払いをする。
戦艦レ級がバージルを刺激してしまう南方棲鬼に呆れながら、ジト目になる。
「ニシテモ、アイツハ何者ナンダイ?僕ニハ、ダンテトモ違ウ人間ニ見エルシ…」
戦艦レ級が、話をそらしてバージルの様子を伺う。
その言葉に、バージルは何も答えない。
だが、その答えをすでにバージルは知っていた。
ダンテとも違う、スパーダの血族。それは、まさしく…
「…提督ガ手コズッタ相手ッテ聞イテタケド、ヒ弱ソウネ。」
「…ソウ言ッテ、ダンテニボコボコニサレテタノハ誰ダッタッケ?」
南方棲鬼に、戦艦レ級が呆れたように返事する。
そんな2人の会話など気にも止めずに、ただバージルはネロ達の方を見続ける。
突然、その光が現れる。
「!…アレハ…」
戦艦レ級がそう呟いて、目を細める。
あの人間に戻った空母棲鬼が、また深海棲艦に戻っていく。その光景に純粋に驚いていた。
「…何ヨ…初メテ見タワヨアンナノ。」
「…提督、アレヲ僕達ニ見セルツモリダッタッテコトカイ?」
まるで困惑したような表情を浮かべる南方棲鬼に対して、戦艦レ級はバージルの意図を理解して、そう小さく呟く。
その言葉にも答えず、バージルはただその様子を見ているだけであった。
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「マジかよ…」
ネロは、空が豹変していくのをただ呆然と見ていた。
背中には、あの怪物のような艤装が現れ、空には白い球体が飛び回る。
空の身体を包んでいた衣服は、少しずつ消えていき、一糸纏わぬと言っても過言ではない。
その姿の彼女を、世の提督達は空母棲姫と呼ぶだろう。
「…ネロ…」
空の声は、ノイズがかかったような不気味に響く。
ネロはその空の姿を見て、軽くため息をつく。
しっかりと、身体のラインが出ているその姿に、少しばかり戸惑っていた。
「…やりづらいな。」
だが、そうも言っていられないのは重々承知していた。
ネロは、軽くニヤリとしながらコートの右腕をまくる。
「…とりあえず、さっさと元に戻れよ。」
ネロはその右腕を自分の顔の前まで持ち上げ、軽く握りながら呟いた。
そのネロの言葉を聞いて、空はその表情を柔らかくする。
暗雲が、少しずつ晴れていく。
次回、完全バトルでございます!