Devil may cry ~Fleet Collection~ 作:縁(みどり)
第一章ラスト兼初戦闘(深海棲艦ではない)回
何回見直しても、不備がないか不安になるという恐怖。
次の章でダンテは海に出ます。
「…う~ん、チョッチ眠い…」
鈴谷はそう言いながら欠伸をする。熊野がそれを嗜めるようにため息をつく。
鎮守府の入り口側を警備している二人は、実際のところ暇であった。あたりは段々と暗くなってきており、この鎮守府前には人がほとんどいない。(普段から人は少ないのだが。)なので、警備と言ってもただ立っているだけなのだ。それならば、多少危険でも海上の哨戒の方がまだ面白いのだ。
「ここの連中はピザを食べないのか?」
「基本的に、食堂のご飯が美味しいのです。だから、外食やデリバリーはしないのです。」
と、そんな暇そうな二人に近づく二人の影。鈴谷はそちらの方をチラと見る。そこには銀髪で赤いコートを着て、ギターケースを背負った男が、秘書艦の電とともに歩いてくるのが見えた。
「あれが、今日来るって言ってた?」
「…みたいですわね。」
鈴谷の言葉に、熊野はそう呟く。鈴谷がダンテの方に少しずつ近づいていく。熊野はそれを見て、ちょっと!?と制止するも、鈴谷は止まらなかった。そして、ダンテの目の前に立ちふさがる。
「ねぇ、あんたがダンテっていう人?私は鈴谷。よろしく~。」
「ん?こんなところにもお嬢さんがいるな。ほう、ここの連中はみんな将来が楽しみだ。」
そう悪戯っぽく微笑むダンテは、鈴谷を下から順に見ていく。それを鈴谷はジト目で見る。
「…ダンテってそういう趣味?」
その言葉に、ダンテは軽く笑いながら熊野の方を見る。鈴谷は熊野がダンテにジロジロ見られていると思い、ダンテの目線の正面に入る。
「…熊野をそんな風に見るのはダメだかんねー。」
「…Hah、仕方ないな。」
ダンテはそう言って、目線を鈴谷へ戻す。電はその様子を見て、少しダンテの方にあきれたような目線を送り、鈴谷に尋ねる。
「…今から、ダンテさんと街へ出るので、外出の許可をお願いしたいのです。」
「んー、まあ、今日は電の秘書艦としての仕事はこの人の案内って聞いてたし、いいんじゃないかな?」
鈴谷は電の問いにそう答え、とりあえず熊野にそのことを報告しにいった。ダンテと電はその鈴谷のあとについていく。
「ねえ、熊野―、この二人が外出たいんだって。」
「あら、でしたら、後で帰ってきたときに書類だけ記入お願いしますわ。」
熊野は鈴谷の言葉にそう返し、ダンテと電の二人を見た。電は二人の方を見ながら、笑顔になっていた。
「ありがとう、なのです。」
「いいっていいって、じゃあ気を付けてねー。」
電に鈴谷はそう声をかけると、ダンテの方に歩み寄る。その鈴谷の表情はいたって真剣な顔であった。
「…どうした?」
ダンテがそう問いかけると、鈴谷は鋭い目つきでこう言った。
「…電に手を出したら、許さないかんね。」
ダンテは、思わず肩をすくめた。右手を軽く上げて、そのようなことは誓ってしない。と、さすがにそこは弁えていることを示す。鈴谷はそれにジト目で返していた。
「ダンテさん?どうしたのですか?」
と、先を歩いている電がそう尋ねてくる。ダンテは、何でもねえ、と言いながら、電の方に歩いて行った。鈴谷はその後姿をずっと睨んでいた。熊野がその様子を怪訝な面持ちで見ていた。
「…ちょっと、一体どうなさったんですの?」
「…いやー、ダンテって…イケメンだからこそ、軽いっていうか余裕っていうか…だから電が心配っていうか…?」
熊野の問いに、そう言いながらうーん、とうなる鈴谷。それを聞いた熊野は、少し驚いた表情を浮かべたのち、突然笑い出した。
「な、何さ?」
「だって、今日出会ったばかりの人のことをそんなに気にするなんて…!!」
鈴谷は、その言葉を聞いて、どういう意味かを考えて少し赤面した。その瞬間、いやいやいやいや!と言いながら両手を勢いよく振る。
「ありえないっしょ!!ただ電が心配だなって!!」
「うふふ…そういうことにしておきますわ…!」
「ちょっと~~~!!」
鈴谷は、熊野の誤解を解くために必死になりつつ、心の中で一目惚れなんて絶対にないと叫ぶのであった。
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「結構かかりそうだな。」
「軍施設の近くに商業施設はおけないのです。なので、結構離れているのです。」
電とダンテは並んで歩きながら、そんな会話をしていた。軍施設は、敵の襲撃を受ける可能性があり、なおかつ兵器が暴発する可能性も高いため、近隣に一般住居や商業施設を設置することは禁じられているのだ。そのため、鎮守府からそういった施設へ行くには、結構な距離を歩く必要がある。
「…これなら、車を出した方がよかったか。」
ダンテはそう言いながら、軽く頭を掻く。それを見た電は、苦笑いを浮かべる。ダンテの提案には一理あるのだが、車を出す理由が少し問題になりそうであったので、あえてそれをしなかったのだ。
「…それにしても、ここら辺は人通りが少ないな。」
ダンテはあたりを見回しながら、そうつぶやく。先ほども述べたように、この近辺には鎮守府以外は建物などほとんどない。鎮守府からの一直線で、建物らしきものは一つも見ていない。海岸線沿いに広がる道路は、ただ街灯が続いているだけである。だが、それでもいくら何でも少なすぎるのだ。
「…軍事施設の周りは、ほとんど人通りがないのです。それに、普通の人は艦娘のことを快く思っていないのです…」
電はそう言いながら、その顔を俯かせる。電にとってあまり良いとは言えない出来事があったらしい。
「んだ?オイ見てみろよ。」
と、前方からそんな声が突然聞こえてきた。ダンテはその声がする方を怪訝な表情で見つめた。そこには、ガラの悪い男たちが三人立っていた。その表情はいやに気味が悪い笑顔で、その三人ともが電の方を凝視していた。
「こんなところに、艦娘様がいらっしゃるよ。本当なら、せっせと海の治安を守ってなきゃいけないのにな。」
男の一人がそんなことをいうと、電はおびえたような表情で俯く。ダンテはそんな電をチラと見る。そしてあからさまにため息をつき、男たちの方に体を向ける。
「今もまだまだ深海棲艦の脅威は減ってねえのに、こんなところでのんきに何やってるんだろうな?ええ?」
男は下衆な笑みを浮かべて電をにらみつける。電はもう、何も言うことができないようで、俯いたままである。
そんな中、ダンテは不敵に笑った。
「ヘイ、それを言うなら、お前らも人が誰もいないこんなところで何やってるんだろうな?」
「…ああ?」
突然響いたその言葉に、男たちはその視線を集中させる。電は驚いたような表情でダンテの方を見る。そんな男たちを馬鹿にしたような笑顔を浮かべたまま、ダンテは言葉を続ける。
「こんなところまで来て、お嬢さんをひっかけるのは良くないぜ?」
「い、いいのです!その人たちのいうことは間違っては…」
あたふたする電を尻目に、ダンテはその表情を崩さなかった。その瞳には、男たちの中身まで見透かしたという確信が満ち溢れていた。
「てめぇ…調子に乗るなよ…!」
男の一人がそう言いながら、ダンテに襲い掛かろうと近づく。電はそれを見て、さらに焦ったような表情を浮かべていた。艦娘と民間人との衝突など、軍法会議だけでは済まされないような案件であり、さらに本来部外者であるダンテがその被害を被ったとなれば、その問題は一鎮守府の問題では済まされなくなってしまうからだ。
しかし、ダンテはそんな電のことなどつゆ知らず、驚くべき行動に出ていた。
「…まあ、お前らの場合はそういうことじゃねえんだろうがな。」
そう言いながら、ダンテはエボニーとアイボリーをホルスターから取り出し、三人の男に向けて発砲した。その弾丸はきれいに男たちの脳天を撃ち抜いていた。
「ぐぇ!?」
「ごぁぁ!?」
「うぉぁ!?」
男たちの悲痛な叫びがあたりに響く。それを見た電は、気を失いそうなほどの強烈なめまいに襲われた。自分の目の前で、ダンテが民間人を殺してしまったのだ。自分が止めるべきなのに、止めることはおろか、ダンテのそのスピードの速さに動くことすらできなかったのだ。
「ダ、ダンテさん!!なぜ!?この人たちは何も悪いことなんて…!?」
電はそう言って、ダンテをとがめる。というより、これから自分に降りかかる出来事を予想して、おびえていたのだ。明らかな違法行為を、目の前で傍観してしまったという事実が、電の思考を全て支配していた。しかし、その電の言葉には耳も貸さず、ダンテはその倒れた三人をしっかりと見据えていた。
「…今度から人に化けるならもっとうまくやれよ。匂いが強すぎる。」
ダンテはそう言いながら、ギターケースを地面に置き、そしてゆっくりとそれを開く。
と、その瞬間に男たちが同時に立ち上がる。
『ダァァァァンテェェェェェェイイイイ!!!』
男たちがそう叫んだと同時に、男たちの身体が豹変した。背中からは羽が生え、額には二本のツノ。服は完全に破れ、その姿があらわになる。
ゴートリングと呼ばれる、山羊の姿をした悪魔である。
「!?…こ、これは…!?」
電はそう言いながら、その異形の者たちを見る。その恐ろしい形相の彼らを見ていると、とても怖いはずなのに、惹かれるような感覚に陥る。魔に魅せられそうになっているのだ。ダンテが軽く笑いながら、そんな電の方を見る。
「離れてな、『
ダンテはそう言って、ギターケースから勢いよくリベリオンを取り出し、それを背中に装備する。その動作を見たゴートリングたちは一斉にダンテに襲いかかった。
「
ダンテはそう言いながらジャンプして、三体のゴートリングに兜割を食らわせて吹き飛ばす。三体は跳ね飛ばされた衝撃で、すぐに立ち上がることができない。そこにダンテは『
「
ダンテはそう叫び、リベリオンを下から振り上げてゴートリングを打ち上げながら、自分もそのゴートリングの真上に飛び上がる。そして、そのまま自分の身体を回転させながら、エボニーとアイボリーを乱射して『
ダンテが地面に降り立つと同時に、何発もの銃弾を浴びたゴートリングは、そのまま灰になって消えた。残りの二体の方に目をやると、ダンテの方に突っ込んでくる一方で、電の方に近づこうとしているのが見えた。ダンテはリベリオンを握りしめ、魔力を送る。
「Ha!!」
そのまま魔力を帯びたリベリオンを、電に近づこうとしているゴートリングに投げつける。すると、リベリオンは自由にそのゴートリングを切り刻んで行く。そのゴートリングがあまりの痛みに言葉にならない声を叫ぶ。その隙に、ダンテはエボニーとアイボリーで、目の前に突っ込んでくるゴートリングに何発も銃弾を浴びせる。弾丸によって足止めされたゴートリングは、怯みつつも咆哮をあげる。
「
リベリオンが切り刻んでいたゴートリングが灰へと変わると同時にダンテはそう叫ぶと、リベリオンがダンテの方へと戻ってくる。
そして、ダンテはそのリベリオンを手に取り、目の前のゴートリングに相対する。ダンテはニヤリと笑みを浮かべ、右から左、左から右、そして、上下へとまるで自由に舞い踊っているかのように剣を振り続ける。身体中を切り付けられていくゴートリングは、断末魔のような悲鳴をあげる。
「…
そう言いながら、ダンテはリベリオンでゴートリングを打ち上げ、背中にリベリオンをしまう。そして、エボニーをホルスターから取り出し、真正面に向けた。
「Bingo!」
その引き金を引くと同時に、落ちてきたゴートリングの脳天に弾丸が突き刺さる。その頭は破裂し、まがまがしい声が一瞬にして消えた。
「…hmm…もっと手応えがあると思ったんだがな。」
ダンテはそう言って、ゆっくりと電の方を見る。その顔には、ゴートリングの返り血のようなものが付いており、電は一瞬、ヒッ…と小さく声をあげる。ダンテはそれをぬぐい、静かにギターケースにリベリオンをしまい、それを背負う。
電は、軽い放心状態に陥っていた。目の前で何が起きているのか、あの異形のものが一体何なのかを理解する前に、すべてが終わってしまっていたからである。
「…あ、あのっ!?ダ、ダンテさん…!?」
辛うじて声が出た電は、ダンテにそう声をかける。その声に反応したダンテは軽く笑いながら、電のほうへと歩いて行く。
「…ピザはなしだ。帰ろうぜ。」
ダンテはそう言いながら、電の肩をポンポンとたたく。しかし、その電の表情が晴れることはない。
「い、今のは…何なのです…あの…化け物は…!?」
電は震えた声でそうつぶやく。恐怖に支配されたその感情は、いまやあの異形の存在を本能的に知覚することを求めていたのだ。
ダンテはそんな電の方を見て、hah、と鼻で笑う。
「知りたきゃ、今度教えてやるよ。」
ダンテはそう言いながら、今まで歩いてきた道を引き返していく。電は振り返ってその様子を黙って見守ることしかできなかったのだ。
「…ダンテさん…あなたは…いったい…?」
電は、少しずつ遠くなっていくその背中に、そう問いかけることしかできなかった。
一章はこれにて閉幕。
第二章は土日であげ…られたらいいなという感じで。
追記:誤字指摘ありがとうございます!今回誤字多すぎ…