Devil may cry ~Fleet Collection~ 作:縁(みどり)
なので、この技術局長は結構気に入っています。
「う…ん…」
医務室のベッドの上でうなる青葉を見て、ダンテは金剛に困ったような視線を向ける。
現在、停電は予備電源によって解消され、医務室や他の部屋も通常通りに使えるようになった。
「…目の前で人間があんな風に変身したら、誰だってこうなりマース。それに、ダンテのことを熱心に調べていたから、余計に混乱しちゃったんだと思いマース」
「時間をかけすぎて、コンゴウ達に被害を与えたらまずいだろ?」
ダンテはそう言って、まるで何も悪くないかのように振舞う。
もちろん、ダンテは何も悪くないのだが、それにしても少しは配慮をしてもらいたいものだ。
「…まあ、ダンテがそれでいいなら、別に構わないデース。でも、青葉には謝ってあげてくださいネー」
金剛がそう言うと、ダンテはまるで何も言い返せなくなって、両手を上げて降参のポーズをとる。
その部屋の中へ、憲兵に扮したトリッシュが入ってくる。
「あ、Trish!」
「あら、コンゴウはこんなところにいたのね」
金剛はトリッシュにそんな風に声をかけるのを見て、ダンテは少し呆れたような笑みを浮かべていた。
その表情には、敵地にもぐりこんでいるのに、情報をオープンにしているのが、違和感を生んでいたのだ。
「…で、停電の原因は悪魔ってことでいいのかしら?」
「ああ、何度説明しても同じ答えしか出ない」
ダンテはそう言いながら、まるでふざけたような表情を浮かべる。
しかし、トリッシュはその表情を緩めることはしない。
「悪いけど、多分そう思わない人間もいるわ。軟禁していた相手が部屋を出ているという事実がある以上ね」
「そいつは困ったな。で、その人間は俺に何を求めてくる?」
ダンテはそう言いながら、まるで楽しそうな表情を浮かべていた。
トリッシュは、まるで言いにくそうな表情で言葉を紡ぐ。
「…スパーダの血族の力を欲しているみたい」
「…なるほど、そりゃかなり面倒だ」
ダンテは、そろそろ自分の置かれている状況を理解し始めていた。
今の状態では、おそらくこの敵地において行動が起こせないことまではわかっていたが、このままでは自分の力を解析される危険性まで孕んでいることが分かった。
つまり、下手な騒動が原因で、ダンテの力を悪用させる理由になりかねない。
「…そうなる前に、暴れるのは思いついた。だが、実際のところ証拠が何一つなくてね。肝心の部屋には入れずじまいだ」
「まあ、当然の話だけれど、敵も馬鹿じゃないみたいね。それだけ大きなこの組織が、どこまで物事を隠しているのか」
トリッシュはそう呟くと、金剛にその視線を向ける。
ダンテは、この一件について、トリッシュが金剛に協力を取り付けてあることを理解した。
「…コンゴウ、トリッシュに何か吹き込まれていたから、悪魔を見てもビビらなかったのか?」
「That's right!それに、私達の戦いを終わらせることができるなら、それが一番デース!」
金剛はそう言いながら、とても清々しい笑みを浮かべていた。
ダンテは呆れたように笑みを浮かべるが、それでも現状は何も変わらないので、ダンテは行動を起こすことにした。
「…トリッシュ、悪いがこの施設の案内をしてくれ。誰かに見つかる前にとにかく情報を集めなきゃな」
ダンテの言葉を聞いたトリッシュは、不敵な笑みを浮かべてダンテについてくるようにうながす。
そのまま、ダンテとトリッシュは部屋の外へと出ていった。
「…DanteとTrishの二人が艦娘と深海棲艦の戦いにperiodを打つなら、私も負けてられないネー」
一人部屋に残った金剛はそう呟いて、そのまま静かに微笑んだ。
そして、眠っていたはずの青葉は、そのままメモ帳に言葉を書き込んでいた。
「ダンテさんはあの憲兵さんとお知り合いだったのですね…」
その小さな呟きは、誰にも聞かれることなかった。
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大本営の建物の正門前、そのリムジンがゆっくりと停車する。そのリムジンは、あのネロがいる呉の鎮守府を視察した帰りであった。
そのリムジンから、技術局長は楽しそうな笑みを浮かべながら降りてくる。
「…ご苦労。お前はもう仕事を終えていいぞ」
「…かしこまりました」
その運転手は気だるそうな表情を浮かべながら、そのままリムジンを走らせてどこかへと向かてしまった。
それに一瞥をくれることもなく、技術局長は歩き出してしまった。
「…さて、ダンテを問いただしに向かうとするか」
技術局長はそう呟きながら、大本営の建物の中へと歩いていこうとする。その不気味で荘厳な建物の中へと、足を踏み入れようとしたその時__
__高電圧に紛れてブリッツがその技術局長の前へと現れる。
「…全システムがダウンしたのは、こいつのせいか」
技術局長はそのブリッツを見ながら、決してその表情を変えることなく歩き出していた。
そして、そのブリッツの横を通り過ぎながら、ブリッツに声をかける。
「…お前はよくやった。自由に生きていいぞ」
その言葉を聞いたブリッツは、そのまま電流を身にまといながらどこかへと消え去ってしまった。
それを見届けた技術局長は、大本営の中へと足を進める。
ダンテが、おそらく何かをしでかしているだろうという確信を抱きながら。
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「…なるほど、ここが研究施設か」
ダンテはそう呟きながら、その半円形の広い部屋を見回す。
一階部分のこの部屋は、得体のしれない何かの血液や体液の残り香が残っており、あたりには何かしらの物質がしまわれていたであろう箱やアンプルが大量に落ちていた。
その一つ一つを手に取って、ダンテはその中身を見る。
「…全部悪魔の血と破片か。こりゃ、魔剣教団よりも厄介だな」
ダンテのその呟きに、トリッシュは笑顔を浮かべながら何かを投げる。
それをダンテは右手でキャッチし、まじまじと見つめる。
それは、秘法によって作られたと言われる、ゴールドオーブであった。
「…こいつがあれば、一度死んだ艦娘たちもまた復活できるだろうな。記憶はさすがに飛んじまうだろうが」
「…艦娘どころか、深海棲艦もね」
トリッシュがそう言ったのを聞いて、ダンテはニヤリとした笑みを浮かべる。
「…そりゃ、海の向こうの悪魔も大変なもんだな。何度も生き返らされて、鼬ごっこか?」
「…この組織が敵を倒した事実が積みあがれば、もっとお金が回るんじゃない?」
トリッシュのその言葉を聞いて、ダンテはあからさまに嫌そうな顔をした。
「…まるでゲームか何かか?何度も死ぬなんて俺はパスだ」
「…何度も悪魔を殺すのは好きそうね」
トリッシュがそう言いながら、上の階へと飛び上がる。そして、その上の階での惨状を見る。そこには、艦娘が付けている色々な艤装や深海棲艦の新案などが記された設計図が散乱しており、おおよそ研究施設には似つかわしくない大きな檻が何個も並んでいた。
トリッシュはそのうちの一つを手に取り、その中身を見る。
そこに記されていたのは、深海棲艦への新たな攻撃方法と、艦娘の強化に関する研究結果の報告書であった。
「…最終的に、この兵器で戦争でもする気かしら?」
「…さあな。いずれにしても、あの顔で迫られたら、人間は手出しもできないだろうな」
ダンテはそう呟きながら、鎮守府にて出会ったあの艦娘たちを思い出す。
彼女らを意のままに操ることが出来るなら、この深海棲艦との戦闘で実戦データを集めていると判断しても何もおかしくない。
となれば、その矛先がどこへ向けられるか。
「…この世界を魔界にするつもりかもしれないな」
「…果たして、そうかな?」
と、そんな声が二階の入り口から聞こえる。
ダンテとトリッシュはその声が聞こえたほうへと視線を向ける。
そこには、腕を掴まれたまま動かない金剛と、その金剛を掴んでいる技術局長がそこにいた。
「…おいおい、離してやりな。コンゴウは関係ないだろう?」
「…彼女には敵対行動が認められている。離すわけにはいかないな」
そう呟いて、技術局長はそのままダンテとトリッシュにその視線を向けていた。
トリッシュは、その技術局長の視線に耐えかねず、目をそらす。
「…貴様の処分はそれとして、まずはダンテ、貴様には勝手にこの部屋に入室したことへの罰を与えねばな!」
技術局長はそう言いながら、金剛をそばにあった檻の中へと放り込む。
その瞬間、技術局長の声に反応したかのように、ダンテがいる一階の扉の鍵が閉まり、二階部分には透明なガラスが伸びあがっていた。
それを見たトリッシュは、そのガラスを砕こうと拳を握りこむ。しかし、それよりも先に技術局長がそのトリッシュの背後に3体の悪魔を召喚した。
「!…」
「貴様はそこで見ていろ!」
トリッシュの背後に現れたその悪魔たちは、山羊の姿をした悪魔達であった。しかし、トリッシュが動かない限り動くことはないようで、そのまま静かにトリッシュを見守るだけであった。
悪魔を統率出来るほどの力を持つこの技術局長という男は、一体何者なのかと、トリッシュは心の中で疑問を覚えた。
「…ダンテ、貴様は俺の研究データのために犠牲になってもらう!」
技術局長はそう叫びながら、ダンテを見下ろす。その目には、ダンテのことを研究対象としか見ていないだけのような表情を浮かべていた。
「…俺を犠牲にね。それで、何を生み出すつもりだ?」
ダンテがそのまま寝転がり、技術局長をじっと見る。欠伸をしながらも、ダンテの表情は決してその手を緩めることはしないという決意が見て取れた。
技術局長の顔が、怒りに震えた。
「その余裕も、いつまで持つかな!!」
技術局長はそう叫びながら、ダンテのそばに魔法陣を展開し始める。
それに視線を向けることもなく、ダンテは技術局長へと鋭い視線を向け続けていた。
「その野心で、どれだけの人間や悪魔が犠牲になったんだろうな?」
「…ふ、ふふふはははははは!!」
技術局長がそう高らかに笑い声をあげた瞬間、ダンテの背後には三体のブレイドが出現し、ダンテを殺そうとその爪を鋭く光らせる。
それをダンテも認識していたので、ダンテはすぐにその右手にリベリオンを持ち、そのブレイドたちを一掃するために振るった。
「ようこそ!!
技術局長がそう叫ぶと同時に、ダンテの周りへ大量のスケアクロウが現れる。それを見たダンテは、楽しそうな表情を浮かべながら、それらに向けてエボニーとアイボリーを向けるのであった。
というわけで、ダンテは二話分くらいお休みです。時間軸を戻していきます。
その間に、ネロの方も進めていきます。
明日で、この話を上げ始めて4年経つらしいので、時間の流れの速さを感じつつ、時間のかかり具合に想像以上に引いてます…