Devil may cry ~Fleet Collection~ 作:縁(みどり)
ネロのことをやりながら、バージルのことも動かしていきます。
「…これから始まるのは、大いなる実験だ]
まるで大きな教会のような部屋の中。少ない太陽光を取り入れるかのように作られたステンドグラスの前で、技術局長はそう呟いた。技術局長のその目の前には、大きな肉塊が存在していた。
その肉塊は、血液の塊のような物体がいたるところに付着しており、それが人間の作り出したものであるならば悪趣味極まりない様相である。
最も、それを作り出したのは、技術局長自身でああい、その肉塊はただのオブジェではない。
「…ダンテの力は解析を終了した。つまり、これからは我々のような人間にも悪魔の力が行使できるようになる。」
その肉塊が少しだけうねるように動いたのを感じ取った技術局長は、その笑顔を醜悪なものへと変える。この世の全てを憎んでいるかのように、ありとあらゆるものを見下しているような目であった。
「…そうなれば、総帥のように力を持たない人間が、力を持つ連中におびえることはない…この世界を敵に回しても、総帥は負けないのだ!」
そう叫んだ技術局長の表情には、絶対的な自信が現れていた。
その目の前の肉塊は、それに対して微かに震えているかのように動いていた。
その部屋には、技術局長の笑い声が反響するのみであった。
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「クソ、どこにいけばいいかわからねえ」
ネロはそう呟きながら、あたりを見回す。
至る所に部屋はあるのだが、ダンテがいる部屋の見当がつかない。それは、ダンテの気配を感じ取れなくなっていることも関係しているが、何よりも後ろについてきている三人の少女たちの探し人の捜索も兼ねているので、優先事項が分からなくなっているのだ。
「ダンテのことで何か知ってることは無いか?」
「少なくとも、私達艦娘は接触が禁じられていて…何も情報が無いんです」
そう呟いた眼鏡娘の霧島の表情は、決して明るいものではなかった。今の状況を考えれば当然のことだが、自分たちの事情に巻き込みながらネロの助けになれないことを悔やんでいたのだ。
「…あの、ネロさん、貴方に依頼を行ったのは元帥という話を聞きました。もしかしたら、元帥に助力を求められるかもしれません!」
と、後ろについてきていた榛名がそう声をかけると、ネロは少し思案した。
その人物は、確か天龍や空がいた鎮守府でも話題に上がっていた。元帥という男がこの作戦を計画して、ネロを呼び出したというならば、ダンテを呼び出したのもその男の可能性が高い。その人間にコンタクトを取るべきだと理解したのだ。
「…電話はどこかにあるか?」
「では、通信室に案内します!」
ネロの言葉に、ほぼ即決で比叡が返答する。それは軍の施設を無断で使用するという極めて危険な行為であるが、そんなことはお構いなしに比叡たちはその部屋を目指して走り始めていた。
その後姿を眺めながら、ネロはため息をついて、笑みを浮かべる。
「…まあ、助けてもらえるならその方がマシだな」
ネロはそう呟いて、そのまま三人の後をついていった。
その後ろに、何体かの悪魔がついていっていたことに、ネロはまだ気が付いていなかった。
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電は困惑していた。その目の前の敵が、目の前の味方をじっと見ている光景を目の当たりにして。
「…鈴谷さんを、解放するのですか?」
電は目の前に立ちはだかる、その青いコートの男を睨みつけながらそう呟く。先ほどまで、鈴谷の喉元には日本刀が突き付けられていたのだが、電と武蔵の姿を視認した瞬間に、その武装をしまったのだ。
ただ、臨戦態勢を解いたとはいえ、結局のところはダンテと同じなのだ。仮に今は戦闘態勢に入っていなくとも、やろうと思えばすぐにやれる。
艦娘や軍隊のように、戦いの準備に時間がかからないのだ。
「…電、ちょっと話しときたいんだけど、多分この人悪いことは考えてないみたいなんだよね~」
鈴谷は、先ほどまで首筋に日本刀を突き付けられていたのにも関わらず、その表情を楽しそうなものへと変質させる。
その緊張感のなさから、電の隣で見ていた武蔵は思わずしかめっ面になる。
「…何故そう言い切れる。少なくとも、こちらの被害は中破が三人も出ていて、さらにお前自身が大破していたではないか」
武蔵はそう呟いて、その矛盾に気が付いた。
鈴谷も、その武蔵の様子を見て、まるで押せ押せと言わんばかりに理論を展開する。
「そう、逆を言えば、それで済んでるんだよね。少なくとも、ダンテが深海棲艦と戦うときのそれとは明らかに違うし、間違いなく手加減されていた」
そこまで鈴谷が言うが、電は納得のできない様子で首を振る。
「もし敵対する気が無いのであれば、こちらを攻撃する必要はないはずなのです。少なくとも、こちらへの明確な攻撃は見過ごすわけにはいかないのです」
「…humgh」
バージルはその電の言葉を聞いて、大きなため息をつく。その表情の意味を正確に読み取った鈴谷は、そのまま重い表情を浮かべたまま、電に向き直る。
そのバージルの態度は、このまま全てを切り伏せることも厭わないと言わんばかりの殺気が含まれていた。
「…逆に、もしこの人が電の目の前にいきなり現れたとして、この人の言うことを信用できる?その言葉に真実味を持たせるために、攻撃によって相手を制圧してから話をするのは、常套手段だと思わない?」
「…何故、そこまで鈴谷さんはこの人のことを擁護するのですか?先ほどまで、刀を向けられて動けない状況にさせられていたのです」
鈴谷のその言葉を聞いた電は、その表情を怪訝なものへと変える。間違いなく、今鈴谷は艦娘の見方ではなく、その男の味方になって居る。電はそれが面白く感じていなかった。
鈴谷は、悩んだように頭を掻きながら、その言葉を口にすることにした。
「…多分、この人は鈴谷のような艦娘を待ってたんだと思うよ。深海棲艦と艦娘の双方を考えられる人物をね。だから、私はその試みが成功するように頑張ることにしたの。ダンテの行動の理由も聞けたしね」
「ダンテさんの…?」
鈴谷の言葉を反芻する電は、その艦影に気が付いていなかった。
その背後から迫る、その敵艦の存在に。
「…提督、ソロソロ僕達ノ出番カナ?」
電は、その声が後ろから響いたのを感じた瞬間に、全身に悪寒が走るのを感じた。
その死んだような声が、電の背後から響いた。その事実は、艦娘以外の誰かが立っていることを示していた。
「!?…」
「動カナイ方ガ無難ダト思ウヨ?」
電が動こうと背後へ砲塔を向けようとした瞬間、その戦艦レ級の尻尾が電に向いていた。
そのあまりにも早い動きに、武蔵と電は行動を制限されてしまう。まさしく、罠にかけられたのだ、と認識した。
しかし、その予想に反して、バージルはすぐにその左手を挙げる。
「…レ級。貴様はこの交渉を壊す気か?」
「…ハイハイ、冗談ダヨ。全ク、提督ハ厄介ダヨ」
レ級はバージルのその言葉を聞いて、すぐに尻尾をひっこめた。その事実に、電と武蔵は、少なくとも継戦の意思はないということを理解した。
でなければ、電と武蔵は今すぐに沈んでいただろう。
「…貴様らの鎮守府とやらに案内しろ。詳しい話はそこからだ」
バージルがその冷たくなった空気を切り裂くようにそう告げると、電と武蔵は何も言い返すことが出来なくなっていた。
これから戦うか、それとも交渉のテーブルにつくか、その二択を迫られていたのだと、理解した。
「…大丈夫、この人は少なくとも、提督を傷つけようとしているわけじゃない。寧ろ、その先まで考えてるはず」
鈴谷はそう言いながら、電と武蔵を安心させるために笑顔を作る。
しかし、二人のその表情は明らかに安心できないという感情に包まれていた。
戦艦レ級とその男が吉まで到達したとき、鎮守府は大混乱に陥り、提督の声がかかるまでの間に鎮守府の破棄が決定しかけることになるのだが、その面々はまだ知る由もない。
さて、バージルも大本営に来れば、親子兄弟協力ラスボス戦みたいなことが出来ますね!
DMC5のあれ以上ない終わりは、周回数を重ねても感動しました。