Devil may cry ~Fleet Collection~ 作:縁(みどり)
「…鈴谷、とにかく説明を頼む。それと、今度からは艦娘たちが怯えるから、事前にせめて通信はよこしてくれ」
提督の言葉を聞いた鈴谷は、思わずやってしまったという表情を浮かべていた。
実際にこの鎮守府にこの戦艦レ級と深海の提督であるバージルを引き入れた際、かなりの艦娘たちが攻撃行動を取ろうと構えたのだ。
しかし、それに対して一切怯むことなく殺気を放ったバージルによって、多くの艦娘が行動不能に陥り、大淀のような指揮権が高い艦娘が独断で鎮守府放棄の連絡を鎮守府内に流そうとしたところで、提督がそれらを止めたのだ。
「…えーっと、こちらがダンテのお兄さんのバージルさん。色々と紆余曲折を経て、深海の提督を今はしているみたいです」
「…にわかには信じがたいが、深海にも提督という存在はいるんだな。それも、ダンテさんの兄ということは、悪魔の話を当然ご存知だということになる」
提督はそこまで呟いて、バージルの表情を見る。
ソファに腰かけながらもしっかりと姿勢を維持して居るところを見ると、性格はダンテと真逆であるということが理解できた。
そしてその目は、見ているだけで人を殺せそうなほどに殺気が含まれていた。
「…貴様に問いたいのは、一つだけだ」
そのバージルが重々しく言葉を口にしたとき、提督の緊張は高まる。
交渉のテーブルについたというよりは、まるで尋問が開始されたかのような感覚であった。
まるでその数秒の沈黙が、永遠にも感じられたとき、バージルはその言葉の続きを口にする。
「貴様はどこまでこの件へ関与している?」
その言葉を聞いた提督は、まるで心臓が握られているかのような感覚に陥った。バージルが言うこの件とは、いったい何なのかは検討もつかなかったが、無言を貫いては状況は悪化するだろうし、何かを答えなければ殺されるだろう。
「…少なくとも、艦娘たちに何かをしたことはありませんし、皆が嫌悪するようなことはしていません。それに、自分自身がどれだけ無能であろうと、彼女たちを傷つけるようなことはしていないと自負があります」
提督は勢いよくそうバージルへと告げる。それを聞いた鈴谷が、まるで違う違う、とでも言いたげな表情で、提督に耳打ちをする。
「多分、バージルさんは提督が艦娘開発に携わってないかどうか聞いてるんだよ」
「…艦娘の開発?」
提督はそれを聞いて、困惑する。
なぜ、艦娘の開発に携わっているかどうかを訊かれなければならないのだろうかと。
その様子を見ていたバージルは、小さくhumgh…と呟いて、そのまま席を立つ。
「…やはり、大本営とやらに行くしかないようだな」
「な、なんですって?」
提督は、話の流れが一切読めていないため、バージルが下した決断がどんな意味があるのかを知らない。
だが、そのバージルの目は、ダンテのそれに似た目的を宿したようなものであった。
「…半人半魔を作り出した責任は取らせなければならない」
「なっ…!?」
提督は、それを聞いて全てを理解した。
艦娘と深海棲艦の違いなど、皆無であるということを。
____________
「…ここが通信室か」
ネロがそう呟きながら、あたりを見回す。軍の設備であるため、かなりの厳重度であったが、無理矢理ドアをこじ開けて中へと入ってしまった。
それを見た榛名達は、自分たちの情報を使えば何も問題なく通れるはずなのに、などと考えていた。
「…さて、元帥閣下に許しを請わなきゃな」
ネロはそう呟いて、そのまま思い切り通信設備のボタンを叩く。その動作だけで、その設備が起動音を上げ始めた。それを見て、ネロは満足げに小さく息を吐く。
そして、そのまま榛名が元帥へと取り付けるようにそのまま機械の操作を始めた。
それを見た比叡と霧島は、そのまま静かに様子を見守っている。
ふと、ネロは扉の前に眼をやる。そこには、白い軍服を着た男が立っていた。まるで、こちらの行動を非難するかのように鋭い目線を向けながら。
「貴様ら!軍の施設を破壊したのか!」
「!!…」
その声を聞いた榛名達は、その声の方へと向き直る。その表情は、軍人として命令に背くことはできないという心情がくみ取れる。
それを見たネロは、静かに笑みを浮かべて、その軍服男へと歩み寄る。
その軍服の男は、ネロから一切視線を逸らすことなどしなかった。
「俺の頼みだ。多少は融通を聞かせてくれるんだろ?」
「貴様…!」
そう呟いて、その軍服男がネロへとその拳銃を向けようと動く。しかし、ネロがそれを察知するや否や、そのままレッドクイーンを抜き、その軍服の男へと向ける。
それを認識した比叡たちは、かなり狼狽したような表情を浮かべていた。
その瞬間、軍服男はその表情を怒りのものへと変える。ネロはそれを見ても、表情を変えることなく呆れたように呟く。
「邪魔するなよ。俺は別に、お前のことを殺す気は…」
「貴様ノヨウナ人間ガ…!」
と、その声が聞こえたと同時に、その軍服の男がネロへと襲い掛かる。それを見たネロは、少し驚きながらも、確実にその男が悪魔であると認識していた。
ネロはそのレッドクイーンで、その襲い掛かってきた男を切り捨てる。
「グォォォォォォォォォ…!!」
ネロが斬り伏せたその悪魔は、うめき声を上げながらその身を灰に変えていく。ネロはその光景を見てもなお、戦闘態勢を解かない。
その部屋の扉の奥に、スケアクロウとブレイドが両手で数えきれないほどの数現れたのだ。それぞれがネロを殺すために集められたようで、すぐにでも襲い掛かりそうな勢いであった。
「…この施設の中にどんだけいるんだよ」
ネロはそう呟きながら、後ろでうろたえている三人に目線を向ける。
その三人は、それぞれが恐れを抱いたような表情を浮かべていた。軍人に化けた悪魔を見たことと、その後ろにとんでもない数の悪魔がいることへの恐怖心がそうさせたのだ。
「…早めに通信の準備頼むぜ」
ネロはそう呟くと、その通信室の扉があった部分に思い切り右手をぶつける。その動作によって、部屋の壁が崩れ、部屋の中に入れないようになってしまった。
そして、ネロは笑みを浮かべながら、レッドクイーンのエンジンをふかした。
「大ボス前の肩慣らし、させてもらうぜ」
ネロはそう呟くと同時に、悪魔たちは一斉に動き始めた。
__________________
榛名は、少しばかり放心状態になっていた。あの白い軍服の男に声をかけられたとき、思わず身体をこわばらせた。それは、自分たちの命令違反を咎められることを想定していたからである。
しかし、その人物は軍服を身にまとった異形であった。ネロがその男を切り捨てなければ、榛名達は決して無事では済まなかっただろう。
それを改めて頭の中で反芻した時、この軍部はいったい、どんな隠し事を艦娘にしているのだろうと、そんな疑問が形になって現れた。
「榛名!急いで通信準備を!ネロさんがすぐに行動できるように手助けするのが私たちの仕事よ!!」
比叡がそう言って、榛名の横に駆け寄ってくるのを見て、慌ててコンソールを操作しなおす。
今までの出来事を現実的に理解することはできなかったが、それでも今やるべきことは変わらないのだと認識していた。
「にわかには信じがたいけれど、この鎮守府には悪魔と契約した人間がいるようです」
霧島がそう呟いて、通信機用のマイクの接続を開始しているのを見た榛名は、手を止めることはなくとも、その言葉を頭の中で反芻していた。
悪魔と契約した人間の存在、それに、心当たりがあったのだ。
その人間は、自分たちの姉が裏切りをしたとして、自分たちをけしかけた人間。
「…技術局長は、もしかして…」
その榛名の小さな呟きは、二人には聞こえていなかった。
だが、その場にいた三人は、その名前を頭の中に浮かべていた。
アグナスの子供がニコって普通にヤバいと思いながら5をプレイしてましたけど、そのおばあちゃんがダンテのエボアボの作者ってのも大分ヤバいなって思いました。(小並感)