Devil may cry ~Fleet Collection~   作:縁(みどり)

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元帥にとりあえず話のスポットを当ててみます。


元帥

太陽が照り付ける佐世保鎮守府にて。元帥は、その日一番の修羅場を迎えていた。

大本営からの連絡が一度完全に途絶えたのが一日前。その後、白紙の本日の任務が送られてきたのが今朝である。

とにかく、何かが起きたことを理解した元帥は、何度か大本営に連絡を試みたが、結果として一度も繋がることはなかった。

そして、任務が白紙であるため、計画の申請もできず、果ては出撃の準備もできないありさまである。

 

「…んで、本当にまだ連絡がつかないのか?」

「みたいですねぇ…通信担当の兵士が寝ているんでしょうか?」

 

元帥の言葉に、吹雪はそう返答して困ったかのように首をかしげる。それを見て、まず心配になったのが、大本営にいる軍人と艦娘の状態であった。少なからず、大本営に直接敵が乗り込んでいくことは今までなかった。しかし、それが今日以降も起きないという保証はない。現在、敵との戦闘によって通信ができない状態だとしたら。

そうでなくとも、大本営に何か重大な危機が迫っている可能性を否定できない。

 

「…吹雪、艦隊の出撃編成を組む。出撃できる艦娘を確認してくれ」

「えぇ!?そこまでするんですか!?」

 

吹雪はそう叫びながら、割と本気で驚いているかのような表情を浮かべていた。それを見て、元帥は大きなため息をついた。

 

「あのなぁ…今の状況で連絡がつかないってことは、今この瞬間に敵が大本営に直接乗り込んでいる可能性があるんだぞ?もし、これで敵が陸路でこの鎮守府や他の鎮守府、果ては市街なんかを攻めてきたらどうする?」

「でも、もし本当にそうなって居たら、他の鎮守府も動き始めるはずでは?そういった連絡は一切来ていませんが…」

 

吹雪はそう呟いて、元帥の考えを否定しようとする。しかし、そう言いながら、吹雪はその心中で察していた。

本当に何もなければ、任務が白紙などという手違いは起こりえないのだから。

 

「…ならいい。自分で調べるから、お前は居残っていろ。その代わり、書類仕事は全部任せるからな」

「…今出撃可能なのは、第一艦隊の加古さん、古鷹さん、睦月ちゃん、如月ちゃん、軽空母の鳳翔さんと祥鳳さん。第二艦隊は利根さん、筑摩さん、綾波ちゃん、敷波ちゃん、戦艦の扶桑さんと山城さん。第三艦隊は、川内さん、神通さん、那珂さん、正規空母の蒼龍さん、飛龍さん、そして雪風ちゃんです」

 

元帥が立ち上がってそのまま動こうとした瞬間、吹雪は観念したかのように艦娘の編成を告げる。それを聞いて元帥は、もう既にわかっていたならさっさと言えばいいものを、と考えていた。

 

「…よし、とにかくそのまま出撃準備に入るように告げてくれ。主力を全部他の鎮守府へと派遣していた分、それだけの戦力があれば何があってもなんとかなるだろう」

 

元帥の言葉を聞いた吹雪は、小さくため息をついていた。

この鎮守府は、割かし最近に設立された鎮守府であり、右も左もわからない人間に任せるよりは、キャリアと指揮能力に優れた人間をここに異動させるのが妥当だと言われ、この元帥がやってきた。しかし、この元帥が艦隊の運営を始めると、瞬く間に主力級の艦娘がこの鎮守府に現れ、この鎮守府が戦力過剰になってしまったのだ。

その結果、元帥のもとを離れて別の鎮守府へと主力艦は転属となり、この鎮守府は最低限の戦力のみ保有することになった。

故に、吹雪はこの鎮守府の戦力をそれほど割くことを、良しとしたくないのだ。

 

「失礼します。提督、大本営から連絡が来ました。」

 

そんな二人のいる執務室へと、落ち着いた雰囲気の艦娘、鳳翔が入ってきた。それを聞いた元帥は、少なくとも連絡が付いたことへの安堵と、なぜもっと早くつながらなかったのかという苛立ちに包まれた。

 

「そうか。では、俺が相手をする。どうやら仕事を怠慢している奴がいるらしいからな」

「ですが…その、少しその通信相手が変なんです」

 

鳳翔は元帥が憤っているのを感じ取りながらも、冷静にその話をし始める。元帥はそれを聞いて、大きなため息をつく。

 

「この期に及んで、まだ問題があるのか?」

「はい。正規の通信兵ではなく、どうやら個人的に話があるとのことでして」

 

その言葉を聞いた元帥は、少しだけその表情を硬くする。

個人的な用事で、大本営の通信設備を使用するなどという暴挙に至った理由は何か。

もしかすると、よりも確信に近い感覚で、元帥はその言葉を口にした。

 

「…相手は何と言っていた?」

「えっと、『Devil may cry』と一言おっしゃっていました」

 

それを聞いた元帥は、ニヤリとしながら通信室へと走るのであった。

 

 

_______________

 

 

 

「…さっきの言葉って、どんな意味なんですか?」

 

榛名は、通信機のマイクの前で腕を組みながら立っているネロを見ながらそう尋ねる。

ネロはそれを聞いて、少し困ったかのような表情を浮かべていた。

 

「…店の名前だ。俺が付けたわけじゃないけどな。ただ看板を送り付けられたってだけで」

「お店ですか…」

 

ネロの言葉を聞いた榛名は、思わず考え込んでいた。それがどんな感情なのか、ネロには知る由もなかったが、榛名は単純に目の前の青年が店を経営しているとは思っていなかっただけのことだった。

 

『がはは!まさかデビルキラーから通信がかかるとはな!』

 

通信室にその声が響いた瞬間、ネロは大きなため息をつく。

 

「…この軍は悪魔を雇いすぎだ」

『…となると、大本営には悪魔が大量にいるということか?』

 

元帥はそう言いながら、まるで考え込むようにうなり始める。ネロはそれを聞いて、面倒くさそうな表情を浮かべる。

 

「…ダンテの姿が見当たらねぇ。俺一人でもいいが、流石にダンテの協力があった方が楽だ」

『なるほど。ダンテの奴が暴れたわけじゃないということは理解した』

 

元帥はそう呟いて、大きなため息を吐きながら言葉を続ける。

 

『少なくとも、ダンテは軟禁されていた。もしかすると、別の場所へと移送された可能性すらある』

「…そうかい。じゃあ、次の質問だ」

 

ネロは元帥の言葉を聞いた瞬間、その雰囲気を硬くする。

 

「…技術局長という男は、悪魔の研究をしているようだが、それは掴んでいたか?」

『…やはり、あの男は黒だったか』

 

ネロの言葉を聞いて、元帥は少し苛立ったような声を上げていた。それを聞いたネロは、静かに舌打ちをする。

つまり、元帥は薄々感づいてはいたのだろう。しかし、確証は持てなかったということ。

 

『…もともと、ダンテに依頼をした理由は、深海棲艦の数が圧倒的に増えたことに起因している。さらに言えば、大本営周りにその存在が全く現れないことも疑惑を大きくする原因になった』

「…それで、ダンテが封じられたからこそ、俺に話が来たってことだろ?」

 

ネロがそう告げると、元帥は静かにああ、と呟いた。

 

『ダンテのことを大本営で軟禁するという話が出てしまい、深海棲艦への対抗戦力は失われてしまうだろうと考えてな。君には失礼な話かもしれないが』

「…別にいいさ。それより、アンタに聞きたいことがあってな』

 

ネロはそうマイクに向かって告げると、ニヤリとした表情を浮かべた。

それを見ていた榛名達三人は、思わず身震いしていたらしい。

 

「…大本営の設備を多少ぶっ壊しても文句は言わねえか?」

『…全く、デビルハンターとは規格外なものらしいな。良いだろう、存分に暴れてくれ』

 

総帥は、呆れ笑いをしながら、ネロにその許可を出した。

ネロはそれを聞いて、すぐに通信機のマイクを引き抜く。

 

「ちょ、マイクはそんなに雑に扱っては…」

 

ネロのその暴挙に、思わず霧島が慌てた様子でそう告げるが、ネロにはその言葉はもう届いていなかった。

 

「さあ、パーティーと行こうぜ」

 

ネロはそう呟きながら、左手で作った拳を開いた右手にパンと叩きつけた。

 

 

 

 




そろそろ、大ボスくらいまでにはたどり着きたいところですね!

年内最後の更新になると思います!
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