Devil may cry ~Fleet Collection~ 作:縁(みどり)
続きかけたので、どんどん行きます。
第二章開幕です。
不安
時刻は深夜1時。電は自室に戻ってベッドにこもり、力強く目をつぶっていた。だが、決して眠ることができなかった。目を閉じると、先ほどの出来事が頭の中で何度もフラッシュバックするのだ。二段ベッドの上では、同室の雷がすでに寝息を立てていた。
「…ダンテさん…」
電は静かにそう呟きながら、ベッドから這い出て、自分の机の前に向かう。あの時のダンテさんの表情、そして声。全てが鮮明に頭に残っている。
そして、あの得体のしれない『何か』も。
『何か』の気味の悪い声が頭の中で何度も響く。あの気味の悪いような叫び声が響く。
『ダァァァァンテェェェェェェイイイイ!!』
『Let's rock!!Ha!!』
辺りに広がっていた血しぶき、そして何かの命がなくなったと同時に灰になって消える瞬間。暗がりの中に鮮明に映る、風になびく赤いコート。
『Ha!!』
何度も響く銃声、そしてダンテさんの声。血しぶきが上がるたびに、私の体は震えていた。私は、何もできなかった。動くことができなかった。全てが終わった瞬間、喉がヒリヒリする中で、必死にダンテさんに声をかけた。
『…今日はピザはなしだ。また今度頼むぜ。』
その時の表情や声は、その前まで普通に話していた時の落ち着いた様子だった。しかしあの時、ほんの僅かに、ダンテさんは楽しんでいた。その異形の何かと戦うことを、楽しんでいたのだ。
彼は…一体何者なのだろうか…
電はその答えを未だ出せずにいた。
「…どうしたの?電。」
「!?…」
そんな声がベッドの方から聞こえて、電は慌ててそちらの方を見る。雷が二段ベッドの二階からこちらをのぞき込んできていたのだ。電は少し、自分の行いを責めた。こんな時間まで起きていた上に、雷の睡眠時間まで邪魔してしまうのことが、申し訳なくなっていた。
「…な、何でもないのです…ちょっと、怖い夢を見ただけなのです…!」
電はそう言いながら、少しひきつった笑顔を見せる。それを見た雷は、少しの間何も言わなかったが、その後大きなため息をついた。
「そんな見え見えのウソついてちゃだめね。」
雷はそう言いながら、二段ベッドの二階から梯子を使って降りてくる。そして、少し楽しそうな笑顔を浮かべながら、電に寄り添う形で座る。
「はわっ…雷ちゃん…?」
電が少し驚いたような声でそう告げると、雷は満足そうな顔でえへへ…とつぶやく。
「だって、電ったら全然頼ってくれないんだから。秘書艦は大変なんだから、もっと私たちを頼りなさいよ。」
そう言いながら、雷は電に寄り添う形で目をつぶる。その表情は、まるで全てを包み込むような笑顔であった。電はそれを見て、少し暖かい気持ちになっていた。電は少し微笑みながら、雷に自分の体重を預けて目をつぶった。
「…暖かいのです。」
「そうね。」
そういうと、二人で寄り添いながら眠ってしまった。夜は更け、太陽が昇り、また新しい朝が来る。
だが、それは人間界の理。魔界に棲む悪魔たちにとっては、そんなことは一切関係がない。
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「…Hah…」
月明かりが照らしている中、湾頭に一人でたたずむダンテは、悪魔の匂いに誘われてここにやってきた。まるで悪魔が『
(…招待してきたくせに、誰もいねぇな。)
ダンテは背中に背負っていたギターケースを地面にそっと置き、湾頭の段差に腰を下ろした。海の匂いが、ダンテの嗅覚を刺激する。潮風に交じって、かすかに悪魔の匂いが届いた。やはり、海からの使者は、悪魔の力を有しているのかもしれない。ダンテはまだ見ぬ『海からの侵略者』に心を躍らせる。
と、その時後ろから足音が聞こえた。
「…こんな時間に出歩くのは、感心しねえな。」
「…それはお互い様ってやつだよ。」
ダンテの声にそう返答するのは、銀の綺麗な髪をなびかせている、響であった。響は何も言わずにダンテの隣に座る。ダンテは鼻で少し笑って、その場に寝転がる。
「…で、お嬢ちゃんは俺を口説きに来たのか?悪いが、俺はそんなに安い男じゃないぜ。」
ダンテは軽口をたたきながら、不敵な笑顔を見せる。それを聞いた響は少しだけ面倒くさそうな顔を浮かべた。本人にはその気はないらしい。
「すまない、私は君に対して好意的な感情を持ち合わせていないんだ。なにせ、ちゃんと面と向かって会うのは今が初めてだしね。」
「ハッハー、そいつは随分と寂しい振られ方だ。」
響は、海の方をじっと見つめる。ただ広がっている蒼。いつも見ているはずの海が、いつもと違うように見えて不気味に感じる。果てしなく続く水平線が、いつ自分たちを引き込んで来るかわからない。
ダンテはその横顔をちらと見る。だが、それ以上のことはしなかった。さすがのダンテにも、いつもの軽口でこの空気を壊す無粋なことはしなかった。
「…聞きたいことが一つだけある。」
「なんだ?」
響の言葉に、軽くダンテは返答する。ダンテはそう言いながら、寝っ転がったままギターケースを開けようとしていた。
「…君と鎮守府の外へ出てから、電の元気がないんだ。何か心当たりはないかい?」
そう言いながら、響は少しダンテに真剣なまなざしを向けた。ダンテはそれを聞いて、hmm…とつぶやく。ギターケースを開いたが、その中身は取り出さなかった。少し決まりが悪そうな表情を浮かべたダンテを見て、響はため息をついた。
「…やっぱり君が原因か。」
響はそう言いながら、その場を立ち去ろうとした。原因が分かってすっきりしたようだ。
「…何があったのか聞かないのか?」
「そうだね…強いて言うなら、電をあまりいじめないでくれ…ということぐらいかな?」
ダンテの言葉に、響は釘を刺すような言い方をした。それに対してダンテは、やれやれといった感じで立ち上がった。
「…俺はダンテ。今度は太陽が昇っている時にデートに誘ってくれ。」
「…響だよ。これからよろしく。」
ダンテの言葉に、響はそう答えて、静かにその場を去ろうとする。
「Ah、ヒビキ。」
「?…」
響はダンテの呼びかけに振り向く。ダンテはその響を見て、ニヤリと笑う。
「いや、なんでもねぇ。」
ダンテはそう言って、軽く右手を上げる。響はそれを見て、怪訝な表情を浮かべるが、特に問い詰めることでもなかったので、そのまま自室へと戻っていった。
「…hah。」
ダンテはその後ろ姿を見送ると同時に、ギターケースからリベリオンを取り出し、それを後ろへ振る。そこには、骸骨の仮面をかぶった悪魔、『ヘル=プライド』がいた。リベリオンは、そのヘル=プライドの腹部を切りつけていた。この世のものとは思えないほど邪悪な断末魔と共に、その悪魔が灰となり消える。
「…俺とのデートをご所望なら、もっと品よくねえとダメだな。」
ダンテはその悪魔の残りカスに向かってそう告げる。ダンテは若干の物足りなさを感じつつも、他に悪魔の匂いがないことを確認し、自室へ向かおうと足を踏み出す。少し歩いたところで、ふとダンテは雲ひとつない空を見上げる。そこには、なんてことはない月と、輝いている星があるのみだった。
「…退屈はしなくて済みそうだな。」
ダンテはそう呟きながら、また歩みを進める。
月明かりが不気味にダンテを照らす。ダンテはそんなことなど気にも留めずに、ただ楽しそうな笑みを浮かべているのであった。
ダンテに新しい武器を使わせたくて仕方がないです。