Devil may cry ~Fleet Collection~   作:縁(みどり)

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とうとう年末になってしまいました

年内最後の更新になります。

前々から考えてた試みをやって見たいと思います。

時間軸はMission2の後です!


Secret Mission
1 〜 Intermission 〜


武蔵は、自分自身を未だ許せずにいた。

あの演習でダンテを相手にして、柄にもなく恐怖を抱いてしまった。それだけには飽き足らず、相手を目前に敗北を享受してしまったのだ。

 

「…クッ。」

 

武蔵はそう言いながら、その足を速める。少なくとも、今の疲労では艤装を扱うことはできない。だから、今は全力で走り込みをする。既に鎮守府内を2周しており、身体も限界に近い。だがそれでも、足を止めることはできない。

 

「…ハッ…ハッ…ハッ…」

 

息が上がり、鼓動は早くなる。速さを維持しつつ長距離を走るのはとても苦しい。しかし、自分を痛めつけ、さらに能力を向上させることには適している。今の自分には、これが一番だと、そう思ったからこそ武蔵は走り続けている。

しかし、人は自身の身体の限界を超えることはできない。

突然、武蔵の足がもつれて、そのまま前に倒れこむ。

 

「ぐっ…!?」

 

武蔵は身体を庇うように腕を前に出す。辛うじて上半身は守れたものの、右腕の肘に擦り傷ができていた。

 

「…こんなことではダメだな。」

 

軽く吐き捨て、また立ち上がる。少し腕が痛むが、そんなことを気にしている暇はない。そして、再び足を動かそうとする。

 

「大井っち、まだ走りこんでたみたいだね〜。」

「はぁ…本当にまだ走ってるなんて…」

 

そんな声を聞いた武蔵は、その声の方に顔を向ける。そこには、感心したような表情の北上と、呆れ返った表情の大井が立っていた。

武蔵は何も言わず、前へ向き直る。

 

「…そんなに走りこんでも、あの赤コートには勝てないですよ。」

 

大井がそんな風に言いながら、武蔵のそばへと寄ってくる。武蔵は、そんな大井の言葉に、少し歯噛みする。

 

「そうそう。ダンテがちょっと強すぎなんだって。」

 

北上もそれに賛同するような言葉を投げかける。しかし、武蔵はそれを聞いてフツフツと湧き上がる感情を止めることができなかった。

 

「…あれが実戦だったら、どうするんだ。」

 

武蔵はそう言いながら、大井と北上を睨みつける。それは、心の底からの怒りを表していた。

しかし、大井と北上はその表情を崩さなかった。

 

「実戦だったとしても、私たちは全力を尽くすだけです。仮に沈むことになったとしても。」

「結局そうなっちゃうよね。」

「…はっ?」

 

武蔵は、2人の言葉を理解できなかった。それは、艦娘として死ぬことすら厭わない、ということなのだろうか。

 

「…ふざけるな!そんな諦めたような…」

「諦めてなんていませんよ。」

 

武蔵の言葉に、今度は大井が睨みつけるよつな表情を浮かべて答える。

 

「…私たちは、常に死と隣り合わせです。何度も死ぬかもしれないと思ったことがあります。」

 

大井はそう言いながら、武蔵の目の前へと歩いていく。それを武蔵は目で追いながら、話を聞く。

 

「そんな時、訓練でやったことを思い出しながら、冷静に考えて行動します。それでも勝てないと思った時は、全力を出して戦うのみです。」

 

大井はそう言って、武蔵の肩を両手で掴む。武蔵は驚きつつ、その大井の表情に唖然としていた。その目は、明らかに何かを失うことを恐れている表情であった。

 

「…本当は、そんな状況になれば逃げ出したいに決まってます。それでも、私は護りたいものがあるから戦えるんです。」

 

大井は武蔵の目をしっかりと見て、その表情を固くする。

 

「私は死ぬことより、護りたいものが無くなる方が怖い。」

 

あまりに力強い言葉に、武蔵は言葉に詰まる。大井の瞳の中に絶対に揺るがない覚悟を見たことで、反論を返すことができなかったのだ。

 

「まあ、大井っちの意見に概ね賛成かな。私もそう思って戦ってるし。」

 

北上もそう言いながら、歩み寄ってくる。笑顔を浮かべながらも、その表情の奥底にはやはり大井と同じ覚悟を背負っているように見えた。

 

「…だからこそ、今は休むべきです。疲労が溜まっている状態でこんなに走りこんで、挙句に転んでしまっているわけですし。」

 

大井はそう言って、武蔵から手を離し。ジト目で武蔵を見る。武蔵は少したじろぎながら、あ、あぁ…と答えるだけであった。

満足そうな表情を浮かべながら、北上は一回だけ手を叩く。

 

「じゃあ、武蔵さん。早くしないと晩ご飯に間に合わなくなるからね。」

「早く入渠するんですよ?」

 

そう言いながら2人は、そのまま食堂の方に歩いて行ってしまった。武蔵はそんな2人を見送りながら、微笑みを浮かべた。

 

「…まさか、軽巡2人に諭されるとはな。」

 

武蔵はそう呟いて、入渠施設へと歩いていった。その表情は、何か迷いが吹っ切れたような表情であった。

 

 

 

 

「…はぁ…」

 

鈴谷は入渠を終えて、自室へと戻っていた。この部屋は姉妹艦の熊野と同室であり、今現在は鈴谷しかいない。

そんな鈴谷は、ベッドに寝そべりながら、ただため息をつくのみであった。今の彼女の頭の中を駆け巡っているのは、ダンテに関する悩みであった。

 

「…疲れた…」

 

鈴谷は、そんな呟きを発して、ただ眠そうに目を閉じる。今日の演習では、ダンテの人間離れした動きに翻弄され続けていたわけだが、普段の戦闘ならばこんなことにはならなかったはずだ。

全員がしっかりと連携して、陣形を崩さずに冷静に対応すれば、深海棲艦には負けることはない。

すなわち、今回の敗因は、ダンテによる挑発とトリッキーな動きによって、こちらのペースが乱されたことである。

 

「…ダンテ…どうすれば勝てるかな…」

 

鈴谷は、自分1人で作戦を立て始めた。

ダンテは常に相手のペースを崩し、まさに自分の土俵へと引きずり下ろし…いや、むしろ引き上げていく。それを回避するには、こちらはかなり強靭な集中力と屈強な精神力をつけるほかない。ダンテの行動一つ一つに対して、動揺しないように、気を持たなければならない。

そこまで考えて、鈴谷は少し呆れたような表情を浮かべる。

 

「…って…こんなこと考えてても仕方ないか…」

 

またもため息をつきながらそう呟いた鈴谷は、少し面倒くさそうに寝返りをうつ。

 

「鈴谷?いますの?」

 

と、そんな鈴谷のもとへ、ノックとともに熊野の声が転がった。鈴谷は少し疲れた声で軽く、いるよ〜、と答える。

 

「全く、いつまで経っても来ないから、少し心配になりましたのよ?」

「あぁ〜、ごめんごめん。ちょっち疲れちゃってさ。」

 

熊野が少し怒ったような口調で言うので、鈴谷は少し慌てた様子でそう釈明する。熊野は少しため息をついて、鈴谷を見る。

 

「…今日は、急な呼び出しで大変でしたわね。」

「そう!そうなのよ!それで、何の用事かと思ったら、ダンテと演習って言われちゃってさ。」

 

熊野の言葉に、鈴谷はいきなり怒り出したかのような口調でくどくどと話し始めた。熊野は少し驚いたものの、黙って鈴谷の話を聞くことにした。

 

「そんなの最初はめんどくさくて、どうやって手加減してダンテをやっつけようかと思ったんだけど、実際戦ってみたらダンテの圧勝!もう本当に大変だったんだから!瞬間移動するわ、こっちの砲撃をガードするわでやりたい放題!挙げ句の果てに軽く挑発までかましてくる始末なんだから!こっちは本当にいっぱいいっぱいなのに、ダンテは余裕綽々って感じでさ〜!」

 

鈴谷はそんな風にいつまで経っても話し続ける。その表情は、いつもの鈴谷のような軽いノリではなく、なんだか楽しくてしょうがないという気持ちを抑えられないといった表情であった。

熊野は、少し笑った。

 

「?…ちょっと、いまの話に笑うところあった?」

 

鈴谷は突然キョトンとした表情を熊野に向ける。熊野はクスクスと笑いながら、鈴谷の方に向き直る。

 

「ええ、ありましたわよ。鈴谷、ダンテさんに本当に好きになっちゃったんですのね。」

「は、はぁ〜〜〜〜〜〜!?!?」

 

鈴谷は、熊野の言葉を理解できなかった。今の話のどこにそんな要素があったと言うのだろうか。

 

「だって、あまりにも楽しそうに話すんですもの。少し寂しく感じもしますが、鈴谷の成長を喜ぶべきですわね。」

「だ、だから!!あぁもう!!惚れてなんか無いってば!!」

 

鈴谷はそう叫んで、頭から布団を被ってしまった。熊野の笑い声が部屋の中に響く。鈴谷は、少しずつ体温が上がっていくのを感じていた。だが、それは布団を被ったことで熱が篭っただけのことであると、自分に言い聞かせる。

 

(一目惚れなんて…認めないし!)

鈴谷は心の奥底でそう叫んだ。

 

 

 

 

 




というわけで、今回はシークレットミッションという形で、ダンテ、提督、電以外のメンバーにスポットを当てて見ました。

今後もちょくちょく挟みたいと思います。

では、来年もよろしくお願いします!
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