Devil may cry ~Fleet Collection~ 作:縁(みどり)
今回は、ダンテと出会う直前のバージルが何をしていたのか…
そこに焦点を当てていきます!
というわけで時間軸はMission5の最中になります!
ここは、とある鎮守府の近海である。この鎮守府には様々な噂があるものの、かなりの功績を残した鎮守府である。大規模作戦において多くの戦果を上げ、通常の任務も完璧にこなしていた。
そんな鎮守府の近海に、その2人はいた。
「…動キハ?」
戦艦レ級は、隣にいる南方棲鬼にそう尋ねる。
「…特ニナイワネ。」
南方棲鬼は、目で望遠鏡を作るようにして、鎮守府を見ている。
戦艦レ級は、それを聞いて少しため息をつく。
「…ソレニシテモ…提督ハ何ヲ考エテイルンダ。」
「…サアネ。」
2人はそこまで呟いて、同時にため息をつく。
それは、バージルが言い出した突拍子も無いことが原因となっていた。
「…提督、大丈夫カシラ?」
「…ソコハ心配イラナイト思ウケド。」
南方棲鬼の言葉に、レ級は静かにそう呟くのであった。
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バージルは、先ほど2人が監視していた鎮守府の中を歩く。
完全な部外者であるバージルは、ここの艦娘達に攻撃を加えられてもおかしく無い。だが、未だにそういったことはない。
まるで無人のようにも思えるが、バージルはそうでないことを確信していた。
人間がいない、という意味では無人かもしれないが。
「…humph。」
バージルは呆れたようにそう呟き、ドアが破壊された鎮守府の建物へと入っていく。
そこには、低級悪魔である4体のブレイドが群れをなしていた。魔帝ムンドゥスに作り上げられた尖兵。身体を鎧で多い、腕にはシールドをつけている。爬虫類のような姿をしており、狡猾に獲物を屠る狩人のようにも見える。
4体が同時に、咆哮をあげてバージルへと襲いかかる。
「…
しかし、その瞬間にブレイドは吹き飛ばされていた。
バージルが、疾走居合によってブレイド達を全て斬り伏せたからである。ブレイド達は自身らが何をされたのか気がつかぬまま、絶命していった。あたりに血液が飛び散り、崩壊した鎮守府を彩っていく。
バージルは辺りを見渡し、執務室へと向かう。そこから、人の気配を感じ取ったためである。
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「…ガハッ…」
散乱した書類、飛び散った血液によって装飾が施されている執務室の中、1人の傷だらけの艦娘が苦しそうに呻き声を上げる。彼女の名は木曾。球磨型軽巡洋艦の5番艦である。
ボロボロの執務机に背中を預け、肩で息をする。
手には血塗れの刀を持ち、今にも崩れそうな身体をなんとか保つ。
「…くっそ…」
そう呟き、何とか立ち上がろうとする。が、身体の痛みと疲労がそれを許さない。
木曾の身体の怪我は、深海棲艦によるものではない。全てブレイドの攻撃のためについたものだ。執務室に入ってくる奴らを、1人で食い止めていたためである。
「…もう終わりか…?」
特に動きはないが、おそらくあの向こうには化け物がまだまだいるのだろう。
そう頭の中で考えながら、木曾は扉を睨む。
「…少し…休む…か…」
木曾は少し目を閉じる。あまりにも気を張った状態が続いたため、木曾の精神も限界に近づいていた。
仲間は皆、他の鎮守府へ逃げたか、それとも…
そこまで考えて、軽く笑みを浮かべる。今は他人を気にしているほどの余裕はない。皆無事に決まっている。そう考えておこうと。
その時、どこからか音が聞こえた。カツン、カツン、と響き渡る音。
「?…」
誰かがこの執務室に向かってきている。
仲間のうちの誰かか、もしくはあの化け物だろうか。
木曾はその刀を強く握りしめて、立ち上がる。
その足音が、ドアの目の前で止まる。
木曾は息を呑んだ。
「…誰だ。」
そう呟くと同時に、そのドアがゆっくりと開く。
入ってきたのは、青いコートを着た男。木曾はとりあえず、それが化け物ではなかったことに安心し、すぐにその男が何者なのか考える。
「…よくここまで来られたな。あの化け物はどうした?」
木曾は探るように、男へと尋ねる。男は、そんな木曾のことなど気にもせずに本棚へと歩いていき、おもむろに1つの書類を手に取る。
「?…なあ、お前は…」
木曾がそこまで呟くと、部屋の中にブレイドが3体ほど入ってくる。それに気がついていないのか、男は視線を書類から離さない。
「!…おい、逃げ…!」
と、木曾が声をかけた瞬間、その3体は男に飛びかかる。
木曾は、もう遅いと心の中で思った。このまま、男は化け物に殺されてしまうのだと。
しかし、木曾が考えた結果と全く正反対の事態が起こる。
「…
男はそんな声と共に、その刀を振り抜く。その瞬間、ブレイド3体はその身体を真っ二つにされる。
飛びかかった勢いで、切り離された3体の身体は勢いよく地面へとぶつかり、その鮮血を散らす。
「!…」
木曾は一瞬で起きたその出来事を、理解できなかった。
男はまるで何事もなかったかのように、その書類にまた目を向ける。
「…お前は何者だ?」
木曾は男に向けて恐る恐る尋ねる。だが、その言葉には恐怖や警戒の他に、ある種の希望がこもっていた。
この人物なら、この事態を解決することができるのではないかと。
男はその書類を確認すると、木曾をチラと見る。
「…貴様に関係があるのか?」
「!…」
その言葉を聞いて、木曾に悪寒が走る。
まるで人間が発するものではない威圧感が、彼女を襲う。
しばらくの間、静寂が辺りを支配する。
「…humph。」
突然、男はそう呟きながら歩き始める。木曾はその光景を黙って見届けるしかなかった。
執務室のドアを開き、男は外へ出る。
残された木曾は、ただその男が残した空気を身体に受けることしかできなかった。
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最初にその違和感に気がついたのは、1週間ほど前のこと。深海にて書物を読んでいる時に、悪魔のような気配をこの鎮守府から感じ取ったのだ。その事実は告げずに、戦艦レ級と南方棲鬼を連れてきた。
実際に来てみれば、明らかに異常な数の下級悪魔。確実にこの鎮守府は悪魔の巣窟と化していた。
バージルは静かな鎮守府の中を、その足音を響かせながら歩く。あとは悪魔の気配が強い方面に向かえば、ここでやるべきことは終わりである。
いくつか強い気配を持ったポイントがあったが、中でも1番強い気配を放っていたのは、入渠ドック。おそらくそこに、違和感の正体があるのだろう。
「…」
バージルは、ただ黙々と入渠ドックへと歩き続ける。時折飛んできたブレイドの攻撃は、もう既に止んでいた。おそらく、ほとんどを倒しきってしまったと思われる。
「なあ、お前。」
と、バージルを呼び止める声が響く。それを聞いたバージルはその歩みを止めた。
先ほどの執務室で出会った少女が、ここまでバージルを追ってきたのだ。
「…何の用だ。」
バージルは背中を向けたまま、その少女に声をかける。
少女は息を飲み、しばらく黙り込む。だが、何か覚悟を決めたらしく、溜息のような深呼吸のような音を出す。
「…お前は、この鎮守府に何をしに来たんだ?」
「…何度も言わせるな。」
少女の言葉に、バージルはそう呟いて歩き始める。
少女は黙ってその後ろ姿をじっと見る。
「貴様には関係がないことだ。」
「!…ああ、そうかよ。」
少女は苛立ったような表情を浮かべて、バージルを睨みつける。
「…俺もいく。この鎮守府のことは、この鎮守府の奴がやるべきだろ。」
そう呟いて、バージルのもとへと歩いていく少女は、その目に底知れぬ覚悟を抱いていた。
バージルはその少女を待つことなどせず、歩き続ける。
「…俺は木曾だ。」
少女はそう名乗り、バージルの反応を伺う。
だが、バージルはそんな木曾のことなどどうでも良いのだ。
「…知らん。」
そう呟いて、ただ入渠ドックへと歩き続けるだけであった。
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「…アァ…提督…」
入渠ドックの中、1人の女がそう呟く。背中には4方向に伸びる大きな砲塔を背負っている。あたりにはおびただしい量の血液が飛び散っており、大小の肉片が落ちている。
そして、女の腕の中には、この鎮守府の提督であった男の頭部が抱かれていた。
「…モウ…離サナイ…」
女は、静かにそう呟いて、涙を流す。
腰まで伸びる長い髪は白く染まり、その全身は血の気がなく、まるで深海棲艦のようであった。
「これは…!?」
と、そこへ入ってくる2人の影。女はゆっくりとそちらへ視線を向ける。
その片方の顔に見覚えがあった女は、その表情を驚愕のものへと変える。
「…木曾…?」
「!!…ぅっ…!!」
あまりの惨状に、木曾は口元を抑える。その提督であったものは、もはや何も語ることはない。その瞳からは血液が一筋に流れており、まるで涙を流しているようにも見えた。
なんとか喉の奥から込み上げてくるものを抑え、木曾はその女を睨みつける。
「…なんでこんなことをした…提督を1番愛してたじゃないか!!」
木曾はその溢れ出る怒りをぶつける。
その女は、艦娘としてかつて提督の秘書艦として苦楽を共にし、その指にはケッコン指輪まではめていた。そんなはずの彼女がなぜこんなことをしたのか。それだけが、木曾の心の中を埋め尽くしていた。
女は静かに笑みを浮かべて、口を開く。
「…モウ提督ハ私ノモノ。コレデ誰ニモトラレナイ。」
「!…この…悪魔め…!!」
木曾はその顔を怒りに歪め、女へと刀を向ける。女はそれを見て、狂気的な笑みを浮かべる。
「悪魔…フフフ!!ソウカモネ!!」
女はその背中の主砲を1発だけ発射する。
それを見切った木曾は刀を振り、その砲弾を切り落とす。あたりに爆煙が広がるが、木曾はそのまま走り出す。女を斬り伏せる為、自身の責務を果たす為。
「残念。」
しかし、その女の声が無慈悲に響いたと同時に、木曾の身体に異変が起きる。
突然、激しい痛みが襲った。
「がぁぁあああ!?」
木曾は自分の腹部を見る。そこには、得体の知れない何かの腕が突き刺さっていた。
その形状を見て、瞬時に理解した。あの化け物に刺されたのだと。
「煙デ気ガツカナカッタ?ソノ子達ッタラ本当ニ優秀ナノヨ。」
煙が晴れて、木曾は目の前に立つそのブレイドを睨みつける。
だが、命令を忠実に遂行するそのハンターには、そんな脅しは全く効果がなかった。
勢いよくブレイドが腕を引き抜く。それを受けた木曾は、痛みのせいで身体のバランスを保てずに地面へと倒れこむ。
「…フフフ!!モウ誰モ止メラレナイ!!私ノ愛ヲネ!!」
女は高らかに笑いながら、木曾を見下す。木曾は歯をくいしばる。
どんな手を使っても、この女を倒さなければならない。それが、自分に課せられた最後の任務。
しかし、どんなに立ち上がろうとしても、痛みがそれの邪魔をする。木曾の敗北は、あきらかであった。
「…下らん。」
突然、入渠ドックに呆れたような声が響き渡る。
女はその目を声の主であるバージルに向ける。ただじっと様子を見ていたバージルが、女へと歩み寄っていく。
「…下ラナイ…?」
女は静かな怒りに震えながら、そう呟く。
木曾は、痛みを堪えながらなんとかバージルの方へ視線を向ける。
明らかに余裕綽々と言った雰囲気で女を見るその姿は、やはり普通の人間とは卓越した存在なのだろう。
「…そんなことのためにその力を手に入れたのか。」
バージルは静かに呟き、ため息をつく。その表情は、まるで幻滅したかと言わんばかりであった。
「…ソンナ…コト…?」
女は、その憎悪と怒りを鎮めることができず、背中の砲塔をバージルに向けて、鋭い目つきで睨みつける。
だが、バージルにとってそんなことはどうでも良い。
「…私ノ愛…ソレヲソンナコトダト言ウノカ!?」
そう話す女を尻目に、バージルは木曾の方を見る。腹部からは血液がとめどなく流れ出ており、普通の人間であればすぐに死んでしまうであろう。
だからといって、バージルには木曾のことなど関係がないのだが。
「…力が無ければ何も守れない。自分自身さえもな。」
「!…フフフ!!ソウヨ!!ダカラ私ハ提督トノ愛ヲ守レタ!!」
女はバージルの言葉に同意するかのようにそう叫ぶ。その表情は、清々しいほどに凶悪な笑みであった。
だが、バージルはそんな女を見下したような目を向ける。
「貴様は何も守っていないだろう。」
「!…」
バージルの言葉に、女は再びその表情を、憎悪が含まれたものへと豹変させる。
「…貴様に、その力は必要ない。」
「黙レ!!」
女はそう力強く叫び、右手をバージルへと向ける。
その合図とともにブレイドが計5体ほどになり、バージルへと飛びかかる。
鋭い爪でこの男を貫く。女はそう確信していた。
完璧な不意打ちは、確実に成功するのだろう。それが普通の人間であれば。
「…
バージルはそう力強く呟いたと同時に、その日本刀を抜く。たったそれだけの動作。それだけで、5体のブレイドの身体を完全に斬り伏せる。
全てのブレイドが動かなくなったと同時に、バージルは刀を鞘に収める。
「!?…何者ダ…!!」
女の言葉にバージルは、睨むように視線を返す。その瞳の奥に、テコでも動かないほどの気高き魂を感じ取った女は、その全身に現れた鳥肌を止めることができなかった。
バージルは、その口をゆっくりと動かす。
「…悪魔に名乗る名前はない。」
バージルは瞬間移動で女の目の前に現れる。
女のとっさの出来事で思考が停止するも、なんとかそれを回避しようと両腕を伸ばす。
バージルは、ほぼ音速で刀を振り抜く。それによって、女が伸ばした両腕が切り落とされる。
「!?…グギァアアアアァァァ!?」
女の苦痛に悶える声が辺りに響きわたる。女はそのまま、背中についた砲台をバージルへと向けて放つ。
それを見越していたバージルは、女から距離を取りながら刀をぐるぐると回す。
砲弾は斬り落とされ、辺りに爆煙を広がらせる。
「!!…何…!?」
女はそう叫びながら、その爆煙が晴れるのを待つ。
だが、その行為を後悔した。
少しずつ晴れる爆煙の中、女はそれを見たのだ。
「!!…」
刀を構えた、青き魔人。女は、それが先ほどまで話していたあの男だということは理解していた。
だからこそ、それを見た瞬間に理解した。
自身と男の力量の差を。
『
バージルのノイズがかかったような声が響き渡った瞬間、バージルは足を踏み出す。そのまま女へと肉薄するかと思いきや____
____その姿が消える。
それを認識した女は、身体を動かすことが出来ない。それは、恐怖で動けないなどという理由ではなかった。
一瞬で消えたバージルが、まるで分身したかのように自分を切り刻んでいたからである。
「…嘘…ダ…」
そして、その分身していたバージルの像が1つになり、先ほどまで立っていた場所に戻る。
痛みは感じないが、身体は動かない。
何をされたのかも、何が起きたのかも理解出来ない。だがしかし、1つだけ理解していたことがある。
それは、自分がこの男によって殺された、ということ。
「…嘘ダァァァァァァ!!!!」
女が悲痛な叫びをあげると、その身体がボロボロと崩れ始め、やがて灰になっていった。
いつの間にか姿が元に戻ったバージルは、それを横目で見ながら右手で髪をかきあげ、ため息をつくだけであった。
「…
木曾はその一部始終を見て思った。彼は人間ではない。そして、絶大な力を秘めた、最強の男であると。
「…お前は…本当に何者なんだ…?」
地面に伏したままの木曾の呟きは、切なく響くだけであった。
シークレットには、どんどん補填や細かい部分を書き続ける所存です!!
次も早めに書き上げますね!
乞うご期待!