Devil may cry ~Fleet Collection~ 作:縁(みどり)
ダンテにピザを届ける目途が、何とか立ちそうです。
「…全く、二人とも風邪ひいちゃうわよ。」
未だ薄暗い夜遅くに、暁はそう呟きながら毛布を机の前で寄り添いながら眠りこける二人の妹にかけた。暁は優しさで全てを包むような表情を浮かべていた。毛布がかかると同時に、雷が少し身体をゆする。
「…暁…」
「!…ふふ、雷ったら。」
雷のつぶやきに驚いたものの、それが寝言だとわかると、途端に微笑みながら雷の頭を撫でる。いつもはあまり見ることのできない可愛らしい妹たちの姿に、暁は満足そうな顔を浮かべた。
「…暁。」
と、後ろからそんな声が聞こえたので、暁は振り返る。そこには銀髪の妹、響が立っていた。それを見た暁は安心したような笑みを浮かべた。
「…部屋にいないから、どこに行ったかと思ったよ。」
「響こそ、どこ行ってたのよ?響が部屋にいないおかげでこんな光景目にしちゃったんだから。」
暁はそう言いながら、雷と電のことを指差す。それと同時に、二人はもぞもぞと動き、先ほどよりもさらに体を寄せ合う。響はそれを見て、温かい気持ちになった。
「…それじゃあ、戻ろうか。」
「…そうね。」
そう言いながら、二人は外へと出る。響はドアを閉める時、少しだけ微笑んで雷と電の方を見る。机の前にちょこんと並んで寄り添う二人は、とても可愛らしく見えた。
「?…どうしたの?」
暁が急に動きを止めた響に対して、そうた尋ねる。その声に、響はドアを閉めながら、なんでもないよ。と呟いた。しばらく、暗い廊下を二人は並んで歩く。
そして、ちょうどトイレの前を通りかかったときのことである。暁が、何かを思い出したかのように、コホンと咳ばらいをしたのであった。響は不思議そうな顔でそちらを見る。
「さて、響。トイレに行きたいでしょ?一緒に行ってあげるわよ。」
「?…あぁ、そういうことか。」
響は暁の言葉に納得したような声をあげた。疑問に思っていたのだ。自分がいないと、なぜ暁は電たちの部屋に行かなければならないのか。
すなわちそれは…
「…トイレに行きたかったなら、最初からそう言ってくれればいいのに。」
「な、何よ!レディだから別に私は行きたくないわよ!で、でも、響がどうしても行きたいっていうなら付いてってあげるわよ!」
暁は手をパタパタとさせながら、必死に否定する。それがかえって、その事実を浮き彫りにしていた。響は軽く、呆れたようなため息をつく。
「分かったよ、暁。一緒に行こう。」
響はそう言って、暁に微笑を向ける。暁は満足したような表情で、それに応じる。
響は、こういった時に何というべきなのかを、知っていた。
『Bingo』と。
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朝、電はカーテンから漏れる陽の光で目を覚ます。まだ眠気まなこの目をこすりながら、時計を確認する。時刻は4:30を指しており、電は立ち上がろうと身体を動かす。
「?…あっ…」
と、身体に重さを感じたのでそちらに目をやると、そこには自分と同じ毛布にくるまった雷がいた。
昨日、雷と二人で寄り添いながら眠ってしまったようだ。それを見た誰かが、毛布を掛けてくれたらしい。
まだ秘書官以外の艦娘が起きる時刻ではないため、とりあえず起こさないようにゆっくりと毛布から抜けだす。雷は特に変わった様子もなく、そのまま眠りこけていた。
とりあえず、電はそのまま自分の準備を始めた。音をあまり立てないように、できるだけ静かに顔を洗い、制服に着替え、髪をくしで整えた後にヘアゴムでくくった。
そこまでしっかりとこなし、扉を開ける。ふと、雷の方を見る。未だ雷は起きる気配がなく、静かな寝息だけが聞こえている。
昨日のことを思い出した電は、少しだけ温かい気持ちになり、そっと微笑んだ。
「…ありがとう、なのです。」
聞こえるはずのない、雷に向けてそう告げると、電はそのまま走って執務室へと向かった。
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「…さて、今日は本格的にダンテさんの実力を見ないといけないな。」
早めの時間に執務を始める提督は、そう呟きながら今日こなす予定の書類を読み始めた。書類には、サインをするだけでいいものと、しっかりと返答をしなければならない書類があり、それをまず分別する。
と、そんな風に仕事をしていると、ノックの音が転がりこむ。提督はそれに対して、入ってくれ。と一言告げる。
「すみません、少し遅れてしまったのです。」
「構わないよ。」
電の言葉に、提督は笑顔で答える。電はそのまま提督のところまで歩いていく。書類をいくつか受け取るためである。
しかし、提督はそんな電に笑顔で答える。
「書類仕事の方は大丈夫だ。その代わり、ダンテさんと艦娘の演習をやろうと思うんだ。」
「!…ダンテ…さんと?」
電は、その言葉を聞いて昨日のことを思い出していた。あの化け物と戦うダンテの強さを。
電の表情に、若干曇りがかかる。
「?…電?」
提督が心配そうに電の顔を覗き込む。ハッとなって、電は慌てて取り繕うとするが、心のどこがで引っかかっており、うまく言葉が発せない。
「…何か、あったのかい?」
提督がそう言いながら、少し真面目な表情になっていた。昨日のことを全てさらけ出せたら楽なのに、どうしても言葉が詰まる。
しかし、まだこのことは言うべきではないかもしれない。
「…いえ、何でもないのです。怖い夢を見たのです。」
電は昨日とは違い、本当になんでもないかのような笑顔でそう告げる。提督はそれを見て、少し考え込むような表情を浮かべたが、とりあえず電の言葉に納得したようで、少し笑顔になっていた。
「…そうか。もし、辛かったら休んでも大丈夫だからな?」
「いえ!電は平気なのです!」
提督の言葉に、慌てた様子でそう告げる。それを見た提督はその笑顔をひと際大きくする。それを見た電は、少しだけ顔を紅潮させる。提督の優しさに、心が温かくなるのを感じたのだ。と、そんな執務室のドアがいきなり開く。
「よう、早いな二人とも。」
やってきたのはダンテであった。電はそれを見て、その表情を硬くした。提督はそれを見て、柔らかい表情を浮かべて席を立つ。
「ダンテさん。あなたこそお早いですね。」
「どうもベッドに入っても眠れなくてな。」
ダンテはそう言いながら、ソファにドカッと座る。電はそんなダンテを見て、少しため息をつく。昨日のことがあったというのに、特に何もなかったような態度で、呆れてしまったのである。
ダンテはそんな電を気にもせず、テーブルの上に足を乗っける。
「電、お茶を淹れてくれ。」
提督はそういいながら、電に笑顔を向ける。電はその言葉に、はい、と短く答え、シンクの方に歩み寄る。ダンテはそれを聞いて、hmm…、と少し面倒くさそうにつぶやく。提督はそれを見て、昨日ダンテがお茶を飲んだものの、あまり気に入っていなかったのを思い出した。
「ダンテさんはどうします?」
「…あぁ、俺はそうだな。」
提督の言葉にダンテは軽く、考え込むような仕草を見せて、最後にニヤリと笑った。
「…ピザを頼む。生ハム&ガーリックポテトミックススペシャルのLサイズだ。」
「あ、朝からピザですか。」
ダンテの言葉に、少し困惑したような表情を向ける。しかし、ダンテの変わらない表情を見て、本気でそう言っているのだと理解した。
「…早朝はピザの配達はやってないんです。なので…」
「…そうか。」
ダンテはあからさまに残念そうな顔をして、目をつぶった。それを見た、提督は軽く苦笑いをした。
あとで、ピザの宅配を取ってあげようと思った提督であった。
次回から少しずつ独自設定を盛り込んでいきます。